ママ起業のリアル

第18章 ママが起業に向いている7つの理由〜本来子育てて忙しいはずのママたちがなせ起業? 《ママ起業のリアル》


2021/01/06/公開
記事:ギール 里映(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 
そもそも「ママ起業」という言葉が、ママが起業することが普通ではない、というかちょっと特殊である、という意味合いを含んでいるように思います。「女性起業」も同様、なぜなら男性が起業しても、男性起業家、パパ起業家とは言わないからです。またこれと似たような言葉に、女社長、美人社長と言われることもありますが、男社長、イケメン社長とはいいません。女性が社会で活躍している時は必ず、こういう社会的偏見の壁にぶち当たるのが、いまだ現状だと言わざるを得ないでしょう。まだまだ男性社会の日本で、女性の経営者や政治家は少数派です。
 
果たして起業する人たちの中で、男女比はどれぐらいなのでしょう。
 
経済産業省が提出した女性起業家等実態調査では、女性起業家は全体の約2割弱とされています。つまり、8割強が男性であるということです。また女性起業家のなかでも子育て世代のママとなると、また少し数字がかわります。女性の起業人口のなかで、30代半〜40代までが多いことを加味すると、いわゆる子育て世代のママたちが起業するというのは、その中でも起業しやすい年齢なのかもしれません。
 
女性は一般に男性と比べて起業人口も少ないし、またその中でも子育て中のママたちの場合、子育てに手がかかって起業どころではないと思われるかもしれませんが、実は彼女たちはものすごく起業に向いているのではないか、と思うようになりました。中小企業庁の中小企業白書によると、女性のなかで30代半〜40代が起業のコア層になっていることからも、既婚・未婚の区別、子どもがいる、いないの区別は少し脇においたとしても、その年代は女性が起業するにあたってちょうどよい年なのではないかと思います。
 
なぜ、子育て中の女性が起業に向いているのか、理由を一つずつ見ていきましょう。
 
 

結婚と出産という、人生の一大事をいったん終えているから


私の母親の世代、つまり1960年代に20代を経験している女性にとって、結婚して子どもをうみ、安定した一生をおくることが、ほぼ唯一の選択肢だったのではないかと思います。もちろんキャリアを積んだ女性も存在しましたが、まだ一部の限られた人だけ、大多数の女性にとって、人生の勝ち組は結婚して子どもを産むこと。それに比べると現代を生きる女性には、選択肢がたくさんあります。
 
仕事をして、バリバリとキャリアを積んで生きるのもよし、経済的に自立することも昔と比べて可能ですから、それこそ未婚で一生を謳歌してもいい。もちろんパートナーを見つけて結婚してもいいし、子どもを持っても、持たなくてもいい。まだまだ「結婚して子どもをもち、幸せな家庭を築くこと」が一般に望まれる社会ではありながらも、女性の生き方の選択肢は、ほんの数十年前と比べて、格段に増えているのです。
 
選択肢が多いというのは一見よいことのように思われますが、そうとは言い切れないこともあります。というのも、選択肢が多いと選択をしなくてはならないからです。女性の場合どうしても、歳をとればとるほど結婚はしづらくなるし、また子どもを産める年齢にも限りがあります。そのためどうしても、40歳ぐらいまでには、人生の道筋を決めておいたほうがいい。
 
つまり30〜40代のママたちというのは、その歳までに結婚・出産という大きなイベントを終えてしまっているのですから、それ以上人生の選択肢で迷うことがありません。キャリアや人生が不安ななかで、さらに不安定な起業という働き方に飛び込むのは、案外勇気がいるものです。しかしすでに結婚して子どもまでいるのであれば、人生の一大選択をしてしまっているあとですから、その後大きな選択を迫られることが格段に少なくなります。そのため、起業や趣味など、自分がしたいことに没頭することができる環境があります。
 
もちろん、子育てという大きな仕事がありますが、それはちょっとここでは脇においておきましょう。
 
 

子どものために、というモチベーションが生まれる


起業してそれを軌道にのせるためには、自分を鼓舞するモチベーションが必要になります。それも短期的なモチベーションではなく、できれば持続して、継続して自分の想いを動かしてくれるものでなければなりません。
 
その時、「我が子のため」と思うことによって、女性たちは大きな力を発揮することができます。
 
自分のため、と思うとあまり力がでないことでも、かわいい我が子のためであれば大抵のことができたり、がんばれたりするのが母親のすごいところ。子育てや教育のためにお金を稼ぎたい、でもいいですし、また子どもに尊敬される親でありたい、でもいい。どんな体裁でも、子どものためにと想い行動することで、自分一人でやるよりはるかに大きな力がでます。
 
母は強しといいますが、本当にその通りだなと思います。
 
 

