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東京日帰りカメラ旅

第3回:富士山がもたらす湧き水、美味しくなるうなぎ。 祭りと新名所でにぎわうまち 三島(静岡県 三島市・清水町)《本当は教えたくない 東京日帰りカメラ旅》


記事:小倉 秀子(READING LIFE公認ライター)
 
柿田川の湧き水
 
 
久しぶりに帰ってきました。この湧き水を見に。
柿田川の水を引く井戸から湧き出る、コバルトブルーの湧き水。
 
日の光と砂の影響でこの色だと言いますが、いつ来ても、いつ見てもこの色なんです。
そしていつも底からもくもくと、清らかで済んだ水が湧き出ています。
 
この湧き水が出るスポットは、静岡県三島市に隣接する町、清水町というところの柿田川公園にあります。
柿田川は国の天然記念物であり、あの高知県の四万十川にも引けをとらない水の清らかさから、日本の名水100にも選ばれています。その柿田川の上流を散策できるように整備し造られたのが、柿田川公園です。
 
柿田川公園内にある、柿田川の最上流
 
私の母の実家が、この柿田川公園のすぐ近くにありました。
私が幼少の頃、夏の三嶋大社のお祭りの時期に合わせてよく母の実家を訪れていました。
 
その時は、柿田川公園だけでなく三島周辺のあちこちで見かけるせせらぎがこんなに清らかで美しいことも、
 
祖父母が食べに連れて行ってくれたうなぎが、全国からその味を求めてやって来る人がいるほど美味しいうなぎであることも、
 
子供だった当時は屋台の食べ物とおもちゃにしか興味がなかった三嶋大社のお祭りが、町の老若男女が伝統的な行事を盛り上げていて感動すら覚えることも、
 
全然知りませんでした。
 
今回私はこの日帰り旅で、子供の頃から大好きな三島を思い出をたどりながら再訪し、そして私の知らない新たな三島の魅力についても探ってみたくなりました。
 
 
 

❏富士山がもたらす三島の湧き水、湧き水で美味しくなる三島のうなぎ


 
三島周辺を散策していると、街のここかしこで、せせらぎや水の流れを目にします。その水の澄んで美しいことと言ったらありません。
 
民家が並ぶ街路にせせらぎが
 
民家が並ぶ街路にせせらぎが
 
なぜこれほどまでに、三島の水はきれいなのでしょうか。
調べてみました。
 
今から8,500年前の富士山の爆発で、大量の溶岩が噴出しました。この溶岩は狭い谷間を流れ、三島市や柿田川上流部までやってきました。これが「三島溶岩流」です。
 

(出典:静岡県清水町ホームページ「柿田川の環境・歴史」)
 
三島溶岩流は、水を通しやすい多孔質の層で、その下古富士火山の表層は水を通さないため、富士山に降った雨や雪は地下水となって流下し、三島市周辺でで地表に「わき水」となって現れます。このわき水の規模の大きいものが柿田川なのだそうです。
柿田川の上流である柿田川公園内にも何ヶ所か、この湧き水の湧き出ている箇所があります。
 

柿田川公園内の湧き水スポット
 
柿田川公園はまちの人々の憩いの場にもなっているようで、広場では大きなシャボン玉を吹くお兄さん、それを追いかける子供たちの姿が。
その光景はほのぼのとしてあたたかく、人びとの日々の暮らしに溶け込んでいる公園でもありました。
 

柿田川公園の広場にて
 
 
 
柿田川公園を後にすると、ちょうど時刻はお昼どき。お昼は柿田川公園から歩いていくこともできる、母の実家がご贔屓にしていたうなぎ店を訪れることに決めていました。それは、「うなよし」さんです。
 
うなよしさんを訪れるのは、本当に数十年ぶり。祖父母、両親、姉、同時期に実家に滞在していたいとこ達……大勢でお邪魔した懐かしい思い出が蘇ります。
幼少の私は、三島のうなぎが日本を代表するほどの美味しさとはつゆ知らず、目の前のうなぎを頬張っていました。
 
三島のうなぎの美味しさの秘密はズバリ、先ほども紹介した富士山からの湧き水にあります。この清らかな水の中に、うなぎを数日泳がせているからなのです。
 
うなよしさんは、三島の中でも押しも押されもせぬ名店で、11時に開店、14時頃には売り切れて閉店となってしまうほどです。
この日お店に到着したのは11時をちょっと回った頃。
幸いにもまだ行列ができておらずホッとしたのもつかの間、お店の戸を開けると驚いたことに、席はもうすでに満席状態でした。
ひとりだったので幸いにもお相席させていただき、すぐに注文することができました。
 
