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2020に伝えたい1964

開会式の不安が、閉会式が始まると解消された《2020に伝えたい1964~Epilogue④~》


2022/02/07/公開
記事:山田将治(READING LIFE公認ライター)
 
 
2021年7月23日に開幕した、第32回近代オリンピック東京大会。
国立競技場が改修され、21世紀と為りデジタル化が進み、何もかもが新しく演出された開会式を観て、1964年を記憶している私は、一抹の寂しさを禁じ得なかった。
特に、個人的な期待をしていた、古関裕而さん作曲の『東京オリンピック・マーチ』が、1フレーズも流れることが無かったので余計に“期待外れ感”が増したのかも知れない。
 
加えて、既知の谷口徹さんがデザインした大会マスコット『ミライトワ』と『ソメイティ』が、開会式に登場しなかったことも残念で為らなかった。
 
 
とは言うものの、今回の東京オリンピックは、世界的な新型肺炎ウイルス蔓延という、未曾有の混乱の中という空前絶後の開催となったので、無事開催出来たとこだけでも記憶に残すに値する大会だった。
また、こうした状況でもオリンピックを成功させた日本という国、そして日本人という国民は、世界に十分誇っても良いのではと自信を増したものだ。
 
実際、この大会で日本選手団は、史上最高の数となるメダルを獲得した。
連日のメダルラッシュに、私は昼夜を問わずテレビに釘付けと為った。何しろ今回の東京オリンピックは、史上初の無観客で開催されたからだ。
私も何枚か、チケット抽選に当たっていたのにだ。
 
印象に残った選手は、柔道の阿部兄妹(兄・妹の同時金メダルは史上初。しかも同日!)、スケートボードで史上最年少のメダル獲得と為った西矢椛(もみじ)選手、そして何と言っても13年越しの連覇を果たしたソフトボールチームが印象に残った。
主要競技では、200mと400m個人メドレーで日本人選手として初めて双方の金メダルを獲得した大橋悠依(ゆい)選手や、男子体操の個人総合で金メダルを獲得し“体操ニッポン”の面目を保った橋本大輝選手が居た。
 
その一方で、複数金メダル確実と言われながら目標を果たせなかった(銅メダル一個)バドミントンチームや、2年前のワールドカップで盛り上がりをみせていたのに、男女とも予選敗退に終わってしまったラグビーチーム等、次に繋がる宿題を残した選手も居た。
 
それでも、金メダル27個を含む史上最多の58個ものメダルを、日本のオリンピック選手団は獲得することが出来た。
それは、新種競技での躍進もさることながら、ボクシング(入江聖奈選手が金メダル)やバスケットボール(女子が史上初の銀メダル)といった、伝統競技の底上げが効いていた御蔭だろう。
今後のオリンピックにも期待出来るだろう。
 
 
今回の『TOKYO2020』では、開催国・日本選手団の躍進ばかりが目立ったが、その裏で注目される数字も存在した。
それは、金メダルを獲得した国が、実に74か国に登ったことだ。
考えてもみて欲しい。僅か2週間の間に、74もの国歌が流れたのだ。驚異的と言う他は無い。
これは、リオデジャネイロ・オリンピックの63か国、ロンドン・オリンピックの61か国を大きく上回っている。
他にも、メダルを獲得した国数は、205の参加した国と地域の半数近い、93か国にも為っている。これはひとえに、スポーツが世界中に広がった証だ。
そんなスポーツの祭典が、世界一安全で衛生的な東京という大都市で開催出来たことを、改めて喜び、そして安堵したいところだ。
 
 
こうして、第32回近代オリンピック東京大会は大成功の内に閉会式を迎えた。
しかし私は、開会式時に持ってしまった残念感を拭えずにいた。
 
ところがだ。
8月8日夜に始まった開会式のテレビ中継を観て、私の残念感は一瞬にして吹き飛んだ。何故なら、1964年と同じく各国選手が入り乱れる形で入場する、閉会式独特の場面で、私が57年も待ち焦がれた想い出の曲が流れ始めたのだ。
そう、古関裕而さん作曲の『東京オリンピック・マーチ』だ。
私は一人、思わず涙を流してしまった。余りの感激に。
 
そして気付いた。
本連載でも以前記したが、オリンピックの閉会式で、各国選手が列も作らず順不同で入場するように為ったのは、1964年の第18回東京大会からだ。平和の祭典らしい、実に和やかな光景だ。
この光景も、東京オリンピックの立派なレガシーだったのだ。
そして、この光景にこそ、古関さんの『東京オリンピック・マーチ』は相応しいのだ。
 
そして改めて『東京オリンピック・マーチ』は、日本のオリンピックのレガシーに為ったと思った。
私は、そう信じた。
 
何とも例え様が無い、感激する閉会式だった。
 
 
ところでもう一つ、私の懸念だが、現代らしくSNSに解決が在った。
それは、或る方が自身のTwitter上に挙げた、『ミライトワ』と『ソメイティ』が空に昇って行く様な動画だ。
 
私はその動画を発見し、『ミライトワ』と『ソメイティ』も無事帰還した気がして安堵した。
 
閉会式と共に、妙に納得感に満たされた私だった。
 
 
 
 

❏ライタープロフィール
山田将治(Shoji Thx Yamada)(READING LIFE公認ライター)

1959年生まれ 東京生まれ東京育ち
5歳の時に前回の東京オリンピックを体験し、全ての記憶の始まりとなってしまった男。東京の外では全く生活をしたことがない。前回のオリンピックの影響が計り知れなく、開会式の21年後に結婚式を挙げてしまったほど。挙句の果ては、買い替えた車のナンバーをオリンピックプレートにし、かつ、10-10を指定番号にして取得。直近の引っ越しでは、当時のマラソンコースに近いという理由だけで調布市の甲州街道沿いに決めてしまった。

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2022-02-02 | Posted in 2020に伝えたい1964

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