成長したければ、学生時代の友人と、群れるな《週刊READING LIFE Vol.28「新社会人に送る、これだけは!」》
記事:なつむ(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
春から新社会人になる皆さんへ、一つだけおくるとしたら、「成長したければ、学生時代の友人と、群れるな」と、お伝えしたい。
友人はとても大切だ。
青春時代は二度と帰ってこない。そこで育まれた絆はぜひ、一生、大事にしてほしい。
でも、社会人になったら、今までのあなたをよく知る友人とやたらと「群れる」のはよしたほうがよい。
毎週のように会うのはもってのほか、月1回でもちょっと多い。
半年や1年に1回でちょうど良いくらいだ。
なぜか。
それは多くの場合、あなたの成長を妨げてしまうからだ。
学生時代の友人と群れること、つまりは、今までの自分をよく知っている人たちと濃厚にかかわり続けること。
それは、特に一見悪いことに思えないかもしれない。
どうして成長を妨げてしまうのか。
その理由を理解するために、知ってほしいことは3つ。
まず、人は基本的に変化を嫌う、ということ。
次に、節目のタイミングというのは、変化のストレスに非常に強い時期だということ。
最後に、「三つ子の魂百まで、再び」。
順にお話ししよう。
まず、人は基本的に変化を嫌う。
自分はそんなことはない、と思う人ほど、次の説明を聞いてほしい。
人の意識には無意識(潜在意識)と顕在意識とがある。
自分で分かっているのが顕在意識、自分ではわからないのが無意識(潜在意識)。
どちらが大きいかというと、聞いたことがある人もたくさんいるだろう、そう、圧倒的に無意識(潜在意識)のほうが大きい。
顕在意識はいわゆる「氷山の一角」で、海に浸かっている大部分に相当するのが無意識(潜在意識)になる。
脳科学や心理学に詳しい人がいうには、諸説あるが無意識(潜在意識)は意識全体のおよそ9割を占めるともいう。
大きさが1:9なので、私たちの行動を無意識(潜在意識)が勝手に決めている部分というのが、とても大きい。
そして、この、無意識(潜在意識)には大きな特徴がある。
安定を求める。変化を嫌う。
そう、あなたの性格も、特性も、関係ない。
すべての人類に備わっている無意識(潜在意識)は、人という種の保存のために進化した結果、「変化を嫌う」ようにできてしまっている。
「成長」というのはプラスの方向にむかう変化のことを表す言葉だから、成長も、無意識からすれば、嫌いな変化のうちだ。
何もない状態のとき、私たちの無意識は成長することにあまり積極的でない状態だといえる。
まずはここを理解しよう。
次に、節目のタイミングは、変化のストレスに強いのだということをお話ししたい。
先ほど述べた通り、私たちの知らないところで私たちの行動を支配している無意識(潜在意識)は、本能的に、変化を嫌っている。
嫌いだから、基本的に、人にとって、変わることはストレスになってしまう。
成長することにはストレスが伴うということである。
それでも、そのストレスに対して強いタイミングというのがある。
それが、何かの「節目」の時だ。
節目とは、何か。
子供のころからのことでいえば、入園、入学、進級、進学。転校や、あるいは「部活に入った」などもある。そして、卒業。
環境ががらりと変わる時というのは「新しい自分」になるチャンスだ。
転校を機にがらりとタイプの変わった人や、いわゆる「高校デビュー」「大学デビュー」。
あなたの人生でも、自分や、周りの人で、ある節目のタイミングで大きな変化を遂げたケースに思い当るところがあるのではないだろうか。
成人も大きな節目だ。本人が何も変わらなくても、法律上の扱いが急に変わる。
もう少し小さな節目でいうと、誕生日や、1年の始まりの元旦も、みんなに訪れる節目。
○○歳になったからこうしたい、今年こそ○○をできるようになりたい、そんな変化の期待に胸躍らせるのは「節目」であることが多い。
そして、今まさに、皆さんがいる、「新社会人になりたて」というのは、人生単位でみてもとても大きな節目だ。
毎日顔を合わせる人ががらりと変わる。
生活の時間的なリズムが変わる。
身に着けるもの、接する情報や扱うものが変わる。
そういうとき、自分自身が変化するストレスに対しても、強くなれる。
ごく自然に、今までとは異なる、新しい環境で求められる新しい自分を一生懸命演じることができる。
新しいふるまいを何度も繰り返していくうち、それがいつか、新しい自分の一部になり、社会人として自然にふるまえるようになっていく。
それが、成長するということだ。
ここで、冷静に、想像してみてほしい。
新しい生活で、今までとはちょっと違う、新しい自分をつかみかけているときに、学生時代の友人と会うと、自分に何が起きるか。
長く付き合ってきた友人に、新しい自分を見せるのは、ちょっと、気恥ずかしかったり、しないだろうか。
学生時代の友人との付き合いは、ここが、曲者(クセモノ)なのだ。
人は、昔からの友人の前に出ると、「そのころの自分」に、戻るようにできている。
同窓会が楽しいのは、「いつまでも変わらないあのころのみんな」と、いつになっても会えるような気がするからだ。
それ自体は、とっても素敵なことだ。何も悪いことではない。
そうやって会える友人があなたにいるのであれば、これから一生、大事にして、時々、とても楽しい時間を過ごすことをお勧めする。
しかし。
しかし、である。
さぁ、新社会人としての生活が始まった、このタイミングでは、大問題だ。
今は、人生でも大きな節目、もともと無意識(潜在意識)が積極的でない「変化」も、そのストレスをものともしないで、どんどんと成長に向かえる、この時期。
そんな時に、昔からの友人とすごして「いつもの自分」に戻る時間が多いと、どうなるか。
