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東京日帰りカメラ旅

【第7回(最終回):茨城・竜神大吊橋】自由に空を泳ぐ鯉のぼり また会える日を夢みて(茨城県 常陸太田市)《本当は教えたくない 東京日帰りカメラ旅》


記事:小倉 秀子(READING LIFE公認ライター)

 

 

 

「!!!」
 
その場に立ったとたん、目の前に広がる景色に思わず言葉を失いました。
 
美しく緑豊かな渓谷。
静かに澄み渡り、鏡のように空と緑を映す湖。
その上を、少し強めの風に乗って体をくねらせながら、空に向かって自由に泳ぐ無数の鯉たち。
 
その姿はとても自由。そして鯉たちは皆、とても楽しそうです。
 
このような自然豊かな場所に、こんなに雄大な鯉のぼりが上がっているなんて思いもしませんでした。
しかも、大吊橋の長さと同じほどに、長い長い鯉のぼり。
 
これは夢なのかしら……

 

 

 

いいえ、夢ではありません。
 
現実にその場へ行って、私がこの眼で観てきた景色です。
 
ただし、それは最近の事ではありません。

 

そこは、茨城県の常陸太田市にある「竜神大吊橋」。
毎年端午の節句の時期になると、この吊り橋の両岸に橋と同じ長さのながーい鯉のぼりがお目見えするのです。
 

湖を横断するほどに長い鯉のぼり
 
実は、この「東京日帰りカメラ旅」で最初に出会ったのが、この鯉のぼりでした。
この竜神湖にかかる大吊橋と鯉のぼりの絶景を撮って記事にしたことで、私の日帰りカメラ旅の企画が通り、連載開始の運びとなりました。
それは去年の5月。ちょうど一年前のことです。
 
その後さまざまな準備をして、連載開始となったのが去年の6月のこと。
端午の節句の時期は過ぎていました。
 
そこで、連載第一回は、上高地にすることにしました。
空を自由に泳ぐ鯉たちのお披露目は、時期が合わなかったためにお蔵入りに。

 

「竜神大吊橋の鯉のぼりは、来年の端午の節句の時期に再訪して記事にしよう!」
 
そう思いなおして、時期がめぐってまた鯉のぼりに会いに行くのを楽しみにしていました。

 

また、連載を始めた当初から、この連載を1年続けようと決めていました。
 
つまり、連載企画を通してくれたのも鯉のぼりたちですが、
連載の最後の記事も、この鯉のぼりたちを人々に紹介する事で区切りをつけよう。
そう決めていました。

 

でも残念ながら、最後に現地に赴くことはかなわなくなってしまった。
現在の自粛の情勢で、今竜神大吊橋も閉鎖になってしまっているのです。
鯉のぼりもしかりで、今年はお目見えしないそうです。

 

ならばあきらめずに来年に、という案も浮かびましたが、2020年5月の時点で自粛の状況が続いており、これから先のことはまだ見えていません。
現地への再訪をせず、今まで蓄積してきたもので最終回の記事を掲載することにしました。
 
それは、今この時期にこの元気な鯉のぼりの姿を見ていただき、おうちで旅の記事を読んでいただくことにも意味があるのではと考えたからです。
そしてまた私自身も、今あらためてこの鯉のぼりを見て、思うところがありました。
 
ですので、まずは去年撮影してきた写真と、初めてこの景色を目の前にした時の新鮮な驚きと喜びと熱意を、以下にお届けすることにします。

 

 

 

***
 
茨城県の北部にある、JR水郡線 常陸太田駅からバスに揺られて40分、「竜神大吊橋」バス停に到着した。
竜神大吊橋の案内板が立つ坂道を入り、登り切ったその先に、これまでに見たこともないような圧巻の景色が広がっていた。

 

晴れ渡った青空に、濃淡の緑をたたえる山の連なり。陽射しを受けて水面が光り輝く湖。
これだけも十分に見応えのある景色なのに、なんとその景色の中に何百もの鯉のぼりが、青空に向かって雄大に泳いでいたのだ!
 

