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人生を変える割烹

さんにんめ 完璧すぎてスキがないオンナ、サトミ《小説連載「人生を変える割烹」》


記事:ギール里映(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 

「安井先生、今度の渋谷での街頭演説は、こちらの紺の、シングルのスーツにしましょう。もう一つお持ちのダブルものよりもこちらのほうが若々しい印象になるので、渋谷では反応がよろしいかと思います」
 
そういってサトミは、テキパキと取り置きしてあるスーツやネクタイを安井の前に並べて、一つずつ説明していった。
 
「ネクタイですが、レジメンタルストライプのこちらがお似合いだと思います。街頭演説のときは、聴衆の方たちが演説を聴かれて、安井先生の高感度をアップさせることが必要です。そのときにこのブルーのタイはちょうどいいと思います。お試しになりますか」
 
「うん、ありがとう。サトミさんが言うなら間違いないだろう。それを頂くよ」
 
さすが政治家である。決めるのに時間はかからない。
 
サトミの仕事はイメージコンサルタントだ。政治家や海外の要人、上場企業の経営者などをクライアントにもち、彼らの外見を作り上げていくことで政治やビジネスの成果をあげさせ、望む未来に導く仕事だ。
 
ファッション・スタイリストやコーディネーターたちとの明確な違いは、サトミの仕事はファッションだけにとどまらないということだ。着るもの、身につけるものをただ「かっこいいから」という理由で選ぶのではなく、身につける人がどんな存在となり、どんなふうに人から見られたいのか、またそこからどんな世界を作っていきたいのか、その世界観からイメージ全体を作り上げて魅せる、ブランディング・プロデューサーとも言える仕事である。サトミのプロデュースを受けて選挙に勝った政治家や会社の年商を大幅に増やすことのできた経営者、自身のポジションを獲得してブレイクした芸能人の数は3000人以上にのぼる。
 
ただ、サトミは、そのことを全く公にしていない。ホームページもなければSNSで発信もしていない。ただ純粋な口コミだけで、サトミのプロデュースを受けたい人たちが、キャンセル枠が空くのを狙っている。
 
「あ、安井先生、スタッフの方の靴と靴下も、ご用意しておきました。そしてこちらは……」
 
選挙で勝つためには、政治家の先生一人をプロデュースするだけでは無理だ。選挙に関わるチーム全体、選挙カーの運転手はもちろん、秘書や周りのスタッフすべてに関して、少しの“ノイズ”も出ないように作り上げなければならない。洋服やヘアメイクはもちろん、ペンやノート、カバンのような持ち物に至るまで、完璧に魅せるサトミの手腕は見事だ。サトミに任せておけば、次の選挙も間違いなく当選するだろう。

 

 

 

政治家安井のコンサルティングを終えて家に帰ったサトミは、ノートパソコンを開いてさっそく全ての記録をつけ始めた。いつ、どこでどんな提案をしたのか、どこのブランドの何を買ったのか、サイズや価格はいくらか、といったアイテムの情報はもちろんのこと、クライアントの反応はどうか、会話の内容、そこから受けた印象を、細かく全て記録していく。
 
全てのクライントに対して全ての記録を、一糸漏らさずつけることにしている。この記録を見たら、誰でもサトミと同じ仕事ができてしまうぐらいまで、完璧なノートを作成する。これがサトミのやり方だ。
 
サトミは、ノイズがキライだった。
 
ノイズ、とは、必要のない情報のことである。
 
人はそもそも、ものすごい量の情報を知らない間に発信している。
何気ない髪の毛のハネやほんの少し曲がっているアイブロウの形、手に持っている何気ないエコバッグの色形、履いている靴のちょっとした傷など、なにか、ほんの少しのことが、ほんの少しだけ突出しているだけで、それが余計なノイズとなり、全体のイメージに影響してしまうのだ。それをサトミは一番嫌っている。
 
サトミには以前付き合っていた彼がいたが、首のほくろから1本、毛が生えているのを見つけてしまってから幻滅して別れた。
たかが毛の一本とも思うが、それが気になって仕方ないのである。
 
そういったノイズを消していくためには、膨大な気配りや目配り、準備が必要で、それらを全部記録するのがサトミのやり方だ。仕事には再現性を求めている。記録することで確実に次の仕事がやりやすくなる。そしてノイズを消そうとすればするほど、記録しなくてはならない情報が増えていくのだ。
 
