第24回:ダイエットの成功はダメ社員のマネジメントと同じ?(シリーズ減量〜その6〜)《ウルトラトレイルランナーが案内する日本一過酷な鎌倉・湘南観光》
2024/10/21/公開
佐藤謙介(READING LIFE編集部公認ライター)
今年の本命レースであった「ハセツネ」が終わって1ヶ月ほどたった。
前回の記事でも報告したが、個人的には残念な結果であった(泣)
(参考)第23回:難しいからこそ、面白い!!(ハセツネレース記事)
https://tenro-in.com/ultra_trail-kamakura_shonan/332679/
反省点としては、ダイエットを一週間前までストイックに行ってしまい、一週間でリカバリーできると見込んでいたが、それが甘かったということだろう。
やはりダイエットをしていると「消費エネルギー>摂取エネルギー」という状態なので体の中では常にエネルギーが枯渇している。レースで結果を出そう思ったらレース当日には「消費エネルギー<摂取エネルギー」の状態を作らなければ本番で高いパフォーマンスを出すことは難しい。
それを私は一週間あればエネルギー枯渇状態から抜けられるだろうと見込んでいた。
しかし、その一週間の間にドカ食いして体重が増えてしまっては元も子もないと思い、結局「消費エネルギー=摂取エネルギー」程度の量しか食べなかったのである。
これは現状を維持するにはちょうどいいカロリー収支なのだが、これまでストイックに減量してきた体には十分なエネルギー補給にはならなかった。
結局レースに万全の体調を作ることができずに、後半胃腸トラブルになり潰れてしまったのである。
もちろん、他にも要因は複雑に絡み合っているが、この要因はそれなりに影響していたと思われる。
ただ、今回のダイエットは中長期的な取り組みなので、一つのレースに一喜一憂するよりも、長い目で見て自分の理想につながれば問題ない。
と言うわけで反省はこのくらいにして先を見据えてダイエットを続けたい。
現在の状況
さて、ここでこの1ヶ月の体重の推移を確認してみよう。
ハセツネを走ったのが10月13日で、その4日後の10月17日にドカンと体重が増えているが、これはレース後にドカ食いしたからである。
というのは冗談で、これは浮腫(むくみ)が原因である。
その証拠に「体水分率」という体内の水分量のデータを見てみると
このように同じ10月17日に体の中の水分率が上昇していることがわかる。
レースに参加する当日の朝の体重が84.15kgだったことを考えると、レースが終わって4日間で3.3kgの水分を体にため込んだ計算になる。
その後一気に水分が抜けて体重は83.7kgぐらいに落ち着いた。
しかし、よくよくこの1ヶ月の体重の推移を見ると、その後11月に入ったあたりから2回の大きな山が出ている。
というか10月28日から先を見るとちょっと右肩上がりで増えていないか・・・
いやいや、体重はそうかもしれないけど、体脂肪率が減っていれば問題ない。
では体脂肪の方はどうかなと
うーん、増えてるね。
明らかに右肩上がりになってきてるよねww
ヤバい!!
リバウンドの傾向が見え始めている!!!
