週刊READING LIFE vol.122

行き詰まりを感じたら〇〇でその壁を突き抜けろ!!《週刊READING LIFE vol.122「ブレイクスルー」》


2021/04/05/公開
記事:垣尾成利(READING LIFE編集部ライターズ俱楽部)
 
 
出ない。
 
そのことを思うとずっと気になってしまい、他のことにも集中できない。
じっとしていてもこの状況は変わりそうにない。
きっかけさえあれば、一気に出そうなのだけれど、思うようにいかない。
そんなモヤモヤを吹き飛ばすためには強い刺激が必要だ。
こんな所で立ち止まっている場合じゃない。
壁を突き抜けるためには手段なんて関係ない。
この膠着状態を打開して突破できたら、その先に晴れやかな未来が待っているのはわかっている。
 
頑張れ自分!
 
長い冬の間じっと耐え、春を待っていた蕾が花開くようにこの局面を突き抜けるまでもう少しだ。
 
さあ行け!
 
一気に突き抜けろ!
もう我慢なんて必要ない、やるだけやったら、あとは身を任せればいい。
 
そうすれば、全て上手くいく。

 

 

 

ってことで浣腸です。

 

 

 

ん?
何か人生の大きな転機を迎えた時の話かと思いましたか?
 
いえいえ、浣腸の話です。
 
便秘は女性に多いイメージがあると思いますが、男性だって便秘になります。
生活が不規則になったり、食生活に偏りが生じたり、強いストレスを感じている時など、バランスを欠いた状態が続くと胃もたれしたり、お腹が張ったままになったり、便通が悪くなったりします。
 
体調の変化の気付きのひとつに便通があるかないか、規則的に行われているかをチェックしておくと今の状態を把握しやすくなります。

 

 

 

私は普段、朝起きて早々、朝食を摂る前に、遅くても会社に行くまでにはトイレに行くのが習慣になっています。
 
これがひとつの健康のバロメータになっていて、朝から快便! の日は一日が気持ちよくスタートできるし、その日一日を前向きな気持ちで取り組むことができます。
 
20代、30代の頃は夜更かししようが飲み会の翌日だろうが、関係ないね♪ とばかりに快調な朝を迎えることが当たり前でした。
 
便秘の話なんて全くの他人事、出ない苦しみなんてイメージすらできない生活でした。
 
不健康な生活しているから、代謝も悪くなるんだ、もっと運動して腹筋鍛えて腹圧上げれば押し出すなんて簡単に出るでしょ、などと便秘の人は生活態度の悪い人と決めつけ、軽蔑するような気持ちを持っていました。
 
男性同士で便秘の話題なんてそもそも出ないし、「私便秘やねん。もう1週間もご無沙汰なんよ~。ああ、早く会いに来て私の王子様~」なんて、女性と便秘についてロマンチックに熱く語り合う機会なんて無いから、必然的に他人事、私には関係ない世界の悩み事だと思っていました。
 
なので、その苦しみやモヤモヤした気持ちが毎日続くことの不快感とかモチベーションの低下といったことを理解するどころか想像さえできないでいました。
 
ところが、40代になり、毎朝の快便生活が不規則になることが少しずつ増えてきたのでした。
 
それでも「便秘」という言葉は私の辞書には無いものと思っていましたから、たまたまの事だろう、昼には出るだろうと気にすることもありませんでした。
 
しかしながら、老いとは恐ろしいもので、出ない時は出ない、運動しようが腹筋しようが出ないわけです。

 

 

 

おお、これはもしかして、便秘とかいうやつなのか?
 
かつて私が嘲笑ったもの。
 
まさか自分事になるとは思いませんでした。

 

 

 

毎朝投下してスッキリしてから家を出ることが、何十年も当たり前に習慣だった者にとって、それを積んだまま一日を過ごすことの不快感ったらありゃしない!!
食欲も落ちるし、お腹が気持ち悪くて仕事にも集中できないわけです。
2日目とかになると顔が浮腫んで肌ツヤも悪くなったような感じさえしてきます。
それでも毎朝便座に座るけれど、時は虚しく過ぎて行くだけでした。
 
諦めと、失望と、焦燥と。
 
行列の出来るお店に、今日こそは絶対ゲットするぞ!! と朝一番に早起きして並んだのに、目当ての品は売り切れだった、とガッカリするような悲しみを抱えて便座に別れを告げる夜明け前の時間を過ごすことが、時々とはいえあることが許せないのです。
 
ああ、かつてバカにした眼差しを向けてしまった人たちゴメンなさい。
 
遅まきながら私も仲間入りかもよ。
年齢的なもの、と思うと受け入れざるを得ないけれど、私の腸はそんなに簡単に弱るのか?
いやいや、そんなはずはない。
人間ドックでも太り気味は指摘されるけれど、その他の項目ではまだまだ若々しい数値が並んでいるじゃないか!
 
