週刊READING LIFE vol.154

人生は自分が決めた通りになる《週刊READING LIFE Vol.154 人生、一度きり》


2022/1/10/公開
記事:丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「もうこんな歳だし、あと何年生きられるかわからないでしょ」
 
だいたい、50歳を過ぎた頃から、私の周りの友人たちとの会話では、こんなセリフが多くなってきた。
私は、この手の会話が大嫌いだ。
と言うか、この会話にはどんな意味があるんだろうか、といつも思う。
 
「こんな歳」って、何歳なの?
 
50歳そこそこで、こんな歳だったら、長寿の国、日本の高齢者たちの存在はどうなのよ、と思う。
今現在、健康で、何の病気にもなっていないのに、あと何年生きられるかわからないと、さも、人生が下り坂のような言い方をしていることも不思議で仕方ない。
 
日頃から、人生は自分が決めた通りにしかならないと思っているし、その通りに生きている私には、この会話ほど無駄な時間はない。
 
確かに、人生には限りがある。
人類にとって、一つだけ平等なことがあるとしたら、いつかは必ず死ぬということ。
だから、50歳となると、人生の後半戦と捉え、「残りもわずか」と思うのかもしれない。
だからと言って、仕事をセーブしたり、やりたいことを我慢したりするのかというと、そんなことはないはずだ。
 
宗教や人種によっては、誕生日のお祝いをしないこともあると聞いたことがある。
なぜならば、オギャーと誕生した瞬間から、人間は「死」に向かっているのだから、歳を重ねる誕生日はめでたいとは思わないのだ。
その話を最初に聞いたとき、かなりの衝撃を受けたことを覚えている。
確かにそうだ、そうかもしれない。
でも、この世に誕生することは、いくつもの奇跡が重なってのこと。
そのことに感謝し、成長するにつれて、様々な経験をすることを喜び、生きているという実感を味わうことが、この世に生を受けた人間としての醍醐味とも思うのだ。
 
例えば、すこぶる美味しいミカンを食べている時。
一房目を食べた時に、びっくりするくらいの美味しさにテンションがあがり、二房目を食べた時にじっくりと味わい、三房目を食べた時に感動と感謝の思いで隅々まで味わい尽くす。
そのミカンを完食したときには、美味しいミカンを食べられて幸せだと思うはずだ。
 
それとも、一房目を食べて衝撃を受けて、二房目を食べて感動して、でも、三房目からは、「美味しいけれど、あと五つで終わっちゃう」と、悲しくなるだろうか。
悲しんでしまったら、四房目からは、絶対に一房目の美味しさを感じられないはずだ。
びっくりするくらいの美味しい、ありがたいミカンに出会えたのに。
 
人生の捉え方も、同じだと思うのだ。
50歳を過ぎたら、残りの人生を数え、60歳を過ぎたら、人生の後かたづけをはじめ、70歳を過ぎたら行動を控え、おとなしく過ごすのだろうか。
そんな人生なんて、まっぴらごめんだ。
 
この身体、この時代に生きている私は、一度きりの人生なのだ。
そして、それが終わる日は、誰にもわからないのだ。
皆が80歳まで生きるとも限らないし。
ひょっとしたら、110歳まで元気でいられるかもしれない。
不幸にも、若くして病に倒れることだってある。
そんなことを思うと、「50歳だから……」という言葉の意味のなさをさらに感じて仕方ないのだ。
人間は生まれたら、必ず死ぬ。
そんなシンプルなメカニズムだけがわかっているのだ。
だったら、同じ一度の人生をどのように思い、どのように過ごすかも自分次第。
老いてゆくことを日々嘆くのか、その時その時にできることを楽しむのか、それも自分次第。
 
数年前、高校時代の同窓会があった。
卒業してから、初めてというくらい、何十年も会うことのなかった同級生たちとの久しぶりの再会は楽しい時間だった。
当時、10クラスほどあった私の高校、一度も同じクラスになったことがない人や、「こんな人、いたんや」と思うような人もいた。
自己紹介や近況をしてゆく中、ある女性が語ってくれたのは、同じクラブだった女性が亡くなった話だった。
その女性は、結婚し、2人の子どもに恵まれたものの、30代前半で乳がんを患い、闘病の末に亡くなったというのだ。
私は、その女性とはクラスも一緒になったことはなかったが、活発ではつらつとしたその女性の姿を覚えていた。
体力があって、幸せな結婚をし、お子さんにも恵まれていた彼女が、家族を残しこの世を離れることは、どれほど残念で悲しかったことかと思うと言葉が出なかった。
30歳だから、みんな元気で健康でいられるという保証はないのだ。
彼女は、50歳も迎えることが出来なかったのだ。
 
そんなことを思うと、自分の人生を自分の思うように進めることは出来ないことはよくわかっている。
平均寿命をみんなが全うできるとも限らない。
けれども、「もう50歳だから……」と、期限を自分で作ってしまいたいのか。
何気なく言う言葉に込められた思いに向き合う価値があると思うのだ。
 
人生は、思い通りにはいかないけれど、決めた通りに進めることができるはずだ。
「50歳だから……」と、その後の人生の可能性の幅を狭めるのか、50歳からやりたかったテニスを始めるのか。
人生はその人自身の捉え方次第。
自分の人生だから、自分で決めていいはずだ。
人生は一度きり。
だから、「悔いのないように」ではなく、その時その瞬間をいかに楽しむか。
それこそが、その人の人生となるのだから。
出来ないこと、ないことの方を数えるのか、出来そうなこと、やりたいことに挑戦してみるのか。
悔いがあるかどうかは、その経験値にも比例すると思う。
 
人生一度きり、だから、食べたいモノを食べ、やりたいことを決め、行きたい所に行きたいと思っている。
それこそが、きっと「悔いのない人生」という結果が残るのではないだろうか。
なので、今日も私は、食べたいモノを食べ、やりたいことをやり、行きたい所へ行ってこの一度きりの人生を大いに楽しんでいる。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

関西初のやましたひでこ<公認>断捨離トレーナー。
カルチャーセンター10か所以上、延べ100回以上断捨離講座で講師を務める。
地元の公共団体での断捨離講座、国内外の企業の研修でセミナーを行う。
1963年兵庫県西宮市生まれ。短大卒業後、商社に勤務した後、結婚。ごく普通の主婦として家事に専念している時に、断捨離に出会う。自分とモノとの今の関係性を問う発想に感銘を受けて、断捨離を通して、身近な人から笑顔にしていくことを開始。片づけの苦手な人を片づけ好きにさせるレッスンに定評あり。部屋を片づけるだけでなく、心地よく暮らせて、機能的な収納術を提案している。モットーは、断捨離で「エレガントな女性に」。

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2022-01-05 | Posted in 週刊READING LIFE vol.154

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