心が散らかって書けなかった私と、整理整頓が得意な私のパートナー《週間READING LIFE テーマ‘生成AIとライティングスキル’》
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:藤原 宏輝(READING LIFE編LIFE編集部ライターズ倶楽部)
「やっぱ無理だ、なんで上手くまとまらないんだろう。伝えたいこと、書きたいことはたくさんあるのに。私ってほんと才能ない……」
深夜0時。静まり返ったオフィスで、私はディスプレイの明かりに照らされながら、また立ち止まっていた。
「書きたいことはたくさんあるのに、それなのに上手く書けない。しかもあと24時間で締め切りだ」私は焦っていた。
初めてのライティングゼミ、私にとっての初めての挑戦。
週末になると土曜日23:59に向けて心臓がバクバクして、焦りで身体が冷たくなる感じがする。
そんな私は幼い頃から、本が好きだった。
国語の時間が好きで、作文や読書感想文を書くのも嫌いではなかった。小学生の頃、夏休み明けに作文や感想文が入選し、先生に褒められたこともある。
書くことが大好きだったし、誰かの書いた文章を読むたびに、何度も心を動かされてきた。
たった一行で、景色が浮かぶ。
たった一言で、涙が出る。
言葉には、人の心を揺らす力がある。子どもながらに、そう感じていた。
だから、いつか自分も“書ける人”になりたいと思っていた。
けれど、その“いつか”は、なかなか来なかった。
やっと今、書ける環境に身を置いたのに、1人寂しくここで挫折寸前。
ブライダルの仕事を始めて、気づけば25年以上が過ぎていた。これまで2,000組以上のご新郎・ご新婦様と向き合ってきた。
泣きながら、誓いの言葉を読むご新婦様。
娘の手を離す瞬間、顔をくしゃくしゃにして涙をこらえるお父様。
ぎこちなく手を取り合う、ご新郎・ご新婦様。
結婚式と披露宴の数時間の中には、人の人生が凝縮されている。
私は、その瞬間に立ち会えるこの仕事が好きだった。
華やかに見えるその世界の裏側で、朝は誰より早く会場に入り、夜は誰より遅く帰る。段取りを組み、トラブルを収め、感情の波に寄り添い、ときには家族以上に深くお客様の人生に関わってきた。
気づけば、仕事が私の人生そのものになっていた。
そんな日々の中、コロナ感染拡大で世界は突然止まった。
何組もの結婚式は延期やキャンセルになり、人と人が集うことそのものが慎重に扱われる時代になった。
祝福の場所に、一気に静けさが降りた。
けれど私には、その静けさの中だからこそ、見えたものがあった。
それは、スタッフたちの成長だった。
これまで私が背負っていた現場を、一人、また一人と任せられるようになっていった。判断する力。支える力。現場を守る力。
気づけば、みんな頼もしくなっていた。
ある日、ふと思った。
「私は、そろそろ現場を離れて、違うことをやってみようかな」
長年、全力で走ってきた人間が立ち止まるのは少し怖い。けれど、心の奥で小さく灯るものがあった。
違うこととは、新しい事業でも、派手な挑戦でもなかった。
それは、書くことだった。
結婚式の現場で、私はずっと考えてきた。
‘けっこんって、何だろう’
幸せまっしぐらに見えたご新郎・ご新婦様が、ふとしたことで離れていくこともある。
口数の少ないお父様が、ご新婦様の門出に誰より泣くこともある。
見栄で派手に飾った式より、ささやかな一言がご家族を救うこともある。
私は様々な人たちの人生の入口に立ちながら、結婚の本質を見続けてきた気がする。
これから、結婚する人へ。
結婚に、迷っている人へ。
人生の岐路に立つ、若い世代へ。
そして、婚姻件数も出生数も減り、未来に少し元気がなくなっているこの国へ。
何かを残したい。
何かを伝えたい。
その想いが、少しずつ膨らんでいった。
思い返せば、最初の一歩は数年前だった。
2023年7月。通りかかった書店で偶然見つけた‘フリーライター養成講座(入門編)’
心が動き、すぐに申し込んだ。
講師の三浦先生は、私の人生を大きく動かした3人の三浦さんのうちの1人。
少し余談だが、実はこの3人の三浦さんには、意外な共通点がある。その1つは髪型、そしてもう1つは東北出身。そして3人とも、とにかく魅力的で周りの人たちをどんどん巻き込んでいく、時には私を厳しく指導してくださる。さらに、見た目と中身のギャップが激しい。
3人の三浦さんは、私にとってなくてはならない先生だ。
私は仕事の合間に時間を作り出し、リアルタイム通信で学び、ノートを取り、文章の構成やタイトルの付け方に夢中になり、講座に没頭していった。
こんなにも“書く技術”があるのかと驚いたし、プロの思考法も学んだ。
けれど、現実は甘くなかった。
繁忙期になれば、仕事が押し寄せる。スケジュールの調整が上手く出来ない、オフィスの電話は鳴りやまない。
