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週刊READING LIFE vol.171

反抗期真っ只中に、私は父と共犯者になった《週刊READING LIFE Vol.171 同じ穴のムジナ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」に所属されているのお客様に書いていただいたものです。

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2022/05/30/公開
記事:川端彩香(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
高校生の時、私が一番仲良かったのは、父だったと思う。
 
高校生だった3年間、私は反抗期真っ只中だった。
大嫌いだった中学を卒業し、実家から通えるけれど少し離れた高校に進学した。同じ中学だった子も、数人しかいない高校だった。その高校に進学したのは前述したように大嫌いだった同じ中学から進学する人が少ないというのもあったが、一番の理由はその当時私が大好きだった英語を思う存分勉強できる英語科があったからだった。推薦入試で受験し、無事に合格した。合格発表の日、自分の受験番号を見つけて母に抱き着いて大泣きしたのも覚えている。
 
実際に入学し、大好きだった英語をガリガリ勉強するはずだった。自分でもそうするつもりだった。けれど私はなぜか、何を思ったのか、そのあたりの高校ではトップレベルに厳しい部活に入部してしまった。朝練あり、夜は20時すぎまで毎日練習、長期休暇中は複数回の合宿(遠征含む)、テスト前や期間中の休暇はなし、年にある休みは大晦日と元旦のみ。もちろん、指導もめちゃくちゃ厳しい。めちゃくちゃ怒られる。そんな部活に、本当になぜか入部してしまった。
 
両親は入部自体に反対はしなかった。しかし、勉強との両立ができないとなれば別問題だ。みるみるうちに下がっていく私の成績を見て、母が怒るようになった。ヘトヘトに疲れて20時半の電車に乗り、同じくヘトヘトのサラリーマンのおじさんたちに挟まれながら電車に乗り、帰宅するといつも21時をまわっていた。そこから母のお説教タイムが始まる。
 
あんた、何しにあの高校行ったんよ?
○○ちゃんも部活入ったらしいけど、勉強もちゃんとしとるで!
 
あー、うるさいうるさいうるさいうるさい!!!!
 
そこで母と喧嘩が勃発し、危険を察知した妹たちは足早に2階にある自分たちの部屋へ向かう。それが繰り返され反抗期になり、母や妹と会話をすることが減っていった。母とは最低限の会話はしたし、数ヵ月すると私の成績が下がりきったことに諦めのような感情を抱いていたようにも思えたが、妹たちは私の八つ当たりを避けるために、私が帰宅すると同時に自分の部屋に閉じこもるようになった。
 
そんな中、父だけは何も変わらずに接してくれていた。
 
私の父は、良くも悪くも無神経だ。いや、良い無神経がどんなんだと言われるとわからないが、とにかく無神経なのだ。だから、私が反抗期であろうと、めちゃくちゃ機嫌が悪かろうと、母と言い合いをしていようと、いつも通りに話しかけてくる。
 
今思えば、当時の私はそんな父に救われていた部分は多かったのだろうなと思う。もちろん当時はそれが当たり前で気付かなかったが。
今でも父を慕っているが(もちろんその無神経さ故に、うざいなと思うことは多々ある)、当時の私の方が父のことを慕っていたように思う。
 
部活が外練習だった日、父の仕事が私の高校の近くだったこともあり、時間が合う時は車で一緒に帰ることが多かった。助手席に乗り込み、家路に就く……前に、私たちには楽しみがあった。それは、晩ご飯前の買い食いだ。
 
「マックフルーリーの新作食べたい」などと私が言い出すことがほとんどだったが、「ファミマにめっちゃでかいティラミス売っとるらしいぞ!」と父が提案してくることもあった。
 
父の仕事は肉体労働で、その上男性なので食べる量はもちろん多い。私は女子高生であったものの、ハードな部活動で年がら年中ハラペコ状態だった。朝練が終わったら何かしら食べ、1時間目が終わって何か食べ、2時間目が終わっても何か食べ、というのを昼休みまで繰り返し、昼休みはもちろん母が持たせてくれたお弁当を食べる。足りない時は食堂でコロッケやアイスを買って食べる。そして部活が終わって、父と買い食いだ。帰宅すると、もちろん母が作った晩ご飯が待っている。待っているのは2人ともわかっているのだけれど、2人ともやめられなかったのだ。
 
マクドナルドで買い食いする時は、決まってマックフルーリー、ポテトMサイズ、チキンナゲット5ピース。コンビニで買い食いする時は、おにぎり2個、デザート、肉まんかアメリカンドッグ、ファミマの時はファミチキ、のように、甘いものとしょっぱいものが均等になるようにものすごく熟考して買う。買う、と言っても、お金を払うのはもちろん父だ。
 
