第21章 ずばりどうなの、ママ起業《ママ起業のリアル》
2021/02/023/公開
記事:ギール 里映(READING LIFE編集部公認ライター)
「家族が起業に反対なんです」
「まだ子どもが小さいから無理です」
「お金がないからできないです」
これら3つは、起業したい気持ちがあっても、なかなかできない場合に言われる理由です。
私がこれまでに出会ったママたちのなかで、起業をしない選択をする人たちの多くはこれらのことが理由でした。起業をするというとどうしてもリスクや不安定さ、厳しい働きかたを連想してしまうのか、何か多くのことを諦めたり無理をしないとできない、と思ってしまうのでしょう。
しかしこれらの理由で諦めるのは、もしかしたら起業だけではないかもしれません。例えば「起業」を「習い事」に置き換えてみたい。家族が習い事に反対する、子どもが小さいから習い事が無理です、お金がないから習い事ができないです、と、どれも意味が通じてしまう。「趣味」でも「美容院に行く」でも「旅行にいく」でも同じ、目的語を変えたとしてもこれらの理由が成立してしまいます。ということはつまりこれらの理由は、実は正当な理由なのではないのかもしれません。
人は何かを決断するとき、何らかの理由を欲します。行動を起こすときも起こさない時も、周囲の人間が納得する理由を導き出し、その理由から仕方なく諦める、という形をとることで、周りとの人間関係を穏便にしたいのか、もしくはできない自分というレッテルをはりたくないのか。とにかく何か、本当はやりたいのに、できないと決めることで諦めようとしているように、私は思えてしまうのです。
理由は人それぞれですが、どうしてもこれらの理由が本当の理由にはならないような気がしてしまいます。
3つの理由、その本当の意味とは
家族が反対するから、と言っても、やるのは自分、決めるのは自分。理論上、家族と言えども他人ですから、自分の人生に指図を出せる権利はないはずです。希望やお願いを伝えることはできたとしても、自分の意見を押し付けたり無理やり解らせたりはできないはず。しかしその家族からの反対でできない、と捉えるのは、もしかしたら自分の思い込みに過ぎないのかもしれません。
子どもが小さいから、も同様、たしかに小さい子どもが家にいると手がかかりますし、育児が発生します。しかし小さい子どもがいても起業している人はたくさんいるし、昨今ではワーキングマザーをサポートする仕組みや制度も整いつつあります。「子連れは起業禁止」と、禁止にされているわけではないのですから、子どもが小さいからできないということは本当はありません。子どもが小さいからできない、ということは、子どもが大きくなったらできるし、やりますという意味を反対に含んでいますが、では子どもが大きくなったとき、今と同じ思いがあるかどうかはわかりません。時間が経てば環境も変わる、考え方も変わる。そうなると今起業しないのであれば、子どもが大きくなったからと言って起業に踏み切る可能性は少ないように思います。
また「お金がないから」という理由も同様、今の日本で本当にお金がなくて、毎日食べることにすら困っている、なんていう人はどれぐらいいるだろう。おそらくそんなに多くはないでしょう。ましてや起業という言葉に反応するぐらいですから、そういう人たちが食うに困っている状況であるとは考えにくい。こういうパターンはお金が本当にないのではなく、そこに投資するための自分の覚悟と価値観がないだけ、なのかもしれません。私たちはお金がないといいながらも、つい旅行にいったりしますし、ついついカフェでお茶したりします。つまりお金が本当にないわけではありません。お金がないからできない、という言葉の裏側には、なにかそういうお金についての価値観のズレがあるような気がするのは、私だけではないはずです。
起業に安定を求めてはいけない
起業をしたことがない人にとって、起業することはとても勇気がいることなのかもしれません。なぜなら起業することは、安定収入を手放すというリスクがあるからです。
安定的な収入を得て、安定した生活を送りたいと望むのであれば、起業は全くおすすめできません。なぜなら起業ではそれが手に入らないからです。掘り下げると就職したとしても一生安泰になるとはいいませんが、ある程度の期間、ある程度の金額の安定収入が確保できるわけです。