事あるごとに祖父母が連れて来てくれたこのお店、あの時はどの席に座ったっけ、おじいちゃんの好物だったんだよなあ、などと幼少時に思いはせていると、やって来ました。目の前にうな丼が。
 
うなよしさんのうな丼(写真はうなよし様提供)
 
さっそく鰻を箸で一口分に割き、口に運びます。
 
「!!」
 
うなぎが舌に触った途端、とろけました。
驚きです。触れた途端にとろけてしまうほどの柔らかいうなぎを、これまでに食べたことがありません!
本当は子供の頃に食しているはずですが……子供の私にはこの食感や味わいの素晴らしさを解釈できていませんでした。
三島周辺の他の名店でも何度もうなぎをいただいていますが、ここまで柔らかくて溶けてしまうのは、正直初めてです。
 
祖父母にご馳走になっていた時はそのありがたみも良くわかっていませんでしたが、東京からはるばる足を運んで自分のお金で味わった時に初めて、祖父母が食べさせてくれたうなぎがこれほど美味しく、幼少時のひとときが愛おしい思い出だったことに気づきました。
 
 

❏三島の歴史・文化・伝統が今に受け継がれる「三嶋大祭り」


 
幼少期の思い出を辿るように、次は夏まつりのまっ最中の三嶋大社へ向かいます。
三島の夏まつり、「三嶋大祭り」は毎年8月15〜17日の3日間で催されいます。この日は最終日。お祭りのプログラムはインターネットで公開されているのであらかじめ把握できます。この日は武田流の流鏑馬(やぶさめ)が行われる日でした。
三嶋大社の流鏑馬は、源頼朝が戦勝を祈願して奉納した故事にちなみ、疾駆する馬上から弓矢で的を射て、天下泰平、五穀豊穣を祈る神事です。
 
1時間ほど前から場所取りで人が集まって来ました。私もその流れに遅れないように周囲の人にどの場所が撮影に適しているか聞いて、良い場所を確保しました。
初めて見る流鏑馬。馬を間近で見ること自体がめったにないことで嬉しいのですが、伝統的な和装を身にまとった神職の方が馬で颯爽と走りながら矢を射る様子は、とても格好良く、芸術的であり神秘的でもあります。また競技の要素も持っているのでスピードもあり白熱もします。
見応えたっぷりでとても心を動かされ、2時間があっという間でした。シャッターを切ったり動画を撮ったりしながら、流鏑馬を堪能しました。
 
武田流流鏑馬
 
また、日帰り旅を敢行した最終日ではないのですが、初日や二日目にも、三嶋大社の境内や大鳥居の前で、普段はなかなか見ることのできない、興味深いイベントが様々催されていました。
行事を見てみていて気づいたのは、どの行事でも子供や若者が多く参加し、地域の大人子供が一体となって祭りを盛り上げていること。
この日のために、多くの時間を費やし、練習を重ねて今日に至っている。まちを愛する気持ち、このまちに生まれたことに誇りを持っている気持ち、まちの伝統を受け継いで行こうという想い。それらが彼らの演舞からこちらに伝わってくるのです。
その想いに触れたと思った時、幼少の夏に滞在していただけの私でも感動で胸がいっぱいになってしまいました。
 

地元の学生による三嶋大社舞殿での人長舞・浦安舞奉納
 

三島若鳶会の若者メンバーによる「梯子のり」
 

郷土民謡「農兵衛節」のパレード
 

農兵衛節のメロディーを一度聴くと忘れられなくなります。筆者の脳裏では今でも時折あのメロディーが響いています
 
 
また三嶋大祭りでは、「頼朝公旗揚げ行列」という伝統的な行事があります。蛭ヶ小島に流されていた頼朝が、八百年余りもの昔三嶋大社大明神に祈願し、百日の日参の上、治承四年八月十六〜十七日にかけて旗揚げをし、天下平定のスタートを切ったというめでたい故事を再現したものです。
最近では毎年役者さんが源頼朝公に扮し、三島市長さんや三島市内の学校長さんなど、三島にゆかりのある人たちで旗揚げ行列を構成し、街を歩く姿が見られます。今年の源頼朝公は、俳優の滝藤賢一さんでした。
 
