週刊READING LIFE Vol,96

業務連絡はスマートに、ユーモラスに《週刊READING LIFE vol,96 仕事に使える特選ツール》

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記事:東ゆか(Reading life編集部ライターズ倶楽部)
 
 
あずまは激怒した。
必ず、このLINEグループでのやりとりの煩雑さを解決せねばならぬと決意した。あずまには入り乱れたタイムラインが分からぬ。
あずまはwebメディアの運営を手伝っている。業務連絡を丁寧にすることを心がけていた。だからこそやり取りが整然としていないことについては人一倍に敏感であった。

 

 

 

私は今年のはじめぐらいから、10歳ほど年下の若者たちと一緒にwebメディアの運営を手伝っており、業務連絡ツールにLINEのグループトークを使っている。
 
LINEは個人的なやり取りをするにはメールと比べてシンプルだし、メッセージの履歴が1つのタイムライン上で見られるため非常に便利だ。
やり取りをしている相手が自分のメッセージを見たら「既読」の印が付くので、とりあえず相手に私の意思は届いたんだという確認もできる(この「既読」表示については既読が付いたのに「なかなか相手から返事が来ない」とヤキモキする「既読スルー」や、既読をあえて付けずに返事を先延ばしにされる「未読スルー」という新たなモヤモヤを生んでいるが、それについては今は触れない)。
 
しかし複数で行うLINEのグループトークは業務連絡ツールとしては適していないと感じる。それは何故か。
LINEのタイムラインの表示は送信時間に忠実で、やりとりがひたすらに流れていくからである。
 
複数でやり取りしているタイムラインが、行く川のごとく流れていくと、自分に対して送信されたメッセージを見逃す恐れが出てくる。
それを解消させるために、2017年3月にメンション機能が実装され、2019年7月には特定のメッセージ対してリプライができるようになった。
自分にメンションが付くとその旨が通知され、直後にタイムラインを開くと対象のメッセージに薄く色がついて目立つように表示される。リプライ機能については対象のメッセージに対して返信ができるようになったが、それでもタイムラインが送信時間に従って流れていくのは変わらずなので、単純にやり取りが見ずらい。
 
これはある日の私のLINEグループのトーク履歴を一部改変したものである。「私」をご自身だと思って読んでいただきたい。
 
ーまりこ @私 先日の取材の件ですが、原稿の上がりはいつになりそうでしょうか?
 
ーまりこ @kawabe 今度の撮影の持ち物確認しておいてー!
 
ーやまだ ちょっとこの書き込みウケるんだけどー!
 
ーさとう @やまだ それ私も見た! ウケるよねー!
 
ーまつの ごめん! 返事遅くなっちゃったけどそれ、明日やるから!
 
ーkawabe [今度の撮影の持ち物確認して……への返信] 持ち物って何かいるんだっけ?
 
ーおばない[ちょっとこの書き込みウケる……への返信](笑ってるスタンプ)
 
ー私 [先日の取材の件ですが…‥への返信]遅くなっていてすみません! 明後日ぐらいになりそうです。
 
一瞬、やり取りの全容を読み解くことを躊躇しないだろうか?
 
このやりとりの要件は
①私への原稿の催促
②kawabeへの持ち物確認
③面白い画像の共有
 
の3つだけなのだが、タイムラインがこんなにも入り乱れてしまっている。
しかも、まつのさんの「ごめん! 返事遅くなちゃった」に関してはスクロールしてメッセージを少し遡らないと、どのメッセージへのコメントなのかが確認できない。
 
あずまは激怒した……とまではいかないものの、LINEの通知が溜まっていることに気がついてスマホを開いたときにタイムラインがこのようになっていると、多少なりとも「うっ……」と思ってしまうことは否めない。
 
そんなわけで私は、プロジェクトのメンバーたちにある提案をした。
「みなさん、LINEではなくてSlackを使いませんか?」

 

 

 

SlackもLINE同様にチャットツールであるが、LINEとの大きな違いはビジネス上でのやり取りに特化しているということだ。
もし上記のLINEのやり取りをSlackに移行したら、やり取りがスッキリ整然とすることは間違いない。
 
まず、webメディア運営のメンバー全員が参加する「ワークスペース」を設定する。ワークスペースは会社や大きな部署で設定しよう。私たちは「A(仮称)」というメディアのチームなのでワークスペース名を「A」と設定する。
ワークスペースの中には、プロジェクトごとに「チャンネル」を設定することができる。
先程のLINEのやりとりをプロジェクトごとに振り分けるなら、以下のようにチャンネルを設定するのが良いだろう。
 
①私への原稿の催促→「原稿進行状況」
②kawabeへの持ち物確認→「取材準備」
③面白い画像の共有→「おもしろ画像共有」
 
これだけで様々なやり取りが一つのタイムライン上で飛び交うことはない。
これだけならLINE上でもプロジェクトごとにグループトークを設定すれば良いのではないかと思うかもしれない。しかしLINEはプライベートの連絡ツールとしても使うものである。自分が参加しているグループは少ないほうがプライベートと業務を分けられるし、トークルームが雑然としないだろう。
 
そしてここからが私が恨めしく思っている「送信時間順にしか表示されないLINEのタイムライン」の解消である。
 
SlackとLINEとの大きな違いは、チャンネル内のメッセージに対してスレッドを作成できるという点だ。どういうことかというと、LINEの場合、メッセージに返信するときはリプライ機能を使うが、LINEのタイムラインは送信時間順にしか表示されないため、リプライ→リプライで続いたメッセージを確認するにはタイムラインをさかのぼっていくしかないのだ。
最初のメッセージまで確認して「さて、最新の返事はどうだったかな」と思ったときにはまた画面をスクロールしないと最新のメッセージを確認することができない。
 
