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宇宙一わかりやすい科学の教科書

世界を変えた! 超天才アインシュタインの「究極の発想の転換」とは?《宇宙一わかりやすい科学の教科書》


記事:増田 明(READING LIFE公認ライター)

SF作品でよく使われる「ウラシマ効果」という言葉をご存知でしょうか?

宇宙を旅して地球に戻ってきたら、自分は一年しか旅をしていないのに、地球では数十年も経っていて、友人や家族がみんな年を取ってしまっていた。そういう現象のことを指します。竜宮城から戻ってくると、地上では長い時間が経ってしまっていた、という浦島太郎の話をもじって「ウラシマ効果」と呼ばれています。様々なSF作品に使われていて、名作映画「猿の惑星」などが有名です。

この「ウラシマ効果」、実はある物理学の理論が元になっています。その理論の名は「相対性理論」。名前を聞いたことがある方も多いでしょう。
二十世紀最高の天才と言われる、かの有名な物理学者、アルバート・アインシュタインが作った理論です。
この理論は、時間や空間に対する物理学の常識、人類の常識をひっくり返した理論としてとても有名です。他の科学者達には作れない、あまりに常識破りな内容。それでいて鮮やかで完璧な理論体系。それは当時の世界に衝撃を与えました。そしてアインシュタインは相対性理論によって、天才としての名を世界にとどろかせたのです。

皆さんは、相対性理論ってものすごく難しい理論なんじゃないか、と思われるかもしれません。しかし実はそうでもないのです。
相対性理論は、意外にも高校生レベルの数学で書かれていて、頑張れば理解することはそれほど難しくないのです。
あれ、そうなの? じゃあなんでそれほど難しくない相対性理論を作ったアインシュタインが、二十世紀最高の天才と言われているの? なぜ他の科学者達はその理論を作ることができなかったの? そう思うかもしれません。

アインシュタインが天才と言われる理由、相対性理論を作ることができた理由、それは「究極の発想の転換」ができたからなのです。アインシュタインは、他の科学者達がとらわれていたある「常識」、普通はとらわれていることにすら気がつかないある「常識」、それに気づきそれを打ち破り「究極の発想の転換」をしたのです。このことが、アインシュタインが相対性理論を作り、二十世紀最高の天才と言われる理由なのです。

 

「光」に関する奇妙な問題


十九世紀末のことです。科学者達はある奇妙な問題に頭を悩ませていました。
それは、「光の速度」に関する問題でした。当時、光の速度は秒速30万キロメートルだということが分かっていました。
科学者達は次のようなことを考えました。
地球は太陽の周りをまわっているので、宇宙空間をかなりの速度で進んでいるわけだ。進んでいく方向を前とすると、前から飛んでくる光と、後ろから飛んでくる光とでは、速度が異なって観測されるはずだ。

これは自動車ですれ違うシーンを例にするとわかりやすいでしょう。
例えば自分が時速100キロで走る自動車に乗っていて、前から時速120キロで走ってくる自動車とすれ違うと、自分から見ると、100キロ+120キロ=220キロ の速度ですれ違ったように見えます。逆に、後ろから時速120キロで追ってくる自動車がいたら、自分から見ると、120キロ-100キロ=20キロ の速度で近づいてくるように見えます。自分が走っていると、同じ120キロの自動車も、前から来る場合は速く、後ろから来る場合はゆっくりと見えるのです。

この例と同じように、科学者達は、飛んでくる方向によって光の速度が異なって観測されるはずだと予想し、実験を行いました。しかし実験の結果、地球の進む方向から見て、前から飛んでくる光も、後ろから飛んでくる光も、速度はまったく変わりませんでした。
これはいったいどういうことなのでしょうか? この結果は、地球が宇宙空間で静止している、とでも考えないと説明がつきません。しかしそんなはずはないのです!

