週刊READING LIFE Vol.30

「好きを仕事に」じゃなく、いつか「好きが仕事に」なればいいな《週刊READING LIFE Vol.30「ライスワークとライフワークーーお金には代えられない私の人生テーマ」》


記事:しゅん(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

「好きなことを仕事にしている人は、20代以上の社会人のうち何%でしょう~?」
当時、小学生だった娘とクイズ番組を見ていた。

 

娘は「そんなに居ないでしょう~? 32%くらい?」
私も「そんなに居ないだろうな、25%くらいかな?」

 

「答えは、68%でした~」

 

「えーー、そんなにいるの?」
娘も私も同じように驚いた。

 

私の場合、二つの意味で驚いた。
一つ目は、思った以上に、世の中の人が好きなことを仕事にしている、ということに。
二つ目は、小学生の娘が、世の中の人は好きなことを仕事にしていない、と思っていることだった。

娘の一番近くで、働く姿を見せているのは父親である私だ。
私の働く姿勢を見てそう感じているのだろう。
確かに時々「あぁ、行きたくない」「帰りたい」「家でゴロゴロしていたい」と言ってしまっている。

 

将来働くことに対する希望を潰してしまっているようで申し訳ない気持ちで一杯だった。

 

これはいかん。
父親が楽しく働く姿勢、楽しく働く背中を子供に見せてあげなくては。

 

そう思ったのが4,5年ほど前だ。
その頃、会社生活に行き詰まりを感じていた。

 

入社したばかりの頃は、仕事を覚えて一人前になることで精一杯だった。
中堅になったら、仕事を任せられるようになり目の前の仕事にひたすら取り組んだ。
がんばれば、そのうちお金にも余裕ができて、仕事のやりがいもどんどん増して行くんだと勝手に信じてた。
しかし、どうやらそれは昭和の頃の考え方だったようだ。

 

もともと、お金にあまり興味がなく、なんとなく年功序列で給料が上がっていくんだろうと思っていたが幻想だったようだ。とっくにそんな時代じゃなくなっていた。

 

「もうこれ以上給料上がらないんじゃない?」
給与制度をよくよく見たら、そのことに気づいてしまった。

 

また、その頃に一緒に働いていた先輩方が、他の会社への出向や定年で居なくなることが続いた。がんばって働いていても、年齢が上がったら要らない人になっていくんだ。
そんなことにも気づいてしまった。

 

会社の仕事にも身が入らず、

 

このままでいいんだろうか?
このまま会社に居たとして、定年後はどうするんだろう?
何をして生きていくんだろう?
自分は何をして生きていきたいんだろう?
自分のすべきこと、ライフワークはなんだろう?

 

と自分探しを始めた。

 

後から知ったのだが「ミッドエイジクライシス」という言葉があるそうだ。
中年を迎えて、本当にこの生き方で良かったのだろうか? と
これまでの人生を見つめなおしたりこれからの人生を考え直す人が多いんだそうだ。
思春期の中年版らしい。

 

確かに、私の周りの同世代の人間にも、このままでいいんだろうか? と悩んで行動に移している人が何人も居た。そういう年齢なのかもしれない。

 

テレビのCMなどで「好きを仕事に」とよく耳にする。今の社会ではこの考えが一般的なのだろう。私もそう考えていた。

 

「好きなことを仕事にしている人」が自己実現している人であり、
「仕事はそこそこにして趣味に生きている人」は好きを仕事にできなかった人が、仕方なくしている姿だと考えてた。

 

でも「ライフワーク」って、人が一生続けていきたいこと、一生をかけて追い求めたいもの、だと思う。それがお金につながるかどうかは別の話だ。だから仕事にしているかどうかは別の話なのだ。

 

お金になるかどうかなんか考えずに、自分の興味を突き詰めていけばいいのではないだろうか。好きなことを突き詰めていった結果として、気づいたら仕事になっていた、すなわち「好きが仕事に」なっていた、が理想だ。

 

じゃあ、自分が好きなもの、これまでやり続けてきたことってなんだろう?
この質問にすぐに答えられる人は多いのだろうか?

 

こんな時は、「自分がこれまで一番時間とお金を使ってきたものはなんだろう?」と考えるといいらしい。とすると、私の場合は

 

・本を読むこと
・うにゅうにゅ考えて、悩むこと
・悩みを書き出すこと

 

だ。一つ目の「本を読むこと」はいいとして、二つ目はなんだ?
自分で書いておいてなんだが、「うにゅうにゅ考えて、悩むこと」ってなんだろう?

 

これは「ああかな? いや、こうかな? いや、でも?」と悩むことだ。

 

こんなのをライフワークと言っていいのだろうか?

 

いいのだ。なんでもいいのだ。
格好いいことを言わないといけない、と思うからなかなか出てこないだけで、こんなんでもいいのだ。きっと。

 

でも、「うにゅうにゅ考えて、悩むこと」は言い方を変えれば、「物事の可能性、選択肢がたくさん頭に浮かんでしまい、どれがいいのかが決められずに悩むこと」だ。物事の可能性、選択肢をたくさん思い浮かべるのが得意なんだろう。ただ、それぞれの優先度がわからない、もしくは決断するための情報が足らないだけなのだ。

 

そして、3つ目の「悩みを書き出すこと」。
頭の中だけでうにゅうにゅ考えていると、同じ考えが頭の中をぐるぐる、ぐるぐる回るだけで先に行けない。そこで、書き出す。書き出すことで、ぼんやりした考えが形をもって明確になる。明確になることでこれまでぼんやりしていた考えが整理され、これまで気づかなかったことに気づく。気づくことで決断できるようになる。

 

これが、これまでの人生で多くの時間とお金を使ってきたことだ。
すなわち、これが私が一生続けていくライフワークなのだ。

 

今は、3つ目の「悩みを書き出すこと」を強化している。
ライティングを強化することで、自分のためだけでなく、他の人にも役に立つ文章を書きたいと考えている。

 

書くことを突き詰めることで「気が付いたら文章を書くことが仕事になっていた」となったら最高だ。ならなかったとしても続けていくことだろう。なぜならそれがライフワークだからだ。

 

「羊と鋼の森」という小説を読んだことがあるだろうか?

 

「ピアノで食べていくのは大変だよ?」と言われたピアニストを目指す女の子は、こう答えるのだ。

 

ピアノで食べていくんじゃない。
ピアノを食べて生きていくんだよ。

 

この言葉にライフワークという言葉の意味が詰まっているように思う

 

「好きを仕事に」することがすべてじゃない。
自分のライフワークに気づき、続けていくことが幸せなんだと思う。

 

今の私は、時々落ち込むこともあるけど、楽しくライフワークを続けて生きていると思う。
そんな父親の背中を、娘はどう思って見てるのか?

 

今度こっそり聞いてみよう。

 
 
 

❏ライタープロフィール
しゅん (READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
ソフト開発のお仕事をする会社員。
2018年10月から天狼院ライティングゼミの受講を経て、現在ライターズ倶楽部在籍中。
セキュリティと心理学と創作に興味があります。
 


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2019-04-29 | Posted in 週刊READING LIFE Vol.30

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