週刊READING LIFE vol.131

センスがなくても書き続けることで上手くなれる。ライティングゼミに参加して世界の見え方が変わった話《週刊READING LIFE vol.131「WRITING HOLIC!〜私が書くのをやめられない理由〜」》


2021/06/07/公開
記事:森 団平(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
昔から、表現するのが苦手だった。
小学校の頃に「ドラクエ」っぽい小説を書いた、正直あれは僕の黒歴史だ。
音楽も出来なかった。ギターを弾けるようになりたいと思って練習した時期もあるが、手が小さくて弦がうまく押さえられなくて音を上げたのだ。
自分が何かを表現することは出来ないのだと学生時代にもう諦めていた。
 
でも本を、文字を読むのは好きだった。
特に好きだったのは、
ミヒャエル・エンデの「ネバーエンディングストーリー」、「モモ」、
京極夏彦のサイコロ本の異名を持つ「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」
川上稔の「境界線上のホライゾン」電撃文庫最厚記録を誇る「読む鈍器」だ。
例え自分が書くことが出来なくても、書かれた物語に興味を持ち続けたのは、恐らく書く事への憧れが自分の中でくすぶり続けていたからなのだと思う。
 
そんな僕が、今更書くことを学びたいと思ったのか、理由はインスタグラムに書くキャプションがうまく書けなかったからだ。
画像共有SNSであるインスタグラムでは、もちろん写真が重要だ。
印象的な写真の方が見られるし、「イイね」がたくさんもらえる。
一方で、キャプションを書く欄もある。
ここは、タイムライン上では2行しか表示されない。しかし開いてもらえば、中身まで読んでもらえる。
僕の場合はこの1行を使ってタイトル、2行目以降で写真を撮った時に感じたことなどを書くことが多いのだが。
まぁ、昔の投稿を見てみると恥ずかしい文章なのだ。
 
写真は、何かを伝えるのに有効なツールだ。
視覚から分かりやすく伝えることが出来る。感動した光景を共有することが出来る。ただ、視覚だけではその時に自分が感じたことを伝えきれるわけではない。
なので、キャプションで補完すればいい。だからキャプションをうまく書けるようになりたい。当時の僕はそう考えた。
 
それで、天狼院書店のライティングゼミに参加を決意した。
正直、不安はあった。
なにせ、このライティングゼミ、「課題」がある。
 
「毎週2,000字の文章を提出する」
*お題は何でもよい
この課題が4か月、全16回
これを自分が完遂することが出来るだろうか? 不安しかなかった。
 
講義ではいろんな書くためのテクニックや心構えを教えてもらえる。
『人生を変えるライティング教室』という大言壮語なキャッチフレーズに恥じない内容で、毎回勉強になった。
始めの講義で、「日本語書けますよね、大丈夫です」と書くことに対する心理的な壁を取り払ってもらえたのも大きかった。センスがいい文章を書ける書けないに関わらず、「とりあえず書けばいいのか」と思うことが出来た。
 
しかし、振り返ると僕が書くことに夢中になったのは、この「課題」があったからだろうと思う。この課題、2,000字を書いて提出すれば、ゼミの先生から講評、フィードバックがもらえる。良かった点、悪かった点。
講義の内容に従って、単に感性だけではなく、「読者に最後まで読んでもらえる文章かどうか」という観点で評価してもらえるのだ。
更には、良い講評をもらえた文章は、天狼院のWEBページに掲載してもらえる。
これが、書くためのモチベーションになった。
続けるためにはモチベーション=エサが重要なのだ。
自分の書いた文章が、WEBに掲載されて誰もかに届くかもしれないということはかなり魅力的だった。SNS等の自分の周りだけに届くものではなく、もっと大きな範囲に文章を届けられる可能性。
 
しかし、毎週2,000字。悩みは尽きない。
何をお題にして書くのかということに始まって、何を伝えたいのか、それをどうやって伝わるように書くのか。
文字数が多いということももちろんだが、2,000字という文字数かつ自由課題に向き合うと、地平線が見渡せる荒野に一人取り残された気分だ。
どちらに向いて進めばゴールにたどり着けるのかすら分からない。
 
それでも、書かないことには始まらない。
 
始めに書いたのは、「ダイエットの話」だった。
当時取り組んでいて、いろんな人も興味が持ってもらえそうだと思ったから取り上げた題材。
結果は、惨敗。
頂いたコメントは、
「タイトルから実際のダイエットの話に入るまでの導入部分が長すぎて読者が読みたい文章になかなかたどり着けない」
ということだった。この、講評を読んだときは、あーごもっともと感じた。
仕事でレポートやメールを書いていても感じることだが自分で書いた文章の間違いや欠点というのは見えにくいものだ。
こうして他の人から指摘されるとそれが良く見えた。
そして、惨敗したことがやる気に火をつけた。
何とか、合格したいと。
 
