あなたの上手な酔わせ方

この季節は、やっぱり日本酒ですね《あなたの上手な酔わせ方~TOKYO ALCOHOL COLLECTION~》


記事:松尾英理子(READING LIFE公認ライター)

寒いと、日本酒が恋しくなります。
特にこの季節は、少しだけ温めた「ぬる燗」が大好きです。

一口飲むと、じわ~っと体中に染み渡る。
寒さでこわばったココロとカラダが、まるごと包み込まれていく感じ。
まるで、お風呂に浸かっているような心地よい気持ち。

こんな感覚は、冬に味わう日本酒ならではです。

まだちょっとだけ寒い日々が続くので、今回は、冬に飲みたくなる日本酒について書いてみたいと思います。と言っても、私、日本酒は飲む専門で、語れるほどの知識を持っていなくて。だから、私が日本酒を選ぶ時に、知っておいてよかったと思える基本的なお話をしますね。

そもそも、日本酒の辛口と甘口ってどうやって決まるの? <日本酒度>


「甘口と辛口、どっちが好き?」
そう聞くと、ほとんどの人が「辛口」と答えますよね。でもラベルを見ると、辛口とも甘口とも書いていない日本酒がほとんどですよ。たいていの日本酒の裏ラベルには、原材料名やアルコール分に加えて、

・日本酒度
・酸度

が書かれています。この二つが、そのお酒のタイプを示す尺度になるのですが、甘口か辛口かの尺度になるのが「日本酒度」。日本酒度は、こんな秤(はかり)を使って調べます。

この秤を、日本酒にプカプカ浮かべて、浮き具合をメモリで読んで日本酒度を測ります。
日本酒度 0 の基準は、4℃の真水。
水と比べて、その日本酒が「重い」のか「軽い」のかで日本酒度は決まります。

例えば、プールよりも海のほうが体が浮きやすいですよね? 塩でも砂糖でも、水になにか物質が溶けていれば「水より重くなる」ので、物体は浮かぶわけです。対して、アルコールは水より軽いです。つまり、

糖分が多い=水より重いので秤が浮く=甘口。日本酒度はマイナス

アルコールが多い=水より軽いので秤が沈む=辛口。日本酒度はプラス

日本酒だけじゃなくて、他のアルコールで試してみても、同様です。
カルーアとかクレームドカシスなど、甘いリキュールに浮かばせると、秤が浮く。つまり甘口。
シングルモルトのようなウイスキーに浮かばせると秤が沈む。つまり辛口。となるわけです。

つまり、辛口になればなるほど、日本酒度はプラスになるわけです。裏ラベルを見ると、プラス1度からプラス10度を超えるものまでいろいろ。日本酒度と甘辛度のイメージは、こんな感じではあります。

プラスであればあるほど辛口で、マイナスであるほど甘口、ということです。

本当に、日本酒度だけで甘口か辛口かが分かるの? <もう一つの尺度である酸度>


「辛口好きは、プラスと書いてある日本酒を選ぼう!」って言いたいところですが、それだけじゃないのが難しいところです。もう一つの軸「酸度」をおさえましょう。この「酸度」が高いか低いかで、辛口甘口の感じ方も違ってくるからです。

「酸度」と聞くと、高ければ高いほど酸っぱいのかな、なんて思いますが、そうとも言い切れません。なぜなら日本酒には、う旨味成分が豊富な「アミノ酸」がたくさん含まれていてるからです。なので、「酸度」が高いと「旨味」も強く感じる傾向があります。「日本酒度」と「酸度」の掛け合わを示すのが「日本酒官能表」です。

※地酒蔵元会HPより

仮に「日本酒度」が同じで、「酸度」が高めな日本酒と低めの日本酒があったとしましょう。
「酸度」が高い日本酒は「旨味」を強く感じることから「甘味」が打ち消され辛くて濃く感じます。逆に「酸度」が低いと、旨味成分が少ないので、淡麗な味わいに感じます。例えば、あまり日本酒を飲みなれていない人や、すっきりタイプが好みの場合は、同じ辛口でも「酸度」が平均以下(1.5以下くらいでしょうか)の日本酒を選ぶとよいかもしれません。

なんだか、わかったようなわからないような……ですよね。すみません。
どんな説明を見ても、「結局はお店の人に聞くのが一番です!」とか「最終的に辛口か甘口かを決めるのは、実際にお酒を飲んだあなたです!」とか書いてあることが多くて。だから、飲まなくなっちゃうんですよね。すごくよくわかります。

私の場合は、自分の中で一応「自分好み」の尺度を決めてます。
日本酒度はプラス0度以上。酸度は1.5以下。その範囲にないものは、自分好みじゃないと思えてしまうことが多いからです。この自分の尺度の中から自分好みの銘柄や種類を見つけていけば、大失敗はありません。

