第19章 家族が起業に反対する、の処方箋《ママ起業のリアル》
2021/01/25/公開
記事:ギール 里映(READING LIFE編集部公認ライター)
「すごいね、いいね、がんばって」
そんなふうに両手を上げて起業を応援してもらえている、というママは、案外多くないのかもしれません。周りの人が素直に応援してくれる場合もあれば、反対に応援してくれないばかりか、むしろ否定的な反応をされることもある。ママが起業を志す場合、その大きな障壁となるのが家族や親しい友人たちからの否定的な反応です。
そんなの無理に決まってる。
うまくいくはずがない。
恥ずかしいからやめなさい。
いわゆるドリームキラーはどこにでも存在しますが、その最たる人になり得るのはなんといっても家族です。自分にとって一番近い存在だからこそ、思うように気持ちが伝わらなくて葛藤を生みます。親しい間柄であるからこそ、エゴや気持ちがストレートに伝わり、様々なネガティブな理由でがんばるママに反対しようとしてきます。
まず否定から入る?夫の存在
ママが仕事をしたい、それも起業という働きかたを選びたいというときに、一番反対しがちな存在はパパ、つまり配偶者です。幸い私の夫は私の起業に反対したことはありませんでしたが、それでも時折チクチクと文句を言ってくることはありました。起業自体に反対しているわけではなくても、起業することで家をあけがちになったり、家事や育児がおろそかになったりすることを不安に感じることや、また自分が知らない世界に突入していく妻を見るのが不安なのか、月に1回は”文句”を言ってくることがありました。
しかし世の中には起業することそのものを反対する人たちがいます。本来人の人生ですから、家族と言えど他人が口を出すべきものではないかもしれませんが、それでも近しい人の選択に対して積極的に口を挟もうとすることは、日常的にあることです。親子や夫婦など親しい間柄だからこそ、心配という気持ちから口を挟むことは本当によくあります。
パパが起業に反対する理由は、いくつかあります。
問題はいつもお金から
まずは、お金の問題です。
起業を志す際には、講座の受講費や起業塾の参加費など、起業準備にお金がかかります。妻が働いていて自分の収入源を持っている場合はいいですが、専業主婦をしている場合、妻の出費の全ては夫が出すことになります。その時、家族や育児に直接関係しない大きな出費に対しては、なんとなく難色をしめす旦那様もいらっしゃいます。そのような場合そもそも妻のほうが、夫のお金を使うことに対して罪悪感や申し訳ない気持ちを抱えていることも多い。妻も夫のお金だからと湯水のように使ってもいい、とはいいませんが、それでも世帯を共にしている家族ですから、その家族の予算を必要なところにさくということは、家族というユニットの存続に対しては必要なこと。しかしそれでも妻と夫とでは価値観が違い、大事にしているものが違ったりします。そのとき両者がそれぞれの価値観の相違を認め合えず、夫は妻に対して「無駄遣いして」という見方になり、また妻は夫に対して「意地悪、けち」という見方になります。そうなってしまうと平行線ですから、そもそも実際に資金がない妻にはどうすることもできず、起業を断念する場合も多くあります。
先日、こんな方がいらっしゃいました。
専業主婦をされており、ご自身の収入源はありません。そのため何かある度に、常にご主人にお願いをされてきたそうですが、自分が本当にしたいことや、自分のわがままのためにお願いすることは全くされてこなかった、とのことでした。
しかしこの度初めて、自分がやりたいことのために行動をしたいと想い、そのために資金が必要になったのですが、これまでご主人に話をされたことがないので、「きっと無理だ」と諦めておられました。
しかし、このまま諦めるだけの人生で終わっていいのかどうか、ご自身でしっかりと考えたのち、今回はしっかりご主人と話をしてみようと意を決し、自分の想いを伝えました。その結果ご主人は、勇気をもって初めて自分の気持ちを伝えてくれた妻に感動し、「君がやりたいなら、がんばったらいいよ」と、資金面を含め応援をもうらうことができました。
これまでこのように自分の気持ちを正直に伝えたことがなかった、という女性でしたが、ここにきて初めて思いを伝えたことで、自分をとりまく現実が大きく変わって動き出したのです。
妻は騙されている!と焦る夫
次によくあるのが、騙されているんじゃないか疑惑です。
それまで家にいて家事や育児に勤しんでいた妻が、突然起業というものに興味を持ち始めた、ということで、夫としては驚き、不安を感じます。妻が自分の知らない世界に足を踏み入れようとしていることに、あからさまに不安や嫉妬を感じたり、それがきっかけとなって挙げ句の果てには「妻が騙されているんじゃないか」と疑って、妻のやりたいことを全否定するような場合があります。