それに対してSlackは、スレッド機能を使えば送信時間に関係なく、リプライ先のメッセージの下にリプライメッセージを表示させることができるのだ。
こうすることによって同じチャンネル内でも、主題によってやり取りを整然とさせることができるし、他の人が主題に新たに加わった時にもそれまでのやりとりをひと目で確認することができる。
 
「チャンネルとか、スレッドとか、そんなに色々あったら結局見逃すんじゃないですか?」
そんな声が聞こえてきそうだが、Slackはそこもちゃんとカバーしている。
LINE同様にメンションが付けられたときや、自分の書き込んだスレッドに誰かがメッセージを送信したときにも通知がくるようになっている。
しかも通知を見逃したとしても、画面上の「メンション」「スレッド」というところからそれらを一覧で確認することもできる。よっぽどのことでない限り、自分宛てのメッセージを見逃すことはないのだ。
 
このようにSlackの利点を「チャンネルやスレッドを作ってやり取りをスマートにさせることができる」と言ってしまうと、ビジネスライクな冷たいやり取りを想像するかもしれない。しかしSlackは理路整然としたやり取りの中にも、彩りやユーモアを添えることもできる。
 
それはメッセージごとに小さなスタンプを押せる機能だ。
スタンプという機能はSlack、LINE問わず、わざわざ文字にしてリアクションするほどではないが自分の感情を軽めに表現したいときに使いたいものである。
「ありがとう」に対する「どういたしまして」だったり、「それっておもしろいね」という軽めのリアクションをするときに使われる。
 
そんな軽めのリアクションをLINEのタイムライン上にスタンプで送ろうとすると、コメントと同じボリュームでスタンプが押される。「軽め」な感情表現なのに、スタンプの存在感がありすぎるため実際に送信すると全く軽くならない。しかもその大きさと存在感故に、流れをぶった切ってしまう可能性もある。
 
前述のLINEグループトークでいうと、さとうさんのやまださんへ対する「私も見た」というコメントはコミュニケーションにおいては重要だが、業務連絡のタイムライン上ではわざわざメッセージで送るほどの内容でもなかったりする。また、おばないさんのように2つ3つ前のコメントに対してスタンプを押すと、それまでのやりとりを全く無視して存在感のあるスタンプが割り込むことになるのだ。
そんなことを気にして、スタンプぐらいの軽い熱量で何かリアクションをしたいと思っても、諦めてしまうことがあった。ましてや先述のやり取りで原稿を催促されている身である。お気楽に存在感のあるスタンプを押すことは心理的に憚られる。
 
それに対してSlackでは一つひとつのコメントに対して、小さなスタンプを押すことができる。メッセージの下部に小さく表示されるので、メッセージの流れに割り込むことはない。
この小さいスタンプは素材を拾ってくれば簡単に作ることもできる。
私の前職では社内連絡ツールにSlackを使っていたのだが、誰かしらが面白い素材で自由にスタンプを作ってくれていたので、軽い意思表示にスタンプが頻繁に使われていた。
ちょっとした嬉しい報告について、みんなわざわざメッセージとして送るほどではないが「良かったね」「おめでとう」という気持ちを示したいときには、色とりどりで可愛らしいスタンプがたくさん押されてとてもほっこりとした気持ちになったことを覚えている。

 

 

 

「ほら! どうですか? Slack便利じゃないですか?」
 
若者たちはLINEのタイムラインの無秩序さをあまり気にしていない様子だったが、私がSlackの利便性を力説すると、Slackの導入に賛成してくれた。
とはいえ、本人たちがそこまでLINEグループでのやり取りに煩わしさを感じていなかったようなので、依然としてLINEグループは活発だ。中にはわざわざチャンネルを設定したプロジェクトについても引き続きLINEグループでやり取りが行われていたりして、ちょっと残念に思うこともある。それでも私に関係するやり取りは大部分がSlackへ移行できたので結果バンザイである。
 
さてこのSlackだが、これまで紹介したチャンネル・スレッド・スタンプ機能はまだほんの序の口に過ぎない。
 
リマインダー機能を使えばSlackがスケジュールを知らせてくれるように設定することもできる。カレンダーに入れるほどではない「ポストに郵便物を確認しに行く」とか「日報を書く」といった、たまに忘れてしまいそうな小さな用事をリマインドとして設定すると良いだろう。
 
更にSlackは様々なツールと連携させることもできる。Twitterに特定のツイートがあったときや、Googleフォームに問い合わせが受信されたときにもSlack上に通知することができる。
 
Slackはやりとりを整然とさせるビジネスチャットツールを越えて、業務上の諸々のツールの焦点となりうるツールでもある。
 
いつかみんなにSlackを使いこなしてほしいと思いつつも、私はSlackに誘導しきれていないプロジェクトのLINEメッセージに返信をしてしまうのであった。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
東ゆか(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

湘南生まれの長野育ち。音楽大学を声楽専攻で卒業。フランスが大好き。書店アルバイト、美術館の受付、保育園の先生、ネットワークビジネスのカスタマーサポート、スタートアップ企業OL等を経て現在はフリーとして独立を模索中。

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2020-09-22 | Posted in 週刊READING LIFE Vol,96

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