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週刊READING LIFE vol.154

人生を後悔しないために、怒りの感情をコントロールする方法《週刊READING LIFE Vol.154 人生、一度きり》


2022/1/10/公開
記事:佐藤謙介(天狼院ライターズ倶楽部 READING LIFE公認ライター)
 
 
「おい、ふざけんな」
 
私は相手の男に向かって声を荒げた。その男は悪びれることもなく、私の言葉を無視してその場にい続けようとしていた。私はさらに怒りが込み上げ、その男に文句を言おうとした。
 
これはつい最近、私が怒りを感じた時の話しである。
私は自分でいうのもなんだが、普段それほど怒りを表に出すタイプではない。特に仕事の場ではほとんどの場合は冷静な対応を心掛けている。
 
実際のところ仕事で怒りの感情を出して良い場面など殆どない。
それがお客様であればなおさらだが、部下や上司に対しても、怒りの感情をぶつけて結果的に良かったことなど、自分の経験上ほとんどない。だから普段から怒らないように気を付けているつもりだった。
 
しかし、この時はそんなことを考えることが出来ず、一瞬で頭に血が上り、相手に対して強い怒りを感じ、行動してしまった。
 
簡単にその時の状況を話すと、その日私は娘と「江の島水族館」へイルカショーを見に行っていた。イルカショーは大人気アトラクションで、いつも開演20分前には客席は満席になるので、開始よりかなり前に行かないと目当ての席に座ることは出来ない。
 
さらに今はコロナ禍で座席の間隔も通常よりも空けて座るように指示されているため、いつも以上に早くいかないと席に座れないと思い、私は開演の50分前に行ってベストポジションに座席を確保していた。案の定その後から他のお客も良い席から座りはじめ、開演の30分前にはほぼ満席になった。
 
私は娘と一緒に良い席に座れたことに安堵し、開演を楽しみ待っていた。
しかし娘はさすがに待ちくたびれたのか、自分の座席に座らず私の周りを動き回り「早く始まらないかね~」と楽しそうに開演を待っていた。
 
そしてあと2、3分で開演となったときに、突然私の隣の娘の席に知らない男性と子供がドカッと座ったのである。確かに隣り同士があまりくっつかないように少し間隔が空いていたことと、娘が席に座っていなかったこともあり、その男が子供一緒にかろうじて座ることが出来るスペースが空いていた。しかしそこは空いているのではなく、たまたま娘が座っていなかっただけで実際には私たちが押さえていた席だ。
 
娘も「えっ、そこは私の場所」というような顔をしたため、私は瞬間的にその男に対して「すみません、そこは私の娘の席です」と少し語気強めで席をどいてもらうように伝えた。ところが男は私の方を見ることなく正面を向いたまま「いや、空いてましたよ」と言って全く悪びれることもなく返事をしてきたのである。
 
私はその瞬間怒りの感情が一気に込み上げ男に向かって「おい、ふざけんな」と声を荒げてしまった。しかし男は私の言葉を無視し、また自分の子供にもそこを動くなと言わんばかりに、絶対に席を譲るなという態度を返してきたのである。
 
私はさらに言葉を返そうと思ったが、娘を見るとおそらく普段そこまで怒りの感情を出したことが無い私の姿を見ておびえたのか、このやり取り自体が恐かったのか、不安そうな顔で私を見ていた。
そのため私は怒りを押し殺して娘を自分の膝の上に抱きかかえ、それ以上言い返すことを止めてイルカショーの開演を待つことにした。そしてショーが始まると娘は楽しそうにはしゃぎ始めたので、私は少しだけ気持ちを落ち着けることが出来た。
しかし私は隣に座っているこの男に対しての怒りは消えておらず、頭の中では「どうしたら詫びを入れさせることが出来るのか」と「これ以上言っても無駄だから放っておこう」という二つの考えが駆け巡り、目の前のイルカショーなど全く頭に入っていなかった。
これが事の顛末である。
 