あなたの成長の加速は一気にしぼんでしまうのだ。
最悪の場合、社会人としての適切な成長である変化を、なんだか恥ずかしいものに思って、斜に構えて、馬鹿にするようになってしまう。
あまりにも、あまりにも、もったいない。
今は、新しい自分に没頭する時期だ。
どんどんと、新しい自分を作り、出していく時期だ。
今までのあなたを知らない、新しい人たちの中で、新しい環境にふさわしい、「それなりにふるまえる自分」を作り上げていく時期なのだ。
だから、せめてゴールデンウィークまでは我慢しよう。
ゴールデンウィークも、できたら、旧友との付き合いは半分にしてはどうだろう。
残りの半分は新しい環境の人たちと遊びに行ったり旅行に行ったり食事に行ったりしよう。
新しい生活で、ストレスが多いかもしれない、つい、心置きなく何でも話せる今までの仲間たちにすがりたくなる日があるかもしれない。
でも、できたらぐっとこらえてほしい。
それが、あなたの成長の加速度を最大限に生かす方法だと思う。
2つ目が長くなったが、3つ目の話題に入ろう。
三つ子の魂百まで、再び。
「三つ子の魂百まで」というのは、三つ子、ここでは双子の3人バージョンではなく、3歳の子供のことで、その魂が百歳まで続くと言っている。
「3歳くらいまでに身につけたことは、一生抜けないものだ」ということを表している慣用句である。
通常、この三つ子は「生まれてから3年」のことを表すわけだが、もう一つ、当てはまるタイミングがあると思っている。
それが、今のみなさんだ。
「社会人になって最初の3年」、ここにも、三つ子の魂百まで、は当てはまる。
つまり、この3年の過ごし方は、良くも悪くも、その人の社会人としての全体に影響を及ぼしていくのだ。
今の時代は転職や独立も盛んになって、仕事に関する大きな「節目」というのは新社会人になるタイミング以外でも、あるのかもしれない。
あとから軌道修正ができないわけではないだろう。
しかし、やはり学生でなくなった最初のインパクトというのはかなり大きいはずだ。その影響は計り知れない。
そういう意味で、「三つ子の魂百まで、再び」だ。
この最初の3年のスタートダッシュがどうなるかは、今だけの問題ではない。
この時間の過ごし方が、その後の社会人としての基本的な行動様式に織り込まれて、ずっと先々まで影響すると思ってほしい。
だから、その時期に、成長のアクセルを思いっきり踏んでいただきたいのだ。
せっかくなので、敢えて、悪い例を挙げよう。
新社会人になって、企業に勤めていたとして、社会人としての経験が浅いうちから、たびたび、学生時代の友人と集まったとする。
みんな新社会人としてそれぞれの環境で新しい生活を始めているので、近況報告をするだろう。
研修の期間や内容、上司や先輩の様子、福利厚生から会社の施設、社内の階級、派閥、出世のしやすさ、ありとあらゆる情報交換が始まる。
会社によって違いが大きいだろうし、入って初めてわかることの発見の驚きもあるだろうから、盛り上がることだろうと思う。
そういう話をするなとは、全然言わない。
だが。
もし、「友達の会社はいいなぁ、私、会社選び間違えたかな」なんて思うことがあったとしたら、もう、その話はやめておいたほうがよい。
はっきり言う。無駄だ。
社会人最初の数年で見えている会社のもろもろは、あなたがその会社でどれだけ成長できるかとは、関係がないことのほうがほとんどだ。
あなたがより成長するために、会社や上司や先輩がいろいろと工夫してくれていることや考えていることの多くは、その時点の話題には入っていない。
近況報告でうらやましくなるような話を聞いても「会社ごとにいろんな違いがあって面白いもんだね」という認識くらいにとどめておこう。
あなたがせっかく惚れ込んで、新社会人としての最初の大切な時期を過ごすことを選んだ環境だ。
そういった余計な雑音で、不安になったり、よくないものに思えてきたり、選んだことを後悔したりするのは、まったく無益なこと。
自分自身の選択に対して失礼だし、自分の成長に集中できなくなる。
今やるべきなのは、今の環境での最大限の成長に焦点を合わせること。
その時期に、外との比較ばかりしていて、「なんかうちの会社つまんなーい」と言っている人ほど、つまらないものはない。
恐ろしいのは、気を付けて止めていないと結構簡単に陥りがちなシチュエーションだということだ。
愚痴を言って、自分の成長が遅くなることにも気づけないで、そのまま数年過ごすころには、「三つ子」の時期が終わる。
そして、周囲で自分の成長に集中している人との間には「百まで」続く、取り返せない差がついてしまうのだ。
ぞっとしないだろうか。
あなたに、そうなってほしくはない。
最後に、いろんな「知っておいてほしいこと」がありえるなかで、なぜ私がこのことを伝えたいのか。
理由は2つある。
一つは、さまざまなスキル以前に「マインド」の影響がとても大きいこと。すべてのスキルは、あなたの「マインド」の上に作られる。
もう一つは、自分の自由時間の中でどんな友人とどのように過ごすかというのは、どんな環境の新社会人であっても、自分でコントロールできる内容だろうと思うからだ。
あなたの行動を左右する無意識(潜在意識)は、基本的に変化を嫌っている。
しかしあなたは今人生の最大級の「節目」にいて、無意識(潜在意識)の力に負けない、変化する力、成長する力を手にしている。
社会人の最初の3年の成長スピードはその後の人生に大きな影響を与える。
学生時代の友人と群れると、とても大切な時期の成長スピードをみすみす逃すことになりかねない。
どのような行動をするか、あなたは選べるはずだ。
だから。
成長したければ、学生時代の友人と、群れるな。
あなたの人生が輝かしい成長に彩られることを、祈っています。
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