正直に告白しよう。
実はハセツネが終わってからちょっと気が抜けた感があった。
この間に飲み会があったり、仕事で出張が入ってそこでも飲み会が入ったりと、ダイエットしているにも関わらず2度ほど羽目を外して飲んでしまった。
また練習も、飲んだ次の日は朝起きれなくて、夜走ろうと思ったけど、寒くて「今日はいいや」と腑抜けたことを考えて、走りらなかった(泣)
体は本当に正直だなぁ。。。
というわけでここからもう一度気を引き目直してダイエットしていきたい。
セットポイントは強力
しかし、人間の体というのはつくづくセットポイント(規定値)に戻ろうとする力が強いことがわかる。
もちろん少し気が緩んでいたことは確かだが、決してダイエットのことを忘れていたわけではない。
相変わらず毎日食べたものは記録しているし、走れなかった日があったとはいえ2日連続運動しなかった日はハセツネが終わった後2日間を除けば一度もない。
それでも人間はセットポイントに戻ろうとする力がとてつもなく強いので、少し気が緩むだけで元に戻って行こうとするのである。
ちなみに今回のダイエットで最も達成したいことはこのセットポイントを変えることである。
このダイエット企画の最初でも書いたが、私のセットポイントはおそらく92kgである。
このセットポイントを82kg以下にしたいというのが私の目的だ。
このセットポイントに戻ろうとする力を「恒常性維持機能(ホメオスタシス)」いうが、これは生命が生得的に持っている能力である。
ダイエットした方が健康的で、さらにレースでいい結果が出ると頭ではわかっているのに、もう一方の本能ではダイエットしたくない(今の状態を変えたくない)と考え、元に戻ろうと一生懸命働きかけてくるのである。
まさに自分の中で「ダイエットしたい自分」VS「ダイエットしたくない自分(現状を維持したい自分)」が激しく戦っているわけだ。
自分を変えるための最大の「抵抗勢力」がこの「現状を維持したい」という本能なのである。
抵抗勢力はダメ社員
?
この「抵抗勢力」は例えるなら、会社の中で不満ばかり言って自分では何もしない「ダメ社員」に似ているかもしれない。
会社の社長が「これからは働き方改革してもっとみんなの健康を大事にしていきたいと思っている」と言っているのに、そのダメ社員は「また、そんなこと言って。本当は社員の健康なんてどうでもいいと思っているくせに」とぼやいている、そんな奴だ。
また自分だけ思っていならまだ許せるが、他の頑張ろうとしている社員に対して「お前頑張っているけど、本当に結果が出ると思っているわけ?」「やっても無駄だって。どうせ社長だってすぐに忘れちゃうし、やるだけ俺らが疲れるだけじゃん」「そんなことに労力使うぐらいなら、もっと自分の好きなことをやった方がいいんじゃない」と言って周りのやる気のある社員の邪魔もしてくるのである。
まさにダイエットの最大の敵も、このどこの組織にもいるプラスの方向に向かうのを裏でコソコソ抵抗するダメな社員に似ているのである。
こいつのせいでせっかくダイエットが進んできても、また元の状態に戻ってしまうのである。
あなたの職場にも、もしかしたらこういった人がいるのではないだろうか。
また皆さんがこういった社員の上司だった場合、とても手を焼くのではないだろうか。
ではこういった抵抗勢力がいる限り改善は進まないのだろうか?
実はそうでもない。
この抵抗勢力も工夫次第で手なづけることができるのである。
抵抗勢力はストレスが嫌い
そもそも彼らはなぜ抵抗するのだろうか?
それは彼らが極端に「努力」を嫌う性格だからだ。
大体の改善には「痛み」が伴う。
会社の働き方改革も、今までは自分のペースでのんびり仕事をしていれば良かったのが、急に「生産性を上げろ」と号令がかかり、休憩時間も取れなかったり、勤務中におしゃべりすることもできず時間に追われるように仕事をしなければならない。
その結果として早く帰れるのかもしれないが、その過程がとても大変だし、辛いのである。
つまり改善することに強い「ストレス」を感じているのである。
人間は基本的にストレスがかかることを嫌がる。
だからちょっとぐらいのプラスの影響があったとしても、その過程が辛いのであればやりたくないと考えてしまうのである。
ではどうしたらいいのだろうか?
