週刊READING LIFE vol.10

デジタル機器に疎い私がオススメする、超アナログなアイテムとは?《週刊READING LIFE vol.10「クリエイター必見!コンテンツ制作に使えるライフハック」》


記事:みずさわともみ(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

 

 

「『3分』です。これを、1つのまとまりだと思って制作してみてください」
私の目の前の先生は、私に「3分」という言葉を、強く心に刻むように言った。
そして、そのために必要なアイテムは、
「砂時計」
だという。
ではなぜ、この「3分」という時間が、そんなに大切なのだろうか。

そもそも日本人は、偶数よりも奇数が好きだという。
そして、中でも「3」という数字は、なにかを行う上でバランスがよい。
三種の神器、三位一体、三三七拍子、三人官女、七五三。
「3」のつく言葉は、とにかく多い。
例えば勝負をしようというときも、1本勝負よりは、3本勝負。
グループを作ろうとしても、3人がいい。2人だと意見が割れて結論が出ないし、関係性も悪くなりかねない。3人は、決定をする上でも最低限必要な人数だ。
図形について考えた場合もそうだろう。
2点からできるのは、あくまで直線だ。けれど、3点目を得ることで、直線から平面へと変化させることができる。そしてこの図形は、重心を持つことができるのだ。
こう考えただけでも、「3」という数字は、なんと美しいのだろう、と思ってしまう。そしてその安定感に、どこかほっとしてしまう自分がいる。

私の「3」に対するイメージだけではなく、今からもう少し深く、考えてみようと思う。
先生のおっしゃった「3分」についてだが、世の中には、この「3分」というのが多い気がする。
「3分クッキング」「ウルトラマンの戦える時間」「ラーメンを待つ時間」「3分間スピーチ」など、ちょっと考えただけでもいろいろな「3分」が思い浮かぶ。
私はシンガーソングライター志望だが、楽曲の長さというのも、3~4分というものが多い。
つまり、どういうことか?
「『3分』は、人が集中していられるおおよその時間」
なのではないだろうか。
えっ? 私はもっと集中していられますけど?
なんて人もいるかもしれない。けれど、自分の興味のないこと、自分自身が動いているのではないもの、体力を必要とすることなどを考えると、「3分」というのが集中できる時間としては、ちょうどいいように思う。

では、それを制作にどう生かしていくのか?
私に「3分」のことを教えてくれた先生は、その「3分」で具体的に「○○」をする、ということまではおっしゃっていなかった。
けれど、例えば48分のワーク(+12分の休憩)で歌詞を作ると仮定する。そのとき、48分を大きな1つの枠組みとして、その中にまたいくつかのやるべきこと(情景・登場人物・感情・距離感を考えるなど)のグループを作り、さらにそれぞれを具体的に書き出すためのグループとする。グループを細分化して、それを行うための時間を、
「制限時間3分」
とするのだ。
48分という時間自体も、集中を続けられる時間とされているものだが、さらに短期集中できる時間を「3分」として、1つのことを深く考え抜く時間を作る。
すると、制限無くアイデア出しなどを行うよりもずっと、自分を追い込みつつ、極限状態で脳を活性化させつつワークを行うことができるのだ。
それには、「砂時計」を活用するといい。
タイマーなどの音の出るものがいい、という人は、それでもいい。
けれど、私は「砂時計」を使っている。

これは、視覚的なイメージによるものが大きい。
「砂時計」は、アナログ人間な私から見ても、どう考えてもど真ん中のアナログなアイテムで、機械的なイメージはまったく無い。
逆さにすると砂を少しずつ落とし、その時間が刻々と過ぎていることをその身をもって教えてくれる。
あぁこんな風に、人生も、そのタイムリミットを迎えようとしているのだろうか。
静かに、でもそんな連想をさせてくれる。
「せかされた方が、がんばれるんです」
なんて人は、タイマーで音を鳴らすといいだろう。ピピピピッ! という音で自分の中のスイッチが切り替わり、次のワークへ移るのをスムーズにしてくれるだろう。
「私のやろうとしていることは、『3分』でなんてなにもできないよ」
という人もいるかもしれない。
そんな人は、その「3分」の区切りを、深呼吸をするタイミングとしてとらえればいいだろう。
これは大きく言うと、人生も同じだ。
私は、人生も同じように区切って考えている。
20年ごとに、区切って考えている。すると、人生は1つの長い長いものではなく、いくつかの小さなものの集合体のように感じられるのだ。はずかしくて逃げ出したくなるような過去も、それは私という人間の、小さな1つの人生。だから客観的に見て、
あぁ、もっとこうすればよかったんだな
今に生かすための知識と経験を得たんだな
と、少し余裕を持つことができる。
やりたいことは、細分化して、自分のハードルを下げていく。具体的に、行動していく。すると「3分」の積み重ねがやがて作品の骨となり、血となり、肉となって形成されていくのだ。

あぁ、もし曲がたくさんできてアンコールをもらうような舞台に立てるときが来たら。
アンコールは集中力の続く「3分」を超えないうちにするぞ!
そんな風に、にやにやと作品を考えるのも、なかなか楽しいではないか。

 
 

❏ライタープロフィール
みずさわともみ
新潟県生まれ、東京都在住。
大学卒業後、自分探しのため上京し、現在は音楽スクールで学びつつシンガーソングライターを目指す。
2018年1月よりセルフコーチングのため原田メソッドを学び、同年6月より歌詞を書くヒントを得ようと天狼院書店ライティング・ゼミを受講。同年9月よりライターズ倶楽部に参加。
趣味は邦画・洋楽の観賞と人間観察。おもしろそうなもの・人が好きなため、散財してしまうことが欠点。
好きな言葉は「明日やろうはバカヤロウ」。

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2018-12-10 | Posted in 週刊READING LIFE vol.10

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