受講したい講座はアーカイブとなり、さらに後回しになる。気づけば課題は未提出のまま積み上がっていった。
そして、静かに途中で挫折した。
「やっぱり今の私には、無理だったか」
そう思った。
それでも、書くことや学ぶことは心のどこかでずっと引っかかっていた。しかし、目の前には仕事があり、責任があり、人がいた。
夢より現場、想いより業務。
そう言い聞かせて私は、“書きたい自分”にそっと蓋をした。
2024年、年明け。
再び、ライティング講座に挑戦した。
「今度こそやる、やり切る。今度こそ書く」
そう決めて始めた。けれど、また壁にぶつかった。
テーマはある。経験もある。伝えたいことも山ほどある。
なのに、文章にならない。
深夜のオフィスで、一人パソコンに向かう。メモ帳には何年分もの断片が並んでいる。
ご両親様との距離感。
ご夫婦の会話。
結婚式当日に見えた本性。
うまくいく二人の共通点。
恋愛と結婚の違い。
素材は山ほどあるのに、一文字目が出てこない。
何から書けばいいのか分からない。書いては消し、消しては止まる。
「なんで、私は書けないんだろう」
静かな夜に、その問いだけが残った。
課題が締め切り時間までに出せない、投稿レベルに全然達しない。
「才能がない、上手く書ける人が羨ましい。やっぱり、また無理なんだ」
せっかく、書く事を学ぶ。と決めて‘ライティング・ゼミ’を受講し始めたのに、途中での早々に二度目の挫折をした。
だんだん時間が流れていく中、二度も挫折した自分に対して腹立たしかったし、悔しかった。
「私は、自分から学びたい。と受講し始めたのに、途中でしかも二度も挫折なんて。カッコ悪いし、スッタフにも恥ずかしくていえない」
と悶々とした日々を過ごしていた。
そして、講座の担当者に
「もう一度、コース途中に合流という形でライティングゼミを受講し直したいんです」
と勇気を振り絞って、メールで伝えた。
「何、今さら言ってるの」と思われてしまうのでは? と内心とても怖かった。
すると、担当者に6月開講か8月開講のコースを勧められた。さらにここで、担当者はさらに新しい提案として
「8月開講コースもいいのですが、9月から始まるライティングゼミは、マスターAI対応コースなので、そちらの方がお薦めです」
予想外の返信メールに驚きを隠せず、内容を読んだら、正直少し身構えた。
「AIなんて、聞いたことはあるけど難しそう。若い人のものだろう。私には関係ない」
ついさっきまで、そう思っていた。
けれど、講師の名前を見た瞬間、ビシッと背筋が伸びた。
以前の講座で出会った、印象深い三浦先生だった。
「しかも、今回のライティング。ゼミが最後の登壇だという。これは、もう一度挑戦しなさいということかもしれない」と感じた。
三度目の正直。2024年9月コース。
また私は、ライティング・ゼミを受講した。そして、AIと出会った。
最初は、便利な検索ツールくらいに思っていた。質問すれば答える。文章を整える。そんなものだろうと。勝手に決めつけていた。けれど、AIは違った。
「何を書きたいのですか?」
「誰に届けたいのですか?」
「その経験の価値は何ですか?」
AIはまるでラリーのように、私に問い返してきた。
私は戸惑いながら、どんな事を書きたいと思っているのか、誰に届けたいのか、その価値をAIに向けて、具体的に1つ1つを丁寧に言葉にした。
すると、頭の中で散らばっていた言葉たちが、少しずつ形になって返ってきた。まるで、散らかった部屋が少しずつ片付いていくかのようだった。
私は、そのとき初めて気づいた。
「私が書けなかったのは、頭の中にある言葉と心の中には思いが、あちこちに散らかっていただけだった」
頭と心の整理整頓、散りばめられた言葉と思いの整理整頓をAIはしてくれた。
AIは答えをくれる存在ではないし、文章を書いてくれるわけではないのだ。私の中にある答えを引き出す、という重要な存在だった。
深夜2時。静まり返ったオフィスで、私はディスプレイの明かりに照らされながら、また立ち止まっていた。
25年以上のブライダルプロデューサーとしての人生の中で、
「まもなく扉を開けます、どうかお2人でしっかりとお進みください」と伝え、チャペルの扉を手前へ思い切り大きく開ける。
「それでは、行ってらっしゃいませ」
と聞こえるか聞こえないかの音で言葉を発して、深々と頭を下げる。
そこから一歩ずつ、ご新郎様の元へと進んで行く‘ご新婦様とお父様の背中’に滲み出ているような思いを書きたい、伝えたい。
けれどいざ書き始めると、どう書き出しても、ありきたりな言葉になる。
感動的でした。
涙があふれました。
そんな言葉では、あの場の本当の空気がこぼれ落ちてしまう気がした。
“結婚式の始まりのワンシーンで、お父様がご新婦様の腕をご自分からそっと外し、その手をご新郎様に渡す瞬間を書きたい。
でも、どうしても言葉が薄っぺらくなるの。どうしたら、あの温度が伝わる?”
