週刊READING LIFE Vol.36

普通でいたいならライターズ倶楽部に参加しちゃダメだ《週刊READING LIFE Vol.36「男の生き様、女の生き様」》


記事:しゅん(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

「我が生涯に一片の悔いなし!」

漫画「北斗の拳」ラオウの最後の言葉だ。
自分の力を出し切って戦い、満足しきった男の最後の言葉だ。

 

果たして自分はこんなセリフを吐いて最後の時を迎えられるだろうか?
最後の瞬間には、自分の力を出し切って満足しているだろうか?

 

 

 

先日、会社で昨年度の働き方の評価フィードバックがあった。
学校で言うところの通知表の評価を聞くイメージだ。

 

上司の待つ会議室に入る。

 

「昨年度のあなたの評価は『標準』です」
「はぁ」

 

 

 

思わず気の抜けた返事をしてしまった。
ここ数年だいたい「標準」の評価だった。
なので今回もまた「標準」なんだろうなという気持ちが半分だった。
でも残りの半分は、昨年度はいつもよりがんばって責任あるポジションの仕事をしたので多少評価されることを期待していた。

 

「さらに上の評価を得るためには、もっと責任あるポジションの仕事に取り組まないとね。まぁ、どうするかは君次第だけど」

 

いつも無表情な上司が、笑顔を作って、言った。
半分は予想していたものの、実際に言われてみるとなんだか心の中がもやもやした。

 

「何か質問ある?」

 

昨年度は、その「責任あるポジション」とやらをやったはずなんですが、それでは不十分だったってことなんですかね? 喉元まで言葉が出かかった。でも、きっと上司がああ言うってことは不十分だったってことなんだろうな、と勝手に納得してしまい口には出せなかった。

 

「いえ、特に」

 

気の抜けた返事をして、自分の席に戻った。

 

しかし、自分の席に戻ったものの、もやもやが収まらない。
もやもやを納めるためにいつものように自分の気持ちをメモ帳に書き出してみた。

 

なんでもやもやしてるの?
——「標準」って言われたことかな
もっと責任のある仕事したら評価あがるってさ。したい?
——したくない
じゃあ、仕方ないじゃん
——でも「標準」って言われ続ける人生でいいの?

 

確か、去年も一昨年も「標準」の評価を受けたはずだ。
なのになんで今回に限ってこんなに引っかかるんだろう?
しばらく物思いにふける。

 

あっ!

 

小さく声が出た。心当たりがあった。
今年の3月から参加している天狼院のライターズ倶楽部だ。
このライターズ倶楽部のせいだ。

 

ライターズ倶楽部では毎週「お題」に従って文章を書き上げ提出する。提出した課題が一定の基準を満たせていれば天狼院のWebサイトに掲載される仕組みだ。

 

正直私は苦戦している。自分で思ってた以上に掲載されない。なんと6回提出したうちの1回しか掲載されていない。最初は落とされてもうれしかった。「さすがライターズ倶楽部。レベルが高い。自分の弱点が指摘されてありがたいし、やりがいがある!」と思っていた。しかし、落とされ続けてさすがに凹んで来た。「あぁ、やっぱりまたダメか……」と落ち込む日々だ。先日は「今回は掲載を見送ります」の講評を見た瞬間に「ふーーーーっ」深いため息をついている自分に気が付いた。

 

そんなライターズ倶楽部の講義の中で、講師の三浦さんがこんなことをおっしゃっていた。

 

「自分の書きやすいネタを見つけてください。突き詰められること。連載してる人ってみんなそれに気が付いた人たちでしょ?」

 

確かに天狼院のWebサイトで連載を持っている方は、自分の妄想を突き詰めた方、ネガティブな思考を突き詰めた方、自分の好きなアルコールについて語っている方など様々だ。皆さん自分の得意なこと好きなことを突き詰めた「自分ならでは文章」を書かれている方ばっかりだ。

 

残念ながら私はまだ「自分ならではの文章」を書けるネタを見つけられていない。「自分ならではの文章」ってなんだろうと、日々もがき、探している。自分が好きなこと、得意なこと、無意識に押さえつけてしまっているものがないか? これまで過ごしてきた日々で自分にとっては何気なくやってることで他の人からしたらすごいと思われること。自分の尖っている部分、凹んでいる部分が「自分ならではの文章」になるはずだから。

 

 

 

一方、これまでの会社生活では、普通であること目立たないことを目指してきてしまっていた。仕事はできる人に集中すると言うが、ちょっと人よりできたり得意なところを見せると、すぐに仕事が増えた。仕事が増えるというよりは、仕事を押し付けられる感じだった。また、良かれと思って指摘したり提案したりすると「じゃあ、やって」とこれまた押し付けられる。「これじゃあ、言ったもん負け、やったもん負けだ」といつしか誰も余計なことを言わなくなってしまった。そんな環境だった。

 

普通であること目だないことのイメージは真ん丸のボールだ。

 

ライターズ倶楽部で目指している「尖っている部分、凹んでいる部分」のセルフイメージと、普通で目立たない丸いポールのイメージが合わなくなってきてしまったのだ。

 

その象徴がきっと「あなたの評価は『標準』です」という言葉で感じたもやもやだったんだ。

 

普通であること目立たないことにもメリットはある。
誰ともぶつからないし安定している。
尖ったり凹んだ部分があると、人とぶつかるし不安定で怖い。

 

でも、もう「あなたの評価は『標準』です」と言われる環境で生き続けたくない。
「あなたらしいね」って言われて生きたい。

 

最後の瞬間には、笑って「我が生涯に一片の悔いなし!」と言ってから逝くんだ。

 

「くそ〜! これからの俺の生き様を見とけ〜! 」

 
 
 
 

◻︎ライタープロフィール
しゅん(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

ソフト開発のお仕事をする会社員
2018年10月から天狼院ライティング・ゼミの受講を経て、
現在ライターズ倶楽部に在籍中
セキュリティと心理学と創作に興味があります。

http://tenro-in.com/zemi/82065



2019-06-10 | Posted in 週刊READING LIFE Vol.36

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