国際結婚ギャップ解消サバイバル

【国際結婚ギャップ解消サバイバル 第7章】カルチャーギャップで脇汗かいて焦る子育て《天狼院書店 海外ローカル企画》


2021/12/27/公開
記事:武田かおる(READING LIFE 編集部公認ライター)
 
 

クリスマスと年度末の先生へのギフト


アメリカに来た当初、息子が3歳になりプレスクール(幼稚園に相当する)に通い始めて4ヶ月が過ぎた頃の出来事だ。初めてのクリスマス休暇を迎えようとしていた12月の最終登校日の朝、いつものように車で息子を学校まで送った時に経験した焦りは今でも忘れることができない。
 
その日の朝、子供を学校に送り届けた保護者たちが、それぞれ各自担任の先生にクリスマスギフトを手渡していたのだ。
 
学区や州によってもこの習慣は異なるようだが、先生にクリスマスギフトを渡すという習慣について知らなかった私は、息子を送った後、速攻で本屋まで行き、書店員さんに藁をもすがるような思いで今人気の絵本について相談した。私は書店員さんおすすめの本を2冊、即決購入してラッピングしてもらい、お迎えの時に先生に手渡した。あの時、書店員さんが親切におすすめ本を選んでくれたが、誰も対応してくれなかったら私は途方にくれていただろう。
 
後でわかったことなのだが、私は息子のクラスへのプレゼントとして絵本を選んだが、むしろ、殆どの保護者が先生個人へのプレゼントを渡していた。例えば、少し高級でいい香りのするハンドソープやコーヒーカップ、またはスターバックスやアマゾン、レストランのギフトカード等。お菓子作りが得意な人はクッキーなどを焼いてきれいにラッピングしたりして渡すこともあるようだ。
 
それ以来、クリスマスと学年末にあたる6月の登校最終日に先生にギフトを渡すことを忘れないようにした。個人で渡す場合もあるし、クラスメートのお母さんが代表で、クラスの保護者からお金を集めてグループで一つのギフトを渡すこともある。クリエイティブな保護者は、いくつかのプレゼントをかごに可愛く詰めてギフトバスケットにして先生に渡していた。私はそういうのが苦手で先生が喜ばれるものがなにかわからないので、クラスメートの一人のお母さんがクラスでまとめてグループギフトを作ってくれるときはそれに便乗していることが多い。グループギフトの声がかからない場合、個人でプレゼントを用意するときには、クリスマスカードやお礼のカードと共に無難にスターバックスやアマゾンのギフトカードを渡している。
 
ギフトを渡したから先生の子供に対する態度が変わるとかそういったことはないはずだが、やはり我が家はお礼の気持を込めて先生へのプレゼントを準備するようにしている。
 
日本では、学校の先生にクリスマスというタイミングでプレゼントを渡すという習慣がないので最初は驚いた。どの仕事も尊いと思うが、特にコロナが始まってからは、先生を始め学校関係者の方々が、オンラインクラスへのスピーディな移行また学校の再開に向けて授業と同時並行で日々準備や対応に尽力されていたことが伝わってきた。このように学校関係者の方々には、コロナ禍で大変な中子どもたちへの教育を継続してくださったことに心から感謝している。そういった意味で、少しだけれどもクリスマスや年度末のギフトとして先生にお礼をさせていただく機会があり良かったと思う。

 

 

 

 

子供が夜寝ている間に忘れていはいけない親の仕事


12月は日本も師走で忙しい時期に当たるが、アメリカでも忙しさに関しては負けてはいない。子供や家族の写真をクリスマスカードにして知人や親戚に送ったり、子供や夫、親戚へのクリスマスプレゼントだけでなく、郵便の配達員やゴミ収集の方たち、子供のスクールバスのドライバーにもちょっとしたプレゼントを準備する。
 
そして週末には家族や知人とのクリスマスパーティがあったりする。また学校行事としてはコーラスやブラスバンドの発表会もある。内容は違うが、アメリカの12月もまさに師走である。
 
日米ともに、「いい子にしていないとサンタさんからプレゼントをもらえない」という認識があるが、アメリカにはいい子にしているかどうか見張りをするElf on the shelf (棚の上のエルフ)がいる。エルフは30センチくらいの赤い服を来て赤い三角帽子を被った人形で、量販店や書店、アマゾンなどで購入できる。どこから見ても人形なのだが、子どもたちはエルフが生きていて、毎日子供達が良い子にしているか監視していて、夜寝ている間に北極にいるサンタのところまで行き、子供の様子を通告していると信じているのである。
 
エルフはだいたい棚の上やタンスの上など、部屋が見渡せるところに座っている事が多い。親がエルフの居場所を夜に移動させていないと、「昨日の晩からエルフが動いていない。おかしい。サンタのところまで行っていないの?」と子どもたちが不審がるのだ。だから12月になると毎晩子供が寝てからエルフの場所を移動させることも親の日課の一つになり、それでなくても忙しい年末の仕事が増えるということになる。また、24日の夜以降は、エルフの役目が終わるので、どこかに来年までエルフを隠しておかなくてはならない。
 