生活の安定が手に入ると、それで充足して満たされる方もいますが、起業を志すのはどちらかというとそうではなく、それでは何か満たされないと感じている方なのかもしれません。もっと何か自分にはできることがあるのではないかと、仕事にやりがいを求める場合です。自分が人として成長したいと願う成長欲もあるかもしれない。また本当に熱中してできることに自分の人生を使いたいと願う欲求かもしれない。とにかく安定では満足しないという人たちが、起業という道を選びます。
安定を求めたいなら就職、やりがいを求めたいなら起業、と、それぞれ求めるものが違うから、その手段も違う。あくまで働きかたは求めるものを得るための手段でもあるので、求めるものが違ったら違ってくるのが当たり前です。
ここを混同してしまうから混乱したり悩んでしまう。だからこそ自分が本当は何を求めているのか、起業をする前に今一度考えて落とし込んだほうがよいなと思います。
ママ起業の最大のメリット
男女の性差があるわけではないけれど、やはり起業という働きかたにおいて、パパとママではその立ち位置が違うから、スタンスが違って当然です。家族の形はいろいろですから、ママが家庭の大黒柱として稼ぎ頭になる必要があることもあるでしょうけれど、まだ日本では一般に、パパが大黒柱であることが多数です。大黒柱としてのパパがいるのであれば、むしろママは安定収入を求める必要もありませんから、むしろ不安定でもやりがいを求める働きかたを選べやすいかもしれません。
もしママが大黒柱の家庭だったり、シングルマザーの家庭であれば、ママ起業は少しスタンスが変わります。やはり家族をサポートするためには安定収入が欲しいところ。そのため起業へのハードルは少し上がるような気がします。
しかしシングルであろうとなかろうと、子どもを持って家庭を持つと、大人には家族を養うという責務が発生します。自分一人であればどうにでもなったかもしれないものが、どうにもならないでは済まされなくなる。生まれてきた子どもは放置できませんから、子どもに衣食住や教育を提供するため、そして家族を養い幸せにするという大仕事があるから、なるべくリスクは取りたくない。だから起業に対するハードルはむしろ上がるのかもしれません。
そう考えるといわゆるママ起業は、やりがいを追求する働きかたとして最強なのかもしれません。甘えと捉えられてしまうかもしれませんが、パパという存在がいることで、むしろ自分のやりたいことを追求することができる。こんなに恵まれた生き方は他にないんじゃないかと思うぐらい、ママ起業はよい選択肢だと思います。がんばっているパパには申し訳ない気持ちと感謝の気持ちが半々で、ママは好きにさせてもらえる。そんな恵まれた環境は、他ではなかなかないんじゃないかと思います。
アフターコロナの働きかた
2020年は新型コロナウィルスのおかげで、世界ががらりと変わりました。
外で仕事、内は家庭という概念も覆され、テレワークでどこでも仕事ができるようになった方も多いでしょう。またこれまでに必要とされていた仕事がなくなったり、それとは逆にこれまで不要とされていた仕事が生まれたり、去年たった1年で仕事や生活に関するこれまでの常識が文字通り根底から覆されてしまいました。
お勤めであろうと安定が見込めないことが明らかになったり、また起業であってもしっかりとした地盤を作って大きく稼げるようになることが普通になったり、インターネットやSNSの発達に伴って、仕事における可能性はどこまでも広がり、現在も進行形で広がり続けています。
もはや、なんでもありの時代になりました。
アイデアと想いさえあれば、個人でも大きな仕事ができる時代になりました。一部の才能のある人だけが起業で成功する時代はもう終わって、普通の人が、普通の自分の能力を提供するだけで、それで仕事になる時代になりました。
それを安易だと揶揄する方もいるでしょう。しかしビジネスの本質がもし、誰かの役に立つことだとすれば、安易だろうとなんだろうとそれでビジネスとしては成立しています。時代の流れに沿っていま必要なことを一所懸命やり、それで人や社会の役にたつこと、そんな生き方に対するアクセスがよくなったという意味では、これはコロナのおかげと言わざるをえません。
なんでもありの時代だからこそ、好きなことを思いっきりやる人生を選ぶ。
本来自分の人生ですから、自分で好きに生きていいはずです。しかし私たちは自分で自分の人生にリミットをかけて、あれはできない、これもできないと世界を狭めてしまいがちではなかろうか。
もちろん生まれた環境によって生きやすかったり、生きづらかったり、様々な悩みをかかえるものではありますが、私たちは誰もが平等に1日24時間を与えられ、同じように心と体をもらって生まれてきています。であればそれらをどう使い、どう最大化して活用するかは自分自身にかかってきます。ママだろうとパパだろうと実はそれってあまり関係がなく、私たちは常に人としてどうあるか、自分の命をなんのために燃やして生きるかの選択を与えられているのです。
