週刊READING LIFE vol.238

「わがままってそういう意味だったんだ!」思い込みから解放されて生きることが楽になった《週刊READING LIFE Vol.238「この言葉って、そういう意味だったんだ!」》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2023/11/6/公開
記事:松本 萌(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
私は自分のことを、ずっとわがままな人間だと思っていた。
幼いころならまだしも、いい大人になって「わがままな人」と言われたくないし、「私ってわがままなんだよな」と思いながら生きたくない。
 
「わがままと言われないようにするにはどうすればよいか」を考えて取ってきた行動が、実は大いなる間違いであることを知ったのは3年前のことだ。
「なんだ、そうだったんだ! わがままの意味を間違えてたよ」と嬉しく思うとともに「勘違いして生きてきた、30年以上のこの月日はなんだったのだろう」とガクッともなった。
このタイミングで気がつくことに意味があるのだろうと気を取り直し、今は楽しくのびのびと生きている。
 
私がずっと自分のことをわがままな人間だと思っていたのには、幼いころの思い出が影響している。

 

 

 

「萌はわがまま! いつも萌ばっかりずるい!」
我慢ならないとばかりに、姉が幼いころの私に言った言葉だ。
 
私には4歳離れた姉がいる。
姉はいつもにこにこして愛想が良く、お喋りだった。赤ちゃんのころからぱっちりとした目で、ほっそりとした体型だった。華奢な体型は今も変わらない。
私はというと無愛想で、たいてい口をへの字にして黙っていることが多かった。丸々としたお相撲さん体型で、パッと見女の子には見えなかった。
 
姉は愛想もかわいげもない私のことを、よく面倒を見てくれた。
幼稚園から帰ってきて一目散にベビーベッドに駆け寄り「ただいま!」と満面の笑みで話し掛けても、チラッと見るだけでにこりともしない私に対し、めげずに毎日声を掛けてくれた。
一度へそを曲げるとだんまりを決め込み私のことを、手に負えないと母が匙を投げても姉はずっとそばにいてくれた。
 
そんな優しい姉が癇癪を起こし「萌はわがまま!」と怒鳴ったことがあった。そのとき自分が何を言ったのか、何をしたのかの記憶は無い。
今から思うと何も考えずに思ったことを言い、したいと思ったことをしていたのだろう。幼いころの私に深い考えはなく、ただ自分の思いに任せるがままに行動していた。
 
我が家の両親は教育熱心でもしつけに厳しいタイプでもなかった。ちょっとのことであれば「まだ幼いから」と私のことを容認していたに違いない。姉に対し「我慢しなさい」や「自分でやりなさい」と言うことはあっただろうが「3歳の子供ならまだしも、小学生のあなたならそれくらい自分でできるでしょ」というスタンスだったのだろう。そんな親の思いはなかなか伝わらないもので、我慢できなくなった姉が年に数回、思いの丈をぶちまけるかのように「萌はわがまま!」と言った。
いつも私に優しく接してくれる姉がそういうのだから、私はわがままなのだろうと思った。
 
子供のころの記憶はいつまでも残るもので、大きくなってからも「私はわがままな人間」と思っていた。
 
ところで「わがまま」とはどういう意味だろうか。
辞書で調べると「わがままとは自分のおもいどおりに振る舞うこと。また、そのさま。気まま。ほしいまま。自分勝手」と書かれている。ポジティブな意味で使われることは少ない。
 
友達に「私ってわがままかな?」と聞いたことはないので、周囲が私のことをどう思っていたかは分からない。ただ「私はわがままな人」とい思い込んでいるので、思いどおりに振る舞ったり、自分勝手と思われるような言動は慎むようにしていた。
 
いつしか自分の思うとおりに行動することを我慢し、心に浮かんだ言葉を飲み込むことが当たり前になった。「周りの人はどう思うだろう。迷惑にならないかな」と思って行動しなかったり「あっ! 今感じている気持ちを伝えたい」と思っても「空気読んでないって思われちゃうかも。やめよう」と口をつぐんだ。
 
