第11章 ママ起業のお金事情〜私なんてを手放そう《ママ起業のリアル》
記事:ギール 里映(READING LIFE編集部公認ライター)
個人起業家の登竜門の一つになっているような、そんな目標数値があります。それが月商7桁を達成するということ。7桁、ゼロが6つ、つまり100万円以上を1ヶ月に売り上げることです。私が在籍していた起業塾でも、7桁を達成すると更新費用が無料になるとされていて、この7桁という数字が何かのメルクマールのように自分のなかにインプットされ、それがとにかく第一目標のようになっていたのが起業初期の半年間でした。
果たして私は、月商7桁を達成できたのでしょうか。
答えは、イエスです。
起業塾に参加してから8ヶ月目にして、ようやくこの数字を見ることができました。簡単だった、とはもちろんいいませんが、私が達成できたのですから、他の人にも必ずできると思います。しかし現実には起業を志しても、7桁どころか売り上げを全くあげることができず、起業を諦めていく人があとを経ちません。
果たして売り上げをあげるのは、そんなに難しいことなのでしょうか。
今日は起業とはきっても切れないお金の問題について、私の経験から感じたことをお伝えしていきます。
「お金がない」と断られる場合
お客様に商品を勧めても、「お金がありません」とお断りされるケースはよくあることです。買っていただくためにはお金が必要ですから、お金がなければビジネスは成立しない、というのは当たり前のことです。
しかし、このとき本当にお金がないのかどうかは別です。
私たちは往々にして、買わない理由を「お金」のせいにすることがあります。
例えば何か買いに行ったとします。女子らしく「カバン」ということにしましょう。予算は5万円、これで日常に使うお仕事用のカバンを買いにいったとしましょう。
まずはお店を探します。予算が5万円ですから、何十万円もするような高級品が置かれているところには、まず行きませんよね。自分の予算内で買えそうなところを探していくと思うのです。
そしてお店を何軒かに絞り、それらを1軒ずつ見ていきます。そして最終的に候補に上がったのは、次の3つのカバンでした。
カバン1
シンプルで機能的、すっきりしたデザインで使い良さそうなカバン。金額も48000円と、予算内で治ります。
カバン2
特価セール品でなんと、12000円!一つ前のシーズンの売れ残ったもので、デザイン的には今一つだけど、それにしても安い。お買い得品です。
カバン3
デザインはシンプルだけど、持ち手に2色の皮を使って美しい仕上がり。中のポケットなどもこだわっており、いかにも使いやすそうなデザイン。他の人があまり持っていなさそうな形で、人目を引くこと間違いなし。こちら、70000円と予算はオーバーしています。
こんな選択肢があったときに、人は一体何番を選ぶのでしょう。
機能重視ならば間違いなく1番でしょう。
また予算重視ならば間違いなく2番でしょう。
しかし実際には、3番を選ぶ人というのが、世の中には少なからず存在します。
3番を選ぶ人は、予算を5万円と設定していたものの、決して本当にお金がなかったわけではありません。その証拠に、少し予算をオーバーしてても支払うことができるのです。問題は、お金のある、なしではありません。
この人が3番を買ったのは、カバンにカバン以上の価値を見出したからです。鞄のちょっとしたこだわりや世界観に共感し、それを自分のものにしたいと思ったから、少し値段がオーバーしても購入しました。そのカバンを持った時の自分の未来の姿を想像し、そこにワクワクしたから、えいや! とお金を支払ったのです。
つまり、お金がある、ないだけで人は買うものを選ばない、ということです。
不思議に聞こえるかもしれませんが、人がものを買う心理には、お金以上の価値の重要性があるのです。
ただ、お金が重要ではないと言っているのではありません。
例えば、2つ全く同じものがあって、それらが違う金額で販売されていれば、そりゃ安い方がいいに決まっています。誰でも自分のお財布を開くのはあまり気の進む行為ではないですから、同じクオリティのものなら出費は少ない方がいいに決まっている。
しかし私たちが何か、消耗品や必需品以外のものを購入するときには、私たちは価格で買うのではありません。そこに伴う価値に対して、お金を支払いたいかどうかを決めるのです。価値を感じさえすれば、予算オーバーしてでも欲しい、と思うのが人の心です。
つまりお客様の「お金がない」は、本当にお金がないのではありません。
提供している商品に対してお金を支払いたいと思わない、というのが本音なのです。そこを勘違いして「お客様はお金がないんだ」と思い込んでしまうと、どんなものも売れなくなってしまいます。
「高い」と言われてしまう
自分の商品を気に入ってくれている様子で、いよいよクロージングとなった瞬間に「高いです」と言われてしまうことはないですか。
昔は私も、よくありました。