なんといおうとも家庭のキーパーソンはママ
女性として生まれ、子どもをもって母親になる私たちには、どう生きるかの選択肢が豊富です。女だからこう、男だからこう、というような昭和の価値観はすでに消え去りつつあり、個人がどう生きるかを追求しやすい時代になってきました。
そんな中ママである女性たちが起業することは、次世代の子どもたちにとって大きな可能性を見出すものだと私は確信しています。せっかくこの世に生まれたのだから、思いっきり自分の人生を生き切ってほしいと、親なら子どもに望むでしょう。であれば大人がその最大で最良の見本であってほしい。
特にママという存在は、男性がなんといおうとも、子どもたちとの繋がりがパパよりも大きい。なんせ自分のお腹のなかに10ヶ月ほど別の人間を持って過ごし、猛烈な痛みを伴って死ぬ思いで出産しているのですから、ママと子どもの繋がりというのは、パパのそれとは訳がちがう。
そのママが、子どもたちにとって最愛のママが、最高に幸せな生き方をしていることが、子どもたちにとっても最高に幸せなこと。ママが暗い顔をして、毎日鬱々過ごしていることは、子どもたちにとって何よりも悲しいこと。だからどうかママたち、自分の楽しさや生きがいを最優先してほしいなと、私は思ってしまいます。
何かとハードルが多いと思われがちなママ起業ではありますが、いったん決断したら腹が座るのはなんといっても女性です。肝っ玉母ちゃんとはいわれますが、肝っ玉父ちゃんとは言われない。であればその肝っ玉を最大限活用して、子どもたちに希望に満ちた未来を見せるためにも、ママたちにはとことん楽しみ、頑張ってほしい。
働きかたや生き方はほんとうに人それぞれ。
何をどう選んでもそれはその人の自由だから、だからこそママたち、後悔のない生き方を。
仕事は何度でも変えられる。
だけど人生は一度きり。
頑張るママのお助けレシピ
宇宙からの贈り物、自家製糠漬け
<材料>
無農薬のぬか 1キロ
水 1リットル
自然塩 150g
鷹の爪 1本
昆布 はがき1/2サイズ
保存容器 ほうろうや陶器のいれものばベター
捨て漬け用の野菜 にんじん、きゅうり、きゃべつ、大根など
<作り方>
1 ボウルにぬか、水をいれてまぜる。水分が均等になるように少しずつ水を加え、手で丁寧にまぜていきます。2 1に塩、鷹の爪を入れて混ぜ合わせる。
3 保存容器の底に昆布をしいて、その上に2を入れる。
4 捨て漬け用の野菜を入れて、表面からしっかり通して表面を平らにする。また容器の内側についた糠もきれいに拭く。そこからカビがはえます。
5 常温で保存する。
6 捨て漬けは3週間ほど行う。そのあとは野菜を取り出し、糠床として活用してください。
7 つける期間、つける野菜の種類はいろいろです。お好みの野菜や味、発酵具合を楽しんで、毎日少しずつ食べるようにしましょう。
*糠は必ず農薬を使っていないものを使ってください。
また漬ける野菜も農薬を使っていないものを。糠床は長期間にわたり発酵させ使っていくもの。なるべくそのなかには人工的な薬品類を入れないようにしたいものです。*糠床は基本毎日ひっくりかえしますが、夏場は過発酵する可能性もありますので、様子をみながら判断してください。
*冷蔵庫にいれっぱなしで保存する方法もあります。旅行などで長期間家を開ける場合は、冷蔵庫に入れてでかけましょう。
*入れる野菜はなんでもオッケーですが、土が入ると微生物の作用のせいか、美味しくなくなってしまいます。根菜を入れる場合は表面に土がついていないかを確認して、よく洗ってから入れてください。
*糠づけは日本に古来から伝わるスーパーパワーのもと。
長く愛される家庭の象徴として、我が家も糠床とともに成長させていきたい。
❏ライタープロフィール
ギール 里映(READING LIFE 編集部公認ライター)
食べかた研究家。京都の老舗料亭3代目として生まれ、現在は東京でイギリス人の夫、息子と3人ぐらし。食べることが好き、が仕事になり、2015年にゼロから起業。現職は食べるトレーニングキッズアカデミー協会の代表を勤める。2019年には書籍「1日5分!子どもの能力を引き出す!最強の食事」、「子どもの才能を引き出す!2ステップレシピ」を出版。
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