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モノなくしエキスパートがオススメする最強ツール!《週刊READING LIFE Vol.66 買ってよかった! 2020年おすすめツール》


記事:吉田けい(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

なくすと困る三種の神器といえば、財布、携帯、鍵。
親も夫も友達も認めるモノなくしエキスパートの私は、これらの三つはしょっちゅうなくしまくっていた。
 
高校は自転車通学だったので、自転車の鍵をなくすと悲惨だ。部活帰りに自転車の鍵がないと、日も暮れて真っ暗な中、街灯の下で鞄をひっくり返したり、自転車周辺に落ちてないかと地面を手探りで探したりした。どうしてもない時は諦めてバスで帰り、翌日自宅にあるスペアキーを持って行って開けるしかない。スペアキーもなくしてしまい、親にのこぎりで鍵を外してもらったこともある。それ以来、自転車の鍵は鍵穴式ではなく、ダイヤル式のチェーンロックを使うようになった。
 
家の鍵をなくして困るのは、一人暮らしを始めてからだ。鍵がないと家に入れない、ごく当たり前のことだが本当に困った。会社のデスクに残っているかと引き返すも、みんな退社してしまって中に入れず、途方に暮れたこともある。結局もう一度探してみて、何故か弁当箱を入れる袋の底に入っていた時は、自分の行動が謎すぎて腹が立った。
 
出先でなくしやすいのが財布と携帯だった。何かの拍子に出して、何の気はなしにちょっとしたところにひょいと置いて、そのまま忘れて立ち去ってしまうのだ。買い物をした店の会計カウンターに財布を置いたまま店を出て、店員さんに追いかけられるなんてしょっちゅうだ。駅の精算機、自動販売機の横、トイレの小物置き場、あらゆるところにひょいひょいおいて、ホイホイ忘れてしまうのだ。財布を無くした一番古い記憶は高校の頃だから、あの頃から全く成長していないことになる。我ながら情けない。
 
特に財布をなくしてしまうとタチが悪い。多くの人が、運転免許、クレジットカード、保険証などを財布に入れて持ち歩いているだろう。それらを紛失した時は、現行のものを使えないように停止し、再発行しなければならない。現金がないけどお金を引き出すこともできない、再発行のための身分証明書にする免許もない。免許の再発行なら、有休を使って免許センターまで行かないといけない。仕方なく有給を取り、電気や水道の料金の通知を持って行って、他にもあれこれ見せて、やっと再発行手続きだ。そして不思議と、すべての再発行手続きが終わった頃に「見つけました」と連絡が来る。拾った人が悪さでもしたかと勘繰るも、不正な引出しを試みた形跡はなし。うんざりしながら古いカードを処分して、新しいカードが手元に届くまで更に十日前後。もう踏んだり蹴ったりで、二度となくすものかとその時は心に固く固く誓うのだ。
 
多い時は三カ月に一回、少なくとも年に一回は財布をなくしていただろうか。何度悔いて、何度心を入れ替え、どれだけ細心の注意を払っているつもりでも、ある日自分の注意力に霞がかかったようになり、ふっと財布が視界から消えてしまうのだ。どこかに置くという動作自体が無意識なので、置いたということを知覚できないのである。最終的には、鞄と財布をチェーンでつないで、絶対離さないことにしていた。家の鍵は、手にしてからしまう瞬間まで「鍵、鍵、鍵……」と強く念じながら持ち、確実にチェーン財布かチャックつきのカバンのポケットにしまうようにするようにすると、ずいぶん改善された。
 
さて、携帯もよくなくすのだが、他の二つに比べ、比較的見つけやすかった。携帯は電話がかかって来れば音が鳴るからだ。マナーモードにしていても振動音がする。携帯がどこに行ったのか分からなくなると、友達や同僚に電話をかけてもらい、振動音がするかどうか、耳を研ぎ澄ませて探し回った。
 
iPhoneに機種変更すると、もっと状況は改善した。iPhoneには、「探す」というアプリが用意されているのだ。それはGPS機能を利用して、予め「探す」機能を有効にしたiPhoneの現在地をおおまかに地図で表示できるというもの。iPhone自体からも見られるし、PCからも見ることができる。同じApple IDを使っている他のデバイスも登録できるし、家族のiPhoneも登録できる。そして何より、「探す」アプリは、「サウンドを鳴らす」機能と、「紛失モード」機能があるのだ。
 
「サウンドを鳴らす」とは、マナーモード有無にかかわらず、指定したiPhoneを強制的に鳴動させるというものだ。かなり大きな音がするので、家の中やオフィス、店内など、同じフロアにいれば必ず聞こえる。何年か前の大雪で、道にiPhoneを落としてしまった時も、この機能を頼りに探し出した。
 