「香り」と「温度」で、感じる味覚は変わっていく


要は、自分なりの尺度をみつけたら、その中でどうやって「自分の好み」の銘柄や飲み方をみつけていくか、ですよね。そこで「自分の好み」を見つける上で大事な要素である「香り」と「温度」についてお話してみますね。

まず、「香り」です。「香り」が華やかな日本酒は、甘く感じます。「日本酒度」がプラスなのに、甘口だなあと感じることがありますが、それはたいていこのタイプ。実際の味が甘いからではなくて、「華やかな香り」の影響で「甘い」と感じているだけなのです。じゃあ、「香り」が華やかなのは、どんな日本酒なのでしょう。酵母や製法などでも変わりますが、一番の尺度は日本酒の原料である、お米の精米歩合です。

※ブログ「路地裏の授業」より引用

お米の中心部分だけ使ってつくる、いわゆる「吟醸酒」「大吟醸酒」は、香りが華やかなものが多いです。理由を説明するとまた複雑になっていくので、吟醸と名がついたら、香りが華やか、と覚えておいてくださいね。

もう一つ、辛口甘口に影響を与える要素が「温度」です。
あたためたお酒って、甘く感じますよね。でも、甘口に思えたお酒を冷たくして飲むと辛口に感じたりします。これは私達の味覚が、温度帯によって変わるからなんです。下の表は、甘味酸味苦味塩味旨味、いわゆる五味といわれる味覚が、それぞれ温度帯によってどう変わるかを一覧にしてみたものです。

温度によって感じ方はこんなにも違うものなんですよね。甘味と旨味、共に「冷たすぎても熱すぎても感じにくくなる」ことがわかります。日本酒は旨味のもととなるアミノ酸が豊富なお酒なので、日本酒本来の味わいを楽しむには、甘味プラス旨味を一番感じる40度前後といえるかもしれません。これからは、熱燗を頼む時は是非「人肌よりちょっとあついくらいでお願いします」なんてオーダーしてみてください。

ぬる燗は体にもいいらしい


アルコールは、体温に近い温度で吸収されるので、実は体にとっても「お酒をあたためて飲む」のはいいことなのです。アルコールは、日本酒に限らず冷たくして飲むことがほとんどですよね。でも、冷たいお酒は体に吸収されるまでに時間がかかるので、酔いを感じるまでちょっと時間差が生じてしまいます。それでついつい飲みすぎてしまうことも。「日本酒を飲むと、頭が痛くなる」とよく聞きますが、これは日本酒の成分のせいではなく、アルコール度数が結構高いのに、飲みやすいので飲みすぎてしまうことが一番の原因なのかもしれません。

和らぎ水(やわらぎみず)のすすめ


どんなに美味しいお酒も、飲みすぎると次の日が辛いですよね。その一番の対策は、和らぎ水。お酒の合間に飲むお水のことを言います。アルコール度数の高いウイスキーや焼酎はチェイサーや水割りの文化がありますが、日本酒には水と割って飲む文化はありません。でも、アルコール度数が高めの日本酒は、体の中で水と薄めて、体の負担をできるだけ抑えてあげましょう。お水を飲むことで、飲む量や酒臭さも抑えられ、二日酔い防止にもなるなんて、いいこと尽くめ。日本酒と同じくらいの水を飲むことを目安にしてくださいね。

まだまだ寒い日が続きますが、少しあたたかくした日本酒で、ココロと体をあたためて春を待つことにしましょう。

❏ライタープロフィール
松尾英理子(Eriko Matsuo)
1969年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部社会学専攻卒業、法政大学経営大学院マーケティングコース修士課程修了。大手百貨店新宿店の和洋酒ワイン売場を経て、飲料酒類メーカーに転職し20年、現在はワイン事業部門担当。仕事のかたわら、バーテンダースクールやワイン&チーズスクールに通い詰め、ソムリエ、チーズプロフェッショナル資格を取得。2006年、営業時代に担当していた得意先のフリーペーパー「月刊COMMUNITY」で“エリンポリン”のペンネームで始めた酒コラム「トレビアンなお酒たち」が好評となる。日本だけでなく世界各国100地域を越えるお酒やチーズ産地を渡り歩いてきた経験を活かしたエッセイで、3年間約30作品を連載。2017年10月から受講をはじめた天狼院書店ライティング・ゼミをきっかけに、プロのライターとして書き続けたいという思いが募る。ライフワークとして掲げるテーマは、お酒を通じて人の可能性を引き出すこと。READING LIFE公認ライター。

❏参考文献

地酒会HP 
路地裏の授業 

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http://tenro-in.com/zemi/66768


2019-01-28 | Posted in あなたの上手な酔わせ方

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