科学者達は悩みました。
何か実験に間違いがあるのではないか? しかしいくら調べても実験に間違いはありませんでした。長年、科学者達はこの問題を解くことができませんでした。

 

天才アインシュタインの登場


そして20世紀初め、アインシュタインという無名の若者が、この問題を解決するまったく新しい理論を発表したのです。それが「相対性理論」だったのです。

アインシュタインはこう考えました。

観測者が止まっていようと、どんな速度で動いていようと、どの方向に進んでいようと、光は同じ速度に見える。これは実験の間違いなどではなく、この宇宙の基本的な原理なのだ。それを認めよう。そしてこの原理から、全てを考え直そう。

アインシュタインはこの原理を「光速度不変の原理」と名付けました。

しかしこの「光速度不変の原理」、実はとんでもなく奇妙な原理なのです。
観測者が止まっていようと、動いていようと、光は同じ速度に見える、ということは次のようなことなのです。

秒速30万キロで光が飛んでいるとします。地面の上で止まっている人がその光を見ると、当然、秒速30万キロに見えます。一方、超高速ロケットが秒速20万キロで光を追いかけ飛んでいるとします。このロケットから光を見ると、普通に考えると、30万キロ-20万キロ=10万キロに見えるはずです。ところが「光速度不変の原理」では、秒速20万キロで光を追いかけているロケットから見ても、光は秒速30万キロに見えるというのです。

頭が混乱しますね。どう考えてもつじつまが合わないように思えます。確かに常識で考えればつじつまが合わないのです。しかしこの常識がクセ者だったのです。多くの科学者達は無意識のうちにある常識にとらわれていたのです。その「常識」とはいったいなんでしょうか? これから説明していきます。

さて、動いてるモノの「速度」とは、それがある距離をどのくらいの「時間」で進んだかによって決まります。算数で習ったように、速度は、

速度 =(進んだ「距離」)÷(進むのにかかった「時間」)

によって計算できます。
時速60キロの「速度」とは、60キロメートルを1時間という「時間」で進む、ということです。
例えば、60キロメートル進むのにかかる時間が、1時間から倍の2時間に伸びた、とすると、速度は時速60キロの半分の時速30キロになります。このように「時間」は「速度」を計算する基準となっていて、「時間」と「速度」は密接に関係しているのです。

「光速度不変の原理」では、観測者がどんな速度で動いていても、観測者から見える光の速度は常に不変とされています。さきほどロケットの例で説明したように、全然つじつまが合わないように思えます。
そこでアインシュタインはあるアイデアを思いつきました。
「速度」を計算する基準となっている「時間」をどうにかすることによって、つじつまを合わせることができるのではないか?
そのアイデアに基づき研究を進めていった結果、とんでもなく奇妙な、次のような結論が導かれたのです。

高速で移動する乗り物の中と、止まっている場所とでは、時間の進み方がまったく変わってしまう。乗り物の速度が速くなればなるほど、時間はゆっくりと進むようになる。光の速度に近づくと、時間はほとんど止まってしまう。
どんな速度で移動する乗り物から見ても、光の速度が変わらないように見えるのは、「速度」の基準となっている「時間」の進み方が変わるからだ。光の速度が一定になるように、「時間」の進み方が変化するのだ。

これは今までの常識をくつがえす驚くべき考えでした。アインシュタインは「光速度が不変」という一見矛盾した現象を、速度の基準となる「時間」の進み方が変わる、と考えることで、その矛盾を解いたのです。
アインシュタインはさらに考えを進め、速度によって時間の進み方が変わるだけでなく、物体の長さも変わっていく、という結論を導き出しました。速度が速くなると、物体の長さが縮むというのです。
これらの結論によって、一見奇妙な「光速度不変の原理」を完全に矛盾なく説明できるのです。アインシュタインはこの内容を完璧に数式で理論化しました。それが「相対性理論」なのです。

もちろん、我々が日常で使う乗り物の速度程度では、ほとんど時間の進み方の変化はありません。しかし、光に近いほどの超高速になると、本当にこのようなことが起きるのです。
例えば超高速で飛ぶ人工衛星の時計と、地上にある時計の時刻を比べてみます。するとごくわずかですが、相対性理論で計算したとおりに時刻がずれるのです。

一見、常識はずれな内容の「相対性理論」。しかし今では数々の実験で、その正しさが証明されています。

 

「究極の発想の転換」が生まれた理由


なぜアインシュタインは、他の科学者には思いつくことができない、常識はずれな「相対性理論」を作ることができたのでしょうか?