とにかく昨今SNSやスマホの普及でインターネットを使った起業が当たり前になるぐらい増えてきました。そのおかげでこれまで普通に主婦だったり学生だった人たちが、起業によって収入を得て、人生を変えていっています。そういう世界がありつつも、その世界の中にいたことのない人であれば、にわかに信じることができませんから、そんなことで収入になるのかと疑心暗鬼になりますし、そこから騙されているんじゃないかと不安になるわけです。確かにいまだに、怪しいネットワークビジネスなどにはまり、多額のお金をそこに投入してしまう主婦たちもいますから、そういう世界のことを少しでも知っていたら、次はうちの嫁かもしれないと不安にはなるでしょう。「妻を詐欺から守りたい」という一心で、夫は妻が起業することを反対するというのがこのケースです。
ここまでの2つのケースの場合、不安の材料が明確ですから、その不安のタネを解消することはそんなに難しいことではありません。お金の話ややりたいことの話、自分の思いやきっかけ、今後の計画などを含め、自分の気持ちをしっかりと分かち合うことで、ほとんどの場合は解決していきます。反対する理由が明確なときは、その原因となるものも明確ですから、その原因さえ取り除けば問題はなくなります。
またそもそも夫、配偶者は、自分の最大の応援者であるもの。自分の愛する人を応援したいという気持ちは、必ずそこにあるはずです。しかしそれがちょっとしたコミュニケーション不全で伝わらなかったり誤解を生んでいるだけですから、そこを解消するだけで、関係はよい方向に動き出していきます。
夫以外の家族が反対するときは
しかし問題は、夫だけでなく、夫の家族や親戚までが反対してしまうような場合です。この場合反対する理由が複雑になりやすく、人のエゴや感情がいり組み、前面に出ている場合があります。そうなると解決策がなかなか見出せず、しんどい思いをすることがあります。
夫のご家族に起業を反対されているという女性がいました。
お子さんは男の子2人、未就学のお子さんなのでまだまだ手がかかります。ママはパートでのお仕事もしながらの起業、仕事をする時間が必要になるため、どうしても家事など、家庭に使う時間は少なくなっていきます。
少なくなるだけならまだしも、手が回らなくなると夫や夫の家族がサポートをしてくれます。それはとてもありがたいことで、むしろそれなくしてママの起業は難しいわけですが、サポートをしてもらう立場上、とても気を使います。またそのサポートは、心理的な応援であることはもちろんありがたいことですが、実際に行動などわかりやすい形での応援はもっとありがたい。家事、育児に積極的に取り組むとか、子どものお迎えやお世話などお仕事を引き受けてくれるとか、身近な人にしか頼めないことを頼み、それを快く引き受けてくれるような人間関係がないと、忙しいママたちの起業はなりたたないのです。
比較的近隣に住むご主人の家族、なかでもお義母さまが、嫁の起業に反対していました。とにかくやめてほしいという気持ちをもち、それを言葉で伝えてくる。起業する嫁のことを快く思っていないという気持ちが、痛いほど伝わってきます。
この女性が起業を志すのは、子どもたちに大人が生き生きと働く背中を見せたい、また子どもたちに少しでもよい社会を残したいという気持ちがあるから。しかしそこが義母には伝わっているのかいないのか、とにかく起業をやめさせようと、ことあるごとに「やめてほしい」と言われるので、彼女は精神的につらい思いをしていました。
いくら義母とはいえ、家族とはいえ、なぜこれほどまでに他人に人生の歩みかたをとやかく言われなければならないのだろうと思います。どれほどの思いでそう伝えておられるのか、それほどまでに反対される義母の気持ちに思いを馳せると、そこにはきっと、義母にとっての正義があるのでしょう。人にはそれぞれ、自分にとっての正義があります。それが正しい、正しくないとジャッジをすることが大切なのではなく、そもそもの違いを認めてお互いに歩み寄り、双方にとってのベストを模索することが大事だと思うのに、なかなか掛け違えたボタンは元には戻らない。どこで掛け違えたのか、それすらもはやよくわからず、そもそもそれほど反対される理由に全く心当たりがない。わからない、というのがとにかく一番気持ち悪い。
嫁が起業をすることで、家のことがおろそかになるから?大事な息子が寂しい思いをするから?嫁が家のことをせず、外で仕事三昧だったら世間体が悪いから?いろんな理由が考えられます。もしかしたらお義母さまにも、明確な理由はわからないのかもしれない。その理由がもしわかっていて、それをこちらに伝えてくれて、それが納得のいく理由であれば、こちらだって納得できる。しかしこの二人が何年も平行線を辿っていることを考えると、どうにもお互いの思いや正直な気持ちが伝わっていないのだろうし、その理由はもしかして、起業を反対する明確な理由が本人にもわからないのかもしれません。
