現役アナウンサーが教える 「ナレトレ〜恋する声〜」ナレーションで身につく伝達力

第17回:手紙を読む「サンタクロースはいるんだ」《ナレトレ~恋する声~現役アナウンサーが教える! ナレーションで身につく伝達力》


2021/12/20/公開
記事:渡辺美香(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 

鍛えられるのはコレ!

語りかける力

 
 
最近、手紙を書きましたか?
LINEやメッセンジャー、Twitterでもない、手紙です。
今の時代、中途半端な気持ちでは、手紙を書くに至りません。手紙で伝えたいほどの強い思いがなければ、便箋一枚埋めるのに、息も絶え絶えになってしまいます。だからこそ、丁寧に書かれた手紙には、時に、読む相手の反応を慮る心遣いや、口には出せないような心の声がにじみ出ていて、とても味わい深いものです。
 
自分の手紙を、自身で声に出して読むのもいいですが、作家の書簡や、小説の中のシーンを読むのも楽しいです。
手紙は口語体ですが、あくまで手紙で、しゃべりではありません、
一方的に続く長い文章なので、会話をするように感情的になりすぎると、暑苦しくなってしまいますし、かといって、字面を追って事実を伝えるだけでは足りません。
届ける相手を思い、語りかけるように、自分らしい魅力的な読み方に挑戦してみましょう。
 
今回は、クリスマスシーズンにおすすめの「サンタクロースはいるんだ」(「青空文庫」から一部抜粋)をとりあげます。
これは、1897年、アメリカのニューヨークのサン新聞に掲載された社説です。
8歳の女の子から届いた手紙に、論説委員フランシス・チャーチが丁寧に返答したもので、その後、世界中で訳され、一世紀が過ぎた今もベストセラーになっています。
 
友達に、「サンタクロースはいない」と言われたヴァージニア。「こんにちは、しんぶんのおじさん」という書き出しで、「サンタクロースは本当にいるのですか」と質問します。
抜粋箇所は、そのあとの返答の部分です。
まずは一度、気楽な気持ちで声に出してみてください。
 

ヴァージニア、それは友だちの方がまちがっているよ。きっと、何でも疑いたがる年ごろで、見たことがないと、信じられないんだね。でもね、ヴァージニア、大人でも子どもでも、何もかもわかるわけじゃない。
じつはね、ヴァージニア、サンタクロースはいるんだ。愛とか思いやりとかいたわりとかがちゃんとあるように、サンタクロースもちゃんといるし、そういうものがあふれているおかげで、ひとのまいにちは、いやされたりうるおったりする。もしサンタクロースがいなかったら、ものすごくさみしい世の中になってしまう。ヴァージニアみたいな子がこの世にいなくなるくらい、ものすごくさみしいことなんだ。
ほんとのほんとうっていうのは、子どもにも大人にも、だれの目にも見えないものなんだよ。サンタクロースはいない? いいや、今このときも、これからもずっといる。ヴァージニア、何千年、いやあと何十万年たっても、サンタクロースはいつまでも、子どもたちの心を、わくわくさせてくれると思うよ。

 
 
ステップ1 語りかける相手を想像し、自然な表情を意識する
 
特定の相手にどんな表情で伝えているのかを意識することで、声の温かみやトーン、スピードなどが変わります。
これは、8歳の女の子に宛てたものです。どんな顔の表情で伝えますか。やさしい笑顔でしょうか。笑顔はもちろんですが、内容をよく読むと、そればかりではないことが分かります。
たとえば、下記の部分はどうでしょう。
 
(目を見開いて)もしサンタクロースがいなかったら、
(さみしそう)ものすごくさみしい世の中になってしまう。
(真剣な表情)ヴァージニアみたいな子がこの世にいなくなるくらい、ものすごくさみしいことなんだ。

