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週刊READING LIFE vol.2

防災意識の高まりを見せる今、労災意識はあるか?《週刊READING LIFE vol.2「私の働き方改革」》


記事:かめ(LEADING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

 

 

「正社員、辞めさせてもらえませんか?」
社長は私のことばに驚いた。けれど、
「パートタイムでなら、働けます」
と言うと、安心したようだった。

 

私はそもそも、今の職場には、早く帰れるという理由で転職した。音楽スクールに通い始めて、自分の時間を作りたかったのだ。
けれど、社員で働いていて感じたのは、
「今、何の時間?」
という浪費しているような時間の発生することだった。
あるときはとても忙しく、暇なときは時の過ぎるのを待つ。
そんな働き方が、私には合わなかった。
パートとして働くと、それこそ給料は年間100万円以上減るが、自分のために使える時間は増え、さらに心に余裕もできるのではないかと考えた。

 

こうして、パートとして働くようになり、見えてきたもの。
それは、社員として働く人たちと、家族の関係性だ。
私は現在1人暮らしだが、社員さんたちの多くは、家族と暮らしている。
「こどもが生まれたばかりなんです」
なんて先輩たちもいる。
けれど、一方で、
「親として認識されているか不安で」
という声も聞く。
世の中のバリバリ働くお父さんは(うちの会社は女性は少しは早く帰宅させてもらえる)、お金を家に入れる人としての認識で、父親という重要な認識をされにくいようなのだ。

 

半年に1回程度行われる社長との面談で、その話をした。
「山崎さん(仮名)は家でのポジションが、お金を稼いでくるだけの人になってしまいそう、とおっしゃってました」
と伝えると、社長は、
「僕、もうそうなってしまっているかも……」
と。
「明らかに人員が足りてませんよね」
という共通認識を得て、求人を積極的に行ってもらうことになった。
まぁ、私もいけないのだが。
パートとして働かず、正社員で私が働いていれば、ほかの社員さんが少しは楽になるというのは考えればわかる。
けれど、私は、私の人生に責任がある。
そう思うと、自分にできる範囲のことで頑張っていくというので良いと思うのだ。

 

「ちょっと今から仕事やめてくる」
こんな映画を、昨日観た。
以前、映画館で観ようと思っていて、そのまま観れなかったものだ。よく行くレンタルビデオ店で、お誕生日特典で旧作が1本無料だった。
それで、選んだのがこの映画だった。
「仕事をやめる」
という選択肢があるのに、それをすることが、なかなかできない。
家族がいるから?
職場に迷惑をかけているから?
ほかでやっていく自信がないから?
なぜだろう。
実際私も、
「一度始めたことは簡単にやめるな」
と、母親から教わっていた。
途中でやめる人間は、人から信用されません。最初はどんなことだって辛いものです。続けて行く中で、ようやくいろんなことが見えてくるものです。
そう、教わってきた。
けれど、
「自分を大切に思ってくれる人のやさしいことばに、冷たくしか返せなくなった」
そういう状態は、実は末期だと思う。
その仕事、やめた方がいい。

 

妹の勤めていた病院で、女医さんが亡くなった。
自殺だった。
その職場の労働環境はどうだったのか、心配になった。
私の以前いた職場でも、タイムカードは無いようなものだった。
適当な時間でカードは記録し、あとはサービス残業するというのが当たり前だった。
深夜にスーパーへ行くと、
「こんな時間まで? 気をつけて帰ってね」
と、やさしいことばをもらう。
でも、深夜になるのはたまにだったし、私としては大丈夫だった。
体力的な問題なら、私は大丈夫だからだ。
けれど、精神的な問題も絡んでくると、話は別だ。
タイムカードなどで目に見える残業数(正確とは言えないが)に対して、精神的な負荷というのは、どのように記録して行けばいいのか。
これは、日誌などが有効なのだろうが、自分の思いを形として残せる人は、どれくらいいるのだろう。
一人暮らしの身からすると、自分がもし死んだあとに、他人から見られて恥ずかしいものはなるべく残したくない。
だから、自分の本心や弱音をさらすものを、日誌や手帳に記録していくというのは、ハードルの高いことかもしれない。
けれど、これが今後、自分を守るために重要になってくると思う。

 

今、日本には
「防災意識」
というのが高まっていると思う。
私のマンションにも、災害時に避難すべき場所というのが貼り出された。
これは、無意識にでも普段から見ておくことで、いざというときにそこへ向かう、あるいはそこを見れば避難場所がわかる、という認識を持っているためのものだろう。
では、会社においても同じことが言えるのではないか。
「労災意識」
というものを持つ。
事業主は、雇用の段階で、避難経路をあらかじめ提示するのだ。
こんな精神状態になることがあれば、このような手順を追って災害を回避してください。
あなたは、あなたの身の安全を守ってください、と安全策を提示するのだ。
私は、これまでに自殺により友人を亡くしたことが3度ある。
小学校の頃の、高校の頃の、大学の頃の友人だ。
そのどの時も、私は何もすることができなかった。
今、気をつけているのは、
「安心感」
ということだけだ。
相談したら、すぐに反応してくれるのではないか。
そういうものしか、自分にできることがない。
自分の身は、守ってほしい。
自分が一番、大切にしてほしい。
そのために、社長との次の面談では、労災意識についての話をしようと思う。
従業員の仕事に対する自己評価だけでなく、ストレスチェックを行うこと。
会社の方からも、チャート式の、肉体的、あるいは精神的に追い込まれ始めていることを察知できる労災避難経路を考えてみようと思う。
仕事は1つじゃない。
自分に合った、自分の心からやりたいと思える仕事を見つけていける社会になるよう、できることを、考えていきたい。

 

❏ライタープロフィール
かめ
新潟県生まれ、東京都在住。
大学卒業後、自分探しのため上京し、現在は音楽スクールで学びつつシンガーソングライターを目指す。
2018年1月よりセルフコーチングのため原田メソッドを学び、同年6月より歌詞を書くヒントを得ようと天狼院書店ライティング・ゼミを受講。同年9月よりライターズ倶楽部に参加。
趣味は邦画・洋楽の観賞と人間観察。おもしろそうなもの・人が好きなため、散財してしまうことが欠点。
好きな言葉は「明日やろうはバカヤロウ」。

 

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2018-10-15 | Posted in 週刊READING LIFE vol.2

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