もうひとつクリスマスの24日の夜、子供が寝静まってからやらなくてはいけないことがある。子どもたちは、サンタクロースのためにクッキーと牛乳を準備して、家のわかりやすいところに置いておくのだが、その用意しておいたクッキーと牛乳を、親がまるでサンタが食べたかのようにかじって、牛乳も飲んでおかないといけないのだ。トナカイ用には人参を用意するので、人参も適度にかぶりついておかないといけない。我が家の子どもたちはもうサンタは実在しないと知っているため、エルフの毎日の移動も、クリスマスイブのクッキーと牛乳と人参も不要になった。当時を振り替えると、色々忙しかったが、子供のためといいながら、楽しかったなと振り返る。
 
 
クリスマス以外で夜に行わなければならないもう一つの親の役割がある。それは子供の歯が抜けたときの風習だ。アメリカでは、子供の歯が抜けた日の夜、抜けた歯を枕元の下に置いておくと、Tooth Fairy(トゥース・フェアリー)という歯の妖精がやってきて歯と引き換えに枕元にお金を置いていくという伝統がある。(家庭によるがコイン程度だったり、1ドルぐらいだったり様々だ)
 
トゥース・フェアリーはエルフと同様当然架空のものなので、親は子供の歯が抜けた日は、子供が寝てからお金を枕元に置いておくことを忘れてはいけない。ついつい忘れたことが何度かあり、朝になって子供から「トゥース・フェアリーが来なかった」と訴えられ、内心「ごめん。忘れてた!」と思いながら平静を装いながら「トゥース・フェアリー、歯に気が付かなかったんじゃない? 今晩も歯を枕の下に置いてみたら? お手紙も書いたほうがいいかも?」などと苦し紛れに言い訳したことが何度かあった。また、お金は置いたが、歯を取るのを忘れていて、またもや子供に怪しがられて翌朝焦ったこともある。
 
エルフとサンタがやってくる12月も、歯が抜けてトゥース・フェアリーがやってくる日も子供にとってはきっとわくわくの日々だ。けれどそこには、子供が寝静まってから行われる、親の陰ながらの努力があるのだ。

 

 

 

 

ショーファーの日々が終わる日


日本とアメリカで子育てで大きく違う点は、子どもたちの移動手段だ。日本だと、ある程度の年令になると、自転車や徒歩、子供によっては電車やスクールバスに乗って学校に通うことがほとんどだろう。だが、アメリカの都市部や学校が近くにある場合などを除いて、スクールバスを利用しない場合、中高生であっても親が学校まで車で子供を送迎することになる。
 
我が家はスクールバスを使って通学していたので近所のバス停まで送ればよかったが、コロナ禍になって以来、車で学校まで送迎することにしたので、今年は余計、送迎で忙しかった。
 
それ以外でも、学校の友達の家に遊びに行くにも近所でない限り、車での送迎が必要だ。
 
放課後の子どもたちのスポーツや習い事の時間が続くときは、町内のあちこちのグランドに子どもたちを送迎するために運転している。死語をあえて使うとまさしくアッシー君だ。英語では、よく親のこの状況をchauffeur (ショーファー)「お抱え運転手」とジョークにしている。日本だったら殆どの場合は自分で行ったり帰ったりできるのになあと懐かしく考える。
 
長男は今15歳だ。体も私より大きくて、言うことも生意気な反抗期だが、どこかへ外出するときは、よほどの近所以外は親の送迎が必要になる。さっきまで偉そうなことを言っていても、「友達の家に遊びに行くから送って」と、頼んでくる。
 
「そんなに偉そうな態度を取るなら、私に頼らず自力で友達のところへ行けばいいのに、日本なら自転車で勝手に行けるのに」と思うが、子供の友達関係は大切なのでぐっと抑えて送迎する。しかし、友達の家に連れて行っても迎えに行っても、まるで私が存在していないかのように無言でお礼も言わずに車に乗り降りする。
 
高校に入って、陸上部に参加するようになった息子は、最近、先輩の車に乗せてもらって帰ってくることもある。迎えに行こうと家を出ようとしたときに息子から電話がかかってきて、「もう先輩に乗せてもらって家に向かっているから迎えに来なくてもいい」と言われることもしばしばだ。上級生の車で部活の後にカフェやファーストフード店に行く事もあったりする。
 
州によるが、マサチューセッツ州では16歳から車の免許が取れる。息子も来年からは自分で運転できるようになる。これまで体や言うことは大人になっているのに、移動だけは親に頼らないといけなくて、非常にアンバランスな気がした。私も送り迎えが大変だったが、1年後には息子も自分で通学やそれ以外の場所へも行き来できるようになり、自立への第一歩となる。逆に今度は事故を起こさないか心配だ。16歳とってもまだまだ子供。車で高校の敷地に入ると、駐車場内でもスピードを出して運転している高校生がいたりしてとても危ない。
 
しかし、車の運転はここでの生活では不可欠なので、心配だが、脇汗をかきながら見守るしかない。これもアメリカの子育てで親の誰もが通る道なのだ。
 
 
 
 
*あくまでこれらは我が家の国際結婚のエピソードです。日本と同様、国際結婚も様々です。
 

□ライターズプロフィール
武田かおる(READING LIFE編集部公認ライター)

アメリカ在住。
日本を離れてから、母国語である日本語の表現の美しさや面白さを再認識する。その母国語をキープするために2019年8月から天狼院書店のライティング・ゼミに参加。『ただ生きるという愛情表現』、『夢を語り続ける時、その先にあるもの』、2作品で天狼院メディアグランプリ1位を獲得。

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