思考は螺旋階段を上るように進んでいく《週刊 READING LIFE vol.21「文系VS理系!」》
宮嶋 周一郎(READING LIFE 編集部ライターズ倶楽部)
「ここの問題は、explorerからじゃなく、Google Chromeから開かないとダメなんだよ」
ある日の日曜日、姉夫婦の家に遊びに行った際に、義理のお兄さんにパソコンのトラブルを解決してもらっていた。遊びに行くのは名目で、目的はトラブル解決のためだった。
IT会社に勤めているお兄さんには、パソコン上でわからないことがあるとよく教えてもらう。
IT会社に勤めているだけではなく、お兄さんはバリバリの理系で思考回路が私とはどこか違う。
パソコンも基本的なことはわかるが、専門的なことはやはりその分野の人には敵わない。
敵わないのは構わないが、そもそもの思考回路が全く違う気がする。
単純に頭の出来が違うというよりも、思考の使い方が違うのではないだろうか。
私は文系、お兄さんは理系。
文系と理系の思考回路って、どう違うものだろう。
そう疑問に思っていたとき、こんな言葉を聞いた。
「文系って、螺旋階段で物事を考える感じよね」
知人がそう言ったのを聞いて、おお、なるほどなぁとピンときた。
文系が考える思考の過程って、確かにそうかもしれない。
ある一つの物事を考えるとき、答えをパッと出すよりも、思考が螺旋階段を上るように、上がったり、下がったり、思考がグルグルと渦をまく。様々な可能性を頭の中で、巡らせ、巡らせ、目的の場所(答え)と辿り着く。
そう、まさにそうだ。
物事を直線的に考えるというよりも、その事柄の背景、感情などを螺旋のように洞察して答えを導く。それ故、考え過ぎては答えにスパっと辿り着きにくいときもある。ただ、それだけ様々な思考を巡らせているとも言える。
比較して理系の思考は、直線的な階段状で考えているように思える。理系の人は、まるで答えを導きだすのに、数式を使って答えがあらかじめ出ているかのように、答えに辿り着き、結論を出す。私から、受ける理系の方の思考は、そう見える。
文系が螺旋階段というのは、また一長一短がある表現だと思う。
螺旋とは、グルグル巡った状態であり、螺旋階段で上っていければ、前に進んでいるのであれば問題はない。けど、ここが短所の部分でもあるが、上がらず、ただ思考が回ってしまうこともある。
そうなっては、ただの堂々巡りだ。
「考えすぎじゃないの?」
文系の物事を考え過ぎてしまうとき、堂々巡りをしてしまうとき、つい言ってしまいたくなる一言だ。
深く考えるあまり、解決策が出ず、頭の中で思考が渦巻いてしまう。
終わってしまったこと、やってしまったことは、戻らない。
だというのに、自分の感情すらも、国語のテストの問題文を解くように考えてしまう。自分はこの時、どう考えたか、どう感じたかを考えてしまう。また、他人に対しても、どう思われたか考えてしまう。
これは文系の悪い部分が出てしまっている。
こんなときは理系の直線的に階段を上るかのように、スパッと考えればいいのに、なかなかできなかったりする。
そんなとき、バリバリの理系の人と話すと面白い。
答えをぱっと出す。
義理のお兄さんと話していると、話が止まることなく、答えがポンポンと出る。
自分にはない思考の組み立て方、速さなので、とても面白い。
それが正しいか、正しくないかはともかく、結論が出るまでの過程が速いのは羨ましい部分すらある。
もっと速く答えを出せればいいのに。
そう悩んでしまったときも、実はあった。
細かいことを考えすぎてしまい、答えが出るまでが遅いとき、本当にそう思う。
また相手の感情を考えすぎてしまい、深読みしてしまい失敗することだってある。
そんなときは、それこそ階段を上るようにトントンッと答えを出したい。
けど、私はそういう考えかたができないと思ったとき、それでもいいかもとも思った。
なぜなら、私はこの思考が好きだからだ。
遠回りをしているようで、実は色々なものも、予想外のものも発見しながら進んでいくのが好きだ。堂々巡りはよくないが、同じところを巡っているようで、一歩ずつ進んでいく。
そう良いほうに思考を転換、使っていきたい。
旅行で例えるのなら、ただ目的地をまっすぐに目指すより、道中に様々なイベントやお店に遭遇するのが楽しい。思いもよらぬ出会い、縁も、回り道をしながら見つかることが多い。
思考だって、そうだ。
ふとした閃き、思いがけない考えは、思考がぐるぐると回ったりしているときだったりする。
だから、私はこの思考が好きだ。
物事の背景を考えるとき、深く考えられる、感情を感じ取るのも得意。
上手く使えれば、コミュニケーションに役立つことばかりだ。
素晴らしいと思う。
ただ、人には適正があるように、思考にも適正がある。
直線的に階段を上るような思考が得意であれば、螺旋階段を上るような思考が得意な人もある。
どちらでも最終的な答えは一緒だ。
どちらが合っているかは、自分にしかわからない。
私が理系の思考に羨ましく思ったように、逆もあるかもしれない。
もし、文系の思考がいいと思ってくれたなら、大歓迎だ。
その時は、一緒に思考を巡らせよう。
それはまさに、螺旋階段を上って行くように歩いて行こう。
❏ライタープロフィール
宮嶋 周一郎
東京都出身。
子供の頃から本が好きで、出版関係の仕事に憧れていた。2018年9月の天狼院ライティングゼミを受けてから、ますます本が好きになり、文章を書く楽しみに目覚める。趣味は、登山とカフェ巡り。
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
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