よし!
毎朝の快便を取り戻そう!
 
でもな、即効性も欲しいんだよな。
 
体質改善、食生活の見直し、もちろんやるけどさ、今日、いや、今すぐ快便が欲しいんだよ、俺は!
 
今、この瞬間にサクラ咲くの開花宣言が欲しいんだよ。

 

 

 

そんな気持ちから調べてみました。

 

 

 

なるほど、即効性なら浣腸か。
 
一瞬で花開くのか。

 

 

 

翌日、仕事帰りのドラッグストアには、浣腸お徳用パック12個入りの箱の前で悩む私がいました。
 
1個入りもある、初めてだからとりあえず1個でいいかな。
でも、この1個を握りしめてレジに行くのは恥ずかしいな。
かと言って12個入りって、こいつマニアか? とか思われやしないだろうか。
店員さんはスーツ姿で箱入りの浣腸だけを持ってにこやかにレジの行列に並ぶ私を見て姿を見て嘲笑うのではないだろうか。
逆に「便秘でお困りですか? でしたら良いものがあります。ご紹介しましょうか」などと食い付いてきたりはしないだろうか。
 
「あ、いや、家族に頼まれたので(汗)」と引き攣りながら言い訳する姿まで思い浮かべながら、お徳用を手にしたのでした。
 
レジでは何事もなく会計が終わりました。
当たり前です。人の浣腸ライフにいちいち興味本位で立ち入ってくるほどデリカシーのない店員さんはいません。
 
「あ、この人マニアか?」と思っていたかもしれないけれど、言わなきゃわからないんだから、無事手にできたことを良しとしよう。
 
また買う機会に毎回違う店を選んでリピーターだとバレないようにした方がいいかな、などと思ったことも、今となっては懐かしい思い出です。
 
さて、この箱をどこに隠そうか。
浣腸する姿も見られたくないし箱で買ったことも家族には内緒にしておきたいと思ったのです。
 
よし、本棚だな。マンガ本に並べて押し込んで、前に数冊置けばバレないな。
 
いつやるか?
早い方がいい。
今夜だ。
 
鉄は熱いうちに打て、浣腸は詰まったら打てだ。

 

 

 

一旦布団に入り、家族が寝静まるのを待って、真っ暗闇の中こっそり布団を抜け出す。
本棚のある部屋のドアを静かに開けて浣腸を1個取ろうと思ったら、なんと個包装。
丁寧なのは嬉しいけれど、袋の音がパリパリ鳴ってしまう。
音を聞き付けて妻が起きてくるかもしれない。
こんな所で見つかってしまうのなんて論外だ。
 
箱ごと抱えてリビングへ向かう。
爆弾処理をするかの如く音がしないように静かに袋を破る。
 
初めて手にしたイチジク型の浣腸はヒンヤリとしていて柔らかい触感だ。
 
これをお尻に突き刺してキュッ! とワンプッシュ! あとは花開く時が来るのを待つだけだ。
 
さて、どういうふうに入れたらいいのだろうか?
体位はどうする?
立ったままだと全部入らないだろう。
残すなんて勿体ない、全部入れなくちゃ。
 
そうか、「猫のポーズだ!」
ズボンを脱ぎ、ヨガの猫のポーズの姿勢になる。
四つん這いで頭を低く、背筋を反らしてお尻を高く突き上げた格好だ。
 
見えない突破口を浣腸の先端で探る。
あっ、ここか。ゆっくりと丸みを帯びた先端を突き立てていく。
 
んっ! 痛いやんか。
 
イチジク型のそれは、充分優しさに満ちた筐体ながら、初体験の私には刺激が強すぎました。
 
なんでもいい、潤滑剤を。
こっそり妻のハンドクリームを指先に付けて突破口の入口に塗り付けたことは内緒です。
 
今度は微かな痛みはあるもののゆっくり確実に奥まで挿し込むことができました。
 
いよいよ注入。
恐る恐る柔らかなイチジクを押し潰す。
ひんやりした液体が直腸に流れ込んでくる。
 
よし、これでいい。
あれ、まだたくさん残っているじゃないか。
もう一度挿し込み残りを入れる。
あれー、まだ残ってる。
 
結局3度やり直して第1段階、ミッションコンプリート!
 
