fbpx
週刊READING LIFE vol.45

MAGAZINE IS ME! 〜雑誌コミュニケーション〜《 週刊READING LIFE Vol.45「MAGAZINE FANATIC」》


記事:田澤 正(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

「お、ロキノン読んでいるんだ!」
この瞬間が高校生活を変えた。
 
高校時代。入学当初。ワクワクしていた。
ハイスクールライフ!青春!楽しい高校時代を過ごしたいと鼻息を荒くしていた。新調のブレザーの制服に袖を通し、緊張しながら。
 
新しい友達出来るかな。ドキドキしていた。
 
でも、残念ながら出来なかった。一人も。友達は出来なかった。
 
人見知りのくせに自意識過剰。誰かに気づいて欲しいが、自分から話しかけられない。
 
本当は、
音楽の話をしたい
バンドも組んでみたい
何より友達が欲しい。
 
そんな自分を隠しながら、気づいて欲しいと心で叫ぶややこしさ。
 
そんなややこしいヤツはなかなか相手にして貰えない。クラスに馴染めない自分。休み時間、気付くとポツンとしていた。
 
段々とクラスのあちこちにコミュニティが出来てくるにつれ、違和感を感じる。
 
誰かに話しかけられる事をドキドキしながら待つ日々が、俯き加減の毎日に変わっていた。
 
当時「ロッキンオンジャパン」を読んでいた。邦楽の音楽雑誌。思春期を迎え、テレビの音楽番組を卒業した頃。もっとギラギラした何かを欲していた自分にとって衝撃的な雑誌だった。貪る様に読んでいた。キラキラしたミュージシャンのかっこよさ、狂気、クールさ。独特の文体と写真で溢れかえる。ページをめくる度に、歓喜の声をあげていた。ここで紹介されている音楽を聴き、また読む日々。
 
学校の休み時間。友達がいないので暇すぎる。
 
仕方なくロキノンを持っていく。ページを開くと、好きなバンドがキラキラカッコ良くそこにいる。「一万時インタビュー」名物コーナー。ミュージシャンに様々な角度から切り込む熱い、いや、むさ苦しいインタビュー。その音楽論の戦いを読み、興奮していた。
 
「毎日毎日アホみたいに、休み時間の度にロキノンばかり読んでいる奴がいる」意図せず、目立ってしまう。
 
同じ音楽好きの違うクラスの2人が話しかけてきてくれた。
そこからお互いの好きなバンドの話をする様になる。意図せず、友達が出来たのだった。
そこから、友達の友達が友達になり、バンドを組んだりと。やっと高校生ライフが始まった。
 
雑誌は読むものだと思っていた。
 
雑誌による自分のプレゼンテーション。
その有効性に気づいた瞬間でもある。
 
その時から何気なく読んでいる振りして「実は自分はこういう人間です」と伝えるツールとして活用した。いや、本当の自分より背伸びした自分だけど。理想の自分を演じる。
 
大学時代「STUDIO VOICE」オサレなアート、カルチャー満載のクールな雑誌。これを溜まり場の学食でさりげなく読む。
 
すると後輩の女子から「え、この雑誌読んでいるんですね」と話しかけられ一緒に美術館に行く様になったり。
 
最近ではデザイナーのナガオカケンメイさんの
D design travel。旅をデザインするというオサレな雑誌。職場の方と貸し借りして盛り上がったりした。
 
上手く自分を口で伝えられない自分の代わりに、自分を伝えてくれた。
 
確かに、今スマホの画面を見れば様々な情報が簡単に手に入る。その量も質も、雑誌媒体の比べものにもならない。
生まれた瞬間に古くなる情報。
紙媒体では、店頭に並んだ時点で、Amazonから家に送られてきた時点で、情報は鮮度を失っている。しなびたレタスの様に。
 
それでも本屋で。雑誌が色とりどりの雑誌が並んでいるのは楽しい。スーパーマーケットのフレッシュな野菜売場にも似て。ワクワクが止まらない。手軽な宝探し。スマホでは自分の好きな事に偏るけれど、店頭でジャケ買いだったりと、意外な出会いがある。
紙の質感だったり、ページをめくるドキドキ。パッケージだから満足できる所有感もある。
 
そういえば、今度引っ越しをするのだが、マガジンラックにはオサレ、サブカル、カフェ的な雑誌を置く予定。別に読むんじゃない。自分の世界観を、居心地の良い空間を、雑誌につくってもらうから。雑誌はインテリアにもなる。
 
ネットが発達しメジャーな雑誌が廃刊、休刊などがある事実。減少して行く雑誌。
でも、本当は違う。
 
同人誌に始まり、こだわりに満ちたコアな雑誌は
無数にこの世に産声を上げている。ネットですら検索できない新しいカルチャーが生まれている。
 
個人でも雑誌を作れるという変革の時。
マーケットの数字には現れない新たな雑誌の波は確実に浸透している。
 
そういえば、大学の頃。友達が作っていた雑誌。
雑誌というか同人誌。同人誌というか、ほとんど
手作りの紙媒体。
 
自分の写真と文章を載せてもらった。
出来上がってきた時、感動した。とても手作り感なんだけど、雑誌に自分の世界を載せてもらっている感動。
 
今度、天狼院でZINのゼミが開校するそうな。雑誌を自分で作るって。ずるいぜ天狼院。
 
写真と文章が好き。自分の理想の雑誌ってなんだろう。妄想していた。素敵なデザイン、素敵な写真、シンプルな構成。自分が読みたい、持っていたい、自慢したい雑誌。
妄想マガジンを創刊していた自分。
 
言ってみたい素敵なあのコに
 
「この雑誌、実はオレが作ったんだよね」
 
「すごい素敵なんですね、意外、見た目はフツーなのに」
 
これこそ究極の雑誌の使い方。雑誌コミュニケーションの真骨頂じゃないか。楽しいかも。
やっぱり雑誌って楽しい!
 
読むから、ついに雑誌を作る世の中へ。
マスからコアに。
 
雑誌はいつだってワクワクさせてくれる。
 
これからも雑誌を通じたコミュニケーションで楽しい生活を送りたい。
 
どんな出会いが待っているか。雑誌もヒトも。

 
 
 
 

◻︎ライタープロフィール
田澤 正(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

神奈川県横浜市出身。
横浜にこの人ありと言われた鳶職の頭が祖父。
大学教授の父と高校教師の母の間に次男として生まれる。

某製薬会社勤務。

音楽、コーヒー、雑貨、本。何気ない日常の景色を変えてくれるカルチャーに生かされて来た。
そんな瞬間を切り取りたいと天狼院ライティングゼミ参加。現在ライターズ倶楽部所属。

趣味はコーヒードリップ、カメラ、ギター演奏。
フィルムカメラは育緒氏に師事。

 
 
 
 

【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜《7/31(水)までの早期特典あり!》

 


2019-08-12 | Posted in 週刊READING LIFE vol.45

関連記事