脳科学的にも証明されている「母は強し」


女性は妊娠、出産をすると、実際に脳の構造がかわることがわかっています。*1この変化で女性は、子育てに必要な脳を獲得します。赤ちゃんが自分のことを必要としていることを認識する能力や、周囲から潜在的な脅威を感じる能力など、子どもを守り育てるために必要な力がつくと言われています。
 
この能力こそがまさに起業に向いている能力なのではないかと思います。
相手に欲するものを認識し、それを提供するために努力することができる力というのは、まさに起業するにあたって必要な力だと言えるからです。
 
目の前の方の悩みに思いを馳せ、それを解決するためにどんな努力でもするという姿勢は、起業において一番大事な能力だからです。
 
 

実はそもそも能力が高いママたち


妊娠出産で脳の構造が変わって能力が高まったという話をしましたが、実は子育て中のママたちのなかには、そもそも能力の高い人たちが多く存在します。
 
高学歴、ハイキャリアで、出産前はバリバリと仕事をして成果を出していた人も少なくありません。男性顔負けな仕事をし、お金もしっかりと稼ぐ、そんな女性たちが実はたくさん存在します。
 
しかしいざ出産となると産休をとります。いくら子育てに寛容な職場であったとしても、実際に産休や育休が発生すると、仕事の現場を離れざるを得ず、その後職場復帰することもはちろん可能ですが、出産を機にキャリアを断念する女性も多く見られます。
 
子育ては一大事業ですから、ハイキャリアな女性ほど子育てもしっかりとやりたいと考えるのかもしれません。人生のなかで我が子の子育てをする時間は多くはありませんから、その貴重な時間を子育てに専念したいと思う気持ちがあるのでしょう。
 
そうして産休・育休をきっかけに職場を退職するわけですが、それは決して彼女らの能力やキャリア自体を奪ってしまうものではありません。その高いスキルや能力は家事や育児という場で存分に発揮されていくのです。
 
そんなママたちですから、起業をしても充分にその場所で活躍することが期待できます。
 
 

マルチタスクが得意なママは起業に向いている


起業をすると、いろんなことを全て自分でやらなければなりません。
 
個人起業だろうと法人立ち上げだろうと、自分が活動していくわけですから、全てのことがまず自分ができないといけないわけです。
 
集客、発信、リサーチ、マーケティング、事務、総務、肉体仕事、制作、司会進行…… 一人で看板を出して仕事をするわけですから、企業に務めて自分の仕事だけをやっていればいい環境ではありませんし、もしそうしたらあっという間に仕事がなくなってしまいます。
 
自ずといろんな仕事をマスターしていかなければなりませんが、このようにマルチタスクできる力は、実は男性より女性のほうが優れていると言われています。
 
一つのことを専門的に掘り下げて深めるのは男性性のほうが得意ですが、広く多くの分野で活躍することができるのは女性性のほうです。その女性の能力のなかでも特に、人とのコミュニケーションにかけては女性のほうが有利です。
 
多くの人と関わり応援しあい、協力しあうことでうまくいきやすい起業は、そのため女性のほうが成功する可能性を多く秘めていると言っても過言ではないでしょう。
 
 

お金を稼ぎたい、というモチベーションがある


子どもを育てるには、お金が必要になります。
必要最低限だけではなく、教育水準の高い学校への進学を考えたり、習い事、経験、衣食住、いろんなものを整えようと思うとそこそこお金がかかります。夫の稼ぎだけでは不安だったり充分じゃないともし感じてしまったら、そのあとは妻がなんとかするしかありません。
 
なんやかや言いながら現代社会は、お金があるほうが選択肢が広がります。教育や経験の質も変わりますし、お金はないよりはあったほうが確実に世界が広がるものです。そのためにお金を稼ぐ力を自分が身につけておくことはは、自分に選択の自由を与えてくれるものです。そのことは自分に大きな自信を作り出してくれます。
 
また別の視点から稼ぎを考えると、子育て中のママは、夫にお財布の紐を握られていて、自分で自由にできるお金がない場合があります。何かやりたいことがあっても常に夫の顔色を窺わなくてはならず、またもし協力的であったとしても、その相手に対してどこか引目や負い目を感じてしまう。そうなることで自分への自信を失い、自己承認できなくなるママたちが存在します。
 
これらは、自分が稼ぐ力を身につけたら、全て解決できる問題なのです。
 
 

一人の孤独を感じなくていい〜コミュニティで活動できる


孤独を抱えるママたちは多い。
 
小さい子どもを育てるママたちのなかで、実は孤独を感じている場合が多々あります。仕事で忙しい夫は帰りが夜遅く、育児になかなか協力が得られなかったり、また慣れない育児で泣き止まない子どもにどう接したらいいかわからず、相談できる人が身近にいなくてほとほと困り果てたり。すぐに相談したり、話す相手がいるだけで解決できることも、子育てに煮詰まり自宅で一人もんもんとしているだけでは、気持ちが沈むだけでなく、場合によってはさらに物事は悪い方に進んでいきます。
 