妙な興奮と隠れて行う背徳感に包まれながら、今もし妻が起きてきても大丈夫なように箱と使った容器をどこに隠すか? を考えようとした瞬間、猛烈な痛みと共に、今すぐキスミー! くらいの勢いで熱いメッセージが届きました。
 
アカン、ヤバい! 出てまう! 間に合わへん!! 急げ!!
 
ダッシュでトイレに向かいたいところですが、今は誰にも知られてはならない極秘ミッション中、物音を立てるわけにはいきません。
 
突如襲いかかったのは開花宣言ではなく堤防決壊警報。慌てながらも、静かにリビングのドアを開け、廊下のライトは消したままトイレを目指すこと数メートル。
 
なんと長い数メートルだったことか。
 
辿り着くや否や、人生で1番早く椅子取りゲームの椅子を奪ったと思うスピードで便座に跨ると、直後に春がやってきました。
 
「ああ♪ 快感‥‥‥」
 
全身の筋肉が緩み、憑き物が落ちたかのような安らぎと安堵、そして押し寄せる快感の渦に飲み込まれた深夜2:00の初体験でした。

 

 

 

浣腸は、植物由来のグリセリンと精製水からできていて、赤ちゃんに使用しても問題ないくらい体に安全なものです。何度も使用しても体が慣れてしまい感覚が鈍ることも無いため、繰り返し使用しても問題ないのだそうです。
 
直腸に注入された濃度の高いグリセリン液が腸管内の水分を吸収することで、腸内に大量の水分が流れ込みます。浸透圧の刺激によって腸が刺激され動きが活発になります。流れ込んだ水分とグリセリン液の水分が溜まった便を柔らかくし、排出しやすくさせる、そんな仕組みで浣腸は機能するのです。

 

 

 

浣腸は直腸に溜まったままの便を出すには大変効果のある薬剤ですが、使用経験のある人は意外と少ないのではないでしょうか。
 
その理由は、恥ずかしいという気持ちが一番ではないかと感じます。
私も購入、使用ともに恥ずかしさがありました。
家族にさえ内緒で使ってみたほど、抵抗感が先行した浣腸でしたが、こんなに簡単に、絶大な効果を得られたことは大きな喜びとなりました。
 
数回こっそり使用した後、妻に最近便秘気味なので浣腸を使ってみたんだ、と話してみたところ、妻の反応は、効果があったのなら良かったね、と呆気ないものでした。
 
なんだ、その程度なのか。
隠れてこっそりやる必要なんて無かったことがわかり、それ以来堂々と使用する事ができるようになったのです。
 
出ない出ないと唸ったところで簡単に出るものでは無いし、出ないことで感じるストレスを溜め込んだところで心身ともに何も良いことはありません。
浣腸の突き抜けるような強烈な刺激は、現状を打開しその先を掴むきっかけとなりました。

 

 

 

案ずるより産むが易しで良いと思ったことはまず試してみる。
イメージに縛られることなく様々な可能性を自由に選んでみる。
チャレンジしてこそ、そこに新たな道が開けるのは生き方にも通じるものがあると感じます。
 
便秘も人生も、行き詰まりを感じた時に突破口となるもの。
 
それは「刺激」です。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
垣尾成利(READING LIFE編集部 ライターズ俱楽部)

兵庫県生まれ。
2020年5月開講ライティングゼミ、2020年12月開講ライティングゼミ受講を経て今回よりライターズ俱楽部に参加。
「誰かへのエール」をテーマに、自身の経験を踏まえて前向きに生きる、生きることの支えになるような文章を綴れるようになりたいと思っています。

この記事は、人生を変える天狼院「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」をご受講の方が書きました。 ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2021-04-05 | Posted in 週刊READING LIFE vol.122

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