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祭り(READING LIFE)

ドラフト会議は、新しい出会いの場。【前編】《通年テーマ「祭り」》


記事:中川文香(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 
大人になってから、どんな出会いがあっただろう?
 
新しく仕事をともにする人、趣味を通じて知り合った人、人それぞれたくさんの出会いがあったはず。
仕事でもない趣味でもない、そんな、出会いの場。
それが、ここには存在した。

 
 
 

宮崎県にある油津商店街の一角。
とある店舗の中にステージと観客席。
中央には「南九州移住ドラフト会議2018 クライマックスシリーズ」の横断幕。
 
“ドラフト会議” というと、一年に一度、各球団が一堂に会し、その年の甲子園のスターを指名する、あのイベントだ。
もちろん、それを思い浮かべる方が圧倒的大多数だろうけれど、 “移住ドラフト会議” とは何なのだろう?
イベントの様子を通して、この場の魅力を探った。
 

 
 
 

そもそも、 “南九州移住ドラフト会議” って?


 
南九州移住ドラフト会議とは、
『プロ野球のドラフト会議に見立て、移住者を受け入れたいコミュニティを持つ地域を「球団(地域)」、
移住を検討している人を「選手(移住志望者)」として指名会議(ドラフト会議)を開催しています。
 
一連の企画を通じて、「球団」「選手」それぞれがプレゼンテーションを行い、
指名会議で「球団」が「選手(移住志望者)」を指名し、指名された「選手(移住志望者)」と、
「球団(地域)」には翌日から1年間の独占交渉権が生じます。(引用元:南九州移住ドラフト会議2018 公式ホームページ)』
とある。
 
このイベント、プロ野球のドラフト会議になぞらえているだけあって一年がかりの壮大なおまつりで、
2018年6月、選手エントリー開始。
6月から9月まで、エントリー選手に向けて “球団” である移住受け入れ地域がWEB上で地元のPRを行う、オープン戦。
9月、移住力強化キャンプ。
10月、ドラフト本会議を経て、最終的な優勝球団を決定するまでのペナントレースに入る。
実際にドラフト本会議にて指名された “選手” と、指名した “球団” が協力して地域を盛り上げる企画に取り組み、その結果をクライマックスシリーズである本日発表、その場で優勝球団が決まる、という仕組みになっている。
 
“南九州” と名がついているだけあって、鹿児島県下の6球団が所属するカ・リーグ、宮崎県下の6球団が所属するミ・リーグの両リーグ合わせて全12球団がこの会議に所属している。
このあたりも本物のドラフト会議っぽさがある。
地域で活動する5名以上の団体であれば球団としてエントリーでき、有志を集めたコミュニティや自治体としての参加もあり、球団の色は様々だ。
“エリア” という言葉のとらえ方も、市町村単位や一つの離島、商店街や大学など球団によって色々で、かなり自由度がある。
 
ちなみに、選手としてエントリーする移住希望者は個人での参加となり、どこに住んでいても、何の仕事をしていても参加可能だ。
実際、選手としてエントリーしている方は、デザイナー・エンジニア・看護師・教師・整体師……など様々でさらには大学生や、なんと高校生だっている。
住んでいる場所も関東・関西・九州などバラバラで、遠くは新潟からの参加も。
鹿児島・宮崎に全くゆかりの無い方もいれば、「いずれUターンしたくて」という方もいたり、本当に色々なバックグラウンドの方たちが混ざり合っている。
 

 
 
 

“壮大なコント” たるゆえんは?


 
2018年を締めくくるクライマックスシリーズの始まりは、各球団の活動報告プレゼン。
まずはカ・リーグに所属する “阿久根ポセドンズ” から。
 
開始早々、なぜか子供達が舞台で踊っている動画。
 
……なんだ? おゆうぎ会?
 
と不思議に思って見ていると、実はプレゼンテーター、このクライマックスシリーズが息子さんのクリスマス会に重なり、泣く泣く移住ドラフト会議参加を優先したそう。
そして、幼稚園の運動会当日の9月は、東京・明治神宮室内競技場で開催された移住力強化キャンプに参加して、ぐるぐるバットに奮闘していた。
「家族から、”まちづくりより家づくりでしょ!” と怒られました」
と会場の笑いをさそっていた。
 

 
あ、移住ドラフト会議、こんな感じなのか。
「移住ドラフト会議は “壮大なコント” です!」と耳にしていたけれど、そういうことね。
開始10分でなんとなく雰囲気がつかめた。
 
「今回、阿久根というまちにこれまでいなかったタイプの3名を指名させていただきました」
 
まじめなお話も。
 
「シェアハウスを運営されている方、大学生、システムエンジニア。その方たちを指名したことで『あ、阿久根でこんなこと出来るんだ!』という気付きが生まれました。
自分たちのまちに無いもの・人が来ることによって、組み合わさって加速度的にまちづくりが進むのです」
 
つづく “上甑島地域雇用・移定住対策協議会” からはこんな言葉が。
「 “井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さを知る” ということわざがあります。
僕たちは “甑島” という島の中にいる蛙です。
井の中の蛙と言うと、あまり良くないイメージかもしれないけれど、僕らが井の中で楽しく暮らしている、それを皆が覗きに来たくなる、飛び込んでみたくなる。
そんな地域づくりをしていきたい、ということを改めて感じました」
 
なるほど。
井戸の中である地域から出ようとするのではなく、井の中に招いてみようということか。
 
明治神宮室内競技場でぐるぐるバットをしてみたり、成果発表のプレゼンでお子さんの映像を流してみたり、プレゼンでそれぞれの球団の登壇時にM-1の登場曲を流してみたり、お笑い要素がちょいちょい出てくるけれど、決してそれだけではない。
それぞれの地域が地域の課題にまじめに取り組んでいる。
受け入れ側である “球団” サイドは、移住ドラフト会議で出会った新しい外の人の目線を通して、改めて自分たちの地域を見てみる。
すると、それまで「当たり前」と思っていた風景や暮らしの中に、新たな気づきを見つける。
地域に “すでにあるもの” と “新しい視点” が組み合わさって、これまで予想していなかった結果が生まれるのだ。
 
では、参加した “選手” の得るものは何なのだろうか?
 
 
後編へ続く

ドラフト会議は、新しい出会いの場。【後編】《通年テーマ「祭り」》


 
文中引用:南九州移住ドラフト会議2018 公式ホームページ
 

❏ライタープロフィール
中川 文香(READING LIFE公認ライター)

鹿児島県生まれ。大学進学で宮崎県、就職にて福岡県に住む。
システムエンジニアとして働く間に九州各県を仕事でまわる。
2017年Uターン。

Uターン後、地元コミュニティFM局でのパーソナリティー、地域情報発信の記事執筆などの活動を経て、まちづくりに興味を持つようになる。
現在は事務職として働きながら文章を書いている。
NLP(神経言語プログラミング)勉強中。
NLPマスタープラクティショナー、LABプロファイルプラクティショナー。

興味のある分野は まちづくり・心理学。

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2019-03-18 | Posted in 祭り(READING LIFE)

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