我慢できずに行動したり、口に出したあとは「さっき思わずやっちゃったけど大丈夫かな。変に思われてないかな」と悩んだり「つい思ったままに言っちゃった。相手は傷ついていないかな」と不安に苛まれるようになった。
 
社会人になると週末毎に同期と集まり、飲みながら仕事の愚痴や恋愛話に花を咲かせた。
そんなときも私は聞き役に徹することが多く、同僚の「この前先輩にこんなこと言われたんだけど ひどくない?」という職場の悪口や「この前飲み会で仲良くなった人と2人で飲みに行ったんだけど、2回目はないな」と男性へのダメ出しを「ふーん、そんなことがあったんだ」と相づちを打っていた。
 
同期から「悪口を言わないよね。えらいね」と言われたことがある。
私だって上司や先輩に対し思うところはたくさんあったし、「こんなことあったんだけど、聞いてよ!」と言いたくなることもあった。ただ聞いている分にはなにも感じないが、自分が悪口を言っている姿を想像すると「自分勝手な人と思われるかもしれないから言うのをやめよう」とセーブしていた。

 

 

 

そんな私に転機が訪れたのは3年前の12月だ。
当時の私は心身共にズタボロだった。上司とウマが合わず叱責される毎日で、周囲から孤立していた。唯一の救いが好きな人とのLINEだったが、ある日「結婚することになった」と打ち明けられた。私は恋愛感情を持っていたが、相手は私のことを友達と思っていた。
 
仕事もプライベートもどん底状態になり「もうこんな状態は嫌だ! 変わりたい。今すぐ私は変わるんだ!」と決意し、マインドを学ぶ講座に飛び込んだ。
10人の受講者の年齢や職業はさまざまだったが、みんな自分らしく生きたいと思いながらうまくいかずに悩んでいた。
 
講座では「自分らしく生きる」ために「喜び、恐れ、怒り、悲しみ、自分の感じた全ての感情を否定しない」「どんな自分も受け入れる」ことが目標に掲げられていた。
そのために「ない」ことにフォーカスするのではなく「ある」ことに意識を向ける練習をしたり、自分の短所を長所に置き換える練習をした。
 
例えば短所を長所に置き換える方法はこんな感じだ。
私は「目が小さくて細い」という悩みがある。
「目が大きいほうがかわいいし、細いことでにらんでるって勘違いされることもあるし。いいことなんてないんだよな」と、どうポジティブに置き換えるかを悩んでいたら、母がぼやいていたことを思い出した。
 
私以外の家族はみんな目が大きいが、ひときわ母の目は大きい。あるとき自転車で出掛けていた母が帰って来るなり「さっき大変だったのよ」とぼやいた。どうしたのか聞いたところ「自転車に乗ってたら目の中に虫が飛び込んできてね。思わず目をつむったんだけど間に合わなくて、とても痛かった」と言うのだ。しかもよくあることらしい。
びっくりした。
私にも人生に2、3回は虫が目に飛び込んできて痛い思いをしたことはあるが、母のように頻繁ではなく、非常にまれだ。
 
その時のことを思い出し「目が細くて小さい」という短所を「目が細くて小さいから虫が飛び込んでくることがなく、痛い思いをしなくてすむ」という長所に置き換えて発表したところ、ウケた。
 
講師が実体験を通じて得た教訓を基に作られた講座やワークはどれも納得させられるもので、笑いあり時に涙ありの楽しい時間だった。
 
ただ私には講座当初から心に引っかかるものがあった。
それは「どんな自分も受け入れる」という考え方だ。
 
「自分はわがまま」という考えが染みついている私にとって「どんな自分も受け入れる」ことに抵抗を感じていた。わがままな自分を受け入れて思うがままに行動したら「真のわがまま人間」になってしまうのではないかという恐怖心があった。
受講当初は「講座を受けているうちに自分の考えも変わるだろう」と脳天気に構えていたが、講座が残すところあと1回となっても、自分を受け入れることができなかった。
 
最後の講座では半年間の講座を受けて自分がどう変わったか、今後どう人生を歩むかをみんなで語り合った。オンライン講座だったのでリアルで会ったことはないにもかかわらず、講師と10人の受講生の間には強い絆がうまれていた。
 
