現役アナウンサーが教える 「ナレトレ〜恋する声〜」ナレーションで身につく伝達力

第16回:「話す」ことは「奪う」こと 《ナレトレ~恋する声~現役アナウンサーが教える! ナレーションで身につく伝達力》


2021/12/06/公開
記事:渡辺美香(READING LIFE編集部公認ライター)

鍛えられるのはコレ!

心地よい、品のいい話し方
話し方を工夫しようという意識

 
 
「話す」ことは「奪う」ことです。何を奪うのか、おわかりでしょうか。
そう、奪うのは、相手の時間です。
相手が聴かなければ、こちらも話すことはできません。聴いてくれる相手は、あなたが話している間中、ネットの記事を読むことも、映画をみることも、散歩をすることもせずに、「聴く」ことに時間を使ってくれています。
人生の時間は限られています。そんなかけがえのない相手の時間を、あなたが、「話す」ことで奪うのです。
 
こんな風に書くと、いささか大げさかもしれませんが、その証拠に、最近は、1.5倍速や、2倍速で動画やオーディオブックを聴く人も増えていますよね。
時間を奪われたくないという気持ちを現れなのではないかと思います。
 
私が普段関わっているテレビ番組づくりは、奪っている時間をいかに有意義に感じてもらうかという作業ですので、表現の無駄などは極力省きます。
たとえば、下記の文章があるとします。
 

長野県松本市は、市内に16の温泉地があります。
正に温泉の宝庫です!その中でも、今回は、松本市街地から車に乗っておよそ20分の場所にある美ヶ原温泉を紹介します。
奈良時代に開湯したここは、古くからの街並みが残っていて落ち着いた雰囲気を味わうことができます。
今回は、これからの季節におススメの観光地、美ヶ原温泉を特集します!

 
声にだすと、だいたい32秒くらいです。
しかし、余分な言葉が、相手の時間を奪っています。これを、ナレーション風の原稿にしてみると下記のようになります。
 

今回、やってきたのは、長野県松本市!
市内に16もある温泉の中から、美ヶ原温泉を紹介します。
開湯は奈良時代。古い街並みは雰囲気も抜群です。
これからの季節におススメ! 美ヶ原温泉を特集します。

 
これで22秒くらいです。
(「松本市街地から車に乗っておよそ20分」は、テレビの場合は、地図や字幕スーパーで表示できますので省きました。)
 
両方の文章を、一度、声に出してみてください。
どちらが耳にのこりやすいですか。
おそらく、二つ目の文章ではないかと思います。
 
しかし、一方で、味わい深いのはどちらでしょうか。
味わい深さで文章全体をみたときには、一つ目のほうが、魅力的に感じるのではないでしょうか。
「雰囲気も抜群です」と表現するより、「落ち着いた雰囲気を味わうことができます」のほうが、情緒を感じますね。
 
このように、文語と口語は、違うのです。
文章は、自分のペースでじっくり味わったり、読み飛ばしたりすることができますが、話し言葉は、聴きとばすことができません。会話は2倍速にはできないですしね。
だからこそ、「相手の時間を奪っている」ことを、文章以上に意識する必要があるのです。
 
ただ、口語だからといって、何もかも端的にすればいいというものでもありません。話した言葉は、言った先から消えてしまいますから、相手の印象に残るように繰り返し伝える必要もあります。
講演などで、登壇者が繰り返すのはそのためです。政治家の演説もそうです。
仮に、上記のナレーションが番組になった場合、おそらくCMの前やあとのタイミングで「今回は、古い町並みが残る美ヶ原温泉を紹介しています!」と繰り返し伝えることになるでしょう。
 
ナレトレは、文章を読むことで、話す力をつけてもらおうというメソッドです。
しかし、発声や、表現力を身に着けたその先には、文章言葉ではない、話し言葉での表現が待っています。
「話す」ことは「奪う」こと。
そう意識するだけで、ダラダラと話しつづけたり、逆に、いい加減なしゃべり方で説明不足になったりすることも防げるようになると思います。
 
頭の片隅に置いておいてくださいね。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
渡辺美香(READING LIFE編集部公認ライター)

名古屋のCBCテレビアナウンサー。26年にわたり、テレビラジオで、バラエティからドキュメンタリーまで、7色の声でさまざまな朗読やナレーションを担当。全国のアナウンスメント審査で最優秀賞の受賞歴も持つ。現在の担当番組やナレーション TV「まちイチ」、ラジオ「渡辺美香のWhat a wonderful world」「きく!ラジオ」「石塚元章ニュースマン!」など。

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