第40章 レッツパーティ!人が集い楽しむパーティでの食べ方《老舗料亭3代目が伝える50までに覚えておきたい味》
2023/12/4/公開
記事:ギール里映(READING LIFE編集部公認ライター)
結構苦手な人が多いんじゃないかと思います、パーティでの食べ方。
パーティにもいろいろあります。
ホームパーティやプライベートなパーティなど、親しい仲間内でリラックスした空間の中で行うパーティもあれば、大きな会場でドレスコードがあるようなかしこまったパーティなど、パーティと言えどもそこから連想されるパーティの模様は人それぞれです。
その中でも特に改まった場でのパーティでは、テーブルマナーに不安があったり、慣れない場所で慣れない食べ物をいただくために、苦手意識を持たれることも多い。しかしさすがにアラフィフにもなろうものなら「知りません」「わかりません」では済まされないのが厳しいところ。本来パーティとは何かを祝うために集い、楽しむための場ですから、食べ物ごときに不安を抱いている場合ではありません。
パーティと言えば、結婚披露宴
多くの方が人生のうちで一度や二度は参加しているのが、結婚披露宴でしょう。友人、知人、家族、親族の晴れ舞台での集いには、食事が供されるのが常。昨今ではホテルや結婚式場、もしくはレストランなどでの披露宴が主流ですから、そこで出される食の多くはフレンチ系のコース料理が多くなります。
オリジナリティを追求するカップルや、費用をなるべく抑えたいカップルでない限り、大体フランス料理が選ばれます。前菜があり、スープがあり、魚料理、肉料理があってデザートがある。着席のコース料理といえば大体がこんな感じではないでしょうか。
私も自身の披露宴のとき、オリジナリティを重視したメニューにしたかったのですが「ゲスト様がよろこばれますから」という理由で、メインは鮑と牛肉のステーキになりました。どちらも高級食材ですから、参列者がおもてなし感を感じやすく、喜ばれるというのが理由です。しかし今から思えば客単価を上げるためのホテルの戦略ではなかろうか、とは思いますが、料理が美味しい披露宴に、皆が満足してくれたことを覚えています。
こういう料理で気になるのはテーブルマナー。「ちゃんとした食べ方を知らないんです」という方によく出会います。また巷には多くのマナー講師がいらっしゃり、テーブルマナー講座などが開かれていますから、いかに人はそういったマナーを大切にしているかがわかります。
フォークとナイフの使い方がわからない、どこからどう使ったらいいのかわからない、食べ方がわからない、立ち居振る舞いがわからない・・・など、わからないだらけで緊張してしまい、味がわからなくなってしまうというお声を聞きます。
私自身はマナー講師ではないので、細かいマナーのことを申し上げるつもりはございませんが、ぶっちゃけ、失礼のない食べ方であれば、細かいことはそんなに重要ではないと思っています。
確かに、国賓が招かれるような、宮中晩餐会などであれば、相当の気遣いと徹底したマナー、つまりプロトコルが要求されますが、私たち庶民が参加するパーティと言えば、結婚披露宴を始め、会社の創立記念パーティや本の出版記念パーティあたりが現実的ですから、そこまでカチッとしたマナーは要求されません。マナーを気にしすぎてパーティを楽しめないのでは本末転倒ですから、基本的には音を立てない、口にものを入れたまま喋らない、背筋を伸ばして食べる、このぐらいを意識しておけば全く問題ありません。
どう見えるか、を気にするより、いかに楽しみ、パーティを楽しい場にするためにどう振る舞うか、のほうが大事です。たかが食べ方、少々間違っていたところで大した問題ではありません。
着席ではなく立食ならば
カジュアルなパーティだと立食の場合があります。大皿に盛り付けられた食事を小皿に取り分けて食べるスタイルです。ホテルの朝食などでもビュッフェとして採用されているのが主流。好きなものを好きなだけ食べることができるスタイルです。
食事を楽しむことはもちろん大切なのですが、立食パーティの意図は動き回って交流すること。参加者同士が知り合い、会話をし、新しい人脈を広げることが主とされていますから、むしろ席を陣取ってガツガツ食べているのはちょっと興醒めです。
せっかく出されている食事を美味しく感謝していただくことは重要なことですが、立食パーティではむしろ、食べないぐらいがちょうどいい。
交流がメインの場所でがっついて食べるのはむしろちょっと行儀が悪く映ります。簡単につまみながら、お話がはずむ程度の食べ方にとどめておいて、パーティが終わってからお腹をしっかり埋めてください。
