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週刊READING LIFE vol.73

自分の中に答えはあった《週刊READING LIFE Vol.73「自分史上、最高の恋」》


記事:星永俊太郎(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

「どうやったら、そんな風に書けるようになりますか?」

後輩が何気なく口にした質問から、色々なことに気がつくことができた。

 

 

 

20年ほど前、私はプログラミングに恋をした。
 
きっかけは、仕事でしていたプログラミング、ではなく、空いた時間に興味を持って手を出した趣味のプログラミングからだった。
 
言葉に、日本語・英語・フランス語……と種類があるように、プログラミング言語にも種類がある。それぞれ、単語や文法が違い、そのプログラミング言語を考え出した人の考え方が色濃く反映されている。
 
そして、たまたま興味を持って手を出したプログラミング言語、私の「こう書いたらこう動く?」という考え方と相性がよく、自分の思い通りにコンピュータを動かす快感にすっかりはまってしまった。例えるなら、自分の思い通りに動く高性能なスポーツカーを手にした気分だろうか。自分がこうしたいって思いにピタッと寄り添って反応してくれる相棒。まさにそんな感じだった。
 
「なるほど、こう書いたらこう動くのか。じゃあ、こうしてみたらどう動く?」と色々な書き方を試しながら夢中で書き続けた。知識やできることが増えれば、さらに世界が広がっていく。
 
空いた時間はすべて費やした。プログラミングの本を読み漁り、ネットで上級者のプログラミングを見てはそれを書き写し、自分なりに書いてみた。そして、すでにあるツールを自分なりに作り直してみたり、自分が欲しいと思うプログラムを作った。
 
夢中でプログラミングにのめり込んだ。まさにプログラミングに恋をしていた。

 

 

 

でも、そんな日々はいつまでもは続かなかった。
 
10年以上続けたプログラミングに恋する生活も、仕事が忙しくなり、仕事の内容も自分でプログラムを書くことよりも進捗管理などの業務の割合が増えたこと、家族が増え・子供が生まれたことで家でパソコンに向かえる時間が減ったこと、色々な要因があるとは思うが、徐々にプログラムを書くことが面倒くさいと思うようになってしまった。
 
もしかしたら、単に年齢、ということもあるのかもしれない。次々と新しい技術や考え方が生まれ続ける世界に、ついていくのがしんどくなってしまったのかもしれない。
 
どういう理由だったにせよ、気がついたら情熱がなくなってしまった。あんなに好きだったのに。

 

 

 

それから大分経った。
 
あいかわらず以前のようなプログラミングに対する情熱はない。ただ、最近、まだプログラミングに慣れない後輩さんの面倒を見るようになった。そして、後輩さんの書いたプログラミングをチェックすることがあるのだが、それがなんだか、楽しいのだ。
 
最初は何が楽しいのかわからなかった。
 
でも、だんだんわかってきた。
自分が新人だった頃を思い出すことで、それに対して今の自分がどう思うのかが浮き彫りになってくる。自分一人だと当たり前になってしまった考えが、慣れてない人のやり方をみることで刺激されて、明確に認識できるようになる。「ああ、俺、こんなこと考えてたんだ」って気がつくのが楽しいのだ。
 
後輩さんの書いたプログラムを見ながら、自分ならどう書くだろう? と無意識で考え、思わず口にでていた。
 
「こうも書けるよね?」
「なんで、そんなことするんですか? こう書いたほうがわかりやすいじゃないですか?」
 
確かに、頭に浮かんだことをそのまま書いたらそうなるだろうな。でも……
 
「こっちのが、カッコイイじゃん? 普通に書いたら動くのは当たり前なんだから、それじゃあ、おもしろくないだろ?」
 
口に出してから気がついた。ああ、おれの判断基準は「カッコイイかどうか」なんだって。
プログラムにおける「カッコイイ」ってなんだろう? シンプルで、わかりやすくて、少しひねってあることだ。それが、私のカッコイイの基準だ。
 
簡単に言うとこんな感じだ。
 
100個の箱があって、箱(box)の中には0か1の値が入っている。1の値が入っている箱は何個あるか数えるような場合。単純に考えるなら、箱の中身を一つづつ確認して、1だった箱の数を足していけばいい。
 
for (i=0;i<100;i++){
if(box[i] == 1){
num++;
}
}
 
でも、箱の中の値が0か1しかないんだったら、箱の中身が0か1かを確認する必要もなく、単純に箱の中身を足していけば良くない?
 
