すべては、自分の為に、自分の軸で。《週刊READING LIFE Vol.65 「あなたのために」》
記事:中野ヤスイチ(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
「今年こそ、今年こそ」
僕は今まで、ずっと、今年こそと言い続けてきた。
年始はいつも、「今年こそ、英語をじゃべれるようになって見せる」、「今年こそTOEICで750点はとる」、なんていつも心に決めて、年明けを迎えて、布団で眠る年が続いていた。
残念ながら、一度も正夢になった事がない。
むしろ、1月3日以降に仕事が始まったら、英語の勉強が続いた事がない。
家には、英語に関する本が山程ある。
今年こそは、英語力を上げる為にと、本屋さんに行って参考書を買う。
ただ、買うだけじゃない。
ネットで、色々と調べた上で、これこそ、自分にあっている参考書だと決めたモノを
買いに行ったり、オンライン英会話に申し込んだり。
参考書を買って、1日2時間は勉強できると年始に1週間毎のスケジュール管理までして、計画はバッチリだと思って始める。
意気揚々と今年こそは間違いなくできると信じて、1日、2日、3日と過ごしていく。
「お、これは、今年は違うぞ」と思って、仕事始めの日を迎える。
仕事を始めると急に忙しくなってきて、徐々に英語の勉強をしていた事すら忘れてしまう。
誰が言い始めたのか、知らないけど。
まさに、三日坊主で終わってしまう。
年によっては、4日や5日まで伸びたりする時がある。
その違いは、仕事始めの日がいつかだけである。
これを社会人になってから、毎年毎年、繰り返し行っているのに、切り無く続けていた……。
そんな、僕が今年は遂に辞める事に成功した。
あなたからしたら、「よくも懲りずに10年間も英語勉強しようと思うな」って思うかもしない。
むしろ、「もっと早く気がつけよ」って思うかもしれない。
社会人を約10年続けて、やっと気がついた事に、僕はとても嬉しい。
気づけた理由……。
「なんで、英語を勉強するんだっけ!?」
僕自身、自分に聞いてみた。
ただ、それだけ。
今までの僕だったら、「英語を勉強して置かないと、後々困る事になる」
常に自分に言い聞かせてきた。
結果的に、困った事は正直なかったけど、いや、1回、2回くらいはあったかな……。
ただ、生きていく上で、困った事は無かった。
今後を生きていく上で絶対に必要なスキルだよなって、英語をしゃべれたらカッコイイと素直に思っていた。
ただ、英語をしゃべれたらカッコイイという姿に憧れただけだった。
小さい頃に、仮面ライダーになれると信じていた少年のように。
やっと、自分自身に聴くが出来て、気づく事ができた。
気がついたと同時に、「もっとしたい事が本当はあるんじゃないのか」って、急に頭に浮かんできた。
まるで、誰かが「僕にやっとここまでこれたか」って言ってくれているような感覚だった。
そう、今まで何度も何度も英語を勉強しようとして、出来なかった自分に対して、常に自分を責めてきた。
だから、「今年こそ、今年こそ、英語を勉強する」って言い聞かせてきた。
それを、今年、遂に辞める事ができた。
今までの時間が無駄とは思わない。
むしろ、今までの時間があったらから気がつけたんだと思う。
今までの自分だったら、「こうなったら誰かに認めてもらえるんじゃないか」、「誰かに褒めてもらえるんじゃないか」って、他人基準でやる事を決めていた。
それが、今年は違っていた。
すべては、「自分が本当にしたい事は何なんだ?」
このシンプルな問いだけを昨年から自分に持つようにした。
すると、自分の感覚が変わってくる事に気が付き始めていた。
今までだったら、上司を喜ばせる為に、会社の為に、と考えが頭に浮かんで、
理想の社員像になるべき、自分を追い込んでいた。
きっと、このように生きている人は僕だけじゃないと思う。
あなたはどうだろうか。
誰の基準で生きているのだろうか。
僕だって、強い人間では無い、どちらかと言うと英語の勉強すら続ける事ができないくらい、根性が無い弱い人間である。
そんな僕が、遂にやめると決断できた事は大きい進化だと思っている。
自分軸の価値観で物事を観るようになった時、「なんでも自分はできる」という少年のような感覚が戻ってくる。
そんな時に、「自分が本当にしたい事は何なんだ?」という問いが降ってくる。
降ってくるというより、やっと降りてきた感覚に近い。
辞めるという決断によって、自分の頭の中でスペースが生まれて、降りてくる事ができたんだと思う。
誰が決めたか、わからないが、何かを始める時には、丁度良いタイミングで物事が始まる。
まるで、偶然が必然であったような感覚に襲われる。
あなたの人生にも、そんな経験はないだろうか。
今まで生きてきた中で、そのような経験をしていたら、是非、自分に聞いてみて欲しい。
「なんで、あのタイミングで始める事になったんだけ?」って。
落ち着いた環境で聞いてみると、必ずや答えが返ってくるに違いない。
絶対に偶然はなく、必然だったって……。
僕は自分に聞いてみる事によって、やっと誰かの為じゃなく、自分の好きな事を見つける事ができた。
今、この瞬間も好きな事をしている。
文章を書く事、自分の頭の中にあるモノを文字に起こすこと。
