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あなたの上手な酔わせ方

お燗と日本チーズの組み合わせは最強でした《あなたの上手な酔わせ方~TOKYO ALCOHOL COLLECTION~》


記事:松尾英理子(READING LIFE公認ライター)
 
 
もうすぐ春ですね。でも、まだまだ寒い日が続くので、あたたかいお酒でほっこりしたいこの季節。
 
前回の記事でも書いたとおり、お燗が身体にいいことは分かってはいたものの、「お燗にはこれ!」と自信をもってオススメできる食べ物に、これまで巡り合えていませんでした。ちなみに、お燗がいい理由は2つあって、1つは日本酒はアミノ酸が豊富で旨味たっぷりのお酒だから。旨味は体温と同じくらいの温度が一番その美味しさを感じる温度帯。日本酒本来の味わいを楽しむにはぬるめの燗がいいわけです。
 
もう一つは、アルコールは体温に近い温度で体に吸収されるから。熱燗を飲むと早く酔いがまわった気分になるのは、気のせいじゃなかったみたいです。冷たいお酒はアルコールが身体に吸収されるまでに時間がかかり、ついつい飲みすぎてしまいますが、お燗は酔いの時間差がないので飲みすぎ防止にもなります。つまり、「ぬるめの燗」は体にもいいわけです。
 
日本酒の聖地、東京・四谷にある、日本酒好きが集う有名店「日がさ雨がさ」の宮澤店主も、こんなことを言ってました。
「家ではお燗を飲むことが多いんですよ。お燗のよさを身体の芯から知ってしまったら、もう他のお酒には戻れない、なんてね(笑)」 と。お燗には、日本酒のプロフェッショナルも認める魅力があるようです。

 
 

お燗にオススメの肴は……。


じゃあ、体にやさしい「ぬるめの燗」にあう肴はなんでしょう。八代亜紀の舟歌だと「あぶったイカ」なんですけど、私は「日本のチーズ」をおススメします!
 
ぬるめの燗と日本のチーズ。この組み合わせ、かなりいいんです。
 
先日、お燗と日本のチーズを楽しむイベントに参加して、この2つの組み合わせのあまりの相性のよさに驚いてしまいました。これまで数々のマリアージュにチャレンジしてきたつもりだったのですが、実はこの組み合わせは初めて。今まで気付かなかったことをとっても後悔。
 
そして、日本のチーズは種類がかなり豊富になり、さらに美味しく進化しているのを実感しました。この10年で日本のチーズ工房の数は倍増。現在は日本全国に250以上の工房があり、その土地の風土にあったチーズが生み出されています。
 
 

20種類食べても飽きがこない日本のチーズの魅力


私がその日食べたのは北海道から大分までの20種類のチーズ。普通なら、チーズばっかりそんなに食べたら流石に飽きてくるし、くどいと思うじゃないですか。でも、ぺろりと食べられちゃいました。ヨーロッパのチーズに比べて、あっさりしているからでしょうか。でもそれぞれにちゃんと個性があって旨味があって。飽きがこないのです。
 
あわせるお燗はいろいろなタイプの日本酒6種類でしたが、どのお酒を飲んでも相性バッチリで美味しくて。やめられないとまらない感じで杯が進んでしまいました。そもそも、日本のお酒と日本のチーズは、共に日本の造り手たちがその土地の風土にこだわって作り上げたわけですから、あうはずです。なかには、チーズ工房の近くの温泉でウォッシュしたり、味噌漬けにしたりなど、日本ならではの造り方をしたチーズもありました。
 
この日食べた20種類の中で一番のお気に入りは、北海道新得町の共働学舎のつくる「コパン」にからすみを乗せたチーズ。コパンは、食べやすい白カビチーズでそれだけでもとっても美味しいのですが、からすみとあわせお燗と味わうと、旨味爆発でした。(写真右下のチーズ)

この日、チーズを紹介してくださった清澄白河の「チーズのこえ」の店主、今野さんがお話してくれたことが、とても印象に残りました。
 

『チーズができるまでには、チーズ工房の造り手だけでなく、そのチーズの原料となるミルクを生み出す酪農家、ミルクを生み出す家畜用の飼料を作る人たち、ミルクを運ぶ人たち、そしてその土地の風土。その幾多の要素が重なってできる産物です。たくさんの人の努力と、日本の自然との調和のなかでしか生まれないものを大事にしていきたいと思い、この仕事をしています。みなさんが日本のチーズを食べてくださることは、日本の農業を応援することにもなるので、これからも日本のチーズを楽しんでくださいね』

 
美味しい上に、日本の農業を応援できたら最高ですよね。農林水産省によると、平成29年度の日本の食料自給率は38%。先進国の中でも最低の水準で、その中でも畜産は16%というかなり低い数字でした。せっかく熱意のある造り手が増え、品質も上がっているのだから、私達日本が応援しない手はないですよね。
 
 

チーズは二日酔い防止にも効きます


そんな大事なことも学びながら、すっかりいい気分でチーズと日本酒を存分に楽しんだのですが、これだけ飲むと普通は次の日お酒が残ったりするものです。にもかからず、「あれ、私お酒飲んだっけ?」と思っちゃうくらい、次の日スッキリだったんです。
 
その理由は、チーズのおかげ。チーズはお酒を呑む前に食べておくといいといわれている食材の代表格ですが、なぜなのか? は説明できなかったのでこの機会に調べてみました。
 
日経新聞の健康・医療に関するサイト日経Goodayの記事に、肝臓の専門医のコメントが紹介されていました。
「チーズに多く含まれるたんぱく質と脂質は消化吸収されにくく、胃に長時間留まるため、アルコールの吸収を穏やかにしてくれます。また、固形物を胃に入れておくことで満腹感が得られるため、飲むペースが抑えられるという効果も期待できます」
 
アルコールの吸収が穏やかなお燗とチーズの組み合わせが、いかに最強かがわかりますよね。まだまだ寒い日が続くので、お燗とチーズの組み合わせ、皆さんも是非是非試してみてください。私は、春になるまでに次はホットワインとチーズのマリアージュにチャレンジしてみようと思います。
 
 

参考文献
日経Gooday:肝臓の専門医が薦める二日酔い対策
北海道ナチュラルチーズ・コンシェルジュ「チーズのこえ」

❏ライタープロフィール:松尾英理子(Eriko Matsuo)
1969年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部社会学専攻卒業、法政大学経営大学院マーケティングコース修士課程修了。大手百貨店新宿店の和洋酒ワイン売場を経て、飲料酒類メーカーに転職し20年、現在はワイン事業部門担当。仕事のかたわら、バーテンダースクールやワイン&チーズスクールに通い詰め、ソムリエ、チーズプロフェッショナル資格を取得。2006年、営業時代に担当していた得意先のフリーペーパー「月刊COMMUNITY」で“エリンポリン”のペンネームで始めた酒コラム「トレビアンなお酒たち」が好評となる。日本だけでなく世界各国100地域を越えるお酒やチーズ産地を渡り歩いてきた経験を活かしたエッセイで、3年間約30作品を連載。2017年10月から受講をはじめた天狼院書店ライティング・ゼミをきっかけに、プロのライターとして書き続けたいという思いが募る。ライフワークとして掲げるテーマは、お酒を通じて人の可能性を引き出すこと。READING LIFE公認ライター。

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2019-02-11 | Posted in あなたの上手な酔わせ方

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