それは抵抗勢力の彼らにも直接的なインセンティブを与えるのである。
例えば「もし働き方改革がうまくいって生産量を落とさずに部署全体の残業時間を半分にすることができたら、特別ボーナスで100万円をあげる」となったらおそらく抵抗していた彼らも「マジ?」となるはずである。
「働き方改革で残業減らして自分のプライベートな時間を充実させよう」と言われても自分にとってそんなにメリットを感じられなかったとしても「100万円のボーナス」となれば話は別である。
これは人間には「将来への期待値の差分が大きくなるほど行動する」というバイアスが働くからだ。
これを「プロスペクト理論」といい、期待値の差分が大きくなるほど、人はリスクのある行動でも取りやすくなるのである。
(またはこの場合は「損失回避バイアス」が働いている可能性も高い。やらないで失うものが大きい場合も人は行動をするのである)
このように抵抗勢力にとっても直接的にプラスになることがあれば、抵抗することをやめてむしろ嬉々として自分の残業時間を削減することに強力するはずである。
脳を「快」にする
これと同じことをダイエットにも当てはめればいい。
幸いダイエットにおいては最大の抵抗勢力は「自分」なので、自分にとって最大限にプラスの出来事が叶うと思えば、抵抗勢力の力を抑えることができるはずである。
これが私がダイエットに必要な3つの要素のうちの一つに「マインドコントロール」を挙げた理由だ。
※他の理由についてはこれまでの記事を参照いただきたい。
(参考)目標の解像度を高める(シリーズ減量〜その②〜)
https://tenro-in.com/ultra_trail-kamakura_shonan/328166/
ここで大事になるのは目的は「〜しなければならない(Have to)」ではなく「〜したい(Want to)」でなければならないということだ。
これはコーチングの世界ではよく使われる考え方だが、ダイエットにおいても全く同じである。
つまり人間は「〜しなければならない(Have to)」という理由だと、本心ではやりたくないと感じてしまい「ストレス」になるのである。「ストレス」に感じることは脳の中で「不快」となるため「やりたくない」というマイナスの感情を引き起こす。
ストレスがかかると体内でコルチゾールというホルモンが分泌され、ストレスを解消するために食欲が刺激され暴飲暴食につながってしまうので、ダイエットに失敗してしまうのだ。
(参考)人間は段階的に太っていく(シリーズ減量〜その3〜)
https://tenro-in.com/ultra_trail-kamakura_shonan/329397/
一方で「〜したい(Want to)」は自分の内発的動機を表しているので基本的にそれが叶えば自分にとって「快」に向かう欲求である。「快」であれば「ストレス」にはならないので、抵抗勢力も抑えられるというわけだ。
ただ、ここで大事な点が一つある。
実は「美味しいものが食べたい」「腹一杯ご飯を食べたい」というのは「強い衝動」のため、これに勝るぐらい「強いWant to」の目的を作らないと目先の欲望に負けてしまうのである。
私がハセツネが終わってから飲み会の欲求に負けたのは、まさにこの「強い衝動」にやられたからである。
この「強い衝動」に勝るぐらいの「強いWant to」を見つけることがダイエット成功の鍵なのだ。
私が叶えたい「強いWant to」とは
この「強いWant to」は一回設定したらOKではなく、ずっと探し求め続ける必要がある。
なぜならその瞬間は「欲しい」と強く思っても、人は時間と共に忘れてしまうからである。
ただ、私が今考える「強いWant to」は以下のようなものがある。
参考までに記載したい。
・80歳までハイパフォーマンスを出し続ける
→トルデジアンの最高齢完走記録を出す
・死ぬまで健康体でいる
・娘にとって自慢のカッコいいパパになる
・若々しい見た目で常に人から褒められる
・自分の心身を完全にコントロールする能力を備えている
・セットポイントを82kg(体脂肪率10%)にする
他にもあるのだが、ちょっと恥ずかしいので、このくらいにしておく。
ここに挙げたものは私にとってはかなり強い欲求である。
これを達成するために今ダイエットしていると思うと、諦めるわけにはいかない。
特に娘にとってかっこいいパパになることは絶対に諦められないww
□ライターズプロフィール
佐藤謙介(READING LIFE編集部公認ライター)
静岡県生まれ。鎌倉市在住。
幼少期は学校一の肥満児で、校内マラソン大会では3年連続最下位。ところが35歳の時にトレイルランニングに出会い、その魅力に憑りつかれ、今ではウルトラトレイルランニングを中心に年に数本のレースに参加している。2019年には世界最高峰のウルトラトレイルランニングの大会「UTMB」に参戦し完走。2023年イタリアで開催された330kmの超ロングトレイルレース「トルデジアン」に完走。普段は鎌倉・湘南エリアを中心にトレイルランニングを日常として楽しんでいる。
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