僕が文章を書くこと、ライティングに出会ったのは偶然だった。
まさか、自分が文章を書くようになるなんて、考えた事すらなかった……。
当時の僕は、会社に認められる人材になりたくて、もっと誰かの役に立つ人材になりたくて、もっと一杯仕事ができるようにならならいかなと、ずっと考えていた。
もっと仕事ができるようになったら、自然と英語の勉強もできるようになるんじゃないかって本気で考えていた……。
その時は、偶然だと思っていた。
今でも不思議でたまらないのだが、FaceBookに天狼院書店の広告が載っていて、「フルスロットル仕事術」というタイトルのゼミが紹介されていた。
昔から本が大好きだった僕は、本屋さんがやっているゼミに間違いはない、きっと今の僕に必要なんだろうと思い、勢いで申し込んだ。
そのゼミを受けて、なるほど、このような考え方や実践方法があるんだって知って、面白い本屋さんがあったんだなって、思って、帰ろうとしたら、その講義をしてくれた方が「殺し屋のマーケティング」(三浦 崇典著 ポプラ社)という本まで出していた。
心の中で、小説家のイメージが変わった瞬間だった……。
その本を買って、本にサインをして貰って、帰ろうとした時に、店員さんに、「一番人気のあるゼミがライティング・ゼミなんです」って教えてもらって、チラシを貰って、お店を後にした。
その時、不思議な感覚に襲われて、その感覚が今も残っている。
「きっと、ここにまた来て、僕はライティングを学ぶんだろう」って、なぜか不思議と思い、ゾクゾクするような感覚とワクワクしている自分がそこにいた。
まさに、気がついたら鳥肌が立っていた。
この出来事は、偶然だったとのか、必然だったのか、今もまだわからない。
ただ、文章を書くことがこんなに楽しい事だったなんて知らなかった。
自分が考えた事を文字に起こして、誰かに読んでもらえる喜びは、今まで経験した事がないくらい掛け替えの無い、僕の大切な宝物である。
嬉しくて、嬉しくて、心と身体から言葉が出てくる。
この感覚を多くの人にも味わって欲しい。
味わってもらって、違うと思ったら、それで良いと思う。
決して、この世の中に無駄な事はないのだから。
僕は、本当にしたい事を見つける事ができた。
きっと、偶然ではなく必然なんだと今になって思う。
だから、今年は英語を勉強するなんて、一切考える事がなかった。
そして、遂に辞める決断をする事ができた。
英語を勉強する時間がもったいない、って考えた事すらなかった。
切っても切り離せないやらなければ行けないモノだと思っていた。
今の僕は、今までの僕とは明らかに違う。
ライティングを始めてから、何事に対しても、自分の感じている事に注意を払うようになった。
今までだったら、一瞬一瞬を流れる滝のように流して、ただ全体像を観ていた程度だったのが、徐々に滝に流れる一粒の雫を観るような感覚に近づいている。
その感覚をどのようにしたら、読んでもらえるような文章になるのか、その事を考えるようになった。
今の自分は、自分の頭にある世界を文字に起こして、誰かに読んで、喜んでもらえる、何かを感じてもらえるような文章を書きたいと思っている。
そのために、今まで英語の勉強の教材を買う為に使っていたお金を自分の書きたい文章を書くために、その力を得る為に使うように変えた。
お金の効力には驚かされるモノがある。
お金を払ったら、何が何でも元を取りたいという気持ちが自然と働く。
英語の勉強の為に、参考書代で多くのお金を使って来たが、本を買う事が習慣になっている僕にとっては、ほぼ意味をなしていなかった。
お金を払ってでも、自らライティング力を上げる勉強をして、良い記事を書きたいと思うから、色々な所に試行錯誤ができるようになる。
それぐらいお金は強い力を持っているが、それだけでは足りない。
自分自身がやりたくてしょうがないと思える事に、身銭を切って挑戦する事で、自分の血肉になるのではないだろうか。
あなたの中にも、自分の血肉したい能力や経験したい事があるのではないだろうか。
英語の勉強を続ける事ができないくらいの僕でも、やっとやりたい事を見つける事ができ、続ける事ができている。
あなたにも必ずあるに違いない、心からワクワクするようなモノが。
それを、見つける為にも、勢いで1つ何か自分にとって足かせになっているモノを辞める決断をする事が大切かもしれない。
すべては、自分の為に、自分の軸で。
◽︎中野ヤスイチ(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
島根県生まれ、東京都在住、会社員、妻と子供の3人暮らし、東京薬科大学卒業、奈良先端科学技術大学院大学卒業、バイオサイエンス修士。父親の転勤の影響もあり、島根県、千葉県、兵庫県、埼玉県、奈良県、佐賀県、大分県、東京都と全国を転々としている。現在は、理想の働き方と生活を実現すべく、コアクティブ・コーチングを実践しながら、ライティングを勉強中。ライティングを始めたきっかけは、天狼院書店の「フルスロットル仕事術」を受講した事
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
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