自然食品店を経営しているときには、小松菜が一束300円ぐらいしましたし、野菜を始めその他取り扱っている食品全般に、自然食品、有機食材でしたから、もちろん普通のスーパーで販売しているものより金額ははります。それを露骨に「高いなあ」と言って投げ捨てるお客様も、少なくはありませんでした。
その都度、スーパーに売っているものとはモノが違うから当然じゃないか、と胸のうちでは思いながらも、それをそのままお客様にぶつけるわけにもいかず、にこにこと笑いながら「そうですね、少ししますよね、普通に売られているものと比べると」と対応するしかありませんでした。自然食品店オーナーとしてもまだひよっこだった私は、そういうお客様に納得していただけるような伝えかたを、この時まだ知りませんでした。
そこから講座を販売するようになっても同じです。
最後には高い、と言われて、それまで乗り気だったお客様は一気に引いてしまう。
決して商品のことを気に入っていないわけではない。むしろかなり乗り気に見える。なのに最後の金額で「高い」と言われて終わりになる。この原因は一体どこにあるのでしょう。
答えは、「自分がそもそも高いと思っている」です。
自分で販売している商品のことを、自分が「高い」と思っているから、お客様もそう思う人が集まってきています。果たして自分が販売している商品は、本当に高いのでしょうか。
人によっては、3000円のセミナーを販売するのを高いと感じます。また人によっては、30万円の講座を販売するのを高いと感じます。しかし人によっては、1万円のセミナーを安いと感じ、100万円の講座をお買い得とすら思う人もいます。この差は一体何によって生まれるのでしょう。
もちろん、その人が得ている収入の差もあるでしょう。たくさん収入がある人が感じる高いと、少ししか収入がない人が感じる高いは、あきらかに違うでしょう。しかしこんな例もあります。
画廊勤務時代に感じたお金の価値の不思議
私は起業するまえ、現代美術画廊で仕事をしていました。絵画や写真、彫刻などの美術品を売買するのが仕事です。そういう仕事ですから、基本的にクライアントはお金がある人たちばかり。日本での長者番付に載るような顧客も、かなりの数いらっしゃいました。しかし彼らは、たとえ1万円の絵であっても、「高い」と言って買わないこともあれば、1億円の絵でも「安い」と言って買います。ここでもやはり先ほどのカバンの例のように、金額の多い少ないが高い安いを決めるわけではないことを表しています。そして金額の安い高いが購買の意思を最終決定する要素ではないことがわかります。
画廊で絵を販売しているとき、1メートル四方ぐらいの絵が数千万円することもありました。その金額だけを見ると「高い」となるかもしれませんが、販売している画廊は決してそれらを「高い」と思っていないのです。
市場でそれだけの価値があると認められて、その値段がついているのですから、その値段でむしろ当たり前だという感覚で販売しています。もしかしたら画廊によっては、同じ絵でも値段が数倍、数十倍に変わることがあります。良心的な画廊は仕入れ値と市場価格を踏まえて適正価格で絵を販売しますが、そうでない画廊もあります。タダ同然で仕入れてきた絵を数千万円の値段をつけて販売してしまう画廊もありますから、その絵そのものの価値で値段が決まるわけではありません。
値段の高い、安いを決めているのは、それを販売している人のあり方なんです。
自分が販売しているものにしっかりと価値があり、これを購入することで決して後悔させないという自信がある。だから金額が大きくても高いと思っていない。お客様を絶対に満足させるという自信がある。それをお客様も感じ取るから、高いと思わずに安心して、信頼して購入してくださるのです。
もし自分が販売しているものに自信がなかったら、そりゃ1円で販売していたとしても高く感じるでしょう。自分ごときが販売している、これっぽっちの価値しかない商品に、お客様がお金を出してくれるはずがない、と自分で思っているのでは、そりゃお客様はお金を出すはずがありません。絵や美術品という、リアルにモノがある商品でもそうなのですから、講座やコンテンツビジネスといった形のない商品を販売するなら、尚更です。
高いと感じられるのは自信がないことの表れ
自分の商品を高いと思っているのは、自分に自信がないということの表れです。自分の販売している商品に対して、またそれを販売している自分に対して、とにかく自信がないと感じている。自分にはこんな高いものを売る資格はないとまで思ってしまっている。このマインドを手放さない限り、売れる起業家にはなれないのです。
「お客様が買ってくださりさえすれば、自信が生まれるのに!」
と思うかもしれません。
しかし自信がないから売れない、売れないから自信がもてない。この堂々巡りを延々と繰り返し、何ヶ月も、ときには何年も苦しみ、諦めていく人が多いのです。
自分が支払った金額が、販売できる金額を決める?
