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読むことが困難な人にも、音で届く読書がある。「audiobook.jp×天狼院書店 聴ける本屋さん」@天狼院カフェSHIBUYA プレス発表会レポート(後編)


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2023/11/7/公開
記事:河瀬佳代子(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 
このたび天狼院書店は、オーディオブック書籍に数多くのラインナップを擁する株式会社オトバンク(本社:東京都文京区、以下「オトバンク」)とのコラボレーション企画を行います。読書週間の10月27日(金)〜11月9日(木)に合わせ、天狼院カフェSHIBUYA内にて期間限定の「audiobook.jp×天狼院書店 聴ける本屋さん」をオープンすることとなりました。
 
期間内、天狼院カフェSHIBUYA店内には「聴く」と「読む」の両方を選べる本棚を設置します。本を「聴く」ためには、聴きたい本のタブレットの再生ボタンを押すだけで、本の世界に包み込まれるような朗読が流れてきます。
 

 
10月26日(木)に行われたプレス発表会では、最初にオトバンク会長・上田渉氏と天狼院書店店主・三浦崇典氏との、本企画に寄せる対談がありました。
 
前編記事はこちら
 
後編記事では数々のオーディオブック作品朗読の実績を持つ声優・佐久間レイ氏による『星の王子さま』(サン=テグジュペリ著:新潮文庫)の朗読の後に行われた、佐久間氏、芸能界きっての読書家でもある俳優・中江有里氏、そしてオトバンク制作ディレクター・伊藤誠敏氏の3名によるトークセッションをお届けします。
 
 

聴く人の目の前に、情景が浮かぶように。想像の余地を残しながら作り上げるオーディオブック


佐久間レイ氏(声優):朗読劇など、人前で読むことは多いので、今回の朗読も緊張することなく楽しく読ませていただきました。
 
実は『星の王子さま』は小さい頃に読もうと思って飽きてしまい、大人になってから再度挑戦したのですが、またもや放り出してしまった本なのです。
 
父が亡くなった際にいろいろ整理していたら、父の絵手紙が出てきました。そこに書いてあったのがこの『星の王子さま』の引用句でした。「大切なことは目に見えないんだよ」と。その直後にこの本の朗読のお話をいただいたので運命を感じました。自分の中でも思い入れが大きい作品です。
 

 
中江有里氏(俳優):佐久間さんのこれまでのお仕事をいろいろ聴かせていただいていますが、先ほどの『星の王子さま』の朗読を聴くとまた違う佐久間さんがいるようです。世界観に引き込まれました。
 
朗読とオーディオブックでは、オーディオブックの方が分量が多いじゃないですか。
私も朗読のお仕事はたまにしますが、制作者の方のご努力は想像を絶するものがあります。そして読み手の集中力と持続力には頭が下がります。ユーザーがいると思うとやりがいのあるお仕事ですね。
 
佐久間:音読みマラソンをやっている感じですね。オーディオブックの収録は、他の仕事とは全く違います。聴く人の頭の中である程度音ができているので、読み手は言葉が持つイメージを大幅に変える読み方はしないようにしています。
 
例えば「故郷」を「こきょう」と読むのか「ふるさと」と読むのかで、頭の中に浮かんでくる絵が全然違うんですね。何気ない言葉でも聴いている人が大切にしている言葉かもしれませんから、聴く側に想像の余地を残すことに気をつけています。
 
作業としては自分がブースの中に入り、ディレクターと1対1で行います。作品を読むことそのものが十何時間かかりますから「今日の目標は100ページ」などと決めて収録します。漢字の読み方を全てチェックすることや、著者・出版社の意見を伺って収録へ反映する作業もあります。
 

 
伊藤誠敏氏(オトバンク制作ディレクター):最終的にどのように読むのかは、現場で話して決めることが多いです。
著者が思う自筆の本と、オーディオになった時の本とではイメージが違うと思うんですが、こちらも何度も読んだ上でどこを聴いて欲しいか、音にする良さを出しつつもその本をいかに大切にするか考えています。
 
本によって、オーディオブックにするときの作り方が違います。読者、著者、両方のことを考えて作っていますので、こういった場を設けていただけるのは大変ありがたいです。
 

 
中江:そこまで言葉を考えて読んでくださっていることに驚いています。
私は歌もやっているので、例えば「明日」という言葉なら、歌詞の読みは「あす」なのか「あした」なのか、そしてどうそれを曲に乗せるのかを考えます。
また本を読むだけでなく書いている身としては、文章が読んでいる人の中で絵として再生されると立体的になって、それをさらに音にすることでより一層立体感が増すように思います。
 
 

「読む」と「聴く」との相性のよさを実感する瞬間とは


佐久間:有里さんは、オーディオブックを聞いたことはありますか?
 
