第14章 ひやかし、アンチ、マウンティングは愛されている証《ママ起業のリアル》
記事:ギール 里映(READING LIFE編集部公認ライター)
「ショッピングカートに乗っかっている写真なんて、子どもの教育上どうかと思います」
とある方から頂いたメッセージです。
私は2016年ごろ、事業のイメージ写真として撮影した写真を、SNSやブログのカバー写真として使い始めました。「食べ物を選ぶ力を身につける」というメッセージを伝えるために、当時経営していた自分の自然食品店内で、ショッピングカートに乗っている私を5歳の息子が押しているという、そんなビジュアルでした。この写真をリリースしたとき、たくさんのコメントをいただきました。
「すごくかわいいですね!」
「めちゃくちゃいいですね!」
というポジティブなコメントを何百件も頂いたのと同時に、この冒頭のコメントのような、アンチなコメントが入っていたのです。
確かに正論です。ショッピングカートの上に乗るのは、いけないことです。お店でやったら確実に叱られるパターンです。しかしこれはセッティングで、ブランディングのイメージ作り、メッセージを伝えるためですから、人の倫理観や道徳観をどうこうしようという意図はありません。それなのにこういう反応をする方がいらっしゃることは、もちろん想定内ではありましたが、それをわざわざ公のSNSのコメントに書いていらっしゃるところに、何か根暗な、ネガティブなエネルギーを感じてしまうものです。
発信、オンラインであろうとオフラインであろうと、対マスであろうと対個であろうと、発信をする以上アンチコメントはかならず付き纏います。
昨今芸能人もSNS上での炎上やネガティブコメントで心が折れて、自分を死に追い込むような事件も頻繁に起こっています。コメントを書く方はオンラインだと直接対峙しなくていいので、発言しやすくなったのでしょうか。顔や名前も出さなくても発言ができますし、「身元がバレない」という環境を生かして、ネガティブなコメントがますますエスカレートしているように感じている方も多いのではないでしょうか。
発信する以上必ず付き纏うとはわかっているものの、実際にそれを自分が体験すると、あまりよい気はしませんよね。なんならかなり落ち込むかもしれませんし、怒りや悲しみの感情も湧くでしょう。アンチコメントは人気の証、とはいうものの、それだけでは気持ちが落ち着かない。命を断つとまではいかなくても、これで心が折れて活動をやめてしまう人もいる。そんなことが起こらないためにも、対応の方法を心得ておきたい。
変なコメントは華麗にスルー
発信を始めて最初に出会うのは、外国人からの「あなたはきれいですね(You are beautiful)」コメントあたりでしょうか。こういうコメントには悪意はないので、そんなに悪い気はしませんが、やはりちょっと気持ち悪い。SNSにはいろんな国の方が参加していますから、当然外国人も自分の投稿を見ることができるわけで、さまざまなコメントをいただくのは仕方のないことです。
あなたは綺麗ですね!
お友達になってください!
ぐらいであれば可愛いものですが、もうちょっと下品なものや、なんならエッチな写真をコメント欄に貼り付けてきたりする方もいらっしゃいます。こういうセクハラは必ずどこでもあるものですし、ママ世代となるとその辺りは既にこれまでの人生で何度かは体験してきていることですから、そんなに動じないとはいうものの、やっぱりいい気持ちがしません。
こういうコメントは、スルーです。反応はしません。なんなら非表示したり、コメントする方をブロックします。
公の発信の場ではポジティブなエネルギーを表現することが基本ですから、ネガティブなものは消していきます。自分の投稿は自分のお店構えですから、そこを荒らす人は基本的に排除。
もし自分がレストランを経営していたら、その中で変な行動をするお客様は相手にしませんし、さらに言うならご遠慮願いますよね。こういうお客様を拒否する権利がお店にはあるように、私たちもネガティブでいやな気持ちになる存在を拒否する権利があります。
いやだな、と思ったら、華麗にスルーしましょう。
オンラインでは大きな口を叩く人は、現実に身元がわかるととたんに静かになります。顔出しで身元が知れたところで正々堂々と言えないような人たちですから、恐る必要はありません。
それにしても、世の中暇な人がたくさんいますね。
セミナーに現れた招かざる客
オンラインではなくオフラインで、アンチな態度をとる人が現れたらどうすればいいのでしょう。
私がまだ駆け出しの講師のころ、セミナーに参加された女性がいました。当時私は子どもの食事の食べかた、食べさせかたについてのセミナーを地道に開催している時期で、知り合いにお声をたくさんかけては興味がありそうな方をご紹介いただいていました。
そんななか、女性経営者の会で知り合った方が私のセミナーを知人に紹介くださり、その方がきてくださることになりました。紹介してくださるのはありがたいことですから、私も精一杯お伝えしようと気合が入ります。
場所は銀座で、美しい街並みが見下ろせるガラス張りの会場でした。託児スペースが隣の部屋にあるので子連れで参加される方も何名かいらっしゃり、子どもたちが楽しげに遊ぶ声を壁越しに聞きながら、和やかな雰囲気でセミナーは始まりました。
