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レンタル人間図鑑

おっさんがおっさんを借りてみた その4 —さいたまの短パン社長— 《レンタル人間図鑑》


記事:射手座右聴き (天狼院公認ライター)

今日もおっさんがおっさんを借りてみます。


人が人を借りる。
それってどういうことだろう?
私は、おっさんレンタルのメンバーで、射手座右聴きと名乗っています。おっさんレンタルとは、1時間1000円でおっさんを借りられるサービスです。そんなの需要はあるのかって? 年間450件を超える依頼があった、というおっさんにインタビューしてみました。その名も「さいたまの短パン社長」さあ、どんな話が飛び出すでしょうか。

第3回目はこちら!

おっさんがおっさんを借りてみた その3 —白パンのおっさん—《レンタル人間図鑑》

パンツは短いけど話は止まらない短パン社長


—短パン社長さん、こんに、、、、、、

短パン社長(以下 短):あーどうもどうも。はじめまして。今日はありがとうございます。
いや、射手座さん(私のこと)昨日SNSに生ハムの写真アップしてたでしょ?
僕も生ハム大好きなんです。というのもね、昔イタリアに留学していたんですよ。
でね、生ハム、よく食べたんですよ。そのイタリアから急遽帰らなきゃいけなくなって。20代前半だったんですけど。親父に会社が危なくなってね。で、戻ってきたんですけど、そしたら、倒産しまして。いきなり借金ですよ。もう全部失った感じです。命がね、いつなくなってもおかしくなかったですね、あの頃。もうね、家に帰ろうとしたら、黒い高級車が止まっているのなんて、当たり前でね。6,7台ですよ。取り囲まれていて。嫁と子どもを実家に帰しました。私だけ、一人部屋に帰ってね。高級車に囲まれた部屋にです。そしたら、車に乗せられるんですよ。で、連れ去られて。閉じ込められてね。しばらくすると、帰されるんです。もう、怖いもの、なくなりますよ。ケータイなんかもね、1週間ごとに替えるんです。

―え、どういうことですか?

短:ケータイにある電話番号に全部かけられるんですよ。友達や知人の番号にもう全部。「お金代わりに返せないか」って。かけられるんですよ。だから、番号替えるんです。友だちも、みーんないなくなりました。あ、こういう話で大丈夫ですか?

―あー。なんだか、わからないけど、すごいですね。しばらく、このままいきましょう。

短:でもね、それから働いて、10年で返しました。3億6千万。

―さ、さんおくろくせんまん、ですか。それどうやって返すんですか?

短:とりあえず、知人に「なんか、会社ない?」って聞いて買いました、会社。

―会社を買う?

短:そうです。売りに出ていた会社を買って、軌道に乗せて。

―なるほどー。凄まじい半生ですね。今は、どんな会社をされてるんですか?

短: まあ、色々やってますよ。

―色々、なんですね。プロフィールに年間450件を超える、とあるのですが、どんな感じですか?

短:レンタルが朝、昼、晩と入っている感じです。

会社? レンタル? どっちが大事?


―えー。社長のお仕事はお忙しいんじゃないですか?

短:いや。月2回くらいですよ。

―レンタルが月10数回で出社が月2回?

短:そうです。普段は、頑張ってくれているスタッフに全て任せてるんです。出社した時は朝から経営のミーティングです。税理士さん、社労士さん、コンサルの方なんかに来てもらいます。

―任せるところは任せて。社長は確認する、という感じですか。

短:そうですね。会社のこと、しっかりチェックして。その後「じゃあ、俺、ちょっとおっさんレンタル行って来るわ」って出掛けます。

―自由ですね。おっさんレンタルを楽しんでますね。

短:いやー。大変なのが多いんですよ。すごいメッセージがきて。

―すごいメッセージって。

短:いきなり、付き合ってください、とか。すごい写真が送られてきたり。ほら。(写真見せる)

―えー! これは記事にできませんね。書けるエピソードないですか。

短:あー、こんなことありました。スナックでバイト始めたばかりの子に、サクラで来てくれって言われて、閉店時間まで、飲みすぎちゃって、大変でした。

―それは楽しな気もしますが。飲みにつきあうレンタルは多いんですか。

短:結構多いかもしれません。でも、大変ですよ。以前、依頼者さんが先に酔いつぶれてしまって。

―えー。どうしたんですか。

短:始発が来るまで、駅のコンコースで、寝かせて、横で付き添いました。

―寒くなかったんですか。

短:そりゃあ、寒かったですけど。女性の依頼者さんだったので、置いていくわけいかないじゃないですか。だから付き添いました。朝まで外にいるのは慣れてるので。

―どういうことですか?

短:昔追われてた時に、朝まで逃げたりしましたから。

―昔の経験が生きてるってことですね。ほかには?

