fbpx
週刊READING LIFE vol.53

スパイラル大作戦がはじまる朝《 週刊READING LIFE Vol.53「MY MORNING ROUTINE」》


記事:井村ゆうこ(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

「朝から、よくそんなに食べられるな」
 
濃いブラックコーヒーを飲み終わった夫が、シンクにカップを置きながら、ダイニングテーブルの上に置かれた、私の朝食に目をやる。その顔には「胸やけしそう」と書いてある。そして、もう何回聞いたのか、分からないくらい、おなじみのセリフを残して、洗面所へと向かっていく。
 
朝5時20分に起きて、6時15分に家を出ていく夫の朝食は、コーヒーだけ。
朝4時50分に起きて、8時20分に家を出ていく私の朝食は……かなりボリュームがある。
例えば、今朝の朝食は、
ごはん、なめこの味噌汁、納豆、卵焼き、鶏のから揚げ、こんにゃくの甘辛煮、きゅうりの浅漬け、りんご、ヨーグルト、フルーツグラノーラ、チョコレート、菓子パン、アイスクリーム。
品数は及ばないが、和食と洋食、デザートまで網羅された、ホテルの朝食バイキング並みのラインナップだ。
 
「この女、やばいよ! 朝から大食いが過ぎる」
と、言われても仕方がないのかもしれない。
 
しかし、断っておくが、私はただの大食漢ではない。
私は、「イライラしないで1日を過ごすスパイラル」に乗っかり続ける作戦を、遂行中の身なのだ。その結果として、食べ盛りの高校生にも負けず劣らずの量の朝食を、平らげている。
 
「イライラしないで1日を過ごすスパイラル」作戦には、いくつかルールがある。
第1のルール
朝食、昼食、夕食の量の比率は、「5:3:2」にせよ。
第2のルール
夕食後はすぐに歯磨きをして、就寝まで、水以外は口にしないこと。
第3のルール
朝食は、好きなものを好きなだけ食べて良い。がまんする必要なし。
第4のルール
朝は、「夕方の自分を助ける」ために、出かける3時間以上前に起きるべし。
 
4つあるルールを、詳しくみていこう。
 
まず第1のルール。
『朝食、昼食、夕食の量の比率は、「5:3:2:」にせよ』だが、これは一目瞭然だ。朝いちばんしっかり食べ、昼は普通に、そして夜は、少ない量を、軽く食べるというものだ。
この比率の効果はずばり、太らないこと。
朝は1日の始まりなので、摂取したカロリーを消費する時間がたくさんある。1日かけて消費すればいいのだから。しかし、夕食は違う。夕食後は入浴で多少カロリー消費を期待することはできるが、意識してジムにでも行かない限り、大量のカロリー消費は期待できない。だから、1日でいちばん軽い食事にし、消費されずに残ったカロリーが脂肪に変わるのを阻止するのだ。
 
次に第2のルール。
『夕食後はすぐに歯磨きをして、就寝まで、水以外は口にしない』だが、これも期待している効果は第1のルールといっしょだ。夕食後すぐに歯磨きをすることによって、その後の無駄な間食を防ぎ、未消費のカロリーが脂肪にかわるのを阻止するのだ。
 
正直言って、第1のルールも第2のルールも最初は守るのが大変だ。
朝しっかり食べようと思っても、そもそも朝起きるのが、出かける前ギリギリだったら不可能だ。
夕食を軽くしておこうと思っても、飲みに誘われれば断り切れず、暴飲暴食してしまう。
なんとか夕食を軽くしてみたものの、今度は空腹で眠れない。
なんてことは、よくあることだろう。
 
そんな「守るのがつらい」ルールを守れるようにしてくれるのが、第3のルールである「ご褒美」ルールだ。
 
第3のルール。
『朝食は、好きなものを好きなだけ食べて良い。がまんする必要なし』をよく見て欲しい。
夕食を軽くするのが辛いなと思ったら、このルールを思い出すといい。
「明日の朝は、ケーキもチョコレートもアイスクリームも食べていいんだから、今はやめておこう」
「ちょっとお腹空いてるけど、起きたら何でも食べていいんだから、さっさと寝ちゃおう」
と思えるようになったら、第1のルール、第2のルールを攻略できたも同然だ。
食いしん坊な上に意志の弱い私は、自分にこう言い聞かせている夜が、結構ある。
 
しかし、「空腹を抱えて眠ることはできるかもしれないけど、朝しっかり食べるために早起きするなんて無理! 出かけるギリギリまで寝ていたい」というひとも少なからずいるはずだ。
そんなひとには、こう言いたい。
「大丈夫、起きられます。起きられるようになります」
なぜって? 答えは簡単。朝、お腹が空いて、目が覚めるからだ。
 
第1のルールと第2のルールを守っていると、寝る前の胃の中は、ずいぶんとさみしい状態だ。だから、朝が近づくと、脳が、胃が、体全体が「早くご褒美をくれよ」とばかりに動き出す。
 
英語で、朝食を表す「Breakfast」の、語源をご存じだろうか。
「Breakfast」は「Break」=壊す、「fast」=断食という2つの単語の組み合わせでできている。
つまり、夕食から続く長い「断食」を「壊して」最初に口にする食事が「Breakfast」であり、朝食なのだ。
 
私が作った第1のルールと第2のルールを守ると、この「断食」状態のレベルが高くなる。
もちろん、寺で本格的に修行として行われる「断食」や、ダイエット、アンチエイジング、体質改善などの目的のために、断食道場なる場所で行われる「断食」と比べたら、徹底度は低い。
しかし、毎晩このプチ断食状態を続けていると、「fast」を「Break」、つまり「断食をこわす」ことを求める体になる。しっかりとした朝食を食べられる体になる。朝、空腹で目が覚める体になる。
もちろん個人差はあるだろうが、少なくとも私の体は「Breakfast」待望体質になった。
 