カチャカチャとパソコンのキーを打ち込みながら、今日のクライアント安井議員への提案内容を逐一思い出していた。
ふと見やると、テーブルの上に置いてある花瓶の向きが気になった。さっと手を伸ばし、5ミリほど右側に動かして、またパソコンに集中する。
 
ほんのちょっとの、些細なことが、どうしても気になってしまう。
これはサトミの職業柄、仕方がないことだった。
 
「にゃーん」
 
サトミの足元に、猫のパルフェが巻き付いてきた。
一日ほうっておかれたのでさすがに寂しいのか、それともただお腹が空いたのかはわからないが、一人暮らしの家で自分にご飯をくれる人はサトミしかいないわけで、「ちょっと、ご飯なんだけど」とでも言いたげにすりよってきた。
 
「パルフェ、ごめんね、おまたせ。さあご飯にしようか」
 
サトミは今日の記録をすべて打ち終わると、組んでいた脚を解いてすっと立ち上がり、キッチンにむかった。

 

 

 

「おまたせしました、川村サトミ様。こちらへどうぞ」
 
受付の女性は、サトミを奥の個室に案内した。
そこにはサトミの投資担当コンサルタント、ヤマオカが待っていた。
 
「サトミさん、ご無沙汰です。今日はどのようなご相談ですか」
 
「はい、ヤマオカさん、いつもありがとうございます。
実は、持っている投資信託を売却したいのですが……」
 
「ほほう、それはなぜですか? いまとてもいい感じで成長しているので、売却は必要ないかと思われますが」
 
サトミは複数の投資信託を運用しており、その管理と運用をヤマオカに依頼している。今年になって、イギリスがEUから離脱するというニュースを受けて、サトミが持っている投資信託に影響が出るかもしれないと気になり、サトミはヤマオカに会いに来たのだ。
 
「大丈夫ですよ、お持ちの投資信託は、イギリスのEU離脱では影響を受けるものではないですから。その理由は……」
 
ヤマオカは丁寧に状況を説明しはじめた。
サトミのようなクライアントは、生半可な説明では納得しない。そのためヤマオカは自分のありったけの知識と情報を駆使して、その投資信託の安全性と将来性について、もれなく説明できるように準備していたのだ。
 
そのおかげでサトミは納得し、ひとまず売却はしないことにして銀行を後にした。
 
しかしヤマオカは知っていた。またもう2,3ヶ月したらサトミが訪ねてくることを。サトミは気になることがあったらとことんまで追求してくる。それもかなり勉強してくるので、プロのヤマオカでもタジタジすることがある。
 
サトミの仕事がイメージコンサルタントだとはきいてはいるが、一体どんな仕事なのかは想像もつかない。彼女のあの我の強さと、小さなことにまで気がつく所は、ちょっと普通の女性では考えられない。きっと厳しく鍛えられる環境での仕事なのだろうと、ヤマオカは推測している。
 
それにしてもサトミには、全く生活感がなかった。
いつもビシッとメイクをし、服装は華美ではないけれど行き届いていて、シワひとつないものを着ている。コーディネートも黒のタイトスカートとカットソーというふうに、一見普通に見えるのだけど、どこにも隙がなく完璧なのだ。つまりノイズがないのだ。
 
「ヤマオカ課長、緊張しますよね、サトミさんが来ると」
テーブルのお茶のカップを片付けにきたアシスタントが、ヤマオカに話しかけた。
「そうだね、あの方は、なんだかどこか、近寄りがたいというか、なにか、完璧すぎるんだよね。そもそも美人だから、というのもあるけど」
 
別に笑顔がなくて愛想がないわけでもない。適度に笑顔で会話もするし、フレンドリーでないわけでもない。
だけどどこか、近寄りがたい。
 
さすがに妻帯者のヤマオカはサトミをお酒に誘うつもりはないが、妻がいようがいまいが、なぜか誘いづらい、声をかけづらい、そんな印象を与えている。
その掴みどころのなさが一体どこからくるのか、考えても思いつくものではなかった。
 
「不思議な、人だよね」

 

 

 

その夜のことである。
深夜2時を過ぎたころにヤマオカの携帯電話がなった。こんな時間になんだろうと飛び起きてでたら、電話の向こうにはサトミがいた。
 
「すみません、ヤマオカさん、こんな時間に。だけど頼れる人がいないので、ごめんなさい、ちょっと話せます?」
 
「ああ、びっくりしました、どうしたんです? 僕でよかったら、話してください」
 
ヤマオカの隣では妻がいびきをかいて寝ている。
 
「急に息ができなくなって、救急車を呼ぼうかとも思ったんですが、それも怖くなって、それでどうしていいかわからなくて……」
 
電話の向こうのサトミの声は、いつものハリのある落ち着いた声ではなく、なんだか不安げで、うろたえているようにも聞こえた。なんだか不穏なものを感じて不安になったヤマオカは、
 
