週刊READING LIFE vol.232

仕事を作るという働き方《週刊READING LIFE Vol.232 これからの働き方》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2023/9/18/公開
記事:遠藤美紀(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
コロナ禍を経験した私たちの働き方は大きく変わった。
 
そんな話は、色々な媒体で目にしたり、耳にしたりしています。わかりやすい例で言えば、リモートワークがあたりまえになったことでしょう。それが、コロナが収まった今でもそのまま残りましたね。また、これからは副業をして、収入源を増やす必要がある、などもよく言われています。
 
では、今後の「働き方」とはどのように考え、私たちはどう働いていくことが必要になるのでしょうか。
 
 
私は歯科衛生士という仕事をしています。
歯科衛生士とは、歯科医院に勤めて、診療補助や歯周病の治療として歯のクリーニングや歯磨き指導などを行うという働き方をする人がほとんどです。
よく、歯科衛生士と歯科助手は同じと思われますが、実は別の職業です。何が違うのかというと、患者さんの口の中を触れるかどうか、ということ。意外と知られていませんが、歯科衛生士は国家資格です。実際に患者さんの口の中を触る、ということをするには、資格を取らなくてはいけないのです。
 
私は時々ふと思うことがありました。歯科衛生士とは、自立しづらい資格である、ということです。
 
それは、歯科衛生士に限らず、ですが、例えば、歯科医師や、薬剤師は自分の医院なり、薬局なりを構えることができます。しかし、歯科衛生士は基本的に、歯科医師の指示のもと仕事をすることと決められています。ですから、もし自立するとすれば、歯科医師を雇って、自分の歯科医院を持つ、という形をとることになるでしょう。
どうもそこを求める気持ちは持てず、自分ひとりで独立して歯科衛生士として仕事をすることは、無理だと思っていました。
 
長くこの仕事に携わる間には、フリーランスとして歯科衛生士の仕事をする先輩に出会うこともありました。
しかし、私が出会ったフリーランスの歯科衛生士、とは、残念ながら、どうにも掛け持ちのパートをしている、という働き方にしか見えなかったのです。ですから、どうせ同じ仕事内容であれば、私は一箇所の歯科医院で雇用される働き方のほうがいいな、と思っていました。
 
しかしその後、私は本当の意味でのフリーランスの歯科衛生士、という働き方をしている方にお会いすることができました。
 
その方は、MFTを専門にしており、その技術を持って、あちこちの歯科医院からの依頼で仕事をしていました。
 
さて、MFTとは聞きなれない言葉ですね。少し、MFTについて、説明します。
MFTは口腔筋機能療法ともいいます。口の周りの筋肉を正しい動きに改善することによって、歯並びと舌の癖を治していくトレーニングのことです。ようするに、口周りと舌の筋肉の筋トレのような感じです。
このMFTは、歯科矯正をするうえで必要なものです。もし、舌の位置が正しい位置になく、下の歯の前歯を押すような位置にあったり、お口がポカンと開いているままになっていると、その筋肉の圧により歯が望ましくない方向に移動して歯並びが悪くなる原因になります。
また、せっかく矯正で歯並びを良くしても、筋肉の圧がそのままでは、また歯の位置が元に戻ってしまいます。
 
また、歯並びが悪くなるだけではなく、発音や滑舌が悪くなったり、鼻呼吸ができなかったり、歯周病のリスクが高くなったりします。
それを防ぐために必要なのが、MFTです。
 
 
実は私も、自分が歯科矯正を受ける際に、その歯科衛生士Tさんの MFTを受けたのです。
 
まず、私の口元をチェックしていくと、舌の位置は、本来上あごに付いているのかわ理想的ですが、私の場合、下の前歯の裏に付けていました。これは、多くの人に見られる位置です。
そして、普段から口が開いてしまっている状態でした。ということは常に口呼吸だったのです。
さらに、喋り方、発音を録音して確認すると、なんとも不明瞭なのです。聞き取れない、ということはありませんが、よく言うところの「舌ったらず」な喋り方に近い感じです。これは、自分では気づかなかったのですが、録音したものを聞いてみて「こんな喋り方だったのか」と本当に驚きました。
それが、教えられたとおりにトレーニングしていくと、舌の位置はすぐに理想の位置に戻り、唇は閉じて、さらに喋り方も変わったのです。発音がしっかりとして聞き取りやすくなっています。こんなに変わるものかと実感できたのはいい経験でした。
 