ここまで読み進めてくださったひとの中には、きっと
「別に、太りたくないとか思っていないから、オレには関係ない話」
「3食バランスよく食べて、体を動かした方がいいから、ボクには興味ない話」
「夜型生活で何の不満もないから、ワタシには必要ない話」
と感じているひとが、きっといると思う。
そんなひとには、こう言いたい。
「ちょっと待って! まだ第4のルールが残っている。それ聞いてから判断して!!」
 
第4のルール。
『朝は、「夕方の自分を助ける」ために、出かける3時間以上前に起きるべし』
このルールを見て、ますます背を向けてしまいたくなっているひと……もうしばらくお付き合い願いたい。
 
まず、朝4時50分に、お腹が空いて目を覚まし、8時20分に家を出るまでの、私の3時間30分の動きをご覧いただきたい。
 
4時50分~5時20分
コーヒーメーカーをセット。オーディオブックで本を聴きながら、化粧と身支度を済ます。
5時20分~6時20分
夫を起こし、キッチンで娘と自分の朝食、その日の夕食の下ごしらえと、作り置きを一品か二品作る。
6時20分~7時
娘を起こし、洗濯機のスイッチオン。新聞、Web雑誌、メール等のチェック。
7時~7時半
娘といっしょに朝食をとる。後片付けをしながら、ごみをまとめる、洗剤を詰め替えるといった、細かい家事を片付ける。
7時半~8時
オーディオブックで本を聴きながら、洗濯物を干し、掃除機をかけて水回りの掃除をする。
8時~8時20分
娘の身支度を手伝いながら、自分も化粧を直し、最後に口紅を塗るって出かける。
 
私は主婦なので、24時間の中に「家事」の時間がどうしても必要となってくる。この家事を、朝、昼、晩で分散させるのは、非常に効率が悪いく、時間がもったいない。
だから、ここでも私は比率を設けている。朝、昼、晩の家事をこなす量の比率は「9:0:1」だ。
晩は、夕飯の最終仕上げと後片付けだけにして、その他の家事は全部朝終わらせるようにしている。そうすることによって、昼間の時間から1秒も家事に回さなくてよくなり、有効に時間が使える。朝のうちに家事の9割を終わらせておけば、夕方家事に追われてイライラすることもなくなる。
 
つまり、「イライラしないで1日を過ごすスパイラル」作戦とは、こんな連鎖からできている。
 
朝、出かける3時間以上前に起きる。
朝、好きなものを好きなだけ食べる(満腹感・満足感で自分を満たす)
朝、「夕方の自分を助ける」ための家事を全てこなす(充足感・安心感で自分を満たす)
昼、仕事や、やるべきことの大半を終え、自分の自由時間を確保する(達成感と開放感で自分を満たす)
夜、夕食は軽く済ませ、残った必要最小限の家事をこなす(頭にも体にも余分なものを入れず、スッキリ感で自分を満たす)
翌朝、空腹で目が覚める(空腹を解消できる幸福感で自分を満たす)
 
このように、プラスの感情をこれでもか、と投入するスパイラルに身を置くことによって、イライラから遠ざかることができるのだ。
よって、この作戦は決して、太らないためのものでも、健康を維持するためのものでも、朝型人間になるためのものでもない。
この作戦の真の目的は「イライラしない毎日を積み重なることによって、ぼろぼろにならない自分を獲得する」というものだ。
イライラが続いたら、人間は、ぼろぼろになるのが必至なのだから。
 
私は、「夕方の」自分を助けるために、朝、家事をこなしているが、その必要がない人は、言葉を自分の必要なものに、置き換えてみて欲しい。
例えば、「1ヶ月後」の自分を助けるために、朝、ジョギングをする。
例えば、「3ヶ月後」の自分を助けるために、朝、勉強をする。
例えば、「半年後」の自分を助けるために、朝、ブログを書く。
例えば、「一生」の自分を助けるために、朝、夫婦の会話を持つ。
 
朝の自分が、何日か後、何ヶ月か後、何年か後の自分を助けてくれると思えば、夜の空腹にも不思議と耐えられるようになるということを、一度体感してみてはいかがだろうか。
 
最後に第5のルールをお伝えして、私のモーニング・ルーティーンの話しは、終わりにしたい。
第5のルールは至ってシンプルだ。
 
第5のルール
週末はスパイラルから抜け出して、良し!
朝寝坊、ブランチ、がっつり夕食、ほろ酔いナイト、朝までNetfrix、なんでもOK。
 
私は、この第5のルールを確実に守ることで、「イライラしないで1日を過ごすスパイラル」作戦を、10年以上遂行している。
そして、そのおかげで、こころも体もぼろぼろにならずに、新しい朝を迎えている。

 
 
 
 

◻︎ライタープロフィール
井村ゆう子(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

転勤族の夫と共に、全国を渡り歩くこと、13年目。現在2回目の大阪生活満喫中。
育児と両立できる仕事を模索する中で、天狼院書店のライティングゼミを受講。
「書くこと」で人生を変えたいと、ライターズ俱楽部に挑戦中。
趣味は、未練たっぷりの短歌を詠むことと、甘さたっぷりのお菓子を作ること。

 
 
 
 

【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜《10/2(水)までの早期特典あり!》

 


2019-10-14 | Posted in 週刊READING LIFE vol.53

関連記事