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週刊READING LIFE vol.54

ジブンメガネのススメ《 週刊READING LIFE Vol.54「10年前の自分へ」》


記事:夏秋裕子(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

#10年を振り返る
SNSでふと目についたハッシュタグ。
つい最近SNSで「#10年を振り返る」というハッシュタグが話題になっていたので自分の10年も振り返ってみた
10年前 夫の転勤・単身赴任
9年前 妊娠・出産
8年前 育休明け・職場復帰
7年前 フルタイム勤務再開
6年前 子供と寝落ち生活
5年前 仕事で「パートナー」と思える人に出会う
4年前 キャリアに迷って「自分探し」をする
3年前 経営大学院通学開始
2年前 3足のわらじ生活満喫
1年前 大学院卒業
 
振り返ってみると、人生で一番の転機は「出産」だった。
それまでは営業部門で長時間も厭わず働き、とにかく仕事が好きで楽しんでいた。
結婚しても共働きであったため、特にワークスタイルを大きく変える必要がなかったからだ。
そういう生活だったので、夫の転勤が決まった時も「会社を辞める」という選択肢は自分の中には一切なく「いってらっしゃ~い」といつもの出勤時のように笑顔で見送った。単身赴任生活1年後、子供を授かることができ、1年の育休を取りゆるりとした子育て生活を満喫した。
 
「さて、そろそろ復帰」
と思った時にはたと気付いた。
「平日は夫がいない」となると
「子供を保育園に送って行くのは誰?」
「帰宅して子供の世話をするのは?」
「子供が熱を出したら付き添うのは?」
「やっぱり子供と父親が離れて暮らすのはかわいそうなのか。家族で一緒に住むべきなんかな?」
と色々な心配事が湧いてきて、仕事をしながら、子供と私のふたり生活に目の前が真っ暗になった。
そんな時先輩ワーママにその不安をもらすと、その先輩があっけらかんとした顔でこう言ったのだ。
「それ、ラッキーやん! 平日は旦那の世話せんでいいねんで。」
 
目からウロコであった。
夫がいても早く帰れるとは限らない。となると、結局お迎え・食事の準備・お風呂の世話などは私がすることになる。子供を寝かせた後、「ただいま」と帰ってくる夫にイラっとする自分の姿が目に浮かぶようだった。
 
いればアテにしまう人も、いなければそれなりのライフスタイルを確立するしかない。
その先輩ママの一言で私の育休明け復帰生活は「かわいそうなワンオペ育児ライフ」から「子供とふたりでお気楽育児ライフ」に変わった。
 
ただ、やはりワンオペ育児生活はかなりハードだった。実家のヘルプをもらいながら、ばたばたとした毎日を過ごした数年間は正直振り返えろうにもあまり記憶がない。
 
復帰後3年目くらいにようやく仕事が軌道に乗ってきたと感じた時。
またはたと気付いてしまった。
「子供が3年生くらいになるまではこのワークスタイルが続くの……」
33才からの10年間となるとビジネスパーソンとして最も色々な経験ができ、伸び盛りのタイミングではないか。その10年間のキャリアをあきらめるのはもったいない。
「時間で勝負ができないとなると、アウトプットの質で勝負するしかない」
そう思い、体系的に経営について学ぼうと考えた。
 
試しにお目当ての大学院の「単科生制度」を活用して通ってみたが、これがなかなかハードな生活であった。週末のクラスに加えて、予習・復習にも1科目週4-5時間が必要であった。このような生活が3年間続けられるのか不安だった。
「今受けるか、子供がもうちょっと大きくなってから受けるかどちらがいいか」
そこでワーママの先輩に相談してみると、
「確かにMBAを取るのは時間がかかるし、体力的にも大変だと思う。でも、『子供が落ち着くまで』と思っていたら、その時には更に歳を取ってもっと体力がなくなるよ」
 
またまた目からウロコだった。
 
よく言われる「あなたの人生で一番若いのは今日だ」というやつだ。
「今できるかな」ではなく、挑戦するのは「今だから」できるのだ。
 
その言葉に後押しされて、結局3年間経営大学院に通いMBAを取得した。
そして世の中や人生の見え方が変わった。
スペース
「人生の転機」は「迷い」という顔でやってくる。「迷う=複数の選択肢がある」からこそ転機なのだ。
自分のライフスタイルが変わる時に「右か」「左か」という選択肢を突き付けられる。選べる道は1本だ。ではその道をどのように道を選べばいいのか。ここで「世間の常識」を持ち出すのはもったいないと思う。なぜなら「世間の常識」も時代によって変化してくるからだ。
例えば、少し上の先輩世代は「出産したら仕事を辞める」というのが常識であった。ましてや単身赴任の家族と離れて妻が仕事を続ける、というのは当時であれば常識外れだったかもしれない。だが10年後の今、自分の職場は育休復帰100%だ。出産は会社を辞める理由にはならない。更に、様々な制度やテレワークなどの技術の発達も相まってワーママでもきちんと成果を上げ、組織に貢献する体制が整っている。
 
自分が満足できる人生を送るためには、その時自分が必要だと思う選択をしていくしかない。
人生の転機には時代と共に移り変わる「世間の常識」をあてにするのではなく、「自分がどうしたいか」を基準に考えた方がいいと思う。
その時は大変でも「なんでこんな道を選んでしまったのか」と思ったとしても、過去は変えられるのだ。
「既に起こってしまった出来事」を「自分の人生にとってどのように解釈し、意味付けをするか」によって過去の出来事は失敗にも成功のための糧にもなる。
「夫単身赴任ラッキー」説や「今だからチャレンジするMBA」論などのアドバイスは、自分の「これまでの世間の常識に捉われた考え」に対して「このメガネで見たらこう見えるよ」と、「世間メガネ」を外して「自分メガネ」にかけかえてくれた魔法の言葉だ。
 
どのようなメガネをかけるのかを選んで、自分を幸せにできるのは自分だけだ。
次の10年目の初めに当たるこの4月に、長年住み慣れた場所から突然自分自身が転勤することになった。子供連れの単身赴任である。更に部下がついて、マネジメントをするというこれまた初めての経験。これもまた自分にとっては「転機」なのであろう。
この経験を通して次に自分が得る「ギフト」が何か、とても楽しみだ。
10年前のあなたはまだこれから何が起こるかも分からずに向かい風を懸命に受けていた。
これから先10年、気持ち次第でもっとワクワクした未来が待っている。
これからも「自分メガネ」をお供に歩んでいきたい。

 
 
 
 

◻︎ライタープロフィール
夏秋裕子 (READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

ワーママ歴8年、子連れ単身赴任中の新米マネジャー。
「ひとりひとりがイキイキと働く職場」の実現を模索中。
読書しながらスイーツを食べる時間が至福の時間。


日大芸術学部写真学科卒業
学生時代カメラマンを志すも、サラリーマンになる。
現在は広告会社を経営しているが、
50歳となった今頃、昔の志の燻った火が灯り初め生き方を
改めて模索している。

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2019-10-21 | Posted in 週刊READING LIFE vol.54

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