やはりそれはアインシュタインが、誰もがとらわれていた「時間の進み方は常に変わらない」という常識に気づき、それを打ち破る「究極の発想の転換」ができたからでしょう。このコロンブスの卵のような「究極の発想の転換」と、シンプルな数学で、長年の物理学の謎を解いてしまった、その鮮やかさが世界に衝撃を与え、アインシュタインの名を天才として世界に知らしめたのです。

なぜアインシュタインは「究極の発想の転換」ができたのでしょうか。生まれつき天才だったから? 確かにアインシュタインは天才ですが、それだけではないのです。

アインシュタインは、他の歴史に残る天才達のように、子供時代から神童として有名だったわけではありません。むしろ学生時代はそれほど優秀ではなかったそうなのです。
実際、アインシュタインは大学卒業後、大学で研究者として働きたかったのですが、そのポストを得ることができず、特許庁の職員として働きながら研究を続けていました。そして26歳のときに、無名のまま相対性理論を発表し、世界に衝撃を与えたのです。
アインシュタインを知る大学時代の教授は、相対性理論を読んで「本当に彼がこの論文を書いたのか!?」と驚いたそうです。

アインシュタインは少年時代に物理学の本を読み、光についてとても強く興味を持ちました。秒速30万キロというもの凄い速さで飛ぶ光。もし自分が光の速さで宇宙を飛んでいったら周りの景色はどのように見えるのだろうか、他の光はどのように見えるのだろうか、と空想し考えたそうです。この少年時代の空想から出た疑問を、ずっと考え続け、大人になってもずっと変わらず考えていたそうです。このことが、相対性理論の着想を生んだのです。
興味のある一つのことを、少年時代からずっと考え続けていたことが、歴史を変える「究極の発想の転換」を生んだのです。決して天才的なひらめきで、一瞬にして大発見をしたわけではないのです。

アインシュタインは次のような言葉を残しています。

「私は天才ではありません。ただ、人より長く一つのことを考え続けてきただけなのです」

この言葉は科学者を目指す子供達に大きな夢を与えます。天才ではない自分だって、頑張って勉強を続ければ、夢をかなえることができるかもしれない、と。

科学者を目指す子供達だけではありません。他の多くの夢をもつ人々にも勇気を与えています。もしかして自分も、夢をあきらめず頑張り続ければ、偉業を成し遂げられるかもしれない。生まれついての天才ではなくても、夢をかなえることができるかもしれない、と。

アインシュタインは今でも多くの人々にとって憧れの存在です。それは、アインシュタインのこの言葉が、人々を勇気づけているからなのかもしれません。

 

【参考文献】
「眠れなくなるほど面白い相対性理論」 大宮信光 日本文芸社
「100分de名著ブックス アインシュタイン 相対性理論」 佐藤勝彦 NHK出版

【ライタープロフィール】
増田 明
神奈川県横浜市出身。上智大学理工学部物理学科卒業。同大学院物理学専攻修士課程修了。同大学院電気電子工学専攻修士課程修了。
大手オフィス機器メーカでプリンタやプロジェクタの研究開発に従事。

父は数学者、母は理科教師という理系一家に生まれる。子供の頃から科学好きで、絵本代わりに図鑑を読んで育つ。
学生時代の塾講師アルバイトや、大学院時代の学生指導の経験から、難しい話をわかりやすく説明するスキルを身につける。そのスキルと豊富な科学知識を活かし、難しい科学ネタを誰にでもわかりやすく紹介する記事を得意とする。

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