先ほどもお伝えしたが、私は普段は怒りの感情を出すことは殆どない。
むしろ怒らないように自分の感情をコントロールすることを心掛けていた。それは怒りの感情が沸くこと自体が自分にとっても周りにとってもデメリットのほうが大きいと考えているからだ。
怒りの感情が沸くとどうしても冷静さを失ってしまうし、判断が短絡的で利己的になりがちなので、特に仕事の場ではマイナス面が大きい。
 
だから普段から怒りの感情をコントロールすることを意識していたのだ。
ところがこのイルカショーでの出来事は、そんな普段の意識を忘れて、いきなり怒りの感情に自分の頭が支配されてしまったのである。
 
ただ過去を振り返ると、自分が怒りの感情を抑えきれずに表に出してしまったときには同じパターンがあった。それは「自分が大切にしている人に不利益が生じたとき」である。
 
今回のケースでいえばこの男の行動によって自分の娘の席を奪われるという不利益が生じていた。また過去には自分の部下に対して不利益が生じる判断があったときに上司に文句を言ったこともあった。
 
さらに自分にとって一番後悔していることの一つに父との最後の会話が「喧嘩」だったことである。生前に父と会ったときに些細なことで口論になったしまった。今まで父と口論したことなど一回もなかったのに、その時も自分以外の人に対して父が取った行動が許せず、生まれて初めて父に怒鳴ってしまったのだ。
しかしその半年後に父が急逝したときに、最後の会話が喧嘩だったことに気付き、私は大きな後悔を感じたのである。
 
このように自分が過去どんなパターンの時に怒りの感情を感じるかを認識しておくことはとても大事なことだ。パターンが分かれば対策の取りようがあるからだ。
しかし、皆さんも怒りの感情が込み上げ、自分を制御できずに感情的になった経験が一度や二度はあるのではないだろうか?
 
私は普段、障害者支援の仕事やプロフェッショナルコーチとして活動しているため、怒りの感情をコントロールする方法を教えることがあるのだが、実は感情というものは人間の生理的な現象なのでコントロールすることは極めて難しいものの一つである。
 
少し専門的な話しになるが「感情」は脳の中の「大脳辺縁系」という脳の中でもより原始的な部分で感じている。例えば「嬉しい」「楽しい」「気持ちいい」と言ったプラスの感情もあれば、「つらい」「悲しい」「怒り」などのマイナスの感情もこの部位で感じている。これは人間以外の動物も感じていて、生物が生存するために生まれつき持っている生理的な現象なのだ。
 
一方で人間だけが持っている「論理的思考」は「大脳新皮質」と呼ばれる部位が担っている。特に論理的思考は脳の前頭前野が働いていて、普段人間が生活しているときにはこの前頭前野が活性化し、仕事や生活をする際に物事を順序立てて処理することが出来るのである。
 
しかし、そういった「論理的思考」が一瞬にして「感情」に支配されてしまう事がある。
それが「想定外の出来事」である。
つまり「論理的思考」で想像していたこと以外のことが起きた時に、「感情」が優位に働くのである。
 
例えば、お笑い番組でコントを見て「面白い」と感じるのは想定外のボケ、ツッコミが起こったからからのはずだ。もし自分が既に想定していることをお笑い芸人が言ったとしたら、おそらく大笑いするほど面白いとは感じなかったはずである。
また映画を見て感動して涙を流すのも、自分の想定外のハッピーエンドや、ハートウォーミングな出来事が起こったからだろう。
そして怒りを感じるのも自分が想定していたこと以外の出来事が起こり、自分や自分の大事な人に不利益がこうむったときに「怒り」の感情が芽生えるはずである。
 
このように人間の論理的思考と感情は、「想定外の出来事」によって切り替わるようになっている。その証拠に結末が既に分かっている映画や小説、お笑い番組を見ても、初見で見るよりも面白さも感動も薄いはずだ。
 
これが分かると怒りの感情をコントロールする方法も見えてくる。
怒りの感情をコントロールする方法は大きく分けると2つある。
 
①普段から予測をする癖をつけること
②自分のゴールに対して考え続けること
 
この2つが大事になる。
一つの目の普段から予測する癖をつけるというのは、「想定外の出来事」を減らす努力をするということだ。
 
例えば上司が利己的でずる賢い人の場合、その人が相変わらずズルいことをして自分に被害が被ったときに「なんだ、この上司は」と腹を立ててはいけない。上司がそういう人であることは十分に予測できることなので「やはりね。そうすると思ったよ」くらいの感覚で見ることが大事なのである。
 