新緑の渓谷と鮮やかな鯉のぼりに目を奪われます
 

一匹元気過ぎる鯉が、また愛らしい
 
目の前に広がるのは、日常とはかけ離れた世界。
この世のものとは思えない。
今までこんな景色に出会ったことがなかった。
 
ああ、やっぱり来てよかった。来た甲斐があった。
 
まるで生きているかのように空を自由に揺れ泳ぐ鯉のぼりたちを目の当たりにして、心底そう思った。
ネットであらかじめ調べていたからおおまかな様子はわかっていたけれど、やっぱり目の前の実物は迫力が全然違う。

 

鯉のぼりは吊り橋の両サイドに上っていて、竜神湖の上を泳ぐ鯉のぼりと、竜神ダムの上を泳ぐ鯉のぼりがあり、橋からはそれぞれを楽しむことができる。
 

橋の両サイドに鯉のぼり
 

湖側の鯉のぼり。背後の緑が鯉のぼりをより鮮明に引き立てている
 

ダム側の鯉のぼり。空高く舞い上がる
 
壮大すぎるこの鯉のぼりたちの大群を、どういう画に切り取ったらこの迫力を表現できるだろう、この感動を伝えられるだろう。吊り橋を渡り始めたところで、橋の真ん中で、橋の終点で、湖の側と、ダム側と……というように、鯉のぼりたちが空になびく様子を写真に収めたくて、これでもかというくらいにシャッターを切り続けた。
 

橋の長さは、日本最大級の375m。つまり鯉のぼりも同等に長いということに
 

鯉のぼりに近づくと、思った以上に巨大で迫力満点
 

この景色に出逢えたこと、一生の宝物です
 
***

 

 

 

ここまでが、去年訪問したときの記事の一部です。
実はこの後お昼ご飯を食べようと向かったお蕎麦屋さんや、帰る前に立ち寄ろうとしていた温泉で、私は立ちすくんでしまいました。
 
温泉「竜っちゃん乃湯」が毎週水曜日お休み、
そば処「慈久庵」は火・水・木曜日がお休み。
よりによって、私は水曜日に訪問していたのです(泣)。
 
竜神大吊橋の食堂も13時半でクローズしてしまったため、もれなくお昼ご飯を食べ損ねました。。。
当時の下調べが足りなかったと反省しきりです。
 

吊り橋から歩いて20分ほどのところにある「竜っちゃん乃湯」。でもこの時定休日でした
 

露天風呂(入り口案内図の写真より)泉質は、アルカリ性単純冷鉱泉
 

慈久庵……素敵な看板に一軒家のお店でとても興味津々でしたが、中に入れず。次こそは!
 
この慈久庵、あとでホームページを調べたところ、接客から調理まで、全ての作業を店主おひとりでなさっているお店のようです。
 
それだけではありません。
お店のサイトでは、焼畑し、種をまき耕すところから、そばの実を収穫し臼で引いた粉をこね、伸ばして切った手打ちそばを茹で上げるまでを動画で閲覧できます。なんと、そばの実を作るところから手掛けているお店のようです。
 
またサイトからは、蕎麦のみならず、木の実草花などあらゆるものが豊かに実り、収穫し手を加えて食する営みへの熱意とこだわりをもうかがい知ることができます。
そのためか、蕎麦以外にも「里山料理」なるものがあり、こんにゃくや岩魚、野草の天ぷらなどもいただけるようです。
そのこだわりとお品書きから、さらにお店への関心が高まってしまいます。
 
このお蕎麦と「里山料理」なるものが、鯉のぼりとの再会同様、次回訪問の大きなモチベーションになりそうです。

 

一つ心配なのが、竜神大吊橋の最終バスが早いこと。
竜神大吊橋から常陸太田駅行きの最終バスは、17時。これを逃すともう次の朝までバスは通りません。くれぐれも時間を気にしながら行動しないとなりません。
 
最後にいつものようにルートマップをつけておきますね。これを参考に行動していただければ、大吊橋も、鯉のぼりも、お蕎麦も温泉も、日帰りで満喫できるはず。
 
ただし、今ではないですよ。
この自粛が明けた暁には、私も必ず、このルートマップを手に再訪します!

 

 

 

一年間、当たり前のように電車に乗りバスに乗り自由に出かけていたのに、まさか、こんな事態になるとは。
 
今、この竜神大吊橋の鯉のぼりの写真を見て、昨年衝撃を受けた気持ちとはまた別の見方ができます。
 

山を越え、空まで泳いで行ってしまいそう
 
なんと自由なことか。
なんと素晴らしい世界か。
当たり前にできていたことは、なんとありがたいことだったか。
 
鯉のぼりが泳いで行こうとしているその先へ、私たちもたどり着きたい。
 
この景色を見に行くことを躊躇しなければならないような、制限された、寂しく、孤立した世界は早く終焉し、物事をより深く愉しみ、さらに好きを追求できる世界へと「進化」してほしい。
 
この一年間の数々の日帰り旅は、せっかちで何事も「さわりの部分だけ味わえればよし」としてしまっていた私に、「その先にはさらに深い愉しみがあるんだよ」と教えてくれ、成長させてくれました。
なので、そんな風に考えた次第です。

 

 

 