「だ、大丈夫ですか? 今お一人なんですか? すぐにそちらに行きますから、落ち着いてください」
 
そう言って家を飛び出し、タクシーでサトミの家に向かった。
彼女の住所は個人情報だが顧客情報として知っている。タクシーで10分もかからない場所にある高層マンションに住んでいることは分かっているのだ。
 
本来はただの銀行マンであるヤマオカがそこまでする義理も義務もなかったのだが、いつもとは違うサオリの様子と、彼女のことをもっと知りたいと思う好奇心が働いたことは、妻には内緒にしておこう。

 

 

 

ピンポン
 
マンションについて、34階にある彼女の部屋にあがると、サトミは青い顔をしてリビングに座っていた。
初めて訪れたサトミの自宅は、チリ一つおちておらず、ビシッと掃除が行き届いているばかりか、とにかくモノが、ほとんどない。生活感がまったくないのだ。
 
猫のパルフェが心配そうにちょこんとソファに座っている。
猫がいるなら少しは家の中も汚れていそうだが、とにかく美しく整理整頓された部屋で、本当にここで暮らしているのかと不思議に思うぐらいだ。
 
「サトミさん、大丈夫ですか。ヤマオカです」
 
「ごめんなさい、こんな時間に、まさか来て下さるなんて」
そう言って立ち上がろうとしたサトミは、そのままスルスルと床に崩れ落ちた。驚いたヤマオカは彼女のもとに近寄った。
 
真っ青なサトミの額からは、脂汗が流れている。
とにかくなにか、どこか具合が悪そうなのである。
ヤマオカはキッチンに向かい、ひとまず水でもくんで飲ませようと思った。
 
コップを探そうとキッチンのキャビネットをあけたら、そこに並んでいたものにヤマオカは凍りついた。
 
天井まで届く棚の中には、完全栄養食とパッケージに書かれたプロテインドリンクがおいてあった。しかも棚の上から下までびっしりと並んでいたのである。
もしかしたら彼女は、これだけを食べて生きているのだろうか?
 
完璧なサトミは、完璧な栄養を摂りたいと思っていたのだ。
 
ヤマオカはとにかく水をくんでサトミに手渡して飲ませた。
そしてサトミを抱えてベッドに運ぶと、サトミが眠りにつくまで横で見守りつづけた。

 

 

 

「サトミさん。もしよかったら、ここに行ってみませんか」
翌日仕事が終わってから、ヤマオカはサトミのところを訪ねた。
昨晩のことが気になり、なんだか落ち着かない一日を過ごしていたのだ。
 
ヤマオカの手には、あの手ぬぐいがあった。
京都は先斗町の女将から頂戴した、あの手ぬぐいだ。
 
紹介したい人に渡してほしいと言われながらも何となくその機会を失い、ほぼ忘れてしまっていたのだが、昨夜のサトミの様子に居ても立ってもいられず、渡そうと決めた。
 
「サトミさん、実はね、僕は5年前には、破産しかけて大変だったんです。今ではそんなこと全く信じられないぐらいになったんですが、当時僕は……」
 
ヤマオカは自分が経験したことや、先斗町の女将のことを順序立てて話していった。言う相手を間違うと、こっちがおかしいと思われかねないデリケートな内容なので、言葉を慎重に選びながら丁寧に話した。
 
真剣な目で聞いていたサトミは手ぬぐいを受け取ると、その視線をまるでヤマオカのココロの向こうを探っているかのように、じっとヤマオカの目の奥に合わせた。
 
「そんなにおっしゃるなら、一度行ってみます」
 
ヤマオカが冗談を言っているわけではないと確信したのか、またいつものハリのある声でサトミは返事をした。

 

 

 

数日後サトミは、京都に向かった。
 
「こんばんは、おいでやす。今日はようこそいらっしゃいました」
 
昼間はまだじっとりと暑い初秋の京都は、いよいよ観光シーズンがはじまる。少し過ごしやすくなる時期を待って京の味覚を味わいに来る観光客は、日本国内のみならず海外からも多い。この季節の京都の街を、女性がレンタルの浴衣を着て歩いているのに違和感を感じるのは、生粋の京都人とサトミぐらいだろう。
 