産後うつ、とも言われるように、待ち望んでいた子どもが生まれたにもかかわらず、子どもや夫との関わり方で悩みつまずき、うつになってしまう。うつになるだけならまだしも、最悪の場合は自死につながることもあります。そのためうつは、決して軽くみてはいけない症状であるのに、実際はそうなるまでに心のSOSに気付けないことも多いものです。
 
そんな状態になってしまう前に、もし身近に話を聞いてくれる人がいたら、もし悩みを相談できる人が周りにいたら、状況は大きく変わります。そのために必要なのは想いを受け止めてくれる仲間や同志。
 
辛い時ほど人に本音が言えなくなります。本当の気持ちをシェアするのはとても勇気がいることです。しかしもし周りにそういう話ができる人がいるならば、どんなに辛いことでも乗り越えていけるものです。
 
起業をすると、一人ではうまくいきませんから、自然と仲間と繋がります。自分の気持ちや想いをシェアする場も多く生まれるので、そういった場では自分に共感してくれる人と自然と仲良くなっていきます。大人になってからはなかなか心を打ち解けて話せる人と出会うことが難しくなりますが、起業を通して思いの深いところまでを分かち合うので、自ずと濃厚な人間関係が生まれやすくなります。
 
仲間や友人のありがたみを感じることができるので、一人で孤独を感じることがなくなっていきます。
 
 

結局、ママは起業に向いている?


起業してうまくいくかどうかは、それぞれにかかっています。ママだからうまくいきやすい、というつもりもありませんし、ママのほうが優れているというつもりもありません。
 
私はただ、全国のママたちが、子育てや家庭を大切にするあまり、自分の本当の想いに蓋をして、自分の気持ちを殺してしまってやしないかと思うこともあり、ママが起業に向いている理由をまとめてみました。
 
もちろん、起業に向かない理由も同じだけあります。
子どもが小さいうちに家のことをする時間が奪われるとか、子育てにかけるべきお金を起業や起業準備にかけなければならず、リターンが読めないなかでの不安な支出につながる、とか、書き出せば枚挙にいとまはありません。
 
しかし、できない理由、やらないほうがいい理由をたくさん並べることに、どんな意味があるというのでしょう。
 
結局起業は自分の生き方の選択ですから、自分が納得する判断で決めればいい。ただそれだけ。ただ世の中には何事も、否定的な意見、反対意見をいうドリームキラーは多いけど、結果が予測できないものに対して賛成意見を述べて背中を押してくれる人は多くありませんから、だから私が、少しだけママ起業の先輩として、これから起業を考えるママたちの背中を押してあげられないか、と思ったまでです。
 
何事にも、良い面と悪い面があります。
そのどちらの世界を見るかは自分次第です。
一度きりの人生ですから、悔いがないような選択をするだけ。
ならば私は全国のママたちに、子どもに見せられる背中を持ってほしいなと思います。我が子が将来、大人になることを楽しみにしてくれるように、そんな大人のあり方でいたいなと思います。
 
 
 
《第19章に続く》
 
 
*1
女性は妊娠で脳の構造を変え、「子育て力」を高める:神経科学の最新研究
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/12/post-6614.php
 


頑張るママのお助けレシピ

心が温まるカブのスープ
<材料>作りやすい量
かぶ 300グラム
出汁 360cc
白味噌 小さじ1
薄口醤油 小さじ1/2
豆乳 70cc
かぶの葉

タレ
醤油 大さじ1
みりん 大さじ1
酒 大さじ1
メープルシロップ 大さじ1
 
1 かぶは洗って適当な大きさにきり、出汁と一緒にやわらかくなるまで煮る。

2 別の鍋に熱湯を沸かし、そこで株の葉を軽く下茹でする。

3 1にスティックブレンダーを差し込み、ピューレにする。そこに白味噌、薄口醤油を入れて調味する。

4 3に豆乳加えて味をみる。足りなければ白味噌を追加する。白味噌が味を効かせるのがポイント。

5 2のかぶの葉を適当な大きさに切ってトッピングする。
 
*わかめは、生わかめが出回る冬(1月〜3月ごろ)が旬です。季節のものはその時期のエネルギーをたくさんもっているので、旬のエネルギーをたくさんいただくことで、体の生命力を支えていきます。

❏ライタープロフィール
ギール 里映(READING LIFE 編集部公認ライター)

食べかた研究家。京都の老舗料亭3代目として生まれ、現在は東京でイギリス人の夫、息子と3人ぐらし。食べることが好き、が仕事になり、2015年にゼロから起業。現職は食べるトレーニングキッズアカデミー協会の代表を勤める。2019年には書籍「1日5分!子どもの能力を引き出す!最強の食事」、「子どもの才能を引き出す!2ステップレシピ」を出版。

この記事は、「ライティング・ゼミ」の受講生が書いてます。 ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2021-01-06 | Posted in ママ起業のリアル

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