自分の気持ちを伝えると現実が動く
本当の気持ちを口にするのは、とても難しいことです。
コミュニケーションの基本は正直な気持ちをきちんと伝え合うことと、小学生でも頭でわかってはいるものの、それを実際に実践しようとすると、あまりの伝わらなさにもどかしい思いをします。
自分の気持ちを素直に表すと、その言葉で誰かを傷つけてしまったり、またそれが嫌で言葉を閉ざすと、考えていることが伝わらなくて、さらに関係が険悪になったり。人は自分の想いや感情を言葉で表現して相手に伝えることが本当に苦手です。
うまく喋ろう、伝えようとすればするほど、言葉は表面を上滑りして、ますます伝わらない音の羅列になっていきます。決してうまく伝える必要なんてないのに、いつも正解を探してしまう癖を、私たちは社会との関わりのなかで探す癖がついているのかもしれません。
なぜなら、正解をやっておかないと、失敗したときに言い訳ができないからです。正解をとりあえずやっておけば、なんとなく安心ですし、それでもし失敗しても言い訳ができるからです。
もし正解を知らず、自分勝手に自己流でやって、それでもし失敗しようものなら受けるダメージは半端ではありません。しかし誰かがすでに作った正解を真似したのであれば、それで失敗してもそれは自分の責任じゃないということができるから、だから人はとりあえずの正解をもとめ、それをやりさえすればうまくいくと勘違いしてしまいます。
人とのコミュニケーションにもし正解があるとすれば、それは正直に思っていることを、相手が受け取れる形にして伝えることです。そしてそれが殊の外難しいから私たちは苦労し、失敗し、学び、成長していくのです。
起業するということは、自分の想いを口にして、その想いを誰かに伝えることで価値が生まれ、それが結果としてお金、愛情、人脈、チャンスに結びついていくというものです。そしてそれは、自分の想いが相手に伝わるということ。想いが伝わらなかったら信頼されないし、信頼されない人とはビジネスは成立しないからです。
もし誰かに起業を反対されて、そのことで悩み、苦しみ、考え、行動することを要求されているとするならば、それはむしろビジネスパーソンとしての自分を試されているのかもしれません。もっと大きく成長していくために、自分の器を広げるために、そのことがいま起こっているのかもしれません。
夫や家族という大事な人に、自分の思いの源泉が伝わったら、他の人にも必ずその想いは伝わっていきます。だから「反対される」ことはむしろ、起業してうまくいくためのあり方を見直す、最大のウェイクアップコールなのかもしれませんでしょう。
面と向かって反対されると、誰だってへこみます。それが親しい関係だとなおさら。だからこそここを乗り越えることが、起業がうまくいくためのマインドセットを手に入れるために、必要不可欠なことなのでしょう。
頑張るママのお助けレシピ
はくさいとキノコのスープサンラータン風
<材料>3人分
干ししめじ 1/4カップ
干し椎茸 1/4カップ
えのき 1/4カップ
きくらげ 1/4カップ
ぬるま湯 3カップ
白菜 1〜2枚
梅酢 小さじ1
醤油 大さじ1
米酢 大さじ1
葛粉 大さじ1+水大さじ1
塩、胡椒〜適量
<作り方>
1 干ししめじ、干し椎茸、きくらげはぬるま湯でもどす。えのきは一口大に切る。2 白菜は一口大に切り、鍋で軽く炒る。軽く焦げ目がつくぐらいがよい。
3 2に1をお水ごと流し入れる。少し煮立ったらそこに梅津、醤油、米酢、塩胡椒を加えて味を整える。
4 葛粉を水で溶く。3に流し入れてとろみをつける。
*葛粉がお腹の調子を整え、心を落ちつけてくれます。
*キノコは干すことによって旨味を増すので、そのままで美味しい出汁がでます。食物繊維が豊富で、お腹のお掃除ができます。
*米酢、梅酢の酸味は、怒りを引き起こす肝の調子を整えてくれます。
❏ライタープロフィール
ギール 里映(READING LIFE 編集部公認ライター)
食べかた研究家。京都の老舗料亭3代目として生まれ、現在は東京でイギリス人の夫、息子と3人ぐらし。食べることが好き、が仕事になり、2015年にゼロから起業。現職は食べるトレーニングキッズアカデミー協会の代表を勤める。2019年には書籍「1日5分!子どもの能力を引き出す!最強の食事」、「子どもの才能を引き出す!2ステップレシピ」を出版。
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