また子供がいたずらしたり、自分の言うことを聞かないからと言って怒るのも、予測することをしていないからの可能性が高い。自分の子供がどんな性格で、何が好きで何が嫌いなのか、どのくらいのことが出来るのかは、親ならば普段しっかり観察していれば、十分理解できるはずである。
そうすれば、この後何をするかもある程度予測することは可能なはずだ。注意力が散漫なのでご飯を食べているときに他に楽しいものを見つけたら、食べ物をこぼすかもしれないと予測することは可能なはずだ。そして実際に注意散漫になりご飯をこぼしたとしても「やっぱりね」と言って、気持ちに余裕が持てるはずである。
 
さらにそこまで予測することが出来るのであれば、事前に予防策を取ることも可能なはずである。
理不尽な上司に対しては、その上司がやりそうなこと、言いそうなことを先回りして予測しておき、根回ししておくことで、上司をコントロールすることが出来るかもしれない。
 
このように自分の普段の仕事や生活の中であらゆることを「予測」する癖をつけることで「想定外」を減らし、怒りの感情を起こさないようにすることが出来るのである。
 
そういう意味ではイルカショーで自分が怒ってしまったのも、席が空いていればそこに人が座るかもしれないことは予測することはできたはずだ。であれば空いている座席に自分の荷物を置いておけば誰かに座られることは無かったかもしれない。もしくは「そこ空いてますか?」と聞いてこさせることが出来たかもしれない。
 
そして怒りをコントロールする二つ目の方法が「自分のゴールに対して考え続けること」である。
これは、自分が今行っている行動に対して、自分なりのゴール設定を行って、それを達成するためにはどうしたら良いかを考え続けるということである。
 
例えばイルカショーの出来事であれば、「娘に最高に楽しい時間を感じてもらう」というゴール設定をしていたとしたら(実際にはしていなかったので怒ってしまったのだが)、隣に男が座ってきてイラっとしたときに「この状況で娘に最高に楽しい時間を感じてもらうにはどうしたらいいだろうか?」と考え続けることが出来ただろう。
 
そうすれば、「相手に文句を言って娘に怖い思いをさせるのではなく、そんなことはしないで娘を喜ばせるためにさっさと娘を膝の上にのせてショーを楽しもう」考えることが出来たはずだ。
 
仕事なら「自分の置かれている条件下で最高のパフォーマンスを発揮する」というゴールを設定してれば、理不尽な上司もこのゴールを達成するための一つの条件ということになる。
どんな理不尽なことをしてくるのかをあらかじめ想定し、そのうえでさらに最高のパフォーマンスを出すためにはどうしたら良いかを考えることが出来るはずである。
 
この2つの方法は「想定外」を出来るだけ減らして「論理的思考」をし続けるために必要な取り組みである。これは突き詰めれば自分の「IQ」を常に高い状態に保っておく方法でもある。
 
もし皆さんが自分の人生を素晴らしいものにしたいのであれば、自分の怒りの感情をコントロールできるようになることは大きな意味を持つはずである。
 
人生は一度きりである。
怒りに捕らわれ、後々自分の人生を後悔することが無いように、怒りの感情をコントロールする能力を高める努力をぜひ試してみていただきたい。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
佐藤謙介(天狼院ライターズ倶楽部 READING LIFE公認ライター)

静岡県生まれ。鎌倉市在住。
大手人材ビジネス会社でマネジメントの仕事に就いた後、独立起業。しかし大失敗し無一文に。その後友人から誘われた障害者支援の仕事をする中で、今の社会にある不平等さに疑問を持ち、自ら「日本の障害者雇用の成功モデルを作る」ために特例子会社に転職。350名以上の障害者の雇用を創出する中でマネジメント手法の開発やテクノロジーを使った仕事の創出を行う。現在は企業に対して障害者雇用のコンサルティングや講演を行いながらコーチとして個人の自己変革のためにコーチングを行っている。

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2022-01-05 | Posted in 週刊READING LIFE vol.154

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