30年いろいろ試しても、10分の片づけができなかった私が気づいたこと
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:雨宮さよ(2026年1月開講・渋谷/通信・4ヶ月コース)
また今日も、片づけができなかった。
朝から気になっていた机の上には、読みかけの本と、書き散らかしたメモと、飲みかけのコーヒーのカップがそのまま残っている。床には昨日脱いだままの部屋着。洗濯機の中には、もう一度回せばいいだけの洗濯物が入ったまま止まっている。
取り込んだままの洗濯物の山を見て軽くため息が出る。もはや「山」というより、ちょっとした地層みたいになっている。
ほんの10分もあれば、全部終わるはずなのに、なぜか手がつかない。
机の片づけも、部屋の掃除も、やろうやろうと思っている。時間ができたらやろうと思っているのに、いざその時間ができると、ダラダラとSNSや動画を見続けてしまう。気づいたときには「ああ、今日はもういいや、また今度にしよう」と先送りにして終わる。この流れを、何度も繰り返している。
どうすれば変えられるのか。きっかけがあれば動けるのか。誰かに声をかけてもらえば違うのか。そんなことをぼんやり考えながら、根本的に何かを変えないと、このまま同じことを続けるだけだろうな、という感覚もあった。
私が知りたかったのは、「こうすれば散らからない」といったテクニックではない。片づけのコツや収納の工夫は、調べればいくらでも出てくるし、実際にいくつも試してきた。
そういう小手先の方法ではなく、もっと根本的に、自分の行動が変わるような前提が知りたかった。できれば、科学的とか、医学的に説明がつくような、再現性のあるものがあればいいと思っていた。
とはいえ現実の私は、部屋がいつも片づいているタイプではない。ゴミ箱の横には朝出し忘れたゴミ袋が残っている。洗濯物はとり込まれたまま、たたまれることなく山になっている。それでも、きれいに整えられた棚や収納を見るのは好きだし、整った空間には素直に心が落ち着く。ルームフレグランスにも凝ってしまうことがある。
子どもの頃から、私は何かひとつのことに集中して取り組むタイプだった。だからこそ、毎日の掃除のルーティンや、ゴミ出しの前日に準備をしておくこと、消耗品を切らさないように管理することといった、暮らしの細かな家事全般が、どうにも苦手だった。
やるべき項目が多すぎると、一つひとつを積み上げる前に、気持ちが止まってしまう。
ちなみに、これは親のしつけが甘かったから、という話でもないと思っている。実際、同じ環境で育っても、きちんと片づけができる人はいる。
それでも、これまで何もしてこなかったわけではない。30数年前にパーソナルカラー診断を受けたときは、かなり本気だった。ワードローブを似合う色と形だけに絞れば、無駄な買い物も減るし、管理も楽になると思った。実際、クローゼットは一度かなり整理された。
いわゆる、こんまりメソッドも同じだった。ひとつひとつ手に取って、ときめくかどうかで判断する。あの作業は嫌いではなかったし、むしろ好きな時間だった。部屋が一気に整うあの感覚も、ちゃんと覚えている。確かに、その瞬間だけを切り取れば、部屋はきれいになった。
でも、それは「イベント」としては成功しても、「日常」にはならなかった。きれいな部屋は、そのときの私にとって、ちょっとした記念写真みたいなものだった。
ここでようやく、気づいたことがある。私はずっと、片づけは「やり方」の問題だと思っていた。正しい方法さえ知れば、誰でもできるようになるはずだと考えていた。けれど実際には、やり方はもう知っているし、何度も試している。それでも続かないのだとしたら、問題は別のところにある。
片づけは、単発の行動ではなく、継続の上に成り立っている。必要なのは、やり方ではなく、続けるための構造だ。やる気や気分に依存せず、自然と回る前提がない限り、同じことを何度でも繰り返すことになる。
私の場合、片づけは突発的なイベントのように扱われていた。思い立ったときや来訪者のあるときなどに一気にやって、疲れて終わる。当然、その繰り返しでは、習慣にはならない。一方で、仕事や勉強は違う。毎日少しずつでも手をつける前提があり、やることが明確に区切られている。だから続く。
つまり私は、片づけができないのではなく、片づけを「続ける前提」を持っていなかっただけだった。
これは、少しショックだった。なぜなら、自分ではコツコツ積み上げることができる人間だと思っていたからだ。
仕事ではコツコツやれるのに、生活空間をきれいに保つことができない。しかし、少しだけ救われたことは、できている分野とできていない分野があるだけで、その差を生んでいるのは能力ではなく、前提の違いだった。
片づけの問題は、性格や意志の強さではなく、設計の問題なのかもしれない。そう考えると、ようやくスタートラインに立てた気がした。
たぶんこれは、片づけに限った話ではない。続かないことの多くは、本人のやる気や性格の問題ではなく、前提の問題なのだと思う。気合いでなんとかしようとしているうちは、何度でも同じ場所に戻ってくる。
逆に言えば、設計さえ整えば、人は思っているより自然に動けるのかもしれない。
ただ、「前提と設計が大事だ」と気づいたところで、すぐに何かが変わるわけではない。むしろ、ここからがやっとスタートなのだと思う。
これまでの私は、「やる気が出たらやる」という気持ちで片づけを考えていた。でも、それでは一生同じことを繰り返すだけだということも、もうわかっている。
例えば、机の上を片づけるなら、「週末にまとめてやる」ではなく、「夜、席を立つ前に一つだけ動かす」と決めたほうがいいのかもしれない。洗濯物も、「時間があるときにたたむ」ではなく、「取り込んだらその場で一枚だけでも手をつける」と決める。
どれも小さなことだし、正直に言えば、それで劇的に何かが変わる気もしない。それでも、「続ける前提」で設計された行動は、これまでのやり方とは違うはずだ。
一気にきれいにすることよりも、散らかりきらない状態を保つこと。気分が乗る日を待つのではなく、気分に関係なく動ける形にしておくこと。
そうやって少しずつでも積み上げていくことが、結果的にはいちばん遠回りに見えて、いちばん確実なのかもしれない。
今のところ、机の上はまだ整理されてはいない。洗濯物の山も、正直に言えば、まだそこにある。たぶん明日も、同じことを思う気がしている。
それでも、「やり方」ではなく「続け方」に目を向けたことで、これまでとは少し違う場所に立てている気がする。
少なくとも、同じ場所をぐるぐる回り続ける感覚からは、少しだけ抜け出せた。
≪おわり≫
お問い合わせ
■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム
■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。
■天狼院カフェSHIBUYA
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6丁目20番10号
MIYASHITA PARK South 3階 30000
TEL:03-6450-6261/FAX:03-6450-6262
営業時間:11:00〜21:00
■天狼院書店「京都天狼院」
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00
■天狼院書店「名古屋天狼院」
〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内3-5-14先
Hisaya-odori Park ZONE1
TEL:052-211-9791
営業時間:10:00〜20:00
■天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00







