fbpx
週刊READING LIFE vol.44

やみつきのスルン体験《 週刊READING LIFE Vol.44「くらしの定番」》


記事:なつき(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

あーもう! 取れない! これはかなりのストレスだ。
ガスコンロの油汚れはどうしてああもしっかりべっとり貼り付くのか。
夕ご飯の茶碗を洗い終わったあと、台拭きを水で濡らしたり、台所用の洗剤をつけたりして拭く。1日2日の汚れならそれで落ちるが、前からあるものや、数日経ったりすると結構頑固に取れなくなってくる。こうなると厄介だ。ただでさえ平日は時間を掛けたくないのに。何かいい方法はないものか。そんな私に神が舞い降りた。そんな、神ならぬ紙が舞い降りた瞬間をお話ししたいと思う。
 
その日は休日だった。夕ご飯を食べ終えて、茶碗を洗う。平日は時間が取りにくいし気力もないけど、ガスコンロの掃除をそろそろしなくては。本腰を入れて綺麗にしますかね。五徳を外し、流しに置く。受け皿を外す。天板が現れた。天板のくぼみやあちこちに油がべっとり付着している。昨日今日なら比較的簡単に取れるが、数日経つとかなり力をいれてこすらないと中々取れなくなる。だから夕ご飯が終わった後、ガスコンロから鍋を寄せる。天板がしっかり顔を出した状態で、全体を見渡せるようにする。時間を確保して身構えて行う。
 
この日も布巾を片手に洗剤をつけてスタンバイ完了。私は母に言われていた。家にあるもので工夫して掃除はしなさい、と。だから当然布巾に洗剤をつけてこするつもりでいた。そんなときの夫婦の何気ない会話「油汚れって中々落ちなくてさー」ガスコンロの掃除は大変なんだ、そこをちゃんとわかってよね、見てよね、という気持ちを込めながら私は言った。そしたら夫ってば「アルコールタオルで拭いてみたら?」と言う。はぁ? あれって除菌用でしょ? 掃除用ではないよね、と思いながらも取りあえず使ってみることにした。
 
除菌を目的で使っていたアルコールタオル、これをガスコンロにーーー? 水の電解質を活かした効能が、とうたった商品で掃除をしたことはあるけど、アルコールタオルを使ったことはなかった。除菌用に使う時に無いと困ると思って100枚入りのボトルを買っていたから、目の前にアルコールタオルがある。これをガスコンロにーーー? 半信半疑ながらも一枚抜き取る。試しに天板の平らな面を拭いてみる。え? 何が起こったの? え?
 
さっとひと拭きしただけなのにその部分が綺麗になった。まあ、ここはそんなに日数経ってなかったしと思いつつ、隅の油がこびりついている部分を拭いてみる。スルン。そこにあった油の塊が無くなっていた。私は目を疑った。私は殆ど力を入れてない。いや、もうなんか気持ちいいよこの感じ。他の部分もスルン、と取れる。あっという間に四隅が、油の溜まった他のくぼみが綺麗になった。
 
「すごい! 簡単に取れた!」夫に感激を伝えると「何度かそれで掃除したことあるよー」と事も無げに言う。なんで知っているんだ。この落ち具合、他にもっと試したい。外して流しに置いておいた五徳を拭いてみる。またもスルスルスル~。油汚れが取れる。見る見るうちに五徳はピカピカになった。五徳の形状は突起があちこちにあってとても磨きづらい。だから流しでスポンジで洗剤をつけて洗っていた。それでも頑固なタイプの油汚れが残ったり、手にべたつきや黒いすすがついたりする。この黒いすすが曲者で手を洗っても中々落ちない。爪にも入り込んで取れない。それが、このアルコールタオルだと、大して力も入れずに拭けて、手も汚れない。
 
1回拭いただけでは勿体ない。タオルを折りたたんで使い、裏返して使い、更に広げて反対側に畳んでまた使う。このアルコールタオル、横20㎝×縦14㎝と左程大きくはない。それなのにしっかりしているためか、これだけ使っても破れもず丈夫だ。手も殆ど汚れない。今までも綺麗になると気持ちいいので頑張って磨いていた。それが気合を入れずとも綺麗になる。そのための時間を用意しなくても短い時間で綺麗になる。こんな画期的なものがあったとは! いや、家にあったのだから知らなかったものではない。知っていた筈なのに「除菌」のためという一つの使い方に捉えられて他に使ってみようとしなかった。掃除の仕上げに使ってはいたけど、そのものが掃除の役に立つとは考えてみなかった。
 
夫の一言で固まっていたアルコールタオルに対する見方が変わった。この見方が変わると、他にも使えるのではないかと試したくなる。こちらも油汚れに悩んでいた台所のタイル。それもサーっと拭いただけで綺麗になる。この取れ方がほんとに気持ちいい。
 
今度はフローリング。コーティングされていても毎日歩く場所だからどうしても所々黒ずんでくる。こすってみる。ここは力を入れると床が傷まないか心配なので軽く優しくこする。取れた。今度は洗面所の水垢がついてしまった場所。取れた。使い終わった後の歯ブラシとか使って取っていた場所が、いとも簡単に綺麗になる。今までなんで知らなかったんだろう、持っていたのに。驚くほどに汚れが取れる。大ボトルを買っても中々使い切らなかったアルコールタオルだったが、あの日を境に頻繁に使われるようになった。
 
頻繁に使うから見えてきたことがある。このアルコールタオルは本体と別に詰め替え用があり、無くなったら補充が可能だ。本体はかなり頑丈なプラスチックでできている。円筒でフォルムは寸胴タイプ。蓋を開けると開口が広く詰め替えは容易だ。この作業を幾度となく繰り返してきた。拭き掃除と除菌用に使用頻度も高いので約2カ月で80枚ほどを消費する。詰め替えたら、新しい詰め替え用を買ってきて常備する。常に切れることが無いようにする。気づいたら、無くてはならない存在、暮らしの定番になっていた。
 
後日、夫にガスコンロの油汚れが取れるのをなぜ知っていたのか聞いた。するとこんな答えが返ってきた。「しばらく使わなかったイヤホンがあった。シリコンを使ったイヤホンで、べたついたことがあった。調べたらアルコールタオルで取れるらしい。やってみたら見事取れて綺麗になった。もしかしたら他にも使えるかもと、色々やってみた中にガスコンロの油汚れもあった」イヤホンからガスコンロ、なにそのギャップ。確かにこのアルコールタオルは次々と何でも試したくなる。それだけ不思議なくらい気持ちよく取れる。
 
あの日を境に掃除の仕方が一変した。このアルコールタオルを使うことで時間にゆとりが持てるようになった。しっかり時間を確保しなくても、ちょっとした隙間時間でささっと掃除ができるようになった。この隙間時間で少しでも綺麗を保てる。短い時間で効率的にこなすための定番品。これからも活用の幅を広げていきたいと思う。今度は何に使ってみようか。
あのスルン体験はやみつきになる。

 
 
 
 

◻︎ライタープロフィール
なつき(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

東京都在住。2018年2月から天狼院のライティング・ゼミに通い始める。更にプロフェッショナル・ゼミを経てライターズ倶楽部に参加。書いた記事への「元気になった」「興味を持った」という声が嬉しくて書き続けている。

 
 
 
 

【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜《7/31(水)までの早期特典あり!》

 


2019-08-06 | Posted in 週刊READING LIFE vol.44

関連記事