サトミは、洋服のコンサルティングには定評があるが、和装に関してはそこまで詳しくはない。基本的な季節やTPOは知っているものの、和装のイメージコンサルティングは専門外なので仕事としては受けていないのだ。
 
しかし女将の着物が只者ではないことはすぐにわかった。
一見シンプルな単衣の着物に見えていた女将の着物は、襦袢に半襟と色違いの蝶々の模様が施してあり、歩くたびにチラチラと見える裾がなんとも色っぽい。こういう遊んだ着方をするのはさすがプロだな、とサトミは一発で見抜いた。
 
「今日はちょっと早いですけど、良い松茸が手に入ったんで、早速楽しんでいただきますね。昔は京都の丹波の松茸が一番いいって言われてましたけど、最近はそうでもなくて。松茸はお好きどすか」
 
「ええ、まあ。普段に食べるものではないので、今日は久しぶりに頂きます」
 
サトミが最後に「ちゃんとした食事」をしたのはいつだっただろう。
松茸が久しぶりどころか、食事らしい食事をしたのは、もう随分前のことである。
  
まだ駆け出しのころ、全く仕事がなかったときに、どうしたら成功するかがわからなくて、とにかくできることを手当り次第全部やってきた。
選挙のキャンペーンの仕事をとるとかなりまとまった収入になる、と先輩コンサルに教えてもらったことがきっかけで、霞が関界隈に出入りするようになり、体当たりで仕事をもぎとってきた。
 
母一人子一人の貧しい母子家庭で育ったサトミは、実績もなにもないどころか、失うものもなにもない。自分が自分の脚で立てるようになりたい、あの極貧の暮らしから抜け出したい、ただその一心でサトミは脇目もふらずに仕事に打ち込んできた。
 
そうしてあまりの忙しさに、食べることが面倒くさくなった。
 
誰よりも仕事をするため、最初は外食で済ませていたのが、そのうち食べる時間自体がもったいないと思うようになり、1日1食になった。
さすがに食べないとお腹が空くので、栄養ドリンクやコンビニの食事で済ますことが増えた。
 
しかしそうすると却って仕事のパフォーマンスが落ちはじめた。
集中力がなくなり、仕事のミスが増えた。
イライラすることが多くなり、人に当たるようになった。
 
イメージコンサルティングの仕事は、流行や時勢を勉強しておくことも大事だが、何よりも感覚、感性の仕事だ。これはイケる、という直感力がないと到底務まらないし、サトミの動物的感というか、並外れた直感力のおかげで、これまで3000人を成功へ導いてきたのだ。
 
しかし、食べるものをろくに食べないでいると、その感性が明らかに失われてしまうのだ。食べる時間がもったいない、しかし食べないと仕事にならない、そのジレンマに苛まれているときに出会ったのが、あのプロテインドリンクだった。
 
1日3杯! これだけで必要な栄養素を全て摂ることができます。
 
そのコピーに惹かれて飲み始めてみたら、案外悪くなかった。
しかも、食べることを考えることすら、しなくてよくなった。
時間が来たら決められたものを、決められた量飲むだけでいい。案外腹持ちもいいので空腹感もない。そもそも1日1食を続けていたせいか、空腹感がどんなものかも忘れてしまった。
 
メニューも考えなくていい、作らなくていい、食べる時間もかからない、洗い物もない、だけど完全な栄養が摂れる。これはサトミにとって、まさに完全無敵、完璧な栄養食となった。
 
「鱧と松茸のお吸い物どす。これは今の季節だけ食べられるもんで、京都では出会いもん、っちゅうて、名残の鱧と走りの松茸っちゅうように、2つの季節のええとこどりをする食べ方を、ようするんどす」
 
あつあつの土瓶からは、松茸とすだちの香りがふわりと漂う。
小さなおちょこに少しずつ注いで、味と香りの両方を愉しむ。
 
ああ、美味しいな。
素直に、そう思った。
 
わたしは一体、何と戦ってきたんだろう。
 
あの貧乏な暮らしに戻りたくない、女だからと仕事で馬鹿にされるのはもう嫌だ、1時間いくらというような、安い時給の仕事はもうしたくない、私は私しかできないことで、絶対に成功してやる……。
お金も地位も、なんなら家族もいない女性が社会的な成功を収めることは、簡単ではない。
 