for (i=0;i<100;i++){
num += box[i];
}
 
こうすることで、余分な処理を削除することができる。といえば格好がいいが、こっちの書き方のほうが「おもしろい」と感じてしまうのだから仕方がない。

 

 

 

こんなやり取りを後輩さんと繰り返しているうちに、こんなことを言われた。
 
「どうやったら、そんな風に書けるようになりますか?」
 
とっさに頭に浮かんだ言葉をそのまま伝えた。
 
「書くことだよ。遊び感覚で楽しみながら、色々試してみること。そんな経験の蓄積で書けるようになっていくよ」
 
その時、自分の中で何か引っかかるものを感じたがなんだかわからなかった。その日の晩、頭の中のもやもやをノートに書き込んでいるときに、
 
「ああっ!」
 
思わず声がでて鳥肌が立った。
 
後輩さんに私が答えた「書くことだよ。遊び感覚で楽しみながら、色々試してみること。そんな経験の蓄積で書けるようになっていくよ」。この内容は、私が今参加しているライティング講座「天狼院ライターズ倶楽部」講師の三浦さんが言っていることと、一緒だった。
 
「どうしたら上手に書けるようになりますか?」
「毎日書いてください」
 
そういうことだったんだ。
 
これまでは、正直、「そりゃあ、毎日書いたほうがいいんだろうけど、実際、なかなか時間もないし書けないよね」なんて思ってた。
 
だとしても、上達したければ、書いて書いて経験を蓄積していくしかないんだ。心の底から納得できた瞬間だった。
 
今の私は、文章を書くことに恋をしている。
文章を書くことに、なぜだかわからないが惹かれている。
 
「どうやったら、いい文章が書けるようになるんだろう?」
 
ずっと悩んでいた。でも、なんだ、その答えは、自分の中にずいぶん昔からあったんだ。

 

 

 

ついでにもう一つ、プログラミングに恋して、10年以上やり続けた自分に質問してみた。
 
「文章を書くときに、何を書いたらいいのか、わからないんだ」
 
他の人に比べたら、すごい経験なんて特にないし、すごい経歴があるわけでもない。そんな自分が何を書けるのか? 何を伝えられるのか? 自分が書いたことについて、自分よりも断然詳しい人も一杯いるだろう。そんな中で何を書いたらいいのかがわからない。
 
そんな悩む私に、プログラムに恋をしてやり続けた私が答えた。
 
「何を書くか? そんなのなんだっていいよ。『書くのが楽しいから書く』で十分だろ?」
 
おおお、なんでこれまで悩み続けてたんだろう。とっくに答えを知ってたのに。
 
書くものなんてなんでもいいんだ。人が書いたプログラムを自分ならどう書くか? ってしてたし、一度書いたプログラムを、他の書き方だとどうやったらいいのかな? って書き直すようなこともたくさんしてきた。それと一緒じゃないか。
 
文章に関しては、これまではこんなこと書いたら恥ずかしい、馬鹿にされるかも、なんて怖がって書けないこともあったし、他の人の書いた文章を読んでは、落ち込むこともあった。
 
でも、そんなこと関係ないんだ。自分が書きたいから書く。書くことが楽しいから書く。楽しいから色々工夫しながら書く。それだけで十分じゃないか。
 
人に認めてもらいたい! いい格好したい! って思うから苦しくなっちゃうんだ。
 
まずは自分が楽しいからやる、やり続けるでいいんじゃないかな。続けていれば、見てくれる人も出てくるかもしれないしね。
 
プログラミングに恋してた昔の自分にこんな風に教わる日が来るとは思っても見なかったな。
今度は、今恋してる文章を書くことを、楽しんでやり続けよう。

 
 
 
 

◽︎ライターズプロフィール
星永俊太郎(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

ソフト開発のお仕事をする会社員
2018年10月から天狼院ライティング・ゼミの受講を経て、
現在ライターズ倶楽部に在籍中
心理学と創作に興味があります。
「勇気、不安、喜び」溢れた物語を書いていきます。

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2020-03-30 | Posted in 週刊READING LIFE vol.73

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