中江:私はないんですけど周りでは結構多いんですよ。通勤の時に読書したいけどコロナで電車にあまり乗らなくなった。オーディオブックなら歩いて通勤する時に聴けるからいいよねっていう話を聞いて「なるほどな」と思いました。私はどちらかというと紙で読む方が中心なので、聴く読書がどういうふうに受け入れられているのかと思ったときに、意外と周りで広がっているんだなと思いました。
 

 
佐久間:デジタルで読むよりも紙の方が好きでしょう?
 
中江:好きですね。
 
佐久間:私も本は紙派なんですよ。紙の本ってページをめくるから、物語の扉を開けるみたいじゃない? あの感じが好きです。だから本が音にされてしまうのは嫌なんじゃないかなってちょっと心配だったんです。
 
中江:関西出身で、東京に来た時に方言が話せなくて辛かったんですね。その時に何をしたかというと関西弁の本を読みました。読んだら頭の中でその音が再現されたような気がして、慰められました。
 
その経験を通して「読む」と「聴く」はつながりがある、相性もいいと思っています。オーディオの読書は生まれてしかるべきだと思いますし、「聴ける本屋さん」があるということは本屋に足を運ぶ動機にもなるわけで、試すこともできます。しかも渋谷のど真ん中にありますからね。
 
佐久間:有里さんはいつも綺麗な東京弁で話しているので、コテコテの関西弁を聞いたことないんです。今度聞かせてくださいね(笑) 朗読なさりたいとおっしゃっていましたので、関西弁が出てくる作品を探します。有里さんは知的な方なので、その魅力が音を通じてもっともっと広がっていってほしいです。
 
 

読みたくても読めない状況にいる人に、オーディオブックという読書を届ける


中江:実は私、今年の夏に入院したんです。今はすっかり元気になりましたがその時に文字が読めなくなりまして、あの時にオーディオで聴くことを覚えておけばよかったとつくづく思いました。
 
読むことが困難な方に聴くことの手立てがあったら、もっと読書は広がると思います。それは書き手としても嬉しいことだし、ユーザーも聴くことで読書に入っていけますよね。本が音になることの必要性は増していくと思いますよ。
 

 
佐久間:例えば入院して動くことができない方でも、オーディオブックで本が耳で聴けるようにできたら素敵ですよね。しっかり聴かなくていい、聴いたら眠くなって少しずつ聴いてくださるような、睡眠薬代わりの聴き方でいいんです。患者さんが負担することなく、イヤホンとかも整備していただいていろんなジャンルの本が聴けるなら、なおいいですね。
 

 
佐久間:私もだいぶ目が見えにくくなりまして、そうなると本から離れがちになります。あとは電子書籍だと入手方法がわからない方たちもいらっしゃる。身体的なこと、情報入手困難なことから読書をしたい人に本が届かない状況があります。
 
読むことから離れてしまった人、どこかへ行くことが叶わなくなってしまった人たちが、じっとしている間の時間を、オーディオブックによって本を耳から読むことで冒険できたらいいですよね。本で冒険できる企画は素敵だし、いろんな人へ届いて欲しいなと思っています。
 

 
 
<編集後記>
当たり前に本が溢れている世の中でも、当たり前に読むことができない状況の人がいることをつい忘れがちになります。これまで思いつかなかった手段を利用することで、難しい状況でも新しい読書体験に触れることができます。佐久間さんと中江さんが実感した音の必要性を、読書で体験してみてはいかがでしょうか。
 
【書籍×音の関連講座はこちら】
2023/10/29「音ラーニング」を極める! SPECIAL対談
 
2023/11/3「聴ける本屋さん」特別イベント 書店で朗読ライブ〜速水奨 出演!『#真相をお話しします』
 
 
取材・文:河瀬佳代子
撮影:田岡尚子

□ライターズプロフィール
河瀬佳代子(かわせ かよこ)(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

フォトライター 東京都出身 神奈川県在住。
天狼院書店ライターズ倶楽部「READING LIFE編集部」公認ライター。「Web READING LIFE」にて「魂の生産者に訊く!」http://tenro-in.com/manufacturer_soul 、
「『横浜中華街の中の人』がこっそり通う、とっておきの店めぐり!」 https://tenro-in.com/category/yokohana-chuka/ 連載中。他に企業HP、シンポジウム等実績。2022年からカメラマン・榊智朗氏に師事し料理写真・ポートレート・スナップ撮影を開始。文章と写真の二軸で勝負するライターとして活動中。

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2023-11-07 | Posted in 記事

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