こじらせ女子図鑑《Prologue》~この世に「こじらせ女子」はどれくらい生息しているのだろうか?~
2023/05/30/公開
記事:川端彩香(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
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「好きがわからないんだよねー」と私にぼやいてきたのは、いつも担当してくれている1歳年上の女性美容師さんだった。
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どうも、好きだった人に1年くらい猛烈にアピールをしており、半年前くらいにやっと向こうが振り向いてくれてアプローチをしてきてくれたのだが、途端に冷めてしまったらしい。なんなら気持ち悪いと思ってしまったらしい。原因は不明だとか。これを最近の子たちは「蛙化現象」と呼ぶらしい。
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蛙化現象とは、まさしくこの美容師さんが体験したのと同じ現象で、好きな相手が自分に振り向いてくれた瞬間に冷めてしまったり、気持ち悪いと思ってしまう現象のことだそうだ。私は経験したことがないのでその現象が謎で仕方ないのだが、単に冷めてしまうだけじゃなくて「気持ち悪い」と生理的にも無理になってしまうところが、聞いていて非常に恐ろしいなぁと思う。私の場合、生理的に無理な人は最初から無理なので、その上好意を寄せていた人=生理的に大丈夫な人であったはずなのに、なぜそうなってしまうのかが本当に謎である。
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ちなみにこの蛙化現象は「カエルの王様」というグリム童話がもとになっているそうな。
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さて堂々と宣言することではないが、私は立派なこじらせ女子である。
32歳を目前として、自分のことをいつまで「女子」と言っていいものか悩ましくはあるが、ここは一旦「女子」で進めさせてほしい。
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蛙化現象は経験したことないが、自分に好意が寄せられた際、それが自分が好意を寄せている相手であっても「この人、私のことを可愛いだなんて、正気か……!?」だとか、大して面白くない私の話をニコニコ聞かれた時には「え……何がそんなに面白いの……? そんなウケる話してなくない……?」と相手の情緒が少し心配になる。それこそ森見登美彦氏の『夜は短し歩けよ乙女』の黒髪の乙女も「私の顔より炊飯器の方が面白みがある」と言っていた。もっと言ってしまえば、元彼には大変失礼だと重々承知だが、私に性欲が湧くのもいつも不思議だなぁと思っていた。自己肯定感の低さも、私のこじらせ具合を強固なものにしてしまったという自覚もある。
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冒頭の美容師さんに話は戻る。
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「なんか、私はもう、好きがわからなくなった。好きだった人を気持ち悪いとまで思ってしまうようになったら、わからなくなった。好きってなんなの? どうなったら好きなの?」
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私の持論であるが、「好きってなんなの?」というワードが出てしまった時点で、こじらせ女子確定なのである。私は心の中で、美容師さんを「こじらせ女子」に認定した。
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「なんかね、トキメキがないのよね。もうこの歳になってトキメキ求めるのって無理なの!?」と言われた私は「トキメキはもう諦めましょう」と伝えた。トキメキはもう、少女漫画の世界にお任せしましょうよ、と思うのである。
トキメキやキュンは人によって違うものだが、だいたいの人はドSとまではいかなくても多少肉食系の人にドキッとするのではないのかなと思う。壁ドンや顎クイはベタ少女漫画すぎて仮にされても笑ってしまいそうになるが、歩いていて急に手を繋がれたりだとか、急に押し倒されたりだとか、さっきまで普通に喋っていたのに急に真面目な顔されたりだとか(こう書いてみると私は「急に」何かされるのにキュンとくるらしい)、普段は草食系の人でもふいに見せる肉食系な一面(つまりロールキャベツ男子)(死語か?)にキュンとくる人が多いのではないだろうか。
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それはそれでいいと思う。思うのだが、32歳を目前にした私は、結婚を前提にしたお相手を探している。そうなると求めるものは「トキメキ」や「キュン」よりも、一緒にいて安心するだとか、居心地が良いだとか、なんかほっこりするような人だなと思うのだ。流行ったドラマで例えるならば、silentの湊くんのような人。逆にトキメキとかキュンをくれるような人は佐倉くんなのだと思う。私は湊くんみたいな人を求めているのだ。故に、トキメキやキュンは極端に言ってしまうと諦めているのだ。
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これはあくまで私の主観というか考えであり、というか今連絡を取っている人がどちらかと言うと湊くんタイプの人であるから大いに影響されている可能性はあるが、結婚願望がなくて「やっぱりトキメキが欲しい!」という人もいるだろうし、結婚願望があってもそう思う人もいると思うので、そういう人たちを否定するつもりは一切ない。
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「私、こじらせてるのかなー……」とこじらせ女子の私に聞いてくるので、「ええ、こじらせてますよ」と、心に留めていたこじらせ認定を、声に出してしてあげた。
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そして思ったのだ。
私は自分で自分のことをこじらせていると思っているし、美容師さんも「私こじらせているのかな?」と心のどこかで思っていて、私が認定してあげることによって、見事、正真正銘のこじらせ女子になった(何様)。果たして、この世にこじらせ女子はどれくらいいるのだろうか? そして、こじらせタイプもきっと様々あって、私のようなこじらせ女子もいれば、美容師さんのようなこじらせ女子もいて、全員異なるはずだ。他のこじらせ女子たちは、どんなタイプのこじらせ女子たちがいるのだろうか? 私や美容師さんのような独身こじらせもいれば、きっと既婚こじらせもいるはずだ。みんな、何がきっかけでこじらせ女子になってしまったのだろうか?
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気になる。すごく気になる。
話を聞きたい。すごく面白そうな気がする。.
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そんな思いで、この『こじらせ女子図鑑』は企画した。
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人の数だけ、いろんなこじらせタイプがいるはずだ。
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共感できるこじらせ、割と重めなこじらせ、申し訳ないが笑ってしまうようなこじらせ。まるで人間観察をするように、いろんなタイプのこじらせ女子を、図鑑のようにファイリングしていく。
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取材対象のこじらせ女子には「こじらせ経歴書」を記入してもらう。これは病院でいうカルテのようなもので、この経歴書をもとに、こじらせ女子本人と「こじらせ」について深掘りしていきたい。なお、プライバシー保護の観点から、こじらせ女子及び経歴書内に登場する人物はすべて仮名で記載する。
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我こそは! という、こじらせ女子の皆様は、ぜひ応募条件を確認の上、下記フォームよりご応募ください。
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■応募条件
・対面、オンラインでの取材が可能な方(日時は応相談)
・「こじらせてるね」と他人に言われたことのある方、または似たような言葉を言われたことのある方※題名に「『こじらせ女子図鑑』取材希望」と記載ください。
順次、折り返しのご連絡を差し上げます。
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《次話へつづく》
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□ライタープロフィール
川端彩香(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
兵庫県生まれ。大阪府在住。
大阪府内のメーカーで営業職として働く会社員。コロナ禍で当時付き合っていた彼氏に振られ、見返すために自分磨きを開始し、その一環で2021年10月開講の天狼院書店のライティング・ゼミに参加。2022年1月からライターズ倶楽部に参加。文章を書く楽しさを知り、振られた頃には想像もしていなかった方向に進もうとしている。
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