果たして私は、成功したのだろうか。
サトミはコロコロと楽しそうに話す女将と会話をしながら、これまで自分が大切にしてきた何かがさらさらと崩れていくのを感じていた。
 
「今日の松茸は、ブータンから来たんどす。めずらしいでしょ?
せやけど、最近は国内よりも、海外のほうが美味しい松茸が採れるっちゅうて。わてらも最初は半信半疑やったんどすけど、食べてみたらまあ、わかります」
 
女将は本当に松茸が好きなようで、独自の松茸論を楽しそうに話してくれた。
学生時代に訪れたバングラデッシュでブータンの松茸に出会ったこと、それからブータンの国王に掛け合って松茸を分けてもらったことなど、意外な女将の一面に面食らいながらも、ざっくばらんな女将との会話に、サトミのココロはますますほぐれていった。

 

 

 

東京のマンションに戻ると、猫のパルフェが足元にまとわりついてきた。
さすがに一晩マンションを空けることはこれまでになかったので、パルフェも不安になったのだろう。飼い主の顔を見るなりぐるぐると喉を鳴らしながら、全力でお腹が空いたとアピールしてきた。
 
「パルフェ、ただいま。いい子にしてた? すぐにご飯にしようね」
 
そう言ってサトミはキッチンの棚をあけて、猫用のカリカリを取り出しお皿にいれた。
そして、その横にあるプロテインドリンクを手に取ると、飲もうかどうかと一瞬躊躇して、
 
「サトミさん。プロテインドリンクでは、お仕事のパフォーマンスが上がりません。こちらのほうがお似合いだと思います」
 
そう茶目っ気たっぷりに独り言をいいながら、手にとったドリンクをゴミ箱に放り投げ、数年ぶりに鍋を取り出しお湯を沸かし始めた。
 
パスタぐらい、作るか。

 
 
<<第4話に続く>>

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女将のお懐紙レシピ
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サトミが朗らかさを取り戻した!
究極のお吸い物、松茸とはもの土瓶蒸しと
ポルチーニ茸のパスタ、アジア風
 

究極のお吸い物、松茸とはもの土瓶蒸し
(材料)一人分
一番出汁 200cc
まつたけ 小1本
はも 2切れ
薄口醤油 小さじ1/2~
すだち 1/2個
 
(作り方)
1 昆布とカツオで出汁をひく。
2 松茸はキッチンペーパーなどで丁寧に土を落とす。水で洗うと風味を失うので注意。
3 はもは骨切りをして、一口大に切っておく。
4 出汁にはも、松茸を入れて温める。この時、沸騰させないように気をつける。
5 出汁が温まりはもに火がとおったら、薄口醤油少々で味をととのえる。
6 食べるときにすだちをぎゅっと絞る。
 
ポルチーニ茸のパスタ、アジア風
(材料)一人分
スパゲティ 80g
ポルチーニ(ドライタイプ)ひとつかみ
オリーブオイル 大さじ1
塩 少々
醤油 少々
八角 1こ
五香粉 ひとつまみ
パルミジャーノ・レッジャーノ お好みで
 
(作り方)
1 たっぷりのお湯を沸かして、そこにお湯の1%の塩(分量外)を入れ、スパゲティを茹でる。
2 ポルチーニ茸はぬるま湯で戻しておく。戻した水はとっておく。
もどったら一口大に切る。
3 オリーブオイルをフライパンで温め、そこに八角、五香粉を入れて香りを立たせる。
4 そこに茹でたパスタを入れ、パスタにポルチーニを絡めていく。ここで戻した水を大さじ1ほど入れて、フライパンを揺すりながら乳化させる。
5 塩少々、醤油少々を入れて風味をつける。
6 お皿に盛り付けたら仕上げにすりおろしたパルミジャーノ・レッジャーノを振りかけてできあがり。

*この物語はフィクションであり、登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
*レシピの効果には個人差があり、効果・効用を保証するものではありません。

 
 

◻︎ライタープロフィール
ギール里映(READING LIFE編集部公認ライター)

食べかた研究家。京都の老舗料亭3代目として生まれ、現在は東京でイギリス人の夫、息子と3人ぐらし。食べることが好き、が仕事になり、現職は食べるトレーニングキッズアカデミー協会の代表を勤める。2019年には書籍「1日5分!子どもの能力を引き出す!最強の食事」、「子どもの才能を引き出す!2ステップレシピ」を出版。

 
 
 
 

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2019-10-14 | Posted in 人生を変える割烹

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