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週刊READING LIFE vol.52

会議をパーティーに変えるには《 週刊READING LIFE Vol.52「生産性アップ大作戦!」》


記事:射手座右聴き (天狼院公認ライター)
 
 

「早く終わらないかな」
フリーランスになりたての頃、一番の悩みのタネは、会議だった。
昨日も今日も23時。明日は何時に終わるだろう。
結論に達しない会議が毎日続くことがある。
仕事に呼んでいただくのは、ありがたい。
でも、拘束時間が長くなると、ほかの仕事に影響がでる。
しかし、結論がでない会議で、
「次の仕事があるので、帰ります」
とは言えない。
やむを得ず、残る。
みんなの沈黙が続く。あるいは、納得しない人同士の議論が続く。
5,6時間の会議が終わる頃には、
スマホにほかの仕事の督促のメールがきている。
 
納期の迫っている仕事なら、仕方ない。
でも、そうでない時の長い会議をなんとかできないか。
 
そんなとき、とあるアイデアソンに参加した。
みんなで地域をよくするアイデアを考え、提案するものだ。
参加者は、年齢も経歴も職業もバラバラ。まとまる気配がなかった。
みんな牽制しあい、なかなか口を開かなかった。
「あの、新しくグルメの名産品を作って売ればいいんじゃないでしょうか」
恐る恐る口火を切ったAさん。
「それはありがちじゃないかな。きっとうまくいかないよ。むしろ、小学生に海外を体験をさせたらいいと思うんだけど。僕は小学生の頃、ホームステイをしてね……」
あっさり否定し、自分の意見をぐいぐい押し付けてくるBさん。
 
「おおお!」
いきなり大きな声でCさんが話し始めた。
「なるほど、それいいかもしれないですね」
押しの強そうなBさんが嬉しそうに反応する。
「でしょ。だからね」
得意気に話し始めたBさんを、Cさんが遮った。
「でもね、Aさんのアイデアもざっくりしてるけど、なくはないかもしれませんね」
Aさんがホッとした顔をする。
「それぞれいいところはあると思うから、この感じで、DさんやEさんの意見も
聞いてみませんか?」
 
Dさん、Eさんも少しリラックスした様子で話し始める。
「それ、こういうところがいいですね」
「ああ、近いアイデアで成功してる街もありますね」
 
誰の意見もひとまず肯定するCさんの態度がみんなに伝わり、話が弾み始めた。
ほめられると、人は嬉しいものだ。
 
ここまでなら、いいブレスト、だけだったかもしれない。
みんなが、人のアイデアにかぶせるようになっていったのだ。
「Aさんの新しい名産品のアイデアだったら、山の斜面に何か栽培するとか
いいかもしれません」
「そうですね。山の斜面は日当たりもいいかもしれませんね」
「それだったら、みかんもいいかもしれません」
「それ、いいですね。たしかに、Bさんの言った小学生の話もいいから、みかんを
海外に届けにいくとかもありかもしれませんね」
「それ、新しいですね」
どんどんアイデアが加速した。
みんな、アイデアの納得いかないところは、スルーし、ピンときたところだけ足していく。どんどんまとまっていった。なんというか、一体感がでてきた。
 
これを見ていて、ある光景が浮かんだ。
数年前にバズったひとつの動画だ。海外のフェスで、一人の男が踊り始めると
だんだん周りの人が踊り始め、やがて、そこにいた群衆すべてが踊り出す、というものだ。
そうだ。まず、自分が踊ることだ。趣味でやっているDJでもそうじゃないか。
クールにDJをしているよりも、まず、自分のかけた曲で自分が踊り出したほうが
お客さんは、頭を振ったり、リズムをとったりしやすい。さらに、ピンポイントで
あるお客さんの好きな曲をかければ、一気に踊り出してくれる。
あとは、「この曲が好きなら、関連するこの曲もいいんじゃないか」
と積み重ねていけば、2人、3人と踊り出す。
5、6人踊り出してくれれば、もうあとはどんどん加速するのだ。
 
そうか。会議にもこのイメージがあればいいのか。
何も難しい顔をして会議をしなくてもいい。自分を賢く見せようと思わなくていい。
とにかく、参加者をほめよう。アイデアや意見をよく聞き、納得できるところを、大げさにほめよう。その場にグルーヴを作るのだ。
 
さっそく、実践してみた。
積極的に、「○○さんのアイデア、いいですね」
「今の話を受けて考えたんですけど」
みんなのアイデアがひとつの形になったように、
発言していった。
「今の発言は、いいアイデアですけど、もっとちがった条件のときなら、最高でしょうね。惜しい」
話が逸れても、褒めながら話を戻す。
やがて、自分が発言しなくても、みんなが自走し始めた。
早い早い。
2時間ほどでまとまった。何よりも、みんなが笑顔だった。
次の課題を決めて、解散になった。
 
実はこのあとの会議では、方向性が180度変わった。
「あのあと続きを考えてみたら、ちょっと方向変えた方がいいかもしれないです」
みんなが言った。
でも、みんな嫌な顔はしなかった。
 
なぜなら、みんなで楽しく決めたからだった。楽しかったから、続きを考えたのだろう。
 
そう。楽しい会議がいつもうまくいくとは限らない。正解がでるとは限らない。
 
でも、会議は楽しく、パーティーのように。
自分から踊るように、みんなを盛り上げる。
盛り上がるから、短時間で楽しくおわる。
楽しいから、みんな続きを考えてくる。
つまらない会議よりも、生産性は上がっているはず。
 
適度に言葉を踊らそう。会議をパーティーにしよう。
「ふざけるな」
と言われない程度に。

 
 
 
 

◻︎ライタープロフィール
射手座右聴き (天狼院公認ライター)

東京生まれ静岡育ち。新婚。大学卒業後、広告会社でCM制作に携わる。40代半ばで、フリーのクリエイティブディレクターに。退職時のキャリア相談をきっかけに、中高年男性の人生転換期に大きな関心を持つ。本業の合間に、1時間1000円で自分を貸し出す「おっさんレンタル」に登録。4年で300人ほどの相談や依頼を受ける。同じ時期に、某有名WEBライターのイベントでのDJをきっかけにWEBライティングに興味を持ち、天狼院書店ライティングゼミの門を叩く。「人生100年時代の折り返し地点をどう生きるか」「普通のおっさんが、世間から疎まれずに生きていくにはどうするか」 をメインテーマに楽しく元気の出るライティングを志す。天狼院公認ライター。
メディア出演:スマステーション(2015年),スーパーJチャンネル, BBCラジオ(2016年)におっさんレンタルメンバーとして出演

 
 
 
 

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2019-10-07 | Posted in 週刊READING LIFE vol.52

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