「紛失モード」は、遠隔操作でiPhoneの画面上に「このiPhoneを見つけた人は、この電話番号までご連絡ください」など、任意の言葉を表示させることができる。「サウンドを鳴らす」でiPhoneを見つけられなかったときの最後の手段だ。電車内でiPhoneを紛失した時、拾得した駅員さんがこの画面を見て夫の携帯に電話してきてくださったことが何度もあった。
 
なんて便利なんだ、iPhone。さすがジョブズ。さすがApple。
 
電話の位置が分かる、音で探せる、連絡先を表示させることが出来る。これだけあれば、iPhoneをなくすことはもうほとんどないはずだ。もし貴方がiPhoneユーザーでこのアプリを使っていなかったら、今すぐ設定することをオススメする。私はiPhoneのケースにクレジットカードを入れ、免許を入れ、定期を入れた。小銭は交通ICカード、その他の買い物はクレジットカード。万一に備えて一万円札も一枚。iPhoneを財布のように扱うことで、本当になくすと困るモノたちを守りたかったのだ。
 
財布は鞄にチェーンでつなぐ。鍵は念じながらチェーン財布に入れる。
携帯はiPhoneだから、「探す」で見つかる。
 
よし、これで完璧だ。
 
これならそれぞれをなくす確率は低くなったし、もしなくしても見つかる可能性が高い。
モノなくしエキスパートとして一つの境地に辿り付いた心地でいたある日、夫がこれあげる、と小さな箱を渡してきた。
 
「なに、これ?」
「研修会の参加者にプレゼントだって」
「……ふうん?」
 
夫は必要最小限のモノしか持たない主義なので、目新しいものは不要だったのだろう。何だろうな、と思いながら包みを開けてみると、そこには見慣れない赤い丸いものが入っていた。
 
それが、スマートタグ「Chipolo」との出会いだった。

 

 

 

スマートタグ「Chipolo」は、500円玉大の大きさで、キーホルダーなどにつけられるよう小さな穴が開いている。スマホにアプリを入れ、BlueToothで連携させるらしい。BlueTooth接続中は、スマホからChipoloを呼び出して鳴動させることが出来る。逆に、Chipoloから連動中のスマホを鳴動させることもできるらしい。スマホとChipoloの距離が離れてBlueTooth接続が切断された際は、切断された場所の位置情報をスマホで確認することができる。更に、接続が切れた場所からChipoloが移動している場合、他のChipoloユーザーが近くを通ると、Chipoloどうしが位置情報をやりとりして、最新の位置情報が更新される、ということだった。
 
「なんか未来的……!」
 
私はひとまず、家の鍵と財布につけてみることにした。一歳の息子と気軽に散歩に行けるようにと、ちょうど財布を小さいものに変え、ネックストラップで首からかけられるようにしたたばかりだった。鍵はその財布のキーリングに付けている状態だ、つまり財布と鍵にChipoloをつけたことになる。家にChipolo財布を置きっぱなしにして、スマホを持ったまま散歩に出てみる。アプリで確認すると、家から数百メートル離れると、アプリとChipoloの連携が解除された、最終確認位置は自宅近辺、と表示された。
 
「ふーん、この状態で財布が移動しちゃおうと、どこにあるのか分からなくなっちゃうんだな。お守りみたいなものかなあ」
 
その日はその程度に思い、帰宅してから何の気はなしに財布をひょいとどこかに置いた。そして次の日、息子と散歩に行こうと財布と鍵を探したが、どうしても見つからない。どこかにひょいと置いてしまったことは覚えてるんだけどなあ。
 
そうだ、Chipoloのアプリを使ってみよう。
 
アプリを立ち上げ、「リング」と書かれた鳴動ボタンを押す。すると、自室の机のあたりから、「ピロピロピロ……」と音が聞こえるではないか! 音を頼りに近づくと、読みかけの本の下敷きになった財布がすぐに見つかった。あまりにもあっさりと見つかり、思わずもう一回鳴動させてしまった。
 
本の下にあったら、いつもなら絶対見逃して、十五分は探していただろう。
それがこんなにあっさり見つかるなんて!
 
以後、財布を探すときは、Chipoloのアプリに頼りっぱなしになった。一応置き場所は自室の机の上と決めているのだが、鞄に入れっぱなしだったり、コートのポケットに入れっぱなしだったり、ちょっとコンビニに行って、キッチンの棚に置いてしまったり、実に多種多様なところに置き忘れる。いつもその度にあちこち探して苦労していたのだが、音が鳴るというだけで、探し物はなんと楽になるのだろうか。
 
出先で自分が財布を忘れてしまったような気がする時も、Chipoloを鳴らせば、音がするならばどこかしらには身に付けているらしいと安心することもできた。それで音が鳴らなければ、立ち寄った道順を逆に辿っていけば、トイレか店で発見できる。出発時点で財布を持っていないような気がしてChipoloを鳴らしてみると、鞄の底の方で鳴動した、なんてこともあった。以前なら、財布をなくしたかもとなると、鞄やポケットの中身を何度も全部ひっくり返し、絶対に鞄に入っていない、と確信してからでないと探しに行けなかったので、ものすごく時間がかかっていた。探す時間が短縮されるというのは本当に画期的だった。
 
