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オトナのための中学校数学

22.数学的に話をゴリ押し〜三平方の定理〜《オトナのための中学数学〜世のためになっているのか調べてみた〜》


2022/01/10/公開
記事:吉田健介(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 
論理的に言うと……
 
みなさんは、そんな表現を使うだろうか。
 
論理的、つまり筋道立てて話をしたり、考えたり。
自分の考えをまとめたり、相手の言っていることを理解するためには必須なスキルだ。ただ、友達や家族など、親しい人との会話では、あまり使わない言葉かもしれない。脳内で、論理的な思考を発動させているだろうが、「それは論理的に言って……」と例えば僕が妻を前にして語ったところで「ふーん」「へー」「あっそ」くらいの反応しか返ってこないのは目に見えている。時には「めんどうくさ」ということで、家中の空気が妻の邪気に覆われて、僕はそのまま窒息死してしまうかもしれない。とにかく「論理的」そのものは、日常生活を送る上で大切な考え方であることは、僕を含め、みなさんも痛感していることだと想像する。
 
数学的に言うと……
 
これはどうだろう。この表現になると使用頻度はかなり減るかもしれない。意味としては、「論理的」と大して変わらない。個人的にはほとんど同じと捉えているが、こちらの方が数式をプラスさせて考えを積み上げているイメージが強いと言える。ただ、筋道を立てて自分の考えをまとめたり、相手の意見を理解しようとするスタンスは変わらない。つまり、論理的にせよ、数学的にせよ、中身は同じだ。車で行くか、電車で行くか、という程度の違い。目指す目的地は変わらない。
 
が、時に数学的に話をゴリ押しすると変わった現象を目の当たりにすることがある。理想と現実、と言うがまさにその感覚に近い。例えば、歩くことしかできない体だが、そこに妄想を導入することで空を飛ぶことができる、というイメージ。
「現実世界ではここまでだが、数学的に話を進めると、もっと先まで行めるぜ」と、次のイベントの手がかりを示す重要村人のように、新しい世界への扉を開いてくれる。これが「数学的」には含まれている。
 
例えば、紙を半分に折り続けると、現実では何回まで折り続けることができるか。比較的有名なテーマだが、おおよそ8回前後で限界を迎える。「もうこれ以上折れません!」と折っている自分も、折られている紙からも、その叫びがこだます。
昔、テレビ番組で紙のサイズを大きくしたらどうなる? ということで、実験をした映像を見たことがある。その時の紙のサイズは、大きめの画用紙、というサイズ感ではない。もっと大きいスケール。確かちょっとした体育館くらいあった。
「ここまで大きいなら、もしかして……!?」と一瞬期待はしたものの、結果は変わらなかった。7回で限界がきたと記憶している(若干あいまいな記憶だが)。
冷静に考えれば当然だ。半分に折り続けることで、変化していくのは紙の厚みなのだがから。紙のサイズが大きかろうが、小さかろうが、あまり関係ない。仮に甲子園球場並みの大きな紙であったとしても結果は同じだろう。だいたい8回前後で限界がくるはずだ。紙そのものの厚さにもよるが、大きく値が外れることはない。そこに変化球は存在しない。
では、これを数学的に話を進めたらどうなるだろう。つまり、紙を半分に折り続けることができる、と仮定する。「もう折れません隊長!」状態にはならないということ。どんどん折れ折れ、それ行けそれ行け。こうすると不思議な現象が見えてくる。結果は以下の通りだ。
 
10回→乾電池の高さくらい
15回→男性18歳(日本人)の平均身長くらい
23回→スカイツリーくらい
25回→富士山くらい
42回→月まで余裕で行ける
51回→太陽まで行ける
103回→宇宙よりでかい
(紙の厚みは0.1mm)
 
決して現実にはありえない。あくまで理想の話。数学的に話をゴリ押しした場合の話。だが、現実世界では味わえない世界に突入していることがお分かりいただけるだろう。妄想と想像力をプラスして話の内容は理解できるが、ここまでくるともはや一周してわけがわからないことになっている。だが、逆にそこがいい。「いや、ありえないだろう」と笑い話にもなるが、妙に無視もできない。なんと不思議なことだろうか。
 
 
個人的には23回で東京スカイツリーに並ぶことに驚きだ。結構早く到達してしまう。ところで、みなさんはスカイツリーに登ったことはあるだろうか。634mで、東京のシンボル(僕はそう思っている)的な超巨大タワー。何度か登ったことがあるが、あの高さから眺める景色は、もはや別世界。現実に目にしている光景なのだが、うまく脳内の理解が追いついていかない感覚になる。高い所がちょっと苦手な僕だが、飛び越え過ぎて脳が追いついていかないというか。つまりは、すばらい眺めだってこと。スカイツリーから見える景色だが、どの辺り先まで見渡すことができるかご存知だろうか。雲の様子や大気の具合にもよるだろうが、だいたい約90km先までは見ることができる。
これは数学的にも説明可能だ。理由は次の図の通りだ。
 

 
いきなり地球規模の視点。話が大きくなっている感は置いといて、つまりは図のように直角三角形を作る。この場合、地球の半径を約6378kmとして計算。三平方の定理を使うと、スカイツリーから星印までの距離を求めることができる。距離にして約90km。だいたい栃木県宇都宮市あたり。実際に、宇都宮市からでもスカイツリーを視認することができるらしい。
 
 
では、25回折りで到達できる富士山はどうだろう。つまり、富士山の山頂からどのくらい先まで見渡すことができるか。方角は西にしよう。つまり、富士山から西の方角を見たら、何県まで見渡せるか。結果は下の図の通りだ。
 

 
スカイツリーと同様、直角三角形を使って求める。すると約220kmという値になる。富士山から西に約220km。いったいどのあたりに位置するのか。興味がある方は調べてみるといいだろう。
 
正解は滋賀県。
関西に住む僕にとって「え、滋賀県まで見えるの!?」と驚いてしまう。なぜなら、富士山そのものはテレビでしか見ない存在。芸能人みたいなものだ。あの超有名な富士山が、実は滋賀県まで見渡すことができる。富士山が本気を出せば、滋賀県まで見ることができる。まさに驚愕の結果だ。しかし、現実はそうもいかないだろう。雲1つなく、大気は澄み渡り、超クリア! という条件付き。だが、数学的には、滋賀県まで見ることが可能なのだ。何とも不思議な話だ。
 
このように、数学的に話をゴリ押しすると、現実では見えない世界を目の当たりにすることができる。「いやいや、ありえないって」と話のネタにするのもよし。「すげー」と驚くのもよし。受け止め方はいろいろあっていい。想像力も足しながら、話を楽しもうではないか。ちょっと想像を超えすぎて、やばい域に達しまうこともあるが、その荒くれ具合が、逆にいい。「数学的」の魅力の1つということで。
 
 
 
 

❏ライタープロフィール
吉田健介(天狼院ライターズ倶楽部READING LIFE 公認ライター)

現役の中学校教師。教師が一方的に授業をするのではなく、生徒同士が話し合いながら課題を解決していく対話型の授業を行なっている。生徒が能動的に学習できるような授業づくりを目指している。

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2022-01-05 | Posted in オトナのための中学校数学

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