短:引越しも大変でしたね。

―引越しですか。

短:そうです。新入生の引越しで、荷物も少なそうだから受けたんですよ。ところが当日、大変だったんです。

―当日、荷物が多かったんですか。

短:いや、そうじゃなくて。お父さんがいて。「なんだ、お前は?」って言われて。

―お父さんがいたんですか。あ、でも、新入生のお父さんて。

短:そうそう。あまり歳が変わらなくて。

―なんだ? って言われたって、おっさんですよね。レンタルですよね。

短:でも、そんなのわからないじゃないですか。だから、引越し屋だって言って。

―短パンの引越し屋さんですか。

短:そうです。まあ気まずかったです。レンタルなのに。

―大変というか、気まずいですね。

短:いや、大変です。食事のレンタルの人がいるんですけどね。
 

「大変」でも、続ける理由


―今度は、どんな?

短:リピーターさんなんですけど、いつも代金を忘れる人がいて。

―えー?

短:この前は、3回目のレンタルだったんですけどね。

―1,2回目も代金忘れてて、いいんですか?

短:まあ、今回は払ってくれるかなって。そしたら、「おいしい日本酒がある居酒屋に行かない?」
ってメッセージが来たんです。プライベートでもよく行くあたりだったんですが。

―それで?

短:居酒屋さんに行ったんですけど。

―けどって?

短:「あ、終電間に合わない」って、いきなり席を立って。

―えー!

短:そのままです。帰りにね、呼び込みしてた飲食の知り合いが言うんですよ。
「あの女性に何かしたんですか?」って。

―え?

短:「行きは仲よさそうに歩いてたのに、帰り、ものすごい勢いで走って行きましたよ」って言うんです。呼び込みの知り合いが。いや、違うって、それ食い逃げだって、言わなかったですけどね。

―レンタル代も食費も全く払わずに、走って帰ったんですか。

短:いままでは、「財布忘れた。今度払うね」って言ってたんですけど、今度は、終電でした。大変でしょ。

―大変、大変、と言いながら、レンタルを続けるのは、どうしてですか?

短:まず、ネタになります。名刺交換の時に、「こんなのやってるんですよ」って会話の糸口になります。
仕事にもつながるんです。

―仕事にも?

短:はい。覚えてもらえますから。

―なるほど。社長みずからのトップ営業ですね。ところで、今後もおっさんレンタルは
続けるのですか?

短:実は、複数年契約はどうって言われまして。

―えー。すごいですね。

短:まあ、時間のあるときに続けようと思います。

―大変と言いながら、やっぱり楽しんでませんか?

短:うーん。刺激が欲しいんでしょうね。全てがネタなんですよ、人生。

―たくましいですね。

短:あ、そういえば、自分と射手座さん、どっちを借りようか迷ったって言われること多いですよ。

―えー。それって嬉しいような、でも、僕選ばれてないってことでは。あはははは。今日はありがとうございました。

面白レンタルエピソードしか教えてくれなかった短パン社長。楽しい時間はあっという間でした。
レンタルのコツや、感動のいい話を聴こうと思ってきたのに。そのへんは一切語らずでした。
うまーく話術にはまってしまいました。楽しい話と大人な話し方、これこそが、依頼が殺到する秘密なのでしょうか。

あなたもいつか、この人を借りる日が来るかもしれません。
いや、来ないかもしれません。

❏レンタル人間データ No.4


埼玉県の会社を二つ経営してます。1年中短パンで仕事してるので、さいたまの短パン社長と呼ばれています。
おっさんレンタルも2期目。みなさんのおかげでご利用実績ナンバーワン♪
(2019年3月3日現在(450件超))。
●住まい:埼玉県羽生市
●年齢:45歳
●身長/体重:170cm/68kg
●お酒飲めます!タバコ吸いません。
●職業:会社社長
●対応エリア:ご要望に合わせて。お気軽にお問合せ下さい。
●レンタル可能日:365日 お気軽にお問合せ下さい。
でも、かなりレンタルの予約が入ってるので、ご希望日時はお早めにお問合せ、予約して下さいね。
●当日は短パンで登場します(モチロン普通の格好の指定も可能です。)。

❏ライタープロフィール
射手座右聴き (天狼院公認ライター)
東京生まれ静岡育ち。バツイチ独身。
大学卒業後、広告会社でCM制作に携わる。40代半ばで、フリーのクリエイティブディレクターに。退職時のキャリア相談をきっかけに、中高年男性の人生転換期に大きな関心を持つ。本業の合間に、1時間1000円で自分を貸し出す「おっさんレンタル」に登録。4年で300人ほどの相談や依頼を受ける。同じ時期に、某有名WEBライターのイベントでのDJをきっかけにWEBライティングに興味を持ち、天狼院書店ライティングゼミの門を叩く。「人生100年時代の折り返し地点をどう生きるか」 「普通のおっさんが、世間から疎まれずに生きていくにはどうするか」 をメインテーマに楽しく元気の出るライティングを志す。天狼院公認ライター。
メディア出演:スマステーション(2015年),スーパーJチャンネル, BBCラジオ(2016年)におっさんレンタルメンバー
として出演

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜


2019-03-25 | Posted in レンタル人間図鑑

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