では一体、どうすればいいのでしょう。
答えは、まずは自分がこれまでに購入したことがある、高額なものを思い出してみてください。家や車、と思う方もいらっしゃるでしょう。英会話教室や海外旅行と答える方もいらっしゃるでしょう。またカメラやカバン、アクセサリーという方もいらっしゃるでしょう。ものはなんでも構いません。これまでに買ったもので一番高かったものの金額を思い出してください。
その金額はいくらでしたか。
人は基本的に、自分が買ったことのある金額のものは販売できるという心理をもっています。もちろんなかには、自分が買ったこともない、何億円もする業務用機械や、私のように美術品といった高級品を販売することができるもいます。しかし一般には商売に慣れている人は多くはないわけで、販売経験がないからなかなか売れるマインドを手に入れることができません。女性でそれまで事務職しかしたことがなかったり、また専業主婦しかしたことがなかったら尚更です。それでは3000円のセミナーを販売するのも高いと感じるのは無理もありません。
しかし主婦でも事務職経験者でも必ず、人生のなかで何か一度や二度は、高額なものを購入する機会があるはずです。その時のことをちょっと思い出してみて欲しい。
高いものを購入するとき、「自分はこんな高いものには見合わない存在だ」とは思わなかったはずです。高いけど素敵だし、欲しいし、とワクワクしながら購入したはず。それはつまり自分には、その金額に見合う価値があると自分で認めたことになります。
であればその感覚を、今度は販売するほうに向ければいいだけ。
起業をして、自分の足で立つと決めたのであれば、自分なんて、という考えはすぐに手放してほしい。ついつい私たちは謙遜のつもりで、そんなたいしたことないんです、とか、私なんてたいしたことなくて、という言葉を使いがちです。
だけど起業するならそれらの言葉はとっとと手放したほうがいい。それらが邪魔をして、せっかくの魅力が全く輝いてこないからです。
私なんて、を手放した瞬間に売り上げは上がります。
もちろんそれまでに、商品を作り、売る場所を作り、お客様を作るという行動は必要ですが、それらを周到にやっていたとしても、私なんてという心があれば、最後のエンジンをかけることができません。私なんて、という車輪止めを取っ払った瞬間に、車はスムーズに走り出すというもの。
どうか思い切って、その車輪止めを、えいや!と取っ払ってみてほしい。
そして一度取り払って快適に走り出した車は、また元のように止まることはありません。そこからさらなる坂道、でこぼこ道に向けて、前に進んでいくだけですから。
《第12章に続く》
頑張るママのお助けレシピ
私なんて、を手放す海藻の炊き込みご飯
玄米 3カップ
水 玄米の1.2〜1.3倍具
ひじき(乾燥)10グラム
黒ごま 大さじ3
油揚げ 1枚
ごぼう 100グラム
にんじん 80グラム調味料
酒 大さじ1
醤油 大さじ1.5
昆布 葉書大1枚
塩 3つまみ<作り方>
1 玄米を洗って分量の水をセットし、浸水させる。浸水時間は1時間〜8時間の間でお好み。
2 ひじきはさっと水で洗う(浸水はしなくてよい)。油揚げは熱湯で油抜きをし、5ミリの短冊に切る。ごぼう、にんじんはささがきにする。
3 1に2と黒ごま、調味料を入れて炊飯器のスイッチオン。
4 あとは炊飯器に任せてできあがり。*ひじき、黒ごま、ゴボウは腎を強化する食材。自分に自信がつく腎の力を養います。
*炊き込みご飯とお味噌汁があるだけで食卓が完成します。
*玄米が苦手な子どもも、炊き込みご飯なら食べやすい。
*炊き込みご飯にする場合は先に玄米を浸水しておかないと、硬くなります。
❏ライタープロフィール
ギール 里映(READING LIFE 編集部公認ライター)
食べかた研究家。京都の老舗料亭3代目として生まれ、現在は東京でイギリス人の夫、息子と3人ぐらし。食べることが好き、が仕事になり、2015年にゼロから起業。現職は食べるトレーニングキッズアカデミー協会の代表を勤める。2019年には書籍「1日5分!子どもの能力を引き出す!最強の食事」、「子どもの才能を引き出す!2ステップレシピ」を出版。
この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いてます。 ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
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