人の人生に関われるなんて《週刊READING LIFE Vol.207 仕事って、楽しい!》
*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
2023/3/6/公開
記事:丸山ゆり(READING LFE編集部ライターズ倶楽部)
「なんだか、生まれて初めて自分の人生を、自分の足で歩いているような気分です」
「ようやく、自分の存在価値を認めることが出来るようになりました」
そんな感想を、この仕事をしていてよくいただくようになった。
私の仕事、それは断捨離トレーナー。
やましたひでこという元々は主婦だった人が提唱した、断捨離というメソッドを伝えてゆく仕事をしている。
今や、お片づけの悩みは、主婦の三大悩みの一つと言っても過言ではないほど、皆さんが悩んでいらっしゃる。
日に日に増えてゆく家の中のモノを、一体どのように片づけていったらいいのかわからない、というのが断捨離を始めるきっかけとなるが、その心の奥には、様々な人間関係などの悩みを抱えているのが現実だ。
心の中の様子は、住まいの様子とイコールなので、手に取ることができるモノからアプローチして、結果、心の中もスッキリしてゆくという醍醐味があるのが断捨離だ。
そんな仕事を始めたのが今から10年ほど前になる。
それまでの私は、短大卒業後、商社に勤めた9年間と、結婚時代に夫が始めた事業の手伝いを数年ほどしたくらいしか仕事の経験はない。
学生時代にも、アルバイトらしいこともしたことがなかった。
商社に勤めていた時には、自分が任されている仕事は、一体どこにつながっているのかなんて、あまりわかっていなかったように思う。
経理部門で、数字を扱っていても、決算書の中の一部分を担っているだけだった。
総務部門で、社員がスムーズに仕事ができるように動いていても、それほどやりがいを感じることもなかった。
最後に在籍した貿易部門で仕事をしていたとき、「ボビンの回収」というのがあって、ボビンって、あのミシンで使う、糸を巻き取る時のボビンだということは理解していた。
繊維の商社で、糸の輸出入をしていたのだが、他国へ輸出する際に使用したボビンを、回収するという作業が必要だということだった。
ある時、幹線道路を走る大きなトラックに、びっしりとドラム缶以上の直径がある丸い物体が乗せられているのを見た時、やっとあのボビンとつながったのだ。
そう、私が使ったことのある、ミシンのボビンとは遥かにかけ離れた規模のモノだった。
商社を退社して、数年が経ってからやっと理解できたというようなレベルだった。
それくらい、実際に何をやっているのかが掴めていなかった私の仕事ぶりだった。
ところが、今の仕事、断捨離トレーナーは、今、困っている人たちが目の前にやってきてくれて、その人たちのお悩みである住まいを一緒に断捨離してゆく。
そうすると、日々、家が片づくにつれて、クライアントの気持ちの変化が手に取るように伝わってきて、この仕事をしていて震えるくらい嬉しい瞬間を何度も味わわせてもらっている。
仕事って、本当に楽しい。
なぜならば、人の人生に関わることが出来るからだ。
当たり前のことだが、この世に生を受けて、懸命にその人生を歩んでゆくが、それは自分自身、一人の人生である。
ところが、仕事を通してだと、様々な人と出逢い、その悩みに寄り添い、手伝うことでその人の人生にも関わることが出来るのだ。
そう思ったときに、私は仕事の素晴らしさややりがいをようやく見出すことが出来たように思う。
そのように考えると、どんな仕事でも同じ事が言える。
お肉屋さんだと、その店のお肉を気に入って買って帰ってくれたお客さんは、きっと家族とすき焼きなどをして鍋を囲み、楽しい夕餉の時間を過ごしているだろう。
しかも、美味しく食べたお肉は、身体の血や肉となってゆくのだ。
そう思うと、より良い、美味しいお肉を提供することが、多くのお客さんの身体、人生にも関わっていると言えると思うのだ。
もちろん、八百屋さんもそうだし、靴屋さんも、ブティックだってそうだ。
お客さんの今の喜びがその人の人生を形成してゆくのだから。
どのような仕事も、クライアントが喜んでくれることが、その人の人生にも関わることとなっているはずだ。
そんな時、人は感謝の気持ちをもって、ありがとうという言葉でそれを表現してくれる。
ありがとうと言ってもらえる仕事は、本当に有難い経験だと思う。
今、ようやく仕事の本来の意味を知るようになったのだが、それが経験出来たことで、初めて社会に出て、がむしゃらに仕事をしていた商社での経験を思い出す。
あの頃も、実は見たこともない誰かの人生に、きっと関わっていたのだろう。
その商社で輸出した糸が、ヨーロッパで生地に織られ、それがブランドの洋服に仕立てられて、どこかの誰かの人生を喜びへと変えてゆくことに繋がっていたに違いないからだ。
20代の頃、訳もわからずただ教えられたことを繰り返しやっていたような仕事ぶりだったけれども、あの時の私の仕事が、きっとどこかの誰かの人生を良くしていっていたのかもしれない。
そんなことに思いを寄せることが出来たのも、今、こうして断捨離トレーナーとして、目の前のお客様のサポートが出来、笑顔に触れることが出来る経験をしているからだ。
仕事って、本当に楽しい。
そう、今は声を大にして、笑顔で言えることが出来るようになった。
□ライターズプロフィール
丸山ゆり(READING LFE編集部ライターズ倶楽部)
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