私は立食だといつもほとんど食べません。その理由の一つに、交流に集中したいから、というのがあります。なんなら事前にしっかり食べてから会場に向かい、そこでは飲み物を片手に会話に専念します。食べないともったいないじゃないか、と言われるかもしれません。確かに会費を払っているのに食事をしないのは、ちょっともったいないと感じるかもしれません。しかし私は食べているその隙に、まだ見ぬ人と出会うチャンスを逃す方がもったいないのです。
ここ数年、コロナウィルスの影響で、外出や人との集まりが制限される期間がありました。オンラインでいくらでも連絡や交流ができるとはいいながら、それだけでは満たされない何かが確実にあります。人と人とが心から繋がることに、リアルな関係性はかかせません。コロナはそのことに気づかせ、そしてコロナのおかげで人と対面で会えることの価値や重要性が、ますます高まったように感じます。私たちはこの期間、人と交流できないことがこんなにも精神を病むことなんだと肌で感じることができました。であればせっかく人が集い、交流する場なのですから、交流するほうを大事にしたい。
食べ物を無駄にする、と言われそうですが、決して無駄にはなっていません。なぜなら楽しく交流するときに、食べ物という媒体は交流を促進します。あまりよく知らない人と会話するのであれば、何か共通の話題があったほうがいい。その時目の前にある食べ物のことは一番話題にしやすいからです。このお肉美味しいですよね、などと声をかけて話しかけるのは、知らない人にでも話しかけやすい。このように立食パーティでの食事は食べられることが目的なのではなく、あくまで交流を促進するために存在しているのです。
カジュアルパーティの定番料理と言えば
パーティにはいろいろな種類があります。
前出の着席パーティ、立食パーティのほかにも、ディナーパーティ、ランチパーティ、カクテルパーティ、ドリンクスパーティ、レセプションパーティ、ビュッフェパーティ、ガーデンパーティ、などなど。何にでも”パーティ”とつけるとパーティになるんじゃないかというぐらい、そう呼びさえすればパーティになります。
形はいろいろですが、パーティにはそれぞれ目的があります。ここまでにご紹介したのはどちらかというとフォーマルなパーティですが、堅苦しくないカジュアルなパーティももちろん存在します。
その中でも身近なのがホームパーティ。日本ではなかなか集まれるサイズの家が少ないために開催する人としない人に大きく分かれがちではありますが、海外、とくに欧米圏では、お客様を呼んでもてなすホームパーティはかなり頻繁に開催されます。
その場合、食事はホストが準備するのが一般的です。自分で作る場合もあれば、ケータリングを利用することもある。時にはプライベートシェフを雇い入れて準備する場合もある。予算や趣旨によってどうするかはそれぞれのパーティの意向によります。
ホストが準備しない場合もあります。つまりゲストが食べるものを持ち寄るスタイル。英語ではポットラックパーティと言われるものです。これはゲストが一人一品ずつを持参し、ホストに負担をかけないようにするもの。持ち寄りパーティとも言われます。その一品は自分で作る場合もあれば、どこかでテイクアウトしてくる場合もあります。持ち寄る品をルールで決める場合もあれば、自由気まま、個人が好きなものを持ってくる場合も。いずれにせよ、料理が得意だったり食べることに関心が高いゲストはむしろ楽しんで持ってくることができますが、料理が苦手だったり、食べることにあまり感度が高くないゲストは何を持ってきたらいいかがわからず、気の利かないものを選ぶケースがあります。
どうせなら「この人、センスいいな」と思われる一品を持ち寄りたい。そんなとき、何を持っていけば他との差をつけられ、かつセンスがいいと思われるのでしょう。
ポットラックパーティに持ち寄りたいモノ3選
何かを買って持ってくる場合、「人気」のものが外しません。例えば、今流行っているコレ、とか、地元で行列のお店のアレ、とか。全国的に流行っていなくてもいい、小さなエリアや「この店のイチオシ」でもかまいません。何か「人気」というラベリングがされているものを選ぶと、まずは間違いありません。
というのも人は、人気のもの、評判のものをまずは知りたいのです。自分では買うことがないかもしれないけれど、しかし何か話題になっているものを知ることができる、という知的欲求をも満たすことができます。
また逆に、知られざる銘品も喜ばれます。これは食に詳しい人やこだわりがある人でないと、なかなか自信を持って選べないかもしれませんが、とにかく人は「他の人が知らない」や「ここだけのもの」という希少性に弱いのです。また人は「新しいものを知りたい」という欲もあります。そのため、新規性があるものはとにかく喜ばれます。