二回目に書いたのは、「イタリア旅行中にあったハプニングの話」だった。
これは、なんと通った! 合格したのだ。
頂いたコメントは、
「面白かったです! ハプニングの体験が分かりやすくイメージしやすく書かれていて読後感も良かった」
と講評していただいた。
この結果を知った時の喜びはなんと言えば伝わるのだろうか。
とりあえず、家の中でガッツポーズを取って「ヨシッ! ヨシッ!」と叫んだことだけ書いておきたい。
 
学生時代は、宿題、レポート、課題といろんな名前でたくさん課題をやらされていたのだが、それを楽しいと思ったことはなかった。
しかし、社会に出て毎日仕事をしていると、評価されることもされないこともあるが、目に見える形で自分の評価をされることは殆どない。
もちろん、仕事がうまくいけば褒められることもあるし、ねぎらったりしてもらえるが、それが自分の努力を誉めてもらえているのか、出た結果に対するねぎらいなのか。よくわからない部分がある。
 
しかし、この課題はシンプルだ。
自分の力が、成長が分かりやすい形で評価してもらえる。
課題を提出し、講評をもらう、良ければWEBに掲載してもらえる。
この一連の流れが、僕の書く事へのめり込ませていった。
 
正直、2回目の課題が合格できたのは、題目が良かったこともあり読んでもらえる文章に出来たが、その後は、課題が通らない回が続いた。
確かに通らなかったが、毎回修正点を指摘してもらえるので、そこを意識しながら書くと、前回よりは良いものが書けるようになっていった。
そして、全16回の内、最後の4回は、4回連続で課題を通すことが出来たのだ。
もちろん、文章としてはまだまだな部分があるのだが、
でもこうして講評を毎回受けてそれをフィードバックした自分の文章は、ゼミを始める前に比較して、「読みやすい」文章になっているのを自分でも感じた。
 
書くことを始めて、変わったのは普段の生活の意識だ。
普段している何気ない行動、例えば通勤中に見たビルに沈む夕陽はどう書けばいいだろうとか。
ランチを食べている時間も、この唐揚げの味は文章で表すとどうなるだろうとか、今僕の前を歩いている友達っぽく話している二人の学生さんはどういう関係性でどんなことを話しているのだろうとか想像が膨らんだりする。
普段の生活では、暇があればスマホでネットサーフィンをしていることが多かったのだが、周りに目を凝らし、耳を澄ませるようになった。
そうして、周りを感じて文字に落とし込むことを考えることが感覚を鋭くしてくれている気がする。
 
書くことを始めて、もう一つの趣味である写真を撮るときの意識も変わってきた。
撮影しながらも、この景色を舞台にした物語を想像したり、見える色彩を表す言葉を考えたりするようになったのだ。
綺麗だと思って風景を撮影するのだが、言葉にすることを意識することで、自分が何を綺麗だと思っているかを明確にすることが出来る。意識が明確になると、それを表すための撮影を考えるようになる。
それだけで写真が上手くなるわけではないが、写真で何かを伝えるためには、こういう風に言語化を意識して積み重ねていくことが一つの道のように思うのだ。
 
そうして、毎日書くことを意識して生活していると、ふと文章が頭に浮かぶことがある。文章の構成がバチっと決まることがある。
でもそれは、夢や霞みたいなもので次の瞬間には、どこかに消えてしまう。
そこで重宝しているのは、スマホのメモ機能だ。
とりあえず、思い浮かんだフレーズをメモするようにしている。
そして、文章の構成が浮かんだときに出先だったときは、とりあえず喫茶店だ。スタバでも、ドトールでも何でもいいので近くのカフェに入って、かばんからモバイルキーボードを取り出してスマホに接続。
文章のイメージを一気に書き綴っておく。スマホでも書けるが、やはり量がある文章を書こうと思うとキーボードの方が早くて正確なので「モバイルキーボード」は重宝している。
 
表現することが苦手で、表現することから逃げ続けていた自分が、こうして2,000字の文章で何かを伝えることが出来るようになったという事が嬉しかった。
センスの欠片もないと思っていた自分が、課題を提出し続けると言うことを続けた結果、センスがあるかどうかは置いておいて、「読める」文章は書けるようになった。そして、まだまだ書く力は伸ばしていくことが出来る。
 
そして、今は更に上級クラスであるライターズ倶楽部に所属し文章を書き続けている。
ライティングゼミの時は、2,000字だった制限が、5,000字になり難易度はさらに上がり、選考の基準も厳しくなった。
でも、書くことが楽しい。落ちてはへこみ、通っては喜ぶ。
毎週の〆切に向けて一週間テーマについて考えるのを楽しんでいる。
 
ちなみに、当初の目的であったインスタグラムのキャプションに関しては、あまりうまくならなかった。
短文とある程度ボリュームのある文章の書き方はやはりイコールではないようだ。短文も今後もっとうまく書けるように研究したい。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
森 団平(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

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2021-06-07 | Posted in 週刊READING LIFE vol.131

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