達成感や充実感が溢れる中「この空気に水を差すのはどうだろうか」と迷ったのだが、勇気を出して聞いた。
「自分を受け入れることで生きやすくなるということは理解したんですけど。自分の思うままに行動するってわがままになりませんか?」
「この半年、ちゃんと学びましたか?」と怒られないかドキドキしていた私に「萌さんは自分の思ったとおりに行動することがわがままだと思ってるんですね」と優しい声で講師が語りかけてくれた。
 
「自分の思うとおりに行動することと、わがままは違います。自分の思うとおりに行動するとは言葉のとおりです。自分の素直な気持ちを否定せず、自分がしたいと思ったことを行動に移すことです。そこに相手をコントロールしたいという気持ちが加わり、相手の意思を無視して強制的にさせようとすると、わがままになります」
 
講師の優しい語りは続いた。
「感動って言葉がありますよね。感じて動くことで、人は感動するんです。自分の感情を無視せず、行動してみましょう。感動でいっぱいの人生を送れたら、それはとても幸せなことですよね」
 
ストンと言葉が落ちてくるのを感じた。
 
そうか。
天にも昇るような幸福感も、思わず身構えてしまう恐怖心も、押さえつけられない怒りも、涙が止まらないほどの悲しみも、どうにもコントロールできない焦燥感も、すべて私の大切なパーツであり、どれか一つでも「いらいない感情」と思ってしまったら、私ではなくなってしまう。
まずは感じよう。
そして「私はどうしたいの?」と自分に問いかけよう。
 
わがままにならないためのアドバイスも講師は教えてくれた。
「この人はどうして私のことを分かってくれないのだろう」「どうして私が望むとおりのことをしてくれないんだろう」と思ったとき、「私はこうしたい」とか「あなたがこんなことをしてくれたら私は嬉しい」と主語を自分にして伝えるとわがままにはならない。
 
やっと「自分らしく生きる」ことを自分のものにすることができた。

 

 

 

講座が終了して数年経つが、いまも学んだことを活かしている。
嬉しい気持ちや感謝の気持ちを持ったら、すぐ「ありがとう」と伝えるようにしている。
怒りや苦しさを感じたとき「なぜ私は怒っているのか」「何が私をそんなに苦しめるのか」を問うようにしている。自分を俯瞰してみると、怒りや苦しみの感情の裏には「私のことを分かってくれていない」という悲しみの感情が隠れていることに気づく。どんな状況になれば幸せなのか、何を望んでいるのかが分かれば、主語を「私」にして伝えればいい。
それを聞いた相手がどうするかは相手が決めることであり、私はその回答を待つだけだ。怒りに身を任せて感情をぶちまけるより、はるかに健全だ。
 
自分のことをわがままと思い込み、自分を否定して生きてきたが、自分を素直に受け入れることで人生が楽になった。
何十年も生きていれば、自分と合わない人は出てくる。
以前は「この人とは合わない」と思うことがわがままだと思っていたが、今では「どこもかしこも人で溢れてるんだから、合わない人がいて当たり前。気にしない、気にしない。自分が一緒にいたいと思う人といられれば、それだけで幸せ」と思えるようになった。
 
最近姉と話した際「私のどんなところがわがままに感じてたの?」と聞いてみた。
そうしたら「萌がわがまま? 全然わがままじゃなかったよ。泣いたり駄々をこねていた記憶がないんだよね。もっと甘えてくれたらいいのにって思ってたよ」
 
衝撃的な回答が返ってきた。
どうやら年に数回の姉の癇癪を真に受け、ずっと勘違いして生きてきたようだ。思わず笑ってしまった。
姉をもっと頼ろう。そしてたくさんの「ありがとう」を姉に伝えよう。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
松本 萌(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

兵庫県生まれ。千葉在住。
2023年6月に天狼院書店の「人生を変える『ライティング・ゼミ』」に参加し、10月よりライターズ倶楽部を絶賛受講中。実体験を通じて学んだこと・感じたことを1人でも多くの人に分かりやすい文章で伝えられるよう奮闘中。

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2023-11-01 | Posted in 週刊READING LIFE vol.238

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