更に、ChipoloからiPhoneを鳴動させられるのも意外と便利だ。今までは夫か誰かに頼んで電話をかけてもらうか、PCを起動して「探す」で鳴動させて探していた。他人に頼むのは申し訳ないし、PC起動は時間がかかる。Chipoloなら本体をダブルクリックのように強く二回押すだけなので、すぐに鳴動、見つけることができる。地味ではあるが、かなり活用できる機能だ。
 
財布とiPhone、この二つが同時に見つからないことは滅多にないので、外出前の探し物の時間がぐっと短縮され、ストレスが大いに減った。万一両方見つからない時は、まずiPhoneをどうにかして探し出し、そこからChipoloで財布を見つければいい。見つける手順がはっきりしているので、やみくもにあちこち探さなくてよくなったのだ。
 
スマートタグはいくつか種類があり、Chipoloをすっかり気に入った私は、他の種類のタグも購入してみた。安価なものはBlueTooth接続が不安定になったり、鳴動音が小さい、電池がすぐに切れてしまうことがネックとなり、すぐに使わなくなった。しかしある時Chipoloごと財布を水没させてしまい、iPhoneを呼び出すことはできるが、アプリからChipoloを呼び出す時に音がしなくなってしまった。これでは財布を探すことが出来ない。買い替えないといけないかな、と思っていた矢先、親戚の姉が、Tileというスマートタグをプレゼントしてくれた。姉は私がChipoloを使っていることは知らなかったが、便利そう、きっと喜んでくれるだろう、と選んでくれたらしい。渡りに船だ! 早速Tileを使ってみると、Chipoloと遜色なく使うことができた。iPhoneで呼び出し音を止める時の操作は、Tileの方が操作性が高く、Chipoloよりも優れているといえるかもしれない。その他にも、Chipoloよりも高価な商品では、スマホとタグが一定距離以上離れると、鳴動してお知らせする機能があり、スリや置き引き防止にも役に立つのだそうだ。また、スマートスピーカーと連動できるような機種もあるらしい。夫もTileを見て羨ましがっているので、そちらの高スペックな方を目下検討中である。

 

 

 

「結局、元の場所にきちんと戻しておけばいいんでしょ」
 
スマートタグの魅力を説くと、苦笑いしながらそんな風に言われることがある。
 
モノをなくさないためには、モノの定位置を決めて何が何でもそこに戻すようにすればいい、というのは私も重々承知している。部屋を大掃除した時も、荷物を減らそうと思い立った時も、いうなればもっと前からそんなことは理論としては分かり切っていて、何度も何度も挑戦していた。大切なものをすぐさま元の位置に戻す行為は、私にはものすごくエネルギーを必要とする。頭の中に次々と浮かんでくる雑念を振り払い、手にしたものから意識が逸れないよう集中し、定位置まで持って行く。集中のあまり鬼気迫る表情をしていることだろう。財布を置いて、スマホを置いて、次は……と一つ一つやっていると、それだけでへとへとに疲れ切ってしまうのだ。
 
そうやって、どれだけ覚悟をもって頑張って元に戻しているつもりでも、どうしてもうっかり、という瞬間ができてしまう。何の苦もなく元の位置に戻せるようなしっかりした人の日常と比べて、かなり頻繁な回数でうっかりしてしまうのだ。うっかりをなくそうとすると、更に集中力を要するので、また疲労困憊することになる。わざわざ苦行のような思いをして頑張るよりも、便利なツールを使って快適に暮らすのが、現代の雰囲気には合っているのではないだろうか。
 
モノなくしエキスパートの私だが、スマートタグのおかげで、財布と鍵をなくすことはなくなった。更にスマホは専用アプリを使えば、なくして困る三種の神器を守ることが出来るのだ。スマートタグがなかったら、私の生活はみじめでストレスフルなままだったに違いない。
 
もしも貴方が、財布に限らず何か探し物で日々困っていたら、スマートタグを使ってみることをオススメする。
きっと探し物のストレスから解放されて、日々がちょっと楽しくなるはずだ。

 
 
 
 

◽︎吉田けい(READING LIFE編集部公認ライター)
1982年生まれ、神奈川県在住。早稲田大学第一文学部卒、会社員を経て早稲田大学商学部商学研究科卒。在宅ワークと育児の傍ら、天狼院READING LIFE編集部ライターズ倶楽部に参加。趣味は歌と占いと庭いじり、ものづくり。得意なことはExcel。苦手なことは片付け。天狼院書店にて小説「株式会社ドッペルゲンガー」を連載。
http://tenro-in.com/category/doppelganger-company

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