この一年間、「東京日帰りカメラ旅」を読んでくださってありがとうございました。
そして連載させてくださってありがとうございました。
 
おかげで、日帰り旅をより深く、より面白く、より大胆に敢行することができました。
 
「この圧巻の景色をどう撮ったら伝わるかしら」
「この先に行ったらもっと面白く伝えられるかな」
 
そんなことばかり考えて、普段だったら心細くて進まない道もどんどん突き進み、日帰りで家へ帰れる時間ギリギリまで旅を満喫して最終バスに飛び乗ることの連続でした。
 
ひとりのんびりする日帰り旅とはまた違った、その先の深い満足感と、共有できる幸福感と、少しばかり使命感と責任感とともに旅する「東京日帰りカメラ旅」。
なかなかできない経験をたくさんさせていただきました。
旅の仕方を私自身も学ばせていただきましたし、撮りたい景色を撮るための執念も培うことができました。
 
旅とカメラが大好きなので、連載が終わっても私の旅は続きます。
もちろんカメラもです。
文章で伝えることも、セラピーになることを天狼院のライティング・ゼミで経験済みなので、どこかでなんらかの手段で、表現を続けていきます。
 
そして自粛が明けた暁には、竜神大吊橋の鯉のぼりをはじめ、生きているうちに目の当たりにしたいと思っている絶景に会いに、また自由に飛び回れることを夢見て。

 

 

 

<<おわり>>

 

 

 

《今回のルートマップ》
 
(上野-竜神大吊橋 広域ルートマップ)

(Googleマップより)

 
(竜神大吊橋周辺 徒歩ルートマップ)

(Googleマップより)

 
上野駅 8:00発
| JR常磐線 特急ひたち3号 仙台行き 1時間18分(3駅)
水戸駅 9:18着 9:23発
| JR水郡線 各駅停車 西金行き 17分(6駅)
上菅谷駅 9:40着 9:44発
| JR水郡線 各駅停車 常陸太田行き 15分(5駅)
①常陸太田駅 9:59着
 
常陸太田駅 9:59-10:09
| バス44分(51駅)
竜神大吊橋バス停(大吊橋、鯉のぼり)10:53−12:00
| 徒歩8分 (700m)
慈久庵 (そば)   12:08−14:30 ※営業時間は11:30-14:30(売り切りじまい)
| 徒歩16分(1.3m)
竜っちゃんの湯(温泉)   14:46−16:52
| 徒歩   8分(600m)
⑤ 竜神大吊橋入口バス停 17:00−17:16 ※「竜神大吊橋バス停」ではないので注意
| バス 39分(49駅)
常陸太田駅 17:55
 
常陸太田駅 18:15発
| JR水郡線 各駅停車 水戸行き 33分(11駅)
水戸駅 18:48着 18:53発
| JR常磐線 特急ときわ86号 品川行き 1時間15分(5駅)
上野駅 20:08着

《東京日帰りカメラ旅のルール》
その1
旅の目的地は、東京から日帰りで行って帰ってこられる場所に限る
その2
移動手段は電車、バスなどの公共交通機関、施設などの無料送迎で。タクシーは最終手段。
その3
東京では決して見られない非日常な景色と非日常な体験(温泉含む)、その地ならではの食を愉しむ

参考文献:
竜神大吊橋公式サイト
常陸太田観光物産協会(竜神大吊橋)
常陸太田市ホームページ(竜神大吊橋の休止について)
慈久庵
竜っちゃんの湯

 

❏ライタープロフィール
小倉 秀子(READING LIFE公認ライター)
幼少の頃、母の故郷である三島(静岡県)が大好きで、毎年のように母の生家を訪れていた。しかし戦前から長い間守られて来た母の生家が、昨年家主を失いついに壊されてしまった。この事をきっかけに、幼少の頃からの大切な思い出がたくさん詰まった三島の存在が、筆者にとっていかに大きかったかをあらためて気づかされる。昔ながらの三島の良さ、近年さらに盛り上がりを見せる三島の魅力について撮りたい、書きたい願望を持つようになる。
さらに、三島のように魅力的な街でありながら、旅行ガイドで詳細に紹介されていない非日常な場所のことも知りたいと思うようになる。東京から日帰りできる景色のいい所ならどこへでも飛んでいき、非日常を満喫して日常生活の栄養にしている。
 
2017年8月よりイベント撮影カメラマン。
2018年4月より天狼院書店でライティングゼミの受講を始める。
以降、プロフェッショナルゼミ、ライターズ倶楽部に所属し、撮って書けるライターを目指すようになる。
2018年11月、天狼院フォトグランプリ準優勝。
2019年6月よりREADING LIFE公認ライター。

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2020-05-04 | Posted in 東京日帰りカメラ旅, 記事

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