しかしたった一人、しかめ面で参加されている方がいらっしゃいました。そういう表情の方なのかな、と最初はあまり気にも留めていませんでしたが、自己紹介をしていただいたときに大変なことがわかりました。
「今日参加された理由はどんな理由ですか、何を解決したいですか」
という質問に対して、
「紹介していただいたので、とりあえず来ただけです」
ボソリとその女性は言いました。とても内向きな、ネガティブな印象をうけました。この方は楽しく参加されていない、誰かに言われてイヤイヤ来たということがありありとわかりました。
これはめんどうなことになった。しかしセミナーの空気を作らなければなりませんから、全体の雰囲気をみながら、最悪の状態にだけはならないようにだけ、とにかくがんばろう。そんな気持ちで120分のセミナーをやりきったわけです。
私のセミナーでは、お客様に何か発言していただく機会をなるべくたくさん取るようにしています。その方がセミナーが楽しく聞きやすくなりますし、また参加された方の満足度も上がるからです。その流れでいつも行っているので、この日も同じように行いました。当然その女性にもアプローチをして、なんとか少しでもポジティブな方向に気持ちが動いてくださらないかなと思い、気を込めていました。
セミナーが終わるまでずっと、いや終わった後も最後まで、彼女が笑顔になることはありませんでした。一部始終だまって私の話を聞き、そんなことぐらい知ってるわよオーラをビシバシと出しながら、それでも退出することなく一応は最後まで聞いてくださいました。そのことについてはこちらも感謝しきりなんですが、それにしても、本当に気を遣う。この日のセミナーは最悪な空気になることを回避するために、ものすごく労力を使いましたし、疲労困憊しました。
その後、その女性から、セミナーの感想のメールが届きました。
何が書かれているんだろう、きっとクレームだらけなんじゃないか、文句の一つでも言われるんじゃないかと気が気ではありませんでした。
しかしそのメールを一度読むと、私の予想がまったく的外れだったことがわかりました。
彼女からの手紙には、こんな風に書かれていました。
「セミナーでは、失礼な態度をとって申し訳ありませんでした。
私は看護師で、こどもを3人育てあげていて、自然食や東洋医学などにも知識があります。なのできっと今回のセミナーも、ありがちな自然食系セミナーなんだろうと鷹をくくっていましたし、なんなら最初から期待はまったくしていませんでした。
私がそういう態度であったことも、ギールさんはもちろん気づいていらっしゃいましたが、それでもそんな私を排除したり、冷たくあしらうのではなく、むしろとても温かく迎えてくださり、心をかけてくださり、本当にありがとうございます。私は自分がなんだか恥ずかしくなりました。
セミナーは本当に予想以上、期待を大きく上回るもので、頑なになってしまった私ですが、またちょっと真面目に食を見直してみようか、と思うことができました。
そんな気持ちになれたのも、今回参加させていただいたおかげです。本当にありがとうございました」(本文より抜粋しました)
驚きました。
そんなふうに彼女が感じてくれていたのかと思うと驚きでした。私は彼女が私によい感情を持っていないということを瞬時に理解しましたが、そんな風にしか振る舞えない彼女の姿に、昔の自分が重なっていました。自分も昔頑なころ、世界の全ては敵だと思っていたぐらいでしたし、きっと彼女も何かに対して頑なに、心を閉ざしてしまっているのだろうなと感じました。私にそこが伝わってきたので、彼女の気持ちに対して寄り添うことができたからこそ、彼女も私から何かを感じ取り、受け取ってくださったのではないかと思います。
クレーマーやネガティブ反応を示す人というのは、大体の場合はご本人が満たされていない状態にあります。自分が満たされないから他の人に攻撃の矛先が向いてしまう。
そんなことはきっとご本人たちもわかっているかも知れません。頭ではわかっているけれどどうしようもないと、抱え込み苦しんでいる方は本当に多い。
私はおそらくこの時、彼女の中に潜む痛みを感じ取り、彼女の中で満ちていなかった一つのピースをお届けできたのかも知れません。
メルマガ読者様、愛しています
ダイレクトに、メールやメッセージをくださる方がいます。
大体がメルマガ読者さんやアマゾンレビューを書いてくださる方だったりします。
とにかくしつこく、メルマガの一つ一つに反応をしては、何かにつけてアンチでネガティブな言葉を届けてくる人たちです。
「○○について書かれていますが、これはエビデンスが取れているんですか」
「メルマガではXXと書いてあるのに、ブログでは△△と書いていらっしゃいました。適当に書いているのではないかと思いました」
などなど、きつい言葉で、辛辣に伝えてきます。
よくここまで細かく一つ一つに反応して、それをいちいち伝えてくるってどうなのよ、と思いましたが、むしろこれ、すごいことだと思いました。
それほど私の発信をあちこちくまなく読んでくださっているのかと、むしろそこに驚きました。ブログやメルマガの内容を読み込み、その小さい言葉の違いを指摘されるような方ですから、むしろアンチではなく、私の大ファンなのではないのか?!