私はすがるような思いで、AIに問いかけた。
数十秒でAIから返ってきた言葉は、とても静かだった。
「その時、お父様の手はどう見えましたか? 震えていましたか? 力強かったですか? 手を離した後の動きに、KOKIさんしか知らない真実があるはずです」
私は、ハッとした。
思い出したのは、ご新婦様の手を渡した直後のお父様の指先だった。
自分のズボンの横で、所在なげに何度も丸まり、また開く。
まるで、さっきまでそこにあった娘の温もりを、まだ確かめているように。
その分厚い手には、27年の子育ての終わりと、これからの幸せを願う祈りが詰まっていた。
そこから、景色が変わった。
深夜に1人オフィスで文章と向き合っていた頃、私はいつもすぐに心が折れていた。
「やっぱり無理だ。何を書いているのか分からない。こんなの誰も読みたくないだろう」
そんな言葉が、頭の中を支配していた。
けれど今は違う、迷ったら相談できる。
AIは、読者視点を教えてくれたり、タイトルを一緒に考えましょうか? とか、話しが散らかっていれば整えてくれる。動き続けてくれる。さらに、視点が足りなければ、増やしてくれる。
「これからの時代は、AIに仕事が奪われる」とよく耳にする。
でも私は思う。
AIが奪ったのは、仕事ではない。“ひとりで悩み続ける時間”だ。
もちろん、AIがすべてではない。
AIは文章を整えることや構成も作れる、画像や音楽も作れる、速度も圧倒的だ。
けれど、人生の痛みは経験していない。
悔しくて、眠れなかった夜。
誰かの優しさに救われた朝。
失敗して、立ち尽くした瞬間。
大切な人を想って、胸が熱くなった記憶。
それらは、人間だけが持つものだ。
同じ「ありがとう」でも、十年越しの感謝と社交辞令では重さが違う。
同じ「さようなら」でも、明日また会える別れと、一生会えない別れでは意味が違う。
その温度差を知っているのは、人間だけだ。
これからの時代に必要なのは、AIに任せきることではない。自分の人生を、自分の言葉で語り、伝えることだと思う。
AIに自分を映し出し、自分の中にある『温度』を再発見する。これこそが、これからの時代を生きるライターに必要な、新しいスキルだと思う。
‘AIは文章を書いてくれる存在ではない’私の中に眠っていた記憶の解像度を上げ、私の曖昧な問いかけに対して、鋭く、時に優しく問いを返し、言葉にならなかった感情を見つけ出してくれる。
私が本当に『書くべきこと』を思い出させてくれる、そんな存在だった。
失敗したことも、遠回りしたことも、悩んだ日々も、誰かの役に立つ言葉へ変えられるかもしれないと思えるようになった。
人生に無駄な時間はなかったのだと、文章を書くたびに感じる。
書くことは、才能だけではない。技術であり、習慣であり、対話であり、挑戦だ。
そして時に、誰かと一緒なら越えられる壁がある。その誰かがAIだった。
2023年の挫折と、その後さらに2024年年明けの挫折があり、3度目のライティング・ゼミ(マスターAI版)に挑戦したから、今の私は胸を張って言える。
書けなかった私を、AIが言葉を整理整頓し整えてくれた。
ブライダルプロデュースは、ご新郎・ご新婦様の抽象的な願いを丁寧に聞き出し、1つずつの夢や理想や想いを形にしていき、形ある1日に整えていく『編集』作業そのもの。
AIを社内導入し、スタッフと一緒に披露宴の進行や内容をチェックしたり、ライティングゼミの課題原稿に向き合う中で、私はある確信に至った。
ライティングもまた、自分の中に散らばっている膨大な記憶と感情を拾い集め、誰かに届く形に整える『編集』なのだと。
現場でご新郎・ご新婦様の想いを形にすることと、真っ白な画面に言葉を紡ぐこと。その本質は、驚くほど似ていた。
1人で悩み立ち止まっていた時間は、AIというパートナーを得たことで、自分自身を深く知るための豊かな対話の時間へと変わり、私はAIと一緒に自分の言葉を取り戻した。
これからも、AIという最高のパートナーと共に、次は何を創り出すのか?
まだ見ぬ物語を紡ぎ続け生成AIと寄り添い、未来や次世代に向けて必ず何かを残していこう。
【終わり】
❒ライタープロフィール
藤原宏輝(ふじわら こうき)『READING LIFE 編集部 ライターズ俱楽部』
愛知県名古屋市在住、岐阜県出身。ブライダル・プロデュース業に25年以上携わり、2200組以上の花婿花嫁さんの人生のスタートに関わりました。思い立ったら世界中どこまでも行き、知らない事はどんどん知ってみたい。好奇心旺盛で、即行動をする。
何があっても、今を全力で生きる。切り替えが早く、とにかく前向き。
これまでのブライダル業務の経験を活かして、次の世代に、未来に何を繋げていけるのか?
といつも模索しています。2024年より天狼院で学び、日々の出来事から書く事に真摯に向き合い、楽しみながら精進しております。
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