流鏑馬行事が終わってもまだ日暮れ前。日帰り旅を終えるにはまだ早いので、ここは三島の新名所、三島スカイウォークにも立ち寄ることにしました。
 
 

❏三島の新たなランドマーク、三島スカイウォーク


 
三島スカイウォークは、2015年に開園し、すでに2018年夏には吊り橋の入場者が300万人を突破しています。まさに三島の新たなランドマークとして急速に認知されつつあります。
 
三島駅前からも、三嶋大社前からも、スカイウォークへ向かう路線バスに乗ることが出来ます。この日はお祭りで交通規制がかかっていたため、三嶋大社のひとつ隣の「本町」バス停から乗車。30分ほどで、三島スカイウォークに到着しました。
 

日本一の大吊り橋、三島スカイウォーク
 
大きい!
高い!
長い!
 
さすが日本一の大吊り橋と称されているだけあって、渓谷で見かける木製のつり橋とはスケールが違います。あまりにも大きく、存在感がありすぎます。
 
天気が良ければ吊り橋の向こう側に富士山をのぞむことも出来ますが、この日はあいにく空が雲に覆われていて、富士山は見えませんでした。
 
天気がいい日は吊り橋の向こうに富士山が(18年10月撮影)
 
さっそく吊り橋を渡ります。
吊り橋を渡るのは今回で二度目ですが、前回は平日の閉園間際で橋を渡っていた人はごく少数でした。
でも今回はお盆の真っ最中。たくさんの人が一度にこの橋の上を歩いていて、上下に揺さぶられている気がします!
しかも行く人と帰る人の流れがあるので左側通行しなければならず、橋の際から真下が丸見え。吊り橋を渡る時の恐怖をたんと味わいました。しかも橋は長いし歩みはゆっくりだしで、5分10分は緊張が続いたでしょうか。渡りきった時はホッと脱力してしまいました。何度来てもスリルを味わえる吊り橋です!
 
左側通行で、橋の際を歩くことを余儀なくされる。真下が丸見えです
 
スカイウォークでは吊り橋の他にも、アクティビティを楽しみことができます。
吊り橋と並行してジップラインのケーブルが引いてあるのですが、多くの人々が通過していきました。
 

空中を飛んでいるかのようなスケールのジップライン
 
空中を飛んでいるかのようなスケールのジップライン。スリルが大好きな方には特にオススメです!
 
その他セグウェイやバギーに乗れたり、アスレチックがあったり、エンターテインメントの施設としても充実しています。
 
三島には「箱根西麓三島野菜」という、標高50m以上の斜面に広がる、土壌良し、気候よし、立地良しの条件が揃った箱根西麓地域の畑で取れる野菜があります。
三島スカイウォークには、この三島野菜をふんだんに使った食事を提供するレストランや、新鮮なミルクを使った濃いソフトクリームが大変美味しいカフェも併設しています。
 
屋台も出ていて、三島山麓野菜を直売で買うこともできます。
この日は屋台で、鮮やかな黄色とこんがりとした焦げ目の焼きトウモロコシを見つけてしまいました。
 
こんがりと焼けたトウモロコシ
 
醤油の味がしみていて、焼くことでトウモロコシの味が凝縮します。だから、焼きトウモロコシは大好物です。
またトウモロコシは、ラップでくるんでレンジで2〜3分ほど調理するだけで、旨味が凝縮されて茹でるよりも格段に美味しいんですよね。お土産に3本買いました。
 
ここまで楽しんで、時刻は17時半。スカイウォークから三島駅行きの最終バスの時間になりました。
三島駅で降りようか、三嶋大社で降りようか……
やっぱりお祭り最終日のフィナーレの様子、地元の人たちがどんな風に盛り上がっているか、ひと目見てから帰ろう。そう決めて、行きと同じく三嶋大社のひとつ手前の「本町」バス停で、バスを降りました。
 
 

❏三島の伝統と文化が受け継がれていく


 
三嶋大祭り1日目の「山車・シャギリの日」、2日目の「伝統芸能の日」に続き、「踊りの日」である3日目の今日は、大通りで踊りの行列が尽きることはありません。
※シャギリ……民俗芸能や祭礼などの練り物の行列の途中で、笛に太鼓・鉦(かね)をまじえて奏する囃子(はやし)。(「精選版 日本国語大辞典」より)
 
昨日聞いた音頭調の農兵衛は、今日は若い女の子がバンド風で歌っている。
こうやって、三島の風習や文化はその形を残しながら、またその時代でアレンジされながら、この後も受け継がれていくんだろうな。
 