最初のうちは、私がいくらハードな部活の後だとはいえ、コンビニで買い込む量に父は驚いていた。父より多い量を買いこむ時もあった。
「うわ、お前それ買いすぎやろ。晩ご飯あるんやで? おかんにバレたら怒られるんやからな? ほんまにそれ食べられるんか?」と聞いてきていたが、家に着くまでにしっかり食べきり、何事もなかったように母の作った晩ご飯を食べ、しっかりおかわりをする私を見て次第に何も言わなくなった。部活でのあのハードな練習量をこなしてこそ太らなかったものの、今同じ量を食べるととんでもないことになりそうだなぁ……、いや、なりそうだなぁじゃなくて、確実になるな、と思う。
 
食糧を買いこんで、再び父の車に乗り込む。父はお喋りが好きで、今でもそこらへんの女子高生に負けないんじゃないかと思うくらいペチャクチャとオチもない話を続ける。私はその話を助手席で「はいはい」と適当に相槌を打ちつつ、先ほど買い込んだ食糧を口に放り込みながら聞く。頻繁に「それ前も聞いたがな」と思う話を聞かされるが、食糧代を頻繁に出してもらっている手前、いかにも初めて聞きました風の相槌をしてあげるようにしていた。
 
父の話を聞くことも多かったが、同じくらいに私も父に日頃のあれやこれやを話した。仲の良い友人に悩み打ち明けたり愚痴をこぼしたりすることももちろんあったが、当時の私は友人に話すよりも、父に話すことの方が多かったかもしれない。正直何を話して、父からどんな返答が返ってきたかはまったくと言っていいほど覚えてないし、私も父にされた話をほとんど覚えていないが、それくらい父とは友人のように軽く話ができていた。反抗期で家族に八つ当たりしまくっていた時期にも関わらず、父とだけは普通に会話し、接することができていた。もちろん父にも八つ当たりをすることはあったが、そこは父持ち前の無神経さと空気の読めなさで、お構いなしにガンガン喋りかけてくる。そのしつこさに折れて私も喋ってしまう。父のそういうガサツさのようなものに、今思えば助けられていたのかなとも思う。
 
反抗期の女子は怖いもので、父親に対しては「くさい」だの「汚い」だの、母に「お父さんのものと一緒に洗濯しないで!!!」と言ったりするだろう。でも、我が家においてはそれはなかった。妹たちも、そういったことを言ったことはなかった。母と喧嘩することはあっても、父に反抗することはなく、まるで友人のように接していた。母とのバランスを考えてそういう態度を取っていたのか? と思うこともあったが、良くも悪くもこの無神経さは、どうやら父のそもそもの性格によるものなのだろうなと、私たちの反抗期が終わってもなお変わらぬ態度の父を見てw感じている。
 
結局、それだけの大量の買い食いをしても、帰宅して用意されている晩ご飯は2人そろってきっちり完食するため(なんならおかわりもめちゃくちゃする)、大量の買い食いは母にほとんどバレなかった。数回バレたことはあるが、それは父の詰めが甘く、なぜか買い食いのゴミを家に持ち込んでしまった時だけだ。それでも晩ご飯は完食なので、あまりお咎めはなかったが。
 
あれから10年以上経った。今ではさすがに買い食いはしないものの、食べ物の交換が増えた。
「テレビで見た、宝塚のお店のチーズケーキが美味しそうやったから、今から買いに行って届けに行くわ!」と車で2時間かけて来たこともあった。そのお返しに、と父が好きな赤福を最寄り駅で買って渡すと「よくできた娘や! 育て方が正しかったな」とやたらと褒める。「そっちこそよくできた親やな」と私も照れを隠しながら言い返す。照れつつも嬉しかった私は、それ以降の帰省の際、気が向いたら父に赤福を買って帰っているのだった。その度に「お前、ええ奴やな!」とか何とか言って褒めてくれる。餌付けをしているつもりもないが、赤福以外にも美味しそうものを見つけると、父に買って帰ってあげたいなと思うのだ。
 
今でも私が帰省した時、たまに2人で車に乗る。やはり買い食いはしないが、たまに「あの時はお前の食べる量がおかしかったな」と懐かしく話す。ファミマで大きいティラミス買ったな、あれもう売ってないな、とか、マックフルーリーの期間限定味食べすぎやろ、とか。母と言う名の警察に、時効になった犯罪を当時の共犯者と懐かしく話すような、そんな感じがする。犯罪に手を染めたことはないので、同じような感覚かどうかはわからないし、その感覚がどのようなものなのかは知りたいと思わないが、なんとなくそんな感じがした。
 
私と父は、買い食いの常習犯で、共犯者。
自供するのは、父のお葬式にしよう。そして妹たちに「しょーもな」と少し笑ってもらえたらいいな。逆に妹たちも何か自供するかもしれないな。
 
それまでこの犯罪は、胸に秘めておこうと思うのだった。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
川端彩香(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

兵庫県生まれ。大阪府在住。
自己肯定感を上げたいと思っている、自己肯定感低めのアラサー女。大阪府内のメーカーで営業職として働く。2021年10月、天狼院書店のライティング・ゼミに参加。2022年1月からライターズ倶楽部に参加。文章を書く楽しさを知り、懐事情と相談しながらあらゆる講座に申し込む。

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」に所属されている方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2022-05-25 | Posted in 週刊READING LIFE vol.171

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