食べることが好きな人は常にアンテナを張り巡らせて、美味しいものがないかを探しています。もし自分で探すことができないときは、こういう食に明るい友人を持っておいて、必要なときに教えてもらうのがかしこい。人の知識は自分のデータベース、ぐらいに捉えておいて、いろいろな専門家の友人たちをたくさんもっておきたいものです。また彼らにいつも頼んだり、お願いすることができる関係性を普段から作っておくことも大事です。結局、情報を持ったもの勝ち。一人が持ち得ることができる情報量なんて知れてますから、すごい知見を持つ知人友人は普段からしっかりコミュニケーションしておきましょう。
そして自分で作る場合。自分で作ろうという発想があることはつまり、料理にそもそも自信があるということですから、ぜひ自分の十八番を持っていきたい。何か一つや二つ、自分のアイコンとなる定番料理をもっておくと、いざという時役にたちます。
ビーフシチューが絶品、とか、綺麗なピンチョスを作れます、とか、パーティに向いていそうな料理を知っているとよいですが、そうでなくても塩おむすびや豚汁など、家庭料理も喜ばれます。特に「気取らないけれど心がこもった一品」に、人は感情を動かされます。誰かが自分のために時間と労力を使って料理してくれるということ、しかもそれがお金を払ってお店で食べる料理とは違い、また家族が作ってくれるのとも違う、いわゆる他人が作ってくれる料理という、特別な価値を持つのです。
みんなに喜んでもらいたい、という軸で選ぶと、とにかく間違いがありません。
「よくわからないから、これぐらいでいいか」と選ぶのと、「よくわからないけれど、これなら喜んでもらえるか」というのでは、よくわからないというベースが同じでも、そこにこもる気持ちに雲泥の差があります。
また喜んでもらいたいのですから、こちらから喜ぶことも大切です。他の人が持ってきてくれたものに対して、とにかく最大の感謝と喜びを表現しておきたいものです。大きな笑顔でありがとう、美味しそう!いただきます、と伝えること、万が一「これはちょっと・・・」と思うものでも、とにかく持ってきてくれた心意気に感謝の意を表して、ありがとうを伝えたい。人は、人に喜んでもらうことがとてもうれしい生き物です。であればまず自分が誰かの行為行動に対して喜びの気持ちを表すこと、そうすることで人との関係性がよくなるどころか、そのパーティが最高に楽しい場になります。
パーティの極意は人とのご縁を感謝すること
私たちは学びました。人が人とふれあい、集まることができることは、当たり前ではありません。電話やオンラインで人と会話することはできるけれど、心の交流がどこまでできるか、と言ったら、やはり実際に会ってできるコミュニケーションとは伝わるものが雲泥の差です。オンラインの便利さ、良さももちろんありますが、やはり人は人と触れ合うことでしか得られない喜びや安心というものがあるのです。
そのように人が集まるパーティという場所で食べる食事は、同じ空気空間を分かち合うという象徴で、文字通り分け合って食べるわけです。
分け合う、というのは、動物たちが持つ尊い感情です。相手を思いやり、慈しみ、その尊厳を心から大事にする。野生の動物だって、仲間同士で分け合って食べ、命を繋いでいきますから、ましてや高度な知性と複雑な感情を持つ人間でもそうです。私たちは分かち合い、慈しみあうために生まれてきたのであって、決してお互いを憎みあい、攻撃しあうために生まれてきた訳ではありません。
美味しいものを食べると人は、幸せになります。
幸せになるために、人は食べ物を食べるのです。
どうかどうかパーティを、そんな人との繋がりを作る場、繋がりを慈しむ場として捉え、細かいマナーやルールもほどほどに、人とのご縁を大切にしてほしい。
人は一人では生きられません。
誰かは必ず誰かの役にたっています。
自分がその温かな人間関係を作り出す起因であることを、どうか忘れないでおくれやす。
《第41章につづく》
□ライターズプロフィール
ギール里映(READING LIFE編集部公認ライター)
READING LIFE編集部公認ライター、世界一やさしいSNS軍師、食べかた研究家。京都の老舗料亭3代目として生まれ、現在は東京でイギリス人の夫、息子と3人ぐらし。食べることが好き、が仕事になり、2015年にゼロから起業。一般社団法人食べるトレーニングキッズアカデミー協会の創始者。2019年には書籍「1日5分!子どもの能力を引き出す!最強の食事」、「子どもの才能を引き出す!2ステップレシピ」を出版。
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