そして三島広小路駅前の広場では、町内会の子供から大人まで、シャギリを披露し合っているフィナーレの真っ最中でした。
 
三島広小路駅前の広場でのフィナーレ。シャギリを披露し合っている
 
私も三島に生まれていたら、この踊りの行列の中にいただろうか。山車に乗ってシャギリを演奏していただろうか。地元の人たちと一体になって、祭りを盛り上げた達成感を味わえただろうか。
三島広小路駅で帰りの電車を待っている間、そんな憧れにも似た気持ちを抱きながら、今日最後のシャギリを聴いていました。
 
三嶋大祭りは、2020年東京オリンピック・パラリンピック以降も見据え、日本文化の魅力を世界へ発信する「beyond2020プログラム」としても認証されており、またなんと、56年ぶりにオリンピックの聖火が三島市を通過することが決まったそうです。三島はこれからますます盛り上がりを見せることでしょう。
 
三島にこれほど素晴らしい歴史や文化があり、そしてその伝統がまちの人々の熱い想いによって受け継がれていることを知り、私もなんだか嬉しく誇らしく、さらに三島への愛情が増しました。
 
今回は訪問できませんでしたが、楽寿園の小浜池や源兵衛川、彫刻・絵画などの芸術や文学を楽しめるクレマチスの丘など、三島とその周辺には観光できる場所がまだまだたくさんあります。
 
東京から新幹線で通勤できるほどに近い三島へちょっと足を伸ばして、三島の水の清らかさを、うなぎの美味しさを、まつりの熱気を、芸術や文化を味わってみてはいかがでしょうか。
私もきっとまたすぐに、三島へやって来ることでしょう。
 
 
《今回のルートマップ》


 
品川駅 8:04発
| 東海道新幹線こだま637号 新大阪行き
三島駅 8:51着
① 三島駅 8:51-9:20
| 東海バス
② 玉井寺バス停 9:30
| 徒歩
③ 柿田川公園 9:40-10:30
| 徒歩
④ うなよし 11:00-11:40
| 徒歩
⑤ 三嶋大社 12:05-15:09
| 徒歩
⑥ 本町バス停(三島市) 15:15-15:17
| 東海バス
⑦ 三島スカイウォーク 15:41-17:44
| 東海バス
⑥ 本町バス停(三島市) 18:08 着
| 徒歩
⑧ 三島広小路駅 19:00-19:11
| 伊豆箱根鉄道
① 三島駅 19:14-19:21
三島駅 19:21発
| 東海道新幹線こだま672号 東京行き
品川駅 20:09着
 

《東京日帰りカメラ旅のルール》
その1
旅の目的地は、東京から日帰りで行って帰ってこられる場所に限る
その2
移動手段は電車、バスなどの公共交通機関、施設などの無料送迎で。タクシーは最終手段。
その3
東京では決して見られない非日常な景色と非日常な体験(温泉含む)、その地ならではの食を愉しむ

参考文献:
静岡県清水町ホームページ
静岡県三島市ホームページ 
三嶋大祭りホームページ 
三島スカイウォーク 
 
❏ライタープロフィール
小倉 秀子(READING LIFE公認ライター)
東京都生まれ。

幼少の頃、母の故郷である三島(静岡県)が大好きで、毎年のように母の生家を訪れていた。しかし戦前から長い間守られて来た母の生家が、昨年家主を失いついに壊されてしまった。この事をきっかけに、幼少の頃からの大切な思い出がたくさん詰まった三島の存在が、筆者にとっていかに大きかったかをあらためて気づかされる。昔ながらの三島の良さ、近年さらに盛り上がりを見せる三島の魅力について撮りたい、書きたい願望を持つようになる。
さらに、三島のように魅力的な街でありながら、旅行ガイドで詳細に紹介されていない非日常な場所のことも知りたいと思うようになる。東京から日帰りできる景色のいい所ならどこへでも飛んでいき、非日常を満喫して日常生活の栄養にしている。

2017年8月よりイベント撮影カメラマン。
2018年4月より天狼院書店でライティングゼミの受講を始める。
以降、プロフェッショナルゼミ、ライターズ倶楽部に所属し、撮って書けるライターを目指すようになる。
2018年11月、天狼院フォトグランプリ準優勝。
2019年6月よりREADING LIFE公認ライター。

 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

【6月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜


2019-09-09 | Posted in 東京日帰りカメラ旅

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