 
 
歯科衛生士である私が自分でMFTのトレーニングが出来なかったのか、という疑問もあるでしょうか? 意外とMFTを日常的に仕事としてしている歯科衛生士は少なく、私も必要性は知っていたけれど、どんなことをするのか内容は分かっていない、というのが現状でした。
 
ですから、Tさんが専門的にMFTを教えている、ということが、とても驚きであり、そして、需要があることだと感じました。
 
Tさんは、1か月のうちに何ヶ所もの歯科医院へ行き、そして、時には芸能人からの依頼で個人レッスンをすることもあったとうかがいました。
それは、どこかの歯科医院に雇用されて、その歯科医院の中だけで働く、という選択肢しかなかった私にとって、とても衝撃的で、歯科衛生士の可能性を感じさせてもらえる事例でした。
 
さて、Tさんの働き方と、他のフリーランスの方の働き方は、どうちがうのだろうかと考えました。
まず考えたのは、専門性を提供している、ということ。ですが、歯科衛生士の仕事も専門的です。Tさんのほうが、より専門的、と言えばそうですが、それだけではありません。
さらに言えば、きっと、専門性 プラス プランを提供している、ということかもしれません。
プランとは、これからの人生を快適に過ごすプランではないかと考えています。
それは、戦略的な働き方、と言えるのではないでしょうか。
 
それに対して、他のフリーランスの方の働き方は、戦術的、と言えばいいかもしれません。
 
何が違うのかというと、目の前ことをどう効率よくできるのか、というような生産性を上げる方法を考えるのが、戦術。そのさらに先まで考えるのが戦略です。
 
歯科衛生士の仕事に当てはめると、
戦術=虫歯になって痛くなった歯を治す
戦略=歯周病が進行しないように定期的に歯のメンテナンスをする
という違いだと思っています。
どちらも必要ではありますが、戦術だけではだんだん先に進むのが難しくなってくるかもしれません。
 
それでも私はしばらく歯科医院での仕事だけを続けてきてしまいましたが、最近、やっと少しずつ、次のステップへと目を向け始めました。
それは、歯科衛生士の仕事を活かして、顎関節症の症状緩和を目指す顔や頭のマッサージをはじめることです。
顎関節症の原因のひとつは歯ぎしりです。
噛むときに使う筋肉は、歯ぎしりをしたりすると、緊張してしまいます。それを緩めていくためのものです。
そうすることで、リンパの流れも良くしていくので、顔まわりがスッキリもします。
 
歯ぎしりの原因は、ストレスや疲れもあります。この施術を継続して受けていただけると、気持ちもリラックスするので、歯ぎしりも減るのではないかと思います。
 
そんな施術を、まずは副業として始めたいと思っています。
 
 
これは、これまで受け身に仕事をしてきた私が、自分で仕事をつくることを始めるということです。
 
これからの仕事は「する」のではなく、「つくる」ものなのかもしれません。どれだけ自分のできることで仕事を作っていけるか。
 
今後、働き方をもっと自由に設計したい、と考える人は増えるでしょう。そうなると、ますます仕事を作ることが必要になってきます。
 
私は「顎関節症の症状の緩和」という仕事を作ります。でも、それだけではなく、書くことを学んでいることが、いつか仕事につながるかもしれないし、歯科衛生士のクリーニングで培った指先の細かな感覚が、全く別の仕事につながるかもしれない。
 
そういう発想の転換ができる人がこれから先、仕事をどんどん作っていける人なのかもしれません。
 
そして、それがこれからの働き方なのではないでしょうか。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
遠藤 美紀(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

千葉県在住。

歯科衛生士であり、セラピストでもある。
文章も書ける歯科衛生士を目指して奮闘中。

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2023-09-13 | Posted in 週刊READING LIFE vol.232

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