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週刊READING LIFE vol.45

『週刊文春WOMAN』、その引力には逆らえない《 週刊READING LIFE Vol.45「MAGAZINE FANATIC」》


記事:うえたゆみ(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

「負けた」
 
その文章を見た瞬間、手は財布に伸びていた。
 
私は雑誌が好きである。だが、買わない。買ってしまったら、家が雑誌で占領されてしまう。そんな体験は、高校時代の一度で懲りた。雑誌の片付けで傷んだ腰のつらさは、忘れられるものではない。最近では、喫茶店や図書館、漫画喫茶で雑誌を楽しんでいる。
 
そんな雑誌買わない派の私だが今年5月、思わず買わされてしまった雑誌がある。『週刊文春WOMAN vol.2』心の1mmぐらいしかないスイートスポットのど真ん中を射ぬかれ、家に持ち帰ることしか考えられなくなった。元々、『週刊文春』は勉強資料として注目していた。「この記事を読まずにはいられない」と読者に感じさせる絶妙なタイトル、読みやすい文章、なにより他とかぶらない独自性に尊敬の念を覚えていた。昼3時に地上波で流れるニュースは、好みではない。それが気にならないほど『週刊文春』の記事は、宝石のように貴重な学ぶ対象だった。
 
「注目はしても買わない」そんな私が購入に向かった動機、それは雑誌内の煽り文句『へし切長谷部は人生を変えてくれた刀』この1文である。寝たきり中にオンラインゲーム刀剣乱舞にのめり込み、へし切長谷部という刀を観るためにリハビリを頑張った。そんな自分の体験そのものを書かれては、財布を開くしかなかった。表紙に刀剣乱舞の文字がなければページを開くことなく、煽り文句が目に入ることもなかったのに、『週刊文春』のリサーチ力に完敗である。
 
記事は刀剣乱舞というゲームをユーザーの声で紹介、その後に舞台刀剣乱舞のへし切長谷部役である和田雅成氏へのインタビューにつながっていた。記事の内容は4年以上楽しんでいるユーザーが読んでも違和感を感じない、よく練り込まれた記事だった。はじまったばかりの刀剣乱舞、あまりのグダグダすぎる展開に“ゲーム性がなさすぎる、無ゲーだ”という部分が書かれておらず、なんのトラブルもなく今の成功につながったかのように描かれている点だけは残念だった。だが、良い面ばかりを強調している残念さもインタビュー部分でどうでもよくなった。舞台を演じている役者さん同士の交流、そして和田雅成氏の誠実な人柄をあらわれた内容に「刀剣乱舞の企画をしてくれて、ありがとうございます」としか思わなくなった。
 
刀剣乱舞の記事のためだけに500円を出して『週刊文春WOMAN』を買ったが、もったいないので他の記事も読んだ。文字を1日に一回は読まないと落ち着かない性質なので、ことばであればジャンルを問わず好物である。食事と同じく出されたものをいただくと、予想外の喜びに出会うことがある。今回も同じだった。
 
『週刊文春WOMAN』の雑誌名は伊達ではなかった。創刊号の次、そしてGW号という条件である。すべての記事に静かなる熱意が、あふれんばかりに注がれていた。リサーチされていたのは刀剣乱舞ユーザーだけではなかった。「どんな女性にも、必ず1記事は読んでもらう」そんなコンセプトで書かれたとしか思えない記事が、注目度の高さ順に並んでいた。
 
『週刊文春WOMAN』を読んで、あらためて気づかされた。読者に選んでいただくためには、まずは知ることから始めなければいけない。
 
「なにを好んでいるか?」
「どんな悩みを抱えているか?」
「どれがいやなのか?」
 
思いつく限りの「なぜ?」を読者をイメージしながら繰り返さないと、『週刊文春WOMAN』はなかっただろう。創刊前に徹底的な下調べがなければ、これほどまでに女性を引き寄せる紙面にはならない。叶わぬことだが、圧倒的な調査力の源が知りたくなった。
 
文章は、書き手と読み手の共同作業である。書き手がいなければ、この世に文章は生まれない。しかし読まれない文章は、存在しないに等しい。特に雑誌はインターネットが普及後、急速に勢いをなくし廃刊に多数追い込まれている。そんな中でも、文春砲と言われるほど独占ネタをほしいままにしている強者の地位に甘んじることなく、『週刊文春』のメイン読者層ではない女性に切り込む。そんな意欲を感じさせる『週刊文春WOMAN』を創刊された姿勢に敬意が高まった。
 
「驕れる平家は久しからず」とのことばが現すように、絶頂期後に崖から突き落とされるかのように墜落するのは、あまりに見慣れた光景だ。その転落の原因は、成功の思い込みとチャレンジ精神の減少である。「もう敵はいない」との慢心が、後の敗北につながる。100年単位続く組織はすべて「勝って兜の緒を締めよ」の精神で、気を引き締めている。業績が良ければよいほど、状況が悪くなった時の準備と次のチャレンジへの投資を積極的に行っている。
 
『週刊文春WOMAN』の様子からは、女性読者を開拓しようという精神がチラ見えしている。長く続いている女性誌と比べればピントがずれている箇所もあるが、それも若葉のごとき瑞々しさを感じて面白い。
 
私の学ぶ対象に、『週刊文春WOMAN』が新たに加わった。

 
 
 
 

◻︎ライタープロフィール
うえたゆみ(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

1980年 生まれ38歳。
一部上場企業の営業職だったが、体調不良が原因で退社。
現在はフリーで活動中。
食事を忘れても、文章を読むのは忘れない物語好き。
物語とゲームがあれば、3日飯抜きでも苦にならない。
全国高校文化祭、将棋の部女子個人戦でベスト8、
スレイヤーズのカードゲームで西日本大会優勝経験あり。

 
 
 
 

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2019-08-12 | Posted in 週刊READING LIFE vol.45

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