 
8歳の子を目の前にすれば、こんな風に表情は変わるかもしれません。無理に表情をつくる必要はありませんが、語りかけている相手をしっかり想像しましょう。顔の表情は、声の表情にちゃんとリンクします。
 
 
ステップ2 感情のでる「終助詞」を大切にしよう
 
一行目にでてくる「それはまちがっているよ」の「よ」
二行目の「信じられないんだね」の「ね」
三行目の「小さな小さなものなんだ」の「だ」
これらは、終助詞と言います。
終助詞は、文末につくことによって、書き手の感情やキャラクターをイキイキとさせますが、発し方ひとつで、印象がずいぶんと変わってしまいます。
たとえば、一行目の終助詞「よ」に注目してみましょう。
 
「ヴァージニア、それは友達のほうがまちがっているよ」
 
① 強く短く発すると、突き放した印象に。
② 音を下げるとと、断定した感じに。
③ 小さく軽く切ると、優しい印象に。
④ 音を上げると、言い聞かせるように。
⑤ 「よお」とのばすと、コミカルな印象に。

 
この場合は、③や④の読み方がしっくりときそうです。
終助詞には、希望をあたえたり、強く言い聞かせたり、感動を表したりと、さまざまな効果があります。大切に読みましょう。
 
 
ステップ3 大事な言葉は、しっかりとかみしめる
 
口語文では、息づかいを一定にする必要はありません。誰かに何かを語りかけるときには、時には、興奮してスピードが速くなったり、逆に落ち着いてきて、スピードが遅くなったりするのが普通ですし、大事な言葉を伝えたいときは、ゆっくりとかみしめるものだと思います。あくまでも聞きやすい感情の振れ幅の中で、それらをとりいれてみてください。
たとえば、下記の部分です。
 
「じつはね、ヴァージニア、サンタクロースはいるんだ。」
 
<かみしめワード>
(後ろに間を)サンタクロースは……
(しっかり)いるんだ
 
「愛とか思いやりとかいたわりとかがちゃんとあるように」
 
<かみしめワード>
(愛)愛とか
(思いやり)思いやりとか
(いたわり)いたわりとかがちゃんとあるように
 
「サンタクロースもちゃんといるし、そういうものがあふれているおかげで、ひとのまいにちは、いやされたりうるおったりする」

 
<かみしめワード>
(癒しを想像し)いやされたり
(みずみずしく)うるおったりする

 
こんな風に、伝えたい言葉をかみしめながら話すことで、相手の心に印象的に内容を伝えることが出来ます。
手紙は、語りかける力がためされます。
今回、それがもっとも試される部分は、下記ではないかと思います。
 

ほんとのほんとうっていうのは、子どもにも大人にも、だれの目にも見えないものなんだよ。サンタクロースはいない? いいや、今このときも、これからもずっといる。ヴァージニア、何千年、いやあと何十万年たっても、サンタクロースはいつまでも、子どもたちの心を、わくわくさせてくれると思うよ。

 
「表情」「終助詞」「かみしめワード」を意識しながら、ここは、自由に読んでみてください。
素敵な言葉は、声に出すことで、自分の心への栄養にもなりますよ。
 
 
レッツ!ナレトレ
 
 

□ライターズプロフィール
渡辺美香(READING LIFE編集部公認ライター)

名古屋のCBCテレビアナウンサー。26年にわたり、テレビラジオで、バラエティからドキュメンタリーまで、7色の声でさまざまな朗読やナレーションを担当。全国のアナウンスメント審査で最優秀賞の受賞歴も持つ。現在の担当番組やナレーション TV「まちイチ」、ラジオ「渡辺美香のWhat a wonderful world」「きく!ラジオ」「石塚元章ニュースマン!」など。

この記事は、人生を変える天狼院「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」をご受講の方が書きました。 ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325


■天狼院書店「シアターカフェ天狼院」

〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 WACCA池袋 4F
営業時間:
平日 11:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
電話:03−6812−1984


関連記事