メディアグランプリ

 日記を書けば、豊かになれる⁈


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。


記事:伊東綾子(ライティング・ゼミ 11月コース)

 

「世界を見つめる解像度が高くなりますよ」。
慌ててメモをした講師の言葉。

この日、私は人気著者のオンラインのコラボイベントに参加していた。
『日記エッセイ』という言葉がもともとあるのか、あるいは著者が生み出した言葉なのかは分からないが、講師は自分が本を出版する前から書いていたエッセイをそう呼んでいる。自分の日々の学びや気付きと、読者にもささやかな気付きを届けられるような、自己啓発日記のようなものをコツコツ書いていたそうだ。

その日記エッセイを、プラットフォームnoteに毎日投稿し、それを月に一度まとめて電子書籍にして販売したところ、嬉しい副収入になったと話してくださった。

「書くことがない」。
イベント前の私は、そう思い込んでいた。同じような毎日の繰り返しで、私の日常にはドラマチックな事件が起きない。だから特に書くことなんてない。やっと絞り出して書いても、せいぜい四百字程度の短い文章になってしまう。
おしゃべりな人は、どうしてあんなにも次々と言葉が出てくるのだろうか。 不思議で仕方がなかった。

しかし、「世界を見つめる解像度が高くなる」という一言を聞いたとき、今まで耳には入っていたけれどイマイチ腑に落ちていなかった点と点が、線で結ばれていく感覚があった。

一つの点は、私は常にせかせかと余裕がなく、視野が狭いこと。
母からはよく
「気がつかないの?」
と、驚かれるような、呆れられるような口調で言われている。
実家は、母が丁寧に手入れをしている自慢の庭を抜けて玄関に入る造りになっている。
「あの花、よく咲いているでしょ」
と言われても、私にはまったく見えていない。いや、正確には視界には入っているけれど、講師の言葉を借りると、解像度が荒いのだろう。ぼんやりとみている。

食事のときも同じ。お腹を満たすためだけの時間になってしまっていることが多い。ひどいときには、次の予定の時間に追われて、ほとんど噛まずに飲み込んでいる。歯ごたえも香りも、まったく味わえていない。

例えば同じ駅までの道を歩いていても、足元に咲く小さな花や、どこからか聞こえる鳥の鳴き声、頬をかすめる風の冷たさ、早朝の街の匂いを感じている人と、私のようにただの「移動」という動作になっている人とでは、同じ15分でも、時間の深さがまるで違うのだろう。
食事も同じく、味や食感をしっかりと味わって食べる人と、事務的に胃に放り込んでしまう人とでは、心の豊かさが変わってくる。
そして、そうやって味わっていない人に限って、「お金が欲しい、幸せになりたい、満たされたい」と欲しがるのかもしれない。

そのことは、二つ目の点からも分かってきた。
私は『引き寄せの法則 エイブラハムとの対話』や、ナポレオン・ヒルの『悪魔を出し抜け』といった成功哲学の本を好んで読むのだが、最近になって、この二冊の本に共通しているメッセージに気づいた。それは、「自然に目を向ける」ということ。

外に出れば、可愛らしい花がいくらでも咲いている。季節を感じ、香りを感じることができる。そこにあるものに意識を向けさえすれば、世界は愛おしいく、素晴らしいもので溢れている。けれど、毎瞬起きているその素晴らしさに気付けなければ、お金を手にしても、着飾っても、高級な食事を食べても、満たされることはないと伝えているのだとようやく腑に落ちた。

この二つの点が線でつながったとき、「世界を見つめる解像度を上げる」とは、私にとっては「感じる心」を取り戻すことなのではないかと分かった。

講師は、「何かを感じた時に、どうして自分はそう感じたのかをどんどん深掘りして書いていくのです」と話されていた。

カメラのピントを合わせるように、今ここに意識を合わせていくことなのか。『日記エッセイ』を毎日書くと決めたら、いろいろなものに目を向けて、物事を丁寧に味わっていくようになりそうだ。

ちょうどその夜は、綺麗で大きな満月だった。最寄り駅から自転車で家に向かう途中、ふと顔を上げたら、真ん丸な月が視界に飛び込んできた。私は思わずペダルを止め、前カゴのバッグからスマホを取り出し、友人に「月が綺麗だよ」とだけメッセージを送った。

自然は人間の気分に関係なくいつもそこにあったのだなと改めて思えた。月を見て綺麗だと感じる心があると、それだけで豊かな気持ちになれる。

『日記エッセイを書く』というのは、そうした日常の一瞬一瞬を、言葉に収めていく行為なのだろう。
書くほどの出来事が起きないから書けないのではなく、ただピントを合わせていなかっただけ。世界を見つめる解像度を上げて1日を濃く、豊かな24時間にしたい。

《終わり》

 

 

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