そう思うと、アンチコメントをくださる方が、なんだかとっても愛おしくなりました。こういう方は、アンチなコメントをしてまで存在をアピールしたいと、自分のことを認めてもらえないと感じていらっしゃるのだろうな、と。俗にいう「かまってちゃん」です。
自分のことを大切にしてほしい、構ってほしいという思いが強いのに、それが満たされていない。こういう方たちは大抵、ものすごいスキルだったり実績だったり、努力や才能で培ったなんらかの能力、しかも高い能力をお持ちです。それでないとそんなに細やかに間違いを指摘したり、ツッコミを入れたりはできないじゃないですか。能力が高いのに自分のことは認めてもらえていない、と感じ、だから発信する立場である私と自分を比較して、自分のことを認めて欲しいという気持ちが裏目に出てしまい、それがクレームなどの行動になっているだけなのだと思います。
本当のところがどうなのかはわかりませんが、基本的に私はクレーマーやアンチコメントを出す人たちというのは、心に傷を追った可哀想な人たちなのだと思っています。そういう人たちをこれ以上追い込んで行っても、全くなにも生まれません。最大の敵は最大の味方、となるように、さらに大きな気持ちで包み込む姿勢であることが大事と、この時体験することができたのでした。
素直にマウンティングされておこう
どんなに気を配っていても、情報発信している以上、かならずアンチな方達に出会います。これは仕方のないことです。なぜなら、いろんな人が存在するから。ただそれだけのことです。
アンチなコメントをいただけるということは、それぐらい人の心を動かしているということ。人の目や心に止まっているということです。1つのアンチなコメントがあるということは、それと同じかそれ以上に、自分の大ファンがいるということ。だから全然心配しなくていいと、先輩からも教えてもらいましたし、また自分でも実際に体験しています。
毎日毎日1日も休まず、なにか、誰かの役に立つことを願って、言葉を紡ぎ出しています。時には雄弁に語れるときもありますが、また時には言葉が詰まるときもある。だけどそれらをひっくるめて、言葉を上手に使うことが目的なのではなくて、何か少しでも、誰かの心に届けばいいなと、ただそれだけの想いで発信をしているのです。
その発信しているおかげで、日々嬉しいメッセージやお言葉を、本当にたくさん頂戴します。誰かに何か、善き方向に向かうための小さなきっかけをお渡しできているんだと思えるだけで、充分な幸せを手に入れています。
だから、アンチコメントなんて全く気になりません。
マウンティング?どうぞどうぞ、ご自由に。
全部受け止めて、ただ毎日粛々と、発信をし続けていくだけですから。
母は強し、です。
《第15章に続く》
頑張るママのお助けレシピ
ネガティブコメントに負けない強い心を作ろう
究極のお味噌汁
<材料>3人分
出汁(昆布と干し椎茸) 500cc
味噌(豆味噌と麦味噌を4:6の割合で)30g
小松菜 50g
にんじん 50g
お揚げ 1/2枚
海苔 1/2枚分
すりおろし蓮根 50g分
1 昆布と干し椎茸で出汁をとる。どうしてもめんどくさい場合は、ガラスのピッチャーに水を入れて、そこに昆布と干し椎茸を一晩つけておく。翌日忘れずに取り出すこと。
2 味噌はすり鉢でよくすり混ぜておく
3 野菜はあらって、一口大にきっておく。海苔、お揚げも同様。50gのレンコンをすりおろす。
4 鍋を温める。充分温まったらお揚げを軽く炒る。そこに小松菜、にんじん、の順番に入れて、野菜に軽く火を通す。
5 4に出汁を入れて温める。いったん沸騰したら弱火にして数分、お揚げから美味しい出汁が滲み出てくるまで弱火で数分加熱する。
6 5に味噌を溶かし入れる。お味噌は分量をすり鉢であらかじめよくすり混ぜておき、そこの5からのお出汁を入れて溶かしていく。最後のすりおろしレンコンをいれて、さっと火を通す。
7 お椀に海苔をちぎり入れる。そこの6のお味噌汁を注いでできあがり。
*一見シンプルな具材に見えますが、これらは五行のバランスが整う黄金のコンビネーション。日常的な食材なので、毎日無理なく取り入れていただけます。
*軽く炒ることで野菜の青臭さを飛ばし、野菜本来の甘みを増します。
*具材が全て手に入らない時は、なくても構いません。
*お味噌はすり鉢ですることで、味がよく馴染んで旨味を増します。この一手間が美味しくなるための最大のポイントです。
❏ライタープロフィール
ギール 里映(READING LIFE 編集部公認ライター)
食べかた研究家。京都の老舗料亭3代目として生まれ、現在は東京でイギリス人の夫、息子と3人ぐらし。食べることが好き、が仕事になり、2015年にゼロから起業。現職は食べるトレーニングキッズアカデミー協会の代表を勤める。2019年には書籍「1日5分!子どもの能力を引き出す!最強の食事」、「子どもの才能を引き出す!2ステップレシピ」を出版。
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