週刊READING LIFE vol,102

大人は日常から学ぶ《週刊 READING LIFE vol,102 大人のための「勉強論」》


記事:佐藤純平(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
たぶん自分は勉強ができる生徒だったのではないかと我ながら思うのだ。
通信簿では、だいたい平均以上の成績が並び、先生からのコメントにも「真面目な生徒」との言葉があった。
ほとんど授業を休むことだってなかったし、宿題も大体出していた。
勉強が好きだったかと言われればそんなことはないけれど、とりあえず勉強をしていた。
それは親からも先生からも勉強をしなさいと言われ続けてきたから。
勉強をすることが当たり前だと思っていたから。
勉強をする目的なんて考えたこともなかった。
学生だったときは、大人になったらもう勉強をせずに済むなんて考えていたこともあった。勉強は学生の仕事であって、大人は仕事さえしていればいい。だから学生でいる内は勉強を頑張ろう。
なんのためにとかではなくて、それがぼくらの仕事だから、やるべきなんだと思い込んでいた。
 
さて、実際に大人になった。勉強を本当にしていないだろうか。
いーや、もう日々勉強だ。
来る日も来る日も勉強の毎日だ。
学生のときよりも勉強してるんじゃね? と思えるほどだ。
誰だ? 勉強することが学生の仕事だとか言ったやつは……
勉強することは学生にとってだけ必要なものではない。
大人にだって勉強は必要なものだ。
 
そもそも勉強とはなんだろうか。
先生がいて、教室のような場所で机に座って、ノートを開き、鉛筆と消しゴムを持って、板書を写す。
これも勉強だとは思う。
学校でする勉強なんてほとんどがこんな感じ。
座って何かをインプットすることが勉強だった。
でも大人になってからの勉強は少し様子が違ってきている。
先生もいないし、教室なんてないし、机に座って、ノートを開いて、鉛筆と消しゴムを持って、板書を写すことは少なくなってきている。
もちろんそういう机の上でする勉強もないわけではないけれど、学生のときよりも明らかに減っている。
大人になったいま、やっている勉強はたぶん驚くほど日常的なものになっている気がする。
日々過ごす中でやっているひとつひとつのことが勉強なんだと思うようになった。
 
学生のころ、ぼくはゲームが好きだった。
特に小学生や中学生のころは本当にゲームが好きで、勉強や部活以外の時間はゲームばかりしていた。
ゲームをしていたときに親に言われていたのは、「ゲームばかりしていないで、勉強しなさい」という言葉だった。
ゲームをする時間は勉強ではない。
そう思って、大学受験を意識しはじめた高校生ぐらいのときからほとんどゲームをしなくなった。
ゲームをするぐらいなら勉強しよう。
そうやってゲームの時間より勉強の時間の方が大切だと思うようになった。
 
でも大人になってから、ゲームをずっとやり続けている人たちに出会うようになった。
プロでもないし、ゲーム関連の仕事をしているわけでもない。
ただただゲームが好きで、ゲームをやり続けている。
毎日何時間も時間を費やし、お金もある程度の金額をかけてやっている。
はじめてその人たちと出会ったときはなんて無駄な時間を過ごしているんだと揶揄していた。
もっと他にも時間の使い方があるだろうと。
そんな無駄な時間を過ごすのなら、少しでも勉強をする時間を増やした方がいいのではないか? と勝手に心配をしていた。
 
でもゲームをやり続ける人たちの話を聞いているうちにその考えは少しずつ変わっていった。
例えば、格闘ゲームが好きな人のことを言えば、その人は格闘ゲームからたくさんのことを学んでいた。
対戦を繰り返していく中で、自分の強みや弱みはなんだろうと考え、強みを生かした戦略を練っていた。
敗戦したら自分の弱みのどこが出てしまったのか、次にどうすればいいのか、を考えていた。
対戦相手のこともきっちりとリサーチをし、対策を作っていた。
ゲームのことではあるけれど、どれも仕事でも活かせることだった。
話を聞くほど、なるほど! と目から鱗がボロボロ落ちた。
ゲームすごい! と思えた。
めちゃくちゃ勉強になると感動した。
ゲームから学ぼうとしなかった自分の方が無駄な時間を過ごしていたのかもしれないと反省した。
 
ゲームだけではない。
映画からいろいろなことを学ぶ人もいるし、音楽からいろいろなことを学ぶ人もいる。
居酒屋で飲んでいて学ぶ人もいるし、恋愛から学ぶ人もいる。
ひとつひとつの出来事に必ず何かしらの学びはあるのだと思う。
勉強できる教材はいくらでも日常に転がっているのだ。
そう気づいてから、勉強は机の上でするものという考えはほとんどなくなった。
見方や学ぶ姿勢を変えれば、いくらでも勉強はできる。
 
一緒に仕事をしている人で、よく日常から学んでいるなと思う人がいる。
その人と外食を一緒にすると、いつもビジネス的な視点からお店の良いところ、悪いところを考えている。
「どうしてこのお店は人気なんだろう?」
「どうしてこのお店は人気ではないんだろう?」
「どうしてこの商品・サービスを提供しているのだろう?」
問いを立てて、いつも考えている。
そして自分なりに仮説を立てて、こうしたらもっと良くなるのでは? ということまで考える。
別にそのお店にコンサルタントとして関わるわけでもないし、売り上げをあげる施策を考える必要なんて一切ないのに。
でもそういうことをよく考えているからか、その人はビジネス的な戦略を考えることがすごく上手い。
「そういう戦略を立てれば確かに競合もあまりいないところで勝負できる」
というような発想が生まれてくる。
 
この人にとっては、きっと外食も勉強の場なのだろう。
もう習慣になっているだろうから、学ぼうと常に意識してるわけではないだろうけど、はじめは意識してやっていたはずだ。
大人が勉強するには、こうしたちょっとした意識を持つことが必要なのかもしれない。
どんな意識かといえば、目的を持って、そのために何か学べることはないだろうかということだ。
例えば、ゲームをよくする人だったら、もっとゲームがうまくなるためにという目的があるだろう。
ビジネスで戦略を立てるのが上手い人であれば、自分のビジネスに活かせるネタ探しという目的があるだろう。
学生時代に目的もなく勉強していたときとは違って、大人が勉強するときには目的を持つといいのだろう。
目的があれば、いま目の前に起こっていることに対しても学び姿勢でいられる。
何か学べることはないだろうか? と自分の中に問いを立てて、考えることができる。
そこから、仮説を立てて、さらに実践できればより濃い学びが得られるはずだ。
 
机の上でする勉強ももちろんときには必要だ。
ただそれだけでは学ぶことができないことが日常にはあふれている。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
佐藤 純平 READING LIFE編集部ライターズ倶楽部

現在、Webライターとして活動中。進路指導の仕事を3年ほどしていたら、進路に1番悩み始める。転職や副業を5年間色々試したが全て挫折。あきらめず挑戦し続けて、現在は独立。その経験をいかして人の悩み、迷い、葛藤に寄り添えるような文章を書いている。2020年9月より天狼院書店のライダーズ俱楽部でライティングを学んでいる